退職の記事

2021/08/29|1,345文字

 

<雇用保険の離職理由>

雇用保険の失業手当(求職者給付の基本手当)は、かなり大雑把に言うと、自己都合の離職よりも会社都合のほうが有利です。

しかし実際には、自己都合・会社都合という区分ではなく、労働契約期間の満了や自己都合退職といった一般的な離職の場合と、特定受給資格者や一部の特定理由離職者の場合とに区分されています。

これは、予め転職の準備や経済的な備えができる退職と、転職が困難で経済的な備えができない退職とに区分して、離職者の受給内容に差を設けているのです。

ですから、会社と離職者とで雇用保険の話をする場合には、自己都合・会社都合というのではなく、給付制限期間の有無と所定給付日数について話すのが現実的です。

 

<退職金制度>

退職金制度では、自己都合と会社都合とで、支給金額に差のあることが多いものです。

自己都合でも会社都合でもない場合は、想定されないのが殆どです。

たとえば、1店舗のみを経営する会社が、行政により店舗の立退きを命じられた場合、廃業することになるのは、会社都合ではなく「行政都合」のようにも見えます。

しかし、店舗を移転して営業を続けるという選択肢もありますから、廃業するのは会社の主体的な決定によるものとされ、一斉解雇の場合には会社都合となります。

 

<休職制度>

休職制度で、会社都合によるものについて規定を置くことは少なく、殆どの場合が自己都合によるものとなります。

そして、休職期間が満了すれば、自動退職(自然退職)とされることが多く、中には解雇とする規定も見られます。

会社都合での休職や、復職できる状態となったにも関わらず会社都合で復職させられない場合には、休職期間の満了をもって自己都合による自動退職することはできず、話合いのうえ会社都合での退職とする場合が多いでしょう。

特にセクハラ、パワハラ、長時間労働、退職強要などによる精神疾患を原因とする休職の場合には、休職期間の満了をもって退職とすることは、不当解雇となるのが一般ですから注意が必要です。

 

<感染症の自宅待機>

インフルエンザに罹患した従業員から、年次有給休暇を取得する旨の申し出があれば、会社はこれに従うことになります。

しかし本人から「比較的症状が軽いので出勤したい」「テレワークにしたい」という希望が出された場合には、会社から年次有給休暇の取得を強制することはできません。

会社が休業させたいと考えるのであれば、休業手当を支払うことになります。

また、家族が新型コロナウイルスに感染し、従業員が濃厚接触者とされ、保健所から自宅待機するよう指導があった場合には、自己都合でも会社都合でもなく「行政都合」です。

この場合には、会社が休業手当を支払う義務を負いませんが、ご本人が年次有給休暇を取得することはできます。

しかし従業員の中に、お子さんが新型コロナウイルスに感染して濃厚接触者となった母親がいて、保健所から自宅待機を指示され、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金を受給しようとする場合に、会社は休業期間を証明してあげることになります。

この場合、会社が金銭的な負担をすることはなく、休業の事実を確認する書類の作成に協力するだけです。

「会社都合ではなく自己都合だから」と考えて、協力を拒まないように注意しましょう。

2021/07/30|1,324文字

 

休職制度https://youtu.be/IqesySil664

 

<就業規則の定め>

休職は、労働基準法などに規定がなく、各企業の定める就業規則に従って運用されます。

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、休職について次のように規定しています。

 

【休職】

第9条  労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

① 業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき                   年以内

② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき

                           必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

このモデル就業規則には、休職期間の延長についての規定がありません。

規定が無いということは、原則として休職期間の延長も無いということになります。

例外中の例外として、休職期間の延長を認めた場合には、具体的な事情や延長した期間についての資料を保管しておいて、いつか同様の事情で休職期間の延長を検討する場合に備える必要があります。

これをしないと、行き当りばったりの運用となってしまい、不公平が生じるからです。

 

<休職期間延長の定め>

休職制度の設計は、基本的には企業に任されていますので、就業規則に休職期間の延長についての定めを置いて運用することも可能です。

「◯◯の場合は、事情により休職期間を延長することがあります」などと規定することになります。

こうした規定を運用する場合にも、やはり不公平が生じないように、具体的な事情や延長した期間についての資料を保管しておいて、いつか同様の事情で休職期間の延長を検討する場合に備える必要があります。

 

<休職期間満了による退職と再雇用>

モデル就業規則第9条の第3項にあるように、休職期間の満了時に休職の事由が解消していなければ自動退職(自然退職)となります。

休職期間満了の間際になって、このまま退職で良いのか、休職期間を延長すべきか、迷いが生ずることもあります。

特に会社に対する貢献度の高い社員については、こうした迷いが生じやすくなります。

この場合、考慮する要素としては退職金があります。

退職すれば、一度退職金が支給され、再雇用の場合には勤続年数がリセットされます。

また勤続年数は、年次有給休暇の付与日数に関わってきますが、再雇用の場合にはやはり勤続年数がリセットされます。

この他、会社の制度の中で、勤続年数と連動する永年勤続表彰のようなものがあれば、これにも影響します。

健康保険の傷病手当金や出産手当金は、一定の条件はあるものの退職後も継続となります。

雇用保険も加入期間(被保険者期間)に影響しますが、1年以内の再雇用であれば、期間は通算されます。

休職期間の延長は、あくまでも例外措置ですから、会社側の都合と本人の希望を良く吟味して決定することが必要です。

2021/06/02|693文字

 

被保険者 被扶養者「被」とは?https://youtu.be/TLTo2eFOMfU

 

<退職後の健康保険>

退職後の健康保険には、今までの健康保険の任意継続、健康保険加入家族の扶養に入る、国民健康保険に入るといった選択肢があります。

多くの人は、任意継続と国民健康保険とで、保険料の安い方を選択します。

国民健康保険では、会社都合など非自発的離職をした人について、保険料(税)が減額される制度がありますので、対象者には会社から説明しておくのが良いでしょう。

 

<非自発的離職者の国民健康保険料(税)の軽減制度>

非自発的離職者の負担の軽減のため、国民健康保険料(税)の算定をする際に、前年の給与所得金額(他の所得は対象外)を100分の30の金額とみなして計算します。

これは、自己都合によらず離職した人の負担軽減措置であり、国の政策による制度です。

 

<対象者>

次の全てに当てはまる人が対象になります。

・離職日が平成21(2009)年3月31日以降

・離職時点で65歳未満

・ハローワークで失業の認定を受け次の事由に該当

雇用保険の特定受給資格者(例:倒産・解雇などによる離職)…離職理由欄が11、12、21、22、31、32

雇用保険の特定理由離職者(例:雇い止めなどによる離職)…離職理由欄が23、33、34

 

<軽減制度の対象期間>

軽減制度の対象期間は、雇用保険受給資格者証に記載されている離職日の翌日の属する月から翌年度末までです。

失業手当(雇用保険の基本手当)を受ける期間とは異なります。

 

<届出の方法>

健康保険証、雇用保険受給資格者証、マイナンバー(個人番号)確認書類、身元確認書類を用意のうえ、区市役所・町村役場で届出をします。

届出には、離職者のマイナンバーの記入が必要となります。

2021/05/13|1,376文字

 

<業務災害>

労働者災害補償保険(労災保険)は、業務上の災害(業務災害)と通勤中の災害(通勤災害)による負傷、疾病、障害、死亡について、被災労働者や遺族を保護するために必要な保険給付を行う公的保険制度です。

通勤災害については、その防止に向けた会社の努力が、安全教育や情報提供などに限定されています。

したがって、業務災害ほど会社の責任が重くはないので、解雇について特別な配慮が必要なケースは稀です。

しかし、業務災害をきっかけに解雇を検討する場合には、配慮すべき点が多いといえます。

 

<故意・重過失による業務災害>

会社や上司に対する恨みなどにより、意図して業務災害を発生させた場合には、悪質性が高いですから、被害の程度によっては懲戒解雇を検討することになります。

これは、重過失による業務災害も同様です。

重過失による業務災害とは、結果発生の予測がたやすい場合や、結果発生の回避がたやすい場合に、注意義務に反して結果を発生させた業務災害をいいます。

 

<過失による業務災害>

故意・重過失によらず単なる過失によって業務災害を発生させた場合には、これを懲戒の対象としない会社もあります。

懲戒の対象としないのは、業務災害発生の原因を教育不足・指導不足に求めるからです。

しかし、会社の教育・指導が十分であって、およそ業務災害の発生が想定できない場合にまで、懲戒の対象から外してしまうのでは、他の従業員が安心して勤務できませんし納得できないでしょう。

やはり、業務災害発生の原因を具体的に吟味したうえで、本人に責任がある場合には、懲戒の対象とすべきです。

そして、過失による業務災害であっても、被害が大きければ懲戒解雇が検討される場合があります。

しかし、被害の大きさにとらわれて、悪質性の低さを見失うと、解雇権の濫用となり解雇が無効となることもあります。〔労働契約法第16条〕

懲戒と教育・指導の併用によって対応するのが基本となります。

 

<業務災害による能力低下>

業務災害で被災し、健康状態の減退や障害によって、業務遂行能力が低下する場合もあります。

そして、能力低下が著しい場合には、普通解雇を検討することもあります。

しかし、会社の施設・設備・器具の欠陥や不適切な配置、教育・指導の不足などが業務災害に影響していた場合には、会社に雇用の維持が求められます。

具体的には、異動や業務の転換によって、勤務を継続できるように配慮することになります。

一方で、被災者に故意・重過失が認められる場合には、能力低下による普通解雇一般の基準で判断することとなります。

 

<労働基準法による解雇制限>

以上のどのケースであっても、被災者が業務災害によって療養のために休業した場合には解雇が制限されています。〔労働基準法第19条〕

 

【労働基準法第19条:解雇制限】

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

② 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

 

2021/05/17|445文字

 

<国民年金の届出>

会社を退職した時点で20歳から59歳までの人は手続が必要です。

同様に、退職者に扶養されている20歳から59歳の配偶者も届出が必要です。

手続の窓口は、お住まいの市区町村の国民年金担当窓口です。

年金手帳など基礎年金番号がわかる書類があれば、手続がスムーズです。

退職によって、会社員・公務員など厚生年金の加入者の扶養に入る配偶者は、加入者の勤務先への届出が必要です。

 

<保険料の納付が困難なら>

保険料の納付が困難であることを理由に、国民年金の手続をしないのは損です。

申請によって、保険料の一部または全額が免除になる制度がありますので、窓口で相談することをお勧めします。

退職(失業)の場合は、前年の所得をゼロとして審査されます。

また、免除の割合に応じて一定の年金額が保障されます。

手続をしなければ、この保障が受けられません。

病気や事故で障害が残った場合の障害年金や、遺族年金についても、免除の手続をしておけば受給の権利が確保されます。

手続は、退職後速やかに行うことをお勧めします。

2021/05/15|1,345文字

 

<懲戒解雇>

民間企業での懲戒は「制裁」を意味します。

労働基準法に「懲戒」という用語はありませんが、「制裁」が「懲戒」の意味で用いられています。〔労働基準法第89条第9号、第91条〕

解雇とは、使用者側から労働契約を解除することをいいます。

ですから懲戒解雇は、制裁としての労働契約解除ということになります。

 

<懲戒解雇の有効要件>

懲戒を有効に行うためには、就業規則に具体的な規定があること、弁明の機会を与えること、懲戒権の濫用とならないこと、労働基準法の制限内であることなど、多くの条件をクリアする必要があります。

解雇を有効に行うためには、解雇権の濫用とならないこと、労働基準法等が定める禁止規定に触れないことが必要です。

ですから、懲戒解雇を有効に行うには両方の要件を満たす必要があり、かなりバードルが高いことになります。

 

<懲戒解雇の効果>

懲戒解雇の場合には、雇用保険の失業手当(基本手当)について、7日間の待期期間に加えて3か月間の給付制限が設けられていますので、受給開始が遅れることになります。

また、所轄の労働基準監督署長の除外認定を受ければ、解雇予告手当の支払が不要です。

さらに、就業規則に「懲戒解雇の場合には退職金を不支給または減額する」などの規定があれば、退職金が全額は支払われないことになります。

もっとも裁判になれば、懲戒解雇の理由に鑑み、退職金を全く支給しないことが不合理であると判断されることは多いものです。

 

<諭旨解雇>

諭旨とは、趣旨や理由を諭し告げることをいいます。

ですから諭旨解雇は、使用者が労働者を諭し、趣旨や理由を告げて退職を促すことになります。

しかし諭旨解雇は法令に規定がありませんので、その内容も各企業の就業規則等によって異なっています。

多くの場合には、本来であれば懲戒解雇となるべきところ、本人に言って聞かせて反省を示していれば、自主的に退職願を提出してもらうことで、懲戒解雇扱いにはしないという内容です。

ほとんどの場合、自己都合退職となりますから、雇用保険の失業手当(基本手当)について、7日間の待期期間に加えて3か月間の給付制限が設けられていますので、受給開始が遅れることになります。

この場合、解雇ではありませんから解雇予告手当は支払われない一方で、退職金の減額は行われないのが一般です。

 

<諭旨解雇特有の問題>

「本来は懲戒解雇とすべきところを懲戒解雇扱いにはしない」というのが諭旨解雇ですから、そもそも「本来は懲戒解雇とすべきではなかった」ならば、前提が崩れてしまいます。

このことから、諭旨解雇を承諾して退職した労働者が、弁護士に相談し諭旨解雇を不服として会社を訴えるケースがあります。

会社としては、懲戒解雇の条件と手続をすべてクリアしたうえで、諭旨解雇に踏み切らなければリスクを負うことになります。

 

<諭旨退職>

諭旨退職も法律用語ではありませんので、各企業によってその意味は異なってきます。

諭旨解雇の意味で、諭旨退職という言葉が用いられている場合も多くあります。

また、退職勧奨の意味で用いられている場合もあります。

「会社や他の従業員に迷惑をかけてしまったし、あなたは信用を失ってしまったので、責任をとって退職しませんか」と話を持ちかけることになります。

<高年齢者雇用確保措置>

定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する義務があります。〔高年齢者雇用安定法第9条〕

「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。この制度の対象者は、以前は労使協定で定めた基準によって限定することが認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、平成25(2013)年度以降、原則として希望者全員を対象とすることが必要となっています。

なお、継続雇用先は自社のみならずグループ会社とすることも認められています。

 

<高年齢者就業確保措置>

さらに、令和3(2021)年4月1日からは、事業主には70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務が課されています。〔高年齢者雇用安定法第10条の2〕

したがって、定年を70歳未満に定めている事業主、70歳未満の継続雇用制度を導入している事業主は、次のいずれかの措置を講ずるよう努める必要があります。

一、70歳までの定年引上げ

二、定年制の廃止

三、70歳までの継続雇用制度の導入

四、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

五、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

・事業主が自ら実施する社会貢献事業

・事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

このうち、三の継続雇用制度については、特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものが含まれます。

三、四、五の措置をとる場合に、基準を定めて対象者を限定する場合には、労使で十分に話し合うことが求められます。

過半数労働組合があれば、事業主と過半数労働組合との間で十分に協議したうえで、過半数労働組合の同意を得ることが望ましいことになります。

ただし、高年齢者雇用安定法や他の労働関係法令に反する不合理なものは認められません。

特に五の措置をとる場合に、基準を定めて対象者を限定する場合には、事業主の指揮監督を受けることなく業務を適切に遂行する能力や資格、経験があること等、予定される業務に応じて具体的な基準を定めることが必要とされています。

上記の「基準を定めて対象者を限定する場合」の「基準」は、会社に都合よく恣意的に定めることはできません。

対象外とされた従業員から、会社にクレームが入ったり、訴訟を提起されたりのリスクがあります。

以下の点に配慮して基準を定め運用するように心がけましょう。

 

<懲戒解雇の事由>

「懲戒解雇の事由がある場合には再雇用しない」と就業規則に規定されていることがあります。

懲戒も解雇もハードルが高いですから、懲戒解雇となれば、その具体的な事由が就業規則に規定されていなければなりませんし、重ねて指導したにも関わらず改めない、極めて悪質であるなどの事情や、弁明の機会の付与などが求められます。

「再雇用しない理由に使うだけ」と気を緩めてはいけません。

 

<懲戒解雇の先送り>

定年後の再雇用をしない理由として、懲戒解雇の事由を挙げる場合、「そろそろ定年が近いから今すぐ解雇しなくても」と問題を先送りしてきた可能性があります。

定年前に懲戒解雇が正当視されるような事由がある場合、本人が勤務し続けることは、他の従業員にとって迷惑であり、その部署の生産性を低下させてしまいます。

先送りの意識が働いている場合には、定年前に不都合な言動があっても、注意・指導を受けることなく放置される危険も高まります。

定年までの年数が長く、先送りが長期に及んだ場合には、「今まで許されてきたこと」を理由に再雇用を拒否することになり、不当な不意打ちと評価される危険があります。

定年を待たずに解雇するのが、会社や他の従業員のためになります。

 

<客観的な評価基準>

「健康状態が良好でない者」「生産性が低い者」「会社への貢献度が不足する者」のような主観的な判断基準で、再雇用の対象外とすることはできません。

事実の存否を争われた場合に、立証することができないからです。

「定年まで3年間の勤務評定が平均B以上であること」のような基準は、一見すると客観的な基準のように見えます。

しかし、普段の勤務評定が客観的な事実に基づかず、考課者の主観によるところが大きければ、やはり主観的な基準ということになってしまいます。

人事考課は、客観的な指標や事実に基づいて行われる必要があります。

 

YouTube「合理的」の意味

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<基準時の設定>

再雇用の判断について、いつの時点を基準とするかは重要です。

これが明確でなければ、判断基準が無いに等しくなってしまいます。

 

<過去の懲戒>

「出勤停止以上の懲戒が2回以上あった者は再雇用しない」などの基準も、一見すると客観的な基準だと思われます。

しかし、過去の懲戒が適正な手続に従い、有効に行われたことを示す客観的な資料が無い限り、その正当性を争われるリスクがあります。

 

<公平な運用>

特定の従業員について、基準を緩め例外的に再雇用してしまうと、それ以降は、緩い基準で再雇用しない限り不公平が生じてしまいます。

例外的に基準を緩めたい事情があるなら、再雇用の基準をより緻密に修正する必要があります。

2021/04/18|1,435文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

https://youtu.be/qUAFJ0sjnDg

 

<再雇用時の賃金>

正社員が定年に達すると同時に再雇用された場合、年収は何割までダウンしても違法にならないか、世間相場や業界での一般的な水準はどの程度かといった、それ自体あまり意味を持たない質問を受けることがあります。

これは、働き方改革以前から問題とされてきましたが、同一労働同一賃金との関連でクローズアップされています。

 

<長澤運輸事件最高裁判決>

平成30(2018)年6月1日の長澤運輸事件最高裁判決は、まさに定年後再雇用時の賃金引下げが争われた事件に対する司法判断です。

運輸業の会社でトラックの運転手として定年を迎えた労働者が、定年退職とともに有期労働契約の嘱託社員として再雇用されました。

このとき、仕事内容に変更が無いのに、賃金が約2割引き下げられたことによって、正社員との間に不合理な待遇差が発生し、旧労働契約法第20条に違反するとして会社を訴えたのです。

この判決で、最高裁は次のような判断を示しました。

賃金項目が複数ある場合には、項目ごとに支給の趣旨・目的が異なるので、賃金の差異が不合理か否かについては、賃金の総額を比較するだけでなく、その賃金項目の趣旨・目的を個別に考慮すべきである。

精勤手当は欠かさぬ出勤を奨励する趣旨を持つものであり、嘱託社員は正社員と職務内容が同一である以上、皆勤を奨励する必要性に相違はなく、定年の前後で差異を設けることは不合理である。

精勤手当が計算の基礎に含まれる超過手当(時間外労働手当)についても同様である。

これ以外の賃金項目については、それぞれの趣旨・目的から、差異を設けることが不合理ではない。

 

<最高裁判決の趣旨>

令和2(2020)年は、同一労働同一賃金の最高裁判決が5つ出ました。

大阪医科大学事件、メトロコマース事件、それと日本郵便事件が3つです。

これらの裁判でも、改正前の労働契約法20条を巡って争われました。

退職金、賞与、手当、休暇などについて、それぞれの裁判で差異が不合理か否か争われました。

そして、どの判決でも、各項目の支給の趣旨・目的から、その差異が不合理か否か検討され判決が下されたのです。

賞与一つをとっても、企業によって支給の趣旨・目的が異なります。

その趣旨・目的によって、正社員と非正規社員とで支給の差異について、次のように判断が分かれうることになります。

1.非正規社員にも正社員と同額が支給されるべきである。

2.非正規社員にも正社員と同じ基準で支給されるべきである。

3.非正規社員には正社員の支給額の一定割合を支給すべきである。

4.非正規社員には支給しなくても不合理ではない。

大阪医科薬科大学で、非正規社員に賞与を支給しないのは不合理ではないからといって、別の企業でも同じことがいえるとは限らないのです。

 

<解決社労士の視点から>

定年後再雇用時の年収水準そのものについては、最高裁判所が明確な基準を示していません。

各業界で平均的な下げ幅であれば容認されるのだとすると、平均を下回る半数近い企業は不合理だとされかねません。

むしろ、個別の手当等について、定年の前後でその支給に差を設ける場合に、それぞれの趣旨・目的から、不合理ではないかが厳しく審査されることになりました。

ですから、個別の手当等について、不合理といえない範囲で差異を設けた結果、年収が3割減少した、4割減少したというのは容認されることになります。

肝心の基本給については、今後の司法判断の積み重ねによって明らかになっていくものと思われます。

2021/04/10|1,065文字

 

<支払約束や慣行が無い場合>

退職金の支給について、就業規則や労働条件通知書などに規定が無く、支給する慣行も無いのであれば、雇い主側に支払の義務はありません。

しかし規定が無くても、退職金を支給する慣行があれば、その慣行を就業規則や労働条件通知書などに規定することを怠っているだけですから、規定がある場合と同様に支払い義務が発生します。

 

<対象者が限定されている場合>

就業規則などに、「勤続3年を超える正社員に支給する」という規定があれば、勤続3年以下の正社員に支給する必要はありません。

しかし、パート社員など非正規社員に支給する必要性には注意が必要です。

まず、正社員用の就業規則しか無い、就業規則に正社員の明確な定義が無いなどの不備があれば、本人からの請求によって支払わざるを得ないこともあります。

また、令和3(2021)年4月から同一労働同一賃金が全面施行されていますので、賞与支給の趣旨・目的が明確で、正社員以外に支給しない客観的に合理的な理由があるというのでなければ、会社が非正規社員から、特に退職後に訴えられるリスクがあります。

この場合には、未払残業代、パワハラに対する慰謝料、年次有給休暇を取得させなかったことに対する損害賠償など、すべて合わせて請求されるでしょう。

少なくとも、就業規則や労働条件通知書は、法改正を踏まえ社会保険労務士(社労士)のチェックを受けておくことをお勧めします。

 

YouTube「合理的」の意味

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<不支給の例外規定がある場合>

退職金の不支給について、就業規則や労働条件通知書などに規定があって、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当な場合には、例外的に不支給とすることが許される場合もあります。

「規定さえあれば不支給で構わない」ということではありません。

 「会社の承諾なく退職した者には退職金を支給しない」という規定は、その承諾が会社の主観的な判断ですから、客観的に合理的とはいえないでしょう。

 「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」という規定があっても、必ずしも不支給が許されるわけではありません。

退職金を不支給としても良いのは「労働者のそれまでの勤続における功労を抹消するほどの信義に反する行為」があった場合に限られます。

それほどの事情があったわけではないのなら、懲戒解雇そのものが不当解雇となり無効である可能性があります。

 

<解決社労士の視点から>

同一労働同一賃金への対応は簡単ではありません。

本当に退職金を支払わなくても大丈夫かといった専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

2021/04/09|1,386文字

 

YouTube被保険者 被扶養者「被」とは?

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<離職理由の重要性>

離職者が失業手当(雇用保険の基本手当)を受給するためには、事業主が雇用保険の脱退(資格喪失)手続をするとともに、離職証明書(離職票)の作成手続をする必要があります。

基本手当の受給開始日や受給期間は、離職理由によって異なりますから、この離職理由が重要な意味を持ちます。

 

<離職理由の判断手続>

手続の流れとしては、まず事業主が会社所轄のハローワークに離職証明書を提出します。

事業主は、離職証明書に離職理由を記載しますが、離職理由を裏付ける客観的資料により、所轄のハローワークが確認することになっています。

そして離職票は、離職証明書と3枚綴りのセットになっていて、一部が複写式になっています。

離職者は、会社を経由して離職票を受領することになります。

さらに離職者は、この離職票に離職理由を記載して、離職者の居住地を基準とした管轄のハローワークに提出します。

ここでも、事業主の記載している離職理由が、客観的資料により確認されます。

このとき、離職者が異議を唱えなければ、事業主の記載した離職理由が正しい離職理由であると判断されます。

しかし、離職者が異議を唱えていれば、離職者の離職理由を裏付ける客観的資料により、管轄のハローワークが離職理由を確認します。

管轄のハローワークは必要に応じ、事業主と離職者から聴取し、最終的にはハローワークの所長が離職理由を判断します。

長くなりましたが、これが離職理由の原則的な判断手続です。

 

<事実の変化による離職理由の変更>

ここでは、単純化のために、離職理由を会社都合・自己都合に集約して考えます。

ある従業員が、会社都合により3月末で普通解雇される予定だったところ、その従業員の家族の都合で急遽2月下旬に転居することになったため、自己都合により2月末で退職することになったとします。

この場合には、事実の変化により、退職日が1か月繰り上がるとともに、離職理由も変更されたことになります。

 

<判断の変化による離職理由の変更>

従業員から事業主に対して、長時間労働による健康不安を理由に退職の申し出をしたとします。

そして、事業主も従業員も自己都合であるとして離職証明書(離職票)の作成手続に入ったとします。

しかし、3か月以上にわたって月の法定時間外労働が45時間を超えていた場合などは、会社都合と判断されることになっていますので、事業主か従業員が途中で気づき、あるいはハローワーク主導で会社都合に変更されることがあります。

 

<合意による離職理由の変更>

長年会社に尽くした従業員から退職の申し出があり、事業主が「本当は自己都合だが感謝の印として会社都合にしてあげよう」と考えて手続すると、不正受給に加担することになりますから違法です。

たとえ当事者が合意しても、事実と異なる離職理由での手続は許されないのです。

しかし、労働局でのあっせんなど、個別労働紛争解決制度を利用した結果作成される「和解書」などの中で行われる離職理由の合意は、あっせん委員が具体的な事実関係を確認し、事実に基づいて「和解書」が作成されるため違法ではありません。

この場合には、申立人と被申立人とで離職理由についての意見が分かれていたところ、誤った判断をしていた側の勘違いが是正されて、正しい離職理由での合意が形成されているので、不正が回避されたことになるのです。

 

解決社労士

2021/03/28|2,122文字

 

YouTube情報漏洩の防止

https://youtu.be/nnTZG2FyG8w

 

<和解契約の性質>

和解とは、法律関係の争いについて、当事者が互いに譲歩し争いを止める合意をすることをいいます。

退職者から会社に対し、代理人弁護士を通じて、法的な権利を主張し何らかの請求をしてくることがあります。

在職者からは、弁護士を介さず直接請求してくることが多いでしょう。

会社が何らかの回答をし、これに退職者・在職者が納得しなければ、あっせんや労働審判を申し立てられることがあります。

これを超えて訴訟にまで発展すると、当事者には時間、費用、労力、精神力などの負担が大きくのしかかります。

和解というのは、会社と退職者・在職者のどちらが正しいか白黒を付けるのではなく、お互いに歩み寄って解決することにより、時間、費用、労力、精神力などの負担を軽減しようという、合理的な解決方法であるといえます。

 

<和解契約書のひな形>

和解契約書のひな形は、ネットで検索すると、金銭消費貸借契約に関するものも多いですが、「和解 ひな形 労働者」で検索すれば、会社と従業員や退職者との和解契約書のひな形が見つかります。

しかし、その一般的なものには、そのまま利用すると、紛争の解決どころか新たな紛争の火種となる要素が含まれています。

以下、そうした例について説明を加えてみましょう。

なお、例文中の甲は会社、乙は退職者・従業員を示しています。

 

<離職理由>

第○条 甲乙は、本件に関し、雇用保険の離職証明書の離職事由は、○○○○であることを確認した。

雇用保険の離職理由は、会社(事業主)と退職者(離職者)のそれぞれが、離職票・離職証明書に具体的事情を記入し、所轄のハローワーク(公共職業安定所)が判断します。

会社と退職者とで離職理由の申し合せをしても、ハローワークがこれに拘束されるわけではありません。

あくまでも具体的事情に基づいて判断されます。

したがって、事実と異なる申し合せは無効となります。

たとえ話ですが、自己都合の退職者が、雇用保険の手続担当者に「5万円あげるから会社都合にして」と依頼し、手続担当者がこれを承諾して会社都合の離職票を作成したら、失業手当(求職者給付の基本手当)を不正受給することになりかねません。

こうしたことが許されないのは明らかです。

 

<守秘義務1>

第○条 乙は、在籍中に従事した業務において知り得た技術上・営業上の情報について、退職後においても、これを他に開示・漏洩し、自ら使用しないことを誓約する。

退職者に「他に開示・漏洩しない義務」を負わせることは可能ですが、退職者の頭の中に残っている情報を使用しないというのは不可能なことです。

無意識のうちに使用することは避けられません。

不可能なことを和解の内容に加えてしまうと、全体の信憑性が損なわれてしまいます。

 

<守秘義務2>

第○条 乙は、本合意書の存在及びその内容の一切を厳格に秘密として保持し、その理由の如何を問わず、一切開示又は漏洩しない。

守秘義務に共通のことですが、守秘義務に反して秘密を開示・漏洩してしまった場合のペナルティーが無ければ、実効性を保てないのではないでしょうか。

秘密の開示・漏洩によって会社に実害が発生した場合には、和解契約書の有無とは関係なく、不法行為または債務不履行による損害賠償責任が発生しますので、あえて和解契約書を交わすメリットは見当たりません。

会社側が実害の立証をしなくても、秘密の開示・漏洩があれば、従業員や退職者に一定の違約金を請求できる内容を加えておく必要があるでしょう。

 

<競業避止義務>

第○条 乙は、退職後○年間は、甲と競業する企業に就職したり、役員に就任するなど直接・間接を問わず関与したり、又は競業する企業を自ら開業したり等、一切しないことを誓約する。

退職者にも、憲法で保障された職業選択の自由がありますから、競業避止義務を負わせる場合には、期間だけでなく、地域的な範囲を限定しなければ一般には無効となります。

地域を限定しないで、つまり全世界で禁止ということが合理性を持つのは、ほんの一つまみのグローバル企業の場合だけです。

また、給与への上乗せ、退職金への上乗せなどで、競業避止に対する対価の支払が行われている場合を除き、和解に当たって、競業避止の対価を支払うことが必要です。

退職者には、和解に応じる/応じないの選択権がありますから、会社に都合の良い内容を押し付けることはできないのです。

 

<債権債務の不存在>

第○条 甲乙は、本件に関し、本合意書に定めるほか、何らの債権債務が無いことを相互に確認し、今後一切の異議申し立てを行わない。

和解にこの条項が無いと、紛争のぶり返しがありうるので、最終決着であることを担保するために設けられます。

しかし、従業員と会社との間には労働契約上の債権債務があります。

これが消滅してしまう和解というのは、ありえないでしょう。

また、退職者であっても、退職直後であれば、退職金の支払、健康保険や雇用保険の手続が残っていることがあります。

こうしたものが残っている場合には、例外として盛り込んでおく必要があります。

 

<解決社労士の視点から>

「ひな形」は飽くまでも「ひな形」です。

主体的に考えて、カスタマイズして利用しましょう。

2021/03/08|1,624文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

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<本来は自由な退職勧奨>

「退職勧奨」と「退職勧告」は厳密に区別されず、ほとんど同視されています。

「勧奨」は、勧めて励ますことです。

「退職勧奨」の例としては、「あなたには、もっと能力があると思います。たまたま、この会社が向いていないだけです。他の会社では実力を発揮できるでしょう。退職について真剣に考えてみてください」といった内容になります。

「勧告」は、ある事をするように説いて勧めることです。

「退職勧告」の例としては、「入社以来ミスが多いことは、あなた自身も残念に思っているでしょう。まわりの社員も、ずいぶん親切に丁寧な指導をしてきましたが、これ以上はむずかしいと思われます。退職を考えていただけますか」といった内容になります。

このように、退職勧奨(勧告)は、会社側から社員に退職の申し出をするよう誘うことです。

これに応じて、社員が退職願を提出するなど退職の意思表示をして、会社側が了承すれば、労働契約(雇用契約)の解除となります。

退職勧奨(勧告)を受けた社員が、実際に退職の申し出をするかしないかは、本来は完全に自由なのですが、職場の慣習などにより、心理的に断り切れないこともあります。

 

<不当解雇となる場合>

このように退職勧奨(勧告)は、社員の意思を拘束するものではありません。

したがって、会社が自由に行えるはずのものです。

しかし、本人がキッパリと断った後も退職勧奨を続ける、長時間の退職勧奨を繰り返す、家族に働きかけるなど社会的に相当な範囲を逸脱した場合には違法とされます。

違法とされれば、退職が無効となりますし、会社に対して慰謝料の支払請求が行われることもあります。

会社から社員に退職勧奨を行い、これに快く応じてもらって円満退職になったと思っていたところ、代理人弁護士から内容証明郵便が会社に届き、不当解雇を主張され損害賠償請求が行われるということは少なくありません。

 

<詐欺を理由とする退職の意思表示の取消>

詐欺による意思表示は取り消すことができます。〔民法第96条第1項〕

詐欺を理由に退職の意思表示が取り消される場合としては、次のようなものが挙げられます。

・「会社の経営状況が思わしくなく、来月以降、給与の支払を約束できない」などの説明を受けたため、退職の意思表示をしたが、そこまで経営が悪化している事実は無かった場合。

・大規模なリストラを予定しているとの説明を信じ、退職の意思表示をしたが、リストラは行われず、むしろ新規採用が積極的に行われている場合。

・「自主的に退職願を提出しなければ懲戒解雇となる」という説明を信じ、退職願を提出したが、懲戒解雇に該当するような事実は無かった場合。

これらの場合に、詐欺罪〔刑法第246条〕が成立しなくても、民法上は詐欺を理由とする意思表示の取消によって、退職の申し出が無かったことになるのです。

 

<強迫を理由とする退職の意思表示の取消>

強迫による意思表示も取り消すことができます。〔民法第96条第1項〕

強迫を理由に退職の意思表示が取り消される場合としては、次のようなものが挙げられます。

・大声を出したり、机を叩いたりしながら、パワハラ発言を交えて退職を迫られた場合。

・狭い会議室で、多数の社員に取り囲まれて退職勧奨された場合。

・休日に突然、自宅に押しかけてきて、退職を勧める話をされた場合。

これらの場合に、脅迫罪〔刑法第222条第1項〕が成立しなくても、民法上は強迫を理由とする意思表示の取消によって、退職の申し出が無かったことになるのです。

ちなみに、刑法では「脅迫」、民法では「強迫」です。

 

<解決社労士の視点から>

退職勧奨(勧告)は、会社が自由に行えるとは言うものの、客観的に合理的な具体的理由が説明できない場合には、トラブルに発展する可能性が高いですから、行うべきではないのです。

むしろ、普通解雇を通告できるケースで、やんわりと退職勧奨(勧告)を検討するくらいの慎重さがあっても良いでしょう。

2021/02/14|766文字

 

YouTube被保険者 被扶養者「被」とは?

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<健康保険証の効力>

会社で交付された健康保険証は、退職したり所定労働時間が減ったりして、健康保険の加入条件を満たさなくなると効力を失います。

この場合、保険証は会社を通じて協会けんぽなどの保険者に返却しなければならないのですが、たとえ手元に残しておいたとしても使えません。

乾電池は電池切れの状態になっても、新品の電池と見た目は変わりがないのですが使えません。

これと同じように、退職後に保険証を使うことはできません。

このことは、扶養家族が扶養から外れた場合の、その扶養家族の保険証にも当てはまります。

 

<効力切れの保険証を使うと>

退職後に誤って保険証を病院などの医療機関で使ってしまうと、後日、健康保険で支払われた医療費を、協会けんぽなどの保険者から資格を失った人に直接返還請求しているのです。

繰り返し請求されても返還しない場合は、裁判所へ支払督促申立てや少額訴訟等の法的手続を経て、強制執行(給与、預貯金等の差押え)による回収が行われます。

この場合、返還請求の対象となるのは自己負担額ではなくて医療費の全額です。

たとえば、5万円の医療費について自己負担3割で1万5千円を支払った場合に、返還請求を受けるのは1万5千円ではなくて5万円ということになります。

 

<返還請求の実態>

健康保険の資格喪失後、保険証を返却せずに医療機関等で使用して、協会けんぽから返還請求を行っているケースが全国で発生しています。

資格を失ったら速やかに保険証を返却しましょう。

 

<解決社労士の視点から>

無効な保険証を使って治療を受けるのは、一種の詐欺です。

こうした不正なことをする人がいれば、保険料も上がってしまいます。

経済的な理由から、医療費の支払が困難な人に対しては、様々な救済措置が採られます。

困ったときは、総合病院の窓口、市町村役場などに相談してください。

2021/01/15|797文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

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<労働基準法の規定>

労働基準法は、その第5条で強制労働を禁止し、次の罰則規定を置いています。

 

第百十七条  第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

 

<強制労働の意味>

「今どき強制労働なんて」と思われてしまうかもしれません。「強制労働」というと、ピラミッド建設に駆り出される奴隷のようなイメージを抱いてしまうのでしょう。

しかし、労働基準法の規定を見ると、次のように書かれています。

 

(強制労働の禁止)

第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

 

ここにいう不当に拘束する手段には、長期労働契約(第14条)、労働契約不履行に関する賠償予定(第16条)、前借金相殺(第17条)、強制貯金(第18条)などがあります。〔昭和63年3月14日基発第150号通達〕

ここで、カッコの中の「〇条」は、労働基準法の条文を示しています。

 

<辞めさせてくれない会社>

自分の勤務先がブラック企業であることに気づき、退職を申し出たけれども辞めさせてもらえないという労働相談が増えています。

辞めさせてもらえないというのは、具体的には「辞めるなら違約金を支払え」と本人や身元保証人に迫るようです。

これなどは、労働基準法第16条の「労働契約不履行に関する賠償予定」があることを示していて、「退職するな!働き続けろ!」というわけですから、強制労働の禁止に違反していると思われます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

法律の世界は、法律のことを知っている人の味方です。

法律のことを良く知らない人は、良く知っている人を味方に付けて身を守りましょう。

労働関係法令についていえば、信頼できる社労士を味方に付けるのが安心です。

不安に思うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/10|1,222文字

 

YouTube労働条件を確認しましょう

https://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<具体的なトラブル>

円満退社のパート社員が、退職にあたって会社に退職金の支払を請求する、あるいは、退職後に請求するということがあります。

もちろん、パート社員にも退職金を支払うルールなら問題ないですが、会社が支払わないつもりだったならトラブルになります。

 

<就業規則が1種類しか無い場合>

社員が10人以上になったときに会社の就業規則が作成され、そのときは正社員しかいなかったのに、やがてパート社員も働くようになっていたとします。

この場合には、将来パート社員も入社してくることを想定して、就業規則が作成されているとは限りません。

つまり、正社員用の就業規則しか無い状態になりうるのです。

あるいは、就業規則のひな形をそのまま引用して「パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する」という規定を置きながら、別に定める規則を作っていなければ、パート社員にも正社員用の就業規則が適用されます。

こうして法的には、パート社員にも正社員と共通の唯一の就業規則が適用され、会社に退職金の支払義務が発生するのです。

 

<社員の定義が無い場合>

就業規則に「正社員に退職金を支給する。パート社員には退職金を支給しない」という明確な規定があったとします。

それでも退職するパート社員から「私は残業もしたし、休日出勤もしました。この会社は賞与が出ないけど、誰ももらっていないから我慢しました。でも、退職金が出ないなんておかしいです。私は正社員として働いてきました」と主張されたら、会社は就業規則に示された正社員の定義とパート社員の定義を説明して切り抜けなければなりません。

しかし、就業規則に「正社員とは…」「パート社員とは…」という定義が定められていなければ、説明のしようがありません。

「何となくわかるでしょ」というレベルなら、労働者に有利な解釈がとられるのが労働法の世界です。

結局、会社が退職金の請求を拒むことは困難です。

 

<労働条件通知書に「退職金無し」と書かれている場合>

労働条件通知書、雇用契約書、労働契約書などの名称で、個人ごとに労働条件が通知されています。

ここに「退職金無し」と書かれている場合でも、労働契約法に次の規定があります。

 

(就業規則違反の労働契約)

第十二条  就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

 

つまり、就業規則には「退職金あり」と書いてあって、労働条件通知書などに「退職金無し」と書かれていたら、労働者に有利な「退職金あり」が有効になるということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

退職金一つをとっても、法的に争われたら会社が負けてしまうことがあります。

就業規則にトラブルの火種を残さないよう万全を期すため、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/04|984文字

 

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<残業時間の繰越>

建設業で働くある男性が、月80時間を超える時間外労働をしたのに、将来代休を取る予定にしてその時間分を差し引くことで、80時間未満と申告していました。

この方法は、この職場で長年の慣習だったようです。

本来、適法な三六協定を交わし、かつ、所轄の労働基準監督署長への届出をしていなければ、法定労働時間を超える残業は、たとえ1分間でも違法です。

 

<違法な慣習の発生メカニズム>

社内のある部門で、会社のルール通りにやっていては上手くいかないときに、その部門の部長や事業部長などが「いいこと考えた」とばかりに、少しルールを曲げて運用し、上手くいったつもりになってしまうことがあります。

これが会社目線の素人判断であり、労働法の中のある法令のある規定に違反して違法であったとしても、偉い人の言うことには逆らえませんから、これがその部門での新たな慣習として定着してしまうのです。

もし「いいこと考えた」のが社長であれば、人事部門の責任者も逆らえない可能性があります。

 

<違法な慣習の例>

違法な慣習は、一部の部門だけでなく会社全体に蔓延していて、就業規則に違法な規定が置かれていることもあります。

所轄の労働基準監督署は就業規則の届を受付けているわけですが、細かいチェックまではできないのです。

違法な慣習としては、次のような例があります。

・正社員には年次有給休暇を取得させない。

・臨時アルバイトには労災保険を適用しない。

・軽いケガであれば労災にも健康保険証を使わせる。

・妊娠したら退職するルールがある。

・日給制、年俸制で残業手当を支給しない。

・その日の仕事が終わった時点が終業時刻としている。

・会社で決められた制服への着替え時間が勤務時間外とされている。

・遅刻に対する「罰金」の定めがある。

・会社の備品を壊すと新品を弁償させられる。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

今日までは何事も起こらなくても、明日には事件が起きてマスコミが大々的に報じ、違法な慣習があったことについて深く反省させられるかもしれません。

たとえば、国が少子高齢化対策を強化している今、「パパママ育休プラス」「子の看護休暇」を知らない経営者の方は、基本的なことだけでも確認しておくことをお勧めします。

面倒でしたら、信頼できる社労士を顧問に置いておくという手もありますので、お近くの社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/07|1,385文字

 

<退職者からの文書>

退職者から会社に宛てて、様々な主張、要求、金銭的請求などが書かれた文書が郵送されてくることがあります。

代理人弁護士名義で届いた文書であれば、退職者が弁護士に相談し、弁護士が退職者の委任を受けて発信していますから、事実関係の認定は不確かなものの、退職者の主張する事実を前提とした法的主張の部分は正当なはずです。

しかし、退職者が自分自身の想いで作成し、会社に対して主張をぶつけてきた文書は、かなり主観に傾いたものであることが多く、その趣旨が不明確なことも多いものです。

大企業では、こうした文書の内容に対して寛大な態度がとられることもあり、言った者勝ちの不公平が発生する恐れがあります。

一方で、中小企業の経営者は立腹し、その内容を全否定しようとする危険があります。

 

<退職者の心境>

毎日のように出勤し、余計なことを考えずに生活していたところ、退職して自分の時間を持て余すようになった退職者は、あれこれと余計なことを考える傾向にあります。

思いを巡らせるうちに、ネットサーフィンで得た不確かな情報を拡大解釈、類推解釈して、会社に物申したくなることもあります。

転職先の決まっている退職者や、事業を立ち上げる準備を開始した退職者は、毎日が忙しく充実していますから、余計なことを考え、ネットでつまらない情報を探索する時間はありません。

会社に文書を送りつけてくる退職者は、次の仕事が決まっていない場合が多いのです。

すぐに転職先が決まるつもりでいたところ、なかなか決まらないとなれば、精神的にも経済的にも追い詰められてきますから、会社に金銭的請求をしようと考えても不思議ではありません。

 

<会社に対する主張>

在職中に、大変な目に遭っていたという主張は多く見られます。

セクハラやパワハラのような嫌がらせがあったという、不平・不満・恨みが支離滅裂に書き連ねられているのです。

その中に、一部感謝の気持が述べられていることもあります。

感情を爆発させたいという欲求を満たしているかのような文書となります。

文書に対する回答は、文書で行うのが社会のルールです。

しかし、ただ単に感情をぶちまけているだけの文書であれば、これに文書で回答するのは、冷たくあしらっているように受け取られます。

人事部門の担当者などが直接面会して親身になって話を聞くのが良いでしょう。

そして、職場環境の改善に努めたいという話をすれば、納得して帰ることが多いものです。

 

<会社に対する要求>

具体的な根拠となる事実関係の主張がなく、ただ単に金銭を要求している内容であれば、「事実関係と計算根拠を示して請求してください」という内容の文書で回答すれば良いでしょう。これに対して、それなりの根拠を示したうえで、会社に対する謝罪の要求や、未払い賃金の請求、慰謝料などの賠償請求を含む内容であれば、文書の中に記された事実関係を確認する必要があります。

会社から回答する文書の内容としては、会社が認定した事実関係と会社の見解の2点に限られます。

回答するまでの期間が長くなってしまうと、退職者が労働基準監督署などに相談して、余計な労力と時間を費やす結果を招くことになりかねませんので、事実関係の確認は、なるべくスピーディーに行いましょう。

退職者の主張する事実関係が信じられないからといって、放置することだけは避けなければなりません。

 

解決社労士

2020/09/07|1,481文字

 

<同一労働同一賃金>

働き方改革関連法の一環で、令和2(2020)年4月から同一労働同一賃金への対応が求められています。〔パートタイム・有期雇用労働法〕

なお、中小企業では1年遅れの令和3(2021)年4月の施行となります。

同一労働同一賃金は、退職金もその対象となります。

パート社員にも、正社員と同様の退職金を支給しなければならないということではなく、各企業で退職金を支給する趣旨との関連から、パート社員にも正社員と同じ基準で支給しなければならない場合、異なる基準で支給すれば良い場合、支給しなくても良い場合に分かれます。

いずれの場合でも、パート社員から正社員との処遇の違いの理由を問われたなら、会社は明確に説明する義務を負っています。

説得力をもって、きちんと説明できない場合には、訴訟トラブルに発展するリスクがありますから、具体的なQ&Aを作成するなど、十分な準備が必要となります。

 

<退職金を支給する理由>

退職金を支給する企業は、全体の約8割といわれます。

企業が退職金を支給する一般的な理由としては、賃金の後払い、退職後の生活保障、企業責任、企業慣習、手切れ金、独立資金、功労報償、成果配分など様々なことが言われています。

しかし、就業規則や退職金規程に退職金を支給する具体的な理由が明示されているのは、むしろ少数派ではないでしょうか。

企業の説明義務との関連から、退職金を支給する理由については、就業規則や退職金規程に規定しないまでも、明確にしておく必要はあります。

 

<同じ基準で支給すべき場合>

退職金の支給理由を、退職後の生活保障、独立資金、成果配分などとした場合には、正社員も非正規社員も、同じ基準で支給しなければならないように思われます。

正社員だけに退職金を支給している場合や、正社員と非正規社員とで退職金の支給基準を異にする場合には、合理的な納得のいく説明をするのが、難しいかも知れません。

 

<異なる基準で支給しても良い場合>

退職金の支給理由を、賃金の後払い、企業習慣、功労報償などとした場合には、正社員と非正規社員とで、異なる基準で支給しても良いように思われます。

しかしこの場合でも、退職金の支給基準が適正であることの説明は、難しいかも知れません。

 

<支給しなくても良い場合>

たとえば、正社員だけ退職金積立金が給与や賞与から控除されている場合などが想定されるのですが、非正規社員が希望した場合にも、退職金積立金の制度が適用されないことの合理的な説明は難しいでしょう。

訴訟トラブルとなった場合に、制度の合理性を説明するのは、かなり困難だと思われます。

少額でも、退職一時金などを支給するのが無難だと考えられます。

非正規社員だけに退職金が全く支給されないのであれば、裁判所は不合理であると判断しやすくなります。

しかし、少額でも支給されている場合には、裁判所が支給基準や支給額の差を不合理であると判断しにくいものです。

なぜなら、支給額の差がどこまで縮まれば合理的といえるかは、非常に難しい判断となるからです。

 

<過去からの習慣との断絶>

「昔からこれでやっている」では済まされなくなりました。

退職金については、支給の趣旨から問われるようになりましたし、退職金を支給する理由が不明確であれば、他の制度との整合性を保ちつつ明確にする必要があります。

何となくではなく、納得のいく説明が求められるようになりました。

「あなたはパートだから」というあやふやな説明が許されなくなったのです。

正社員と非正規社員の処遇の差について、根本から考え直す必要があるということです。

 

解決社労士

2020/07/31|1,661文字

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、従業員の退職について、次のように規定しています。

 

【退職】

第50条  前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。

 ①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき

 

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、労働契約の合意解除がなされたことになります。

この場合には、即日退職ということもあります。

これに対して、従業員が「退職願を提出して  日を経過したとき」は、会社側が退職の申し出を拒んだとしても、一定の日数の経過により労働契約が解除されるわけですから、従業員から会社に対する一方的な契約解除ということになります。ここでは、「退職願」と言っていますが、「退職届」「辞職届」と呼んだ方がふさわしいでしょう。

結局、会社に退職願が提出されて会社が承認すればその時点で、会社が承認しなくても規定の日数が経過すれば退職の効果が生じることになります。

 

<民法改正と就業規則>

正社員など期間の定めのない雇用の場合、従業員はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

これには、月給者の場合の例外がありました。

月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日がたとえば20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要がありました。〔改正前の民法第627条第2項〕

令和2年4月1日からは、民法改正により、このルールが使用者側だけに適用されることとなり、労働者側には適用されなくなりました。

 

【改正後の民法第627条第2項:期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 

つまり、従業員からの退職の申出について、月給者の場合の例外が無くなったことになります。

就業規則は古いままで、「退職願を提出して30日を経過したとき」あるいは「退職予定日の30日以上前に退職願を提出」などと規定されていることもありますが、民法が就業規則よりも労働者に有利な部分は、民法が優先されます。

結局、正社員など期間の定めのない雇用の場合、従業員はいつでも退職を申し出ることができ、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

この原則について、月給者の場合の例外が無くなったということです。

ですから、就業規則は「遅くとも退職予定日の14日前までに退職願を提出」という規定にしておいて、早めの退職願提出を「お願い」し、退職希望者の会社に対する配慮に期待するしかないのです。

 

<実務への影響>

月給制の正社員の場合、退職申し出のタイミングにかかわらず、給与の締日に退職というのが一般的でした。

法改正により、退職日がバラバラになり、就業規則(給与規程)に欠勤控除についての明確な計算方法が無いと困ることになります。

業務の引継ぎについても、引継ぎ期間は「最低でも2週間」だったのが、「原則として2週間」になってしまいました。

突然の退職にも対応できるよう、普段からマニュアルを利用した業務遂行と業務改善を当たり前にしておきたいところです。

また、退職時のルールや異動の場合を含めた引継ぎのルールも、具体的に定めて正しく運用することで、生産性の低下を防止しましょう。

もっとも、従業員が「退職を願い出て会社が承認」という合意退職については、上記のような問題が発生しません。

労使の関係を良好に保ち、「退職」と言えば「合意退職」を意味するような状態にしておくのが理想でしょう。

 

解決社労士

2020/05/19|968文字

 

<退職勧奨の法的性質>

新人を採用する場合には、会社が求人広告を出し、求職者が応募します。

そして、採用面接などを経て会社が採用を決めます。

この流れの中では、求職者の応募が労働契約の申し込みであり、会社の採用決定が労働契約の申し込みに対する承諾です。

こうして労働契約が成立します。

求人広告は、労働契約の申し込みを誘っている広告で、法的には「申し込みの誘因」とされます。

同じように、希望退職者を募って社内に告知し、退職希望者が退職の申し出をして、会社が承諾すれば、労働契約の合意解除による退職が成立します。

このとき、希望退職者募集の社内告知は、退職の申し出を誘っているので、法的には「申し込みの誘因」とされます。

この退職の申し出を誘う相手が多数の社員ではなく個人であれば、退職勧奨ということになります。

退職勧奨は、求人広告と同じように、相手が申し込むかどうかが完全に自由です。

 

<退職勧奨が問題となるケース>

このように退職勧奨は、本来、会社が自由に行えるはずのものですが、社会的に相当な範囲を逸脱した場合には違法とされます。

違法とされれば、退職が無効とされたり、会社から退職勧奨を受けた社員に対する慰謝料の支払い義務が発生したりします。

 

<安全な退職勧奨>

退職が無効とされたり、慰謝料が発生したりのリスクが無い退職勧奨とは、次のようなものです。

・1人の社員に対して2名で行う(1対1で退職勧奨を行うのは、セクハラなどを主張される恐れがあるので避けます)。

・パワハラ、セクハラなど、人格を傷つける発言はしない。

・大声を出したり、机をたたいたりしない。脅さない。だまさない。

・長時間行わない。何度も繰り返さない。

・きっぱりと断られたら、それ以上の退職勧奨は行わない。

・他人に話を聞かれる場所で行わない。明るく窓のある個室が望ましい。

・家族など本人以外の人に働きかけない。

結局、本人の自由な本心による退職の申し出が必要なので、後になってから本心ではなかったとか、脅された、だまされたなどの主張がありえない退職勧奨であることが必要となります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社としては何とかして辞めてもらう必要を感じていて、退職勧奨にあたる社員も熱くなりがちです。

冷静さを求められる局面でこそ、信頼できる社労士にご相談いただきたいものです。

 

解決社労士

2020/04/07|531文字

 

<賠償予定の禁止>

会社の就業規則で、研修の費用を労働者の負担とし、一定期間勤続せずに退職した場合には、返還するものと定めていることがあります。

しかし労働契約を結ぶ際に、契約違反があったときの賠償額を決めておくことは、人身拘束につながるとして禁止されています。〔労働基準法第16条〕

通常の業務のために行われる教育訓練や、通常の新人研修や社内研修として実施される教育訓練について、退職時の費用返還を定めておくことは、この規定に違反する可能性があります。

 

<返還請求が認められる場合>

ところが裁判の中には、返還請求が認められた例もあります。

たとえば通常の業務と直接の関係がない研修であって、もともと本人が支出すべき内容の研修費用を、会社が一時的に立て替えたに過ぎない場合です。

希望者を募って海外の大学院へ留学させた例で、費用を会社が貸し付けた形をとり、一定の年数の勤続によって返済を免除するという事例で、退職者への返還請求を認めた裁判例があります。

実際に返還請求が認められるためには、返済金額や返済方法などから客観的に見て退職の自由を奪うものではないこと、返還について事前に十分な説明が尽くされていて合意があったことなど、厳格な条件を満たしていることが必要になります。

 

解決社労士

2020/03/16|1,240文字

 

<初期対応>

まず電話をかけます。

1~2回電話をかけて出ないからといって、「音信不通」扱いにはできません。

家族と同居しているのなら、固定電話や家族の電話にもかけてみます。

何回も電話をかけて出ないようなら、職場の部門長などが自宅を訪問します。

自宅の玄関先で、人の気配が無く電気のメーターがほとんど動いていないような状態であれば、中で社員が倒れている可能性もあります。

賃貸物件であれば、大家さんや管理会社にも連絡して、中の様子を確認してもらいましょう。

こうして不在が確認された場合には、実家などの連絡先や、職場で仲良くしている社員に心当たりを聞いてみるなどが必要です。

 

<所在不明の場合>

会社側に、その社員がパワハラを受けていたなどの落ち度が無く、本人が出勤して来ないのなら、自己都合退職で処理できないものかと思えてきます。

しかし、本人が何か事故や事件に巻き込まれていて、出勤できず連絡もとれなかったことについて責任が無い場合には、会社の対応が十分だったかという問題が発生します。

ですから、後に紛争とならないよう十分な配慮が必要です。

そして、本当に紛争となった場合には、会社として十分な対応をしたことの証明が必要となります。

こうした場合に備えて、電話連絡の日時の記録は重要です。

時間帯を変えて、何回も電話することとその記録を残すことが必要です。

自宅を訪問した際の記録も正確に残しておきましょう。

 

<退職扱いの可能性>

本人からの申し出が無く、会社から退職扱いにするのであれば「解雇」になります。

解雇の場合には、会社から社員に解雇を通告しなければなりません。

音信不通であれば、簡単には解雇の通告ができませんし、社員が未成年者でなければ、家族が代理人として解雇の通告を受けるわけにもいきません。

こんなときは、就業規則の中に自動退職(自然退職)の規定があれば、それに従って退職扱いとすることもできます。

「30日間以上にわたって音信不通で欠勤が続いている場合には退職とする」というような規定です。

 

<万一に備えて>

新人の採用にあたっては、本人の連絡先だけではなく、実家や家族など緊急時の連絡先を確認しておく必要があります。

就業規則に自動退職(自然退職)の規定を置き、社員に周知しなければなりません。

店長など部門長には、社員が出勤して来なくなった場合の対応マニュアルを渡して、教育しておくことも必要です。

 

<連絡がとれた場合>

単なる寝坊なら笑って許せます。

しかし、パワハラ、セクハラ、うつ病など、本人がすぐには言い出せない原因が潜んでいることもあります。

突然出勤しなかったという事実があれば、それを重く受け止め、人事担当者はその後の様子について、きちんとフォローしていく必要があります。

 

新人採用前後の手続も、就業規則の作成や改善も、例外的な退職手続も、すべて社労士が専門家として対応する職務です。

万一に備えての準備も、トラブルに発展しうる事実が発生したときにも、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、従業員の退職について、次のように規定しています。

 

【退職】

第50条  前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 

①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき

 

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、労働契約の合意解除がなされたことになります。

これに対して、従業員が「退職願を提出して  日を経過したとき」は、会社側が退職の申し出を拒んだとしても、一定の日数の経過により労働契約が解除されるわけですから、従業員から会社に対する一方的な契約解除ということになります。ここでは、「退職願」と言っていますが、「退職届」「辞職届」と呼んだ方がふさわしいでしょう。

結局、会社に退職願が提出されて会社が承認すればその時点で、承認しなくても定められた日数が経過すれば退職の効果が生じることになります。

 

<退職承認後の退職日変更>

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、この時点で労働契約の合意解除が成立しています。

ところが、早く転職先に入社したい、早く失業手当(雇用保険の基本手当)をもらいたいなどの理由から、従業員が退職願に記した退職日よりも早く退職したくなることもあります。

また、転職先から内定の取消を受けたり、思うように転職先が見つからなかったりすれば、退職願の退職日よりも遅く退職したくなることも、退職を撤回したくなることもあります。

こうして、従業員側から「退職日を早めたい」「退職日を遅らせたい」「退職を撤回したい」という要求が出たとしても、会社はこれに応じる義務がありません。労働契約の合意解除は既に成立しているからです。

しかし、会社がこれに応じることは自由ですし、退職願の退職日とも従業員の退職希望日とも異なる新たな退職日を合意して決定することもできます。

こうしたことは、一般には就業規則に規定されていないのですが、労働契約の合意解除も、合意による変更も、労働基準法などに規制する規定が無いので、契約自由の原則から当然に認められることなのです。

 

<民法と就業規則>

正社員など期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

なお、月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日がたとえば20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります。〔民法第627条第2項〕

実際の就業規則には「退職願を提出して30日を経過したとき」あるいは「退職予定日の30日以上前に退職願を提出」などと規定されていることもありますが、退職希望者から民法の規定を持ち出されると反論できません。

「遅くとも退職予定日の14日前までに退職願を提出」という規定にしておいて、退職希望者の会社に対する配慮に期待するしかないのです。

 

2019.10.12. 解決社労士 柳田 恵一

<不当解雇>

解雇権の濫用となる場合には、会社側から労働者に解雇を通告しても、解雇が無効となり、その結果、労働契約は解消されず、賃金や賞与の支払い義務は継続しますし、労働者に精神的な損害を与えていれば、慰謝料請求の問題ともなります。

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

<不当辞職>

労働者から会社に辞職(退職)を申し出たとしても、すぐに退職の効果が発生するとは限りません。

すぐに退職の効果が発生する場合として、労働基準法には、明示された労働条件が事実と相違する場合の規定があります。〔第15条第2項〕

 

【労働条件の明示】

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

○2 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

しかし、これは例外的な場合であって、一般には、労働者から辞職の意思を表明しても、すぐには退職の効果が発生せず、実際に退職の効果が発生するまでは、労働者は働く義務を免れません。

それにもかかわらず、職場を放棄してしまっては、債務不履行となりますし、場合によっては不法行為となることもありえます。

こうした状態を、ここでは「不当辞職」と呼びたいと思います。

 

<急な退職でも通常は損害賠償の対象ではない>

労働者が急に退職したからといって、これを理由に、会社から労働者に対して損害賠償を請求できるわけではありません。

退職そのものは、違法でも不法でもないからです。

一般に、退職者が発生した場合でも、会社が代替要員を手配して支障が出ないようにします。損害が発生することは稀なのです。

また、採用後すぐに退職した場合であっても、採用にかかった費用を、会社の損害と見ることはできません。採用後すぐの退職でも、勤続20年の社員が退職する場合でも、その人を採用するのにかかる費用に大きな違いはありません。そして、どれだけの費用をかけるかは会社の判断に任されていますから、労働者の意思が反映されてはいません。

勤続20年の社員が退職するにあたって、会社から採用時の費用を請求することが無いのと同様に、採用後すぐ退職した社員に対しても費用を請求することはできません。

法的には、退職と採用の費用との間に、相当な因果関係が無いと表現されます。

これらの事情は、退職者の後任を採用する場合の費用についても同じです。

 

<不当辞職となりうるケース>

不当辞職が発生しうるのは、労働者が辞めたつもりで、労働契約が解消していない場合です。

まず、無期雇用の労働者が会社に辞職を申し出た場合、その後、2週間は労働契約が継続します。〔民法第627条第1項〕

また、月給制の場合には、賃金の締日の2週間以上前に辞職を申し出て、賃金の締日まで労働契約が継続することになります。もし、賃金の締日まで2週間を切っているときに辞職を申し出たなら、さらに次の賃金の締日まで労働契約が継続します。〔民法第627条第1項〕

 

【期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

 

さらに、有期労働契約の場合には、やむを得ない事由が無いのに辞職を申し出ても、本来の契約期間の間は労働契約が継続します。〔民法第628条〕

 

【やむを得ない事由による雇用の解除】

第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

こうして、労働者が会社に対して辞職の意思を表明した後、労働契約が継続している間に出勤しなければ、労働者の債務不履行が発生しますから、「不当辞職」となるわけです。

 

<債務不履行による損害の発生>

特殊技能をもった労働者を採用し、手作り商品の注文を受けていたのに、不当辞職により必要な数量の商品が製造できなくなった場合には、少なくとも欠勤した間に製造出来たはずの商品が製造できなかったことによる損害は、明らかに発生しています。

この場合に、同様の特殊技能をもった労働者を容易に補充することは困難でしょうから、簡単に会社が代替要員を手配することはできないのです。

 

<不法行為による損害の発生>

結婚式場にウエディングケーキを運搬中の労働者が、突然行方をくらまし、会社に辞職の意思を伝えたような場合には、単なる債務不履行を超えて、不法行為が発生しています。

労働者の故意または過失によって、結婚式の新郎新婦他、多くの人々に損害を与えていますし、会社の信用を喪失させています。

こうした場合には、懲戒解雇の対象ともなりうるわけですが、不法行為を理由として会社から労働者に損害賠償を求めることになるでしょう。

 

<損害額が算定しがたい場合>

不当辞職によって損害が発生した場合に、不当辞職と損害発生との因果関係が明らかであっても、会社が損害額を立証することが困難なケースは多いものです。

しかし民事訴訟法には、損害額の認定について次の規定がありますので、訴訟という手段を利用してでも賠償請求を行うべきだと考えます。

 

【損害額の認定】

第二百四十八条 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

 

2019.08.29. 解決社労士 柳田 恵一

<よくある計算方法>

就業規則のひな形によくあるパターンですが、中小企業では、退職時の基本給に勤続年数に応じた係数をかけて、退職金の金額を算出することが多いようです。

これだと若いころ、あるいは働き盛りのころの基本給は関係なく、退職間際になってから頭角をあらわし大きく昇給した人が有利です。

反対に、若いころに大変な努力をして出世し、基本給も役員並みになったあと、働きすぎて体を壊し基本給が大幅にダウンして退職していった社員は、報われないということになってしまいます。

 

<退職功労金>

退職金については、基本給 × 係数 で一律に支給し、これとは別に、個人の会社に対する功績の度合いに応じた退職功労金を支給するというのが、もっとも単純なやり方でしょう。

ただし、これだと金額を客観的に決めるのは難しいでしょうし、その時々の会社のふところ具合に大きく左右されそうです。

 

<ポイント制>

たとえば、毎年4月に支給する基本給1か月分の累計を、退職金の金額にすることも考えられます。しかし、物価の変動が大きいと不公平になる可能性もあります。

そこで、担当者は1ポイント、係長は2ポイント、課長は3ポイント、部長は5ポイントなどと、1か月間在籍すると累計されるポイントを決めておき、物価の変動を踏まえて、1ポイントいくらにするという方式もあります。

 

<退職金の性格>

退職金の性格として、退職後の生活保障的性格、賃金後払い的性格、功労報償的性格があげられます。

このうち、退職後の生活保障は在籍中に給与・賞与に応じた厚生年金保険料を支払っていて、老後の年金額に反映されると考えれば、重視しなくてもよいでしょう。

また、賃金後払い的性格については、終身雇用制の崩れた現在では、退職までプールしておかないでタイムリーに給与・賞与に反映してほしいという社員の本音があります。

こう考えると、退職金のメインの性格は、功労報償的性格でしょうから、退職金を会社に対する功績の度合いで決めるというのは、合理的であると考えられます。

 

2019.07.31. 解決社労士 柳田 恵一

<遺族からの退職金請求>

あと2年で定年退職という社員が、急病で亡くなりました。会社から多くの社員が葬式に参列しました。ただ泣くばかりの奥様が気の毒でした。

後日、就業規則の規定に従い、奥様名義の銀行口座に退職金が振り込まれました。

それから半年後、亡くなった社員の息子さん2人が会社にやってきて、退職金を請求します。会社としては、もう退職金は支払い済みと思っていたところ、奥様とは別の相続人2人があらわれたのです。確かに、法定相続分は、奥様が半分、息子さんは4分の1ずつです。彼らは、母親とは仲が悪く10年以上会っていないのだそうです。それで、自分たちの取り分である退職金の4分の1ずつは、直接自分たちに支払えということなのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条 退職金は、支給事由の生じた日から  か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

<注意書きを見ると>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

退職金の支払方法、支払時期については、各企業が実情に応じて定めることになります。

労働者が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

 

もっともよく使われているひな形なのですが、どうやら今回のようなケースには対応できていないようです。

ですから、専門家ではない人が、就業規則のひな形だけを頼りに自分の会社の就業規則を作ると、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうしてカスタマイズ>

こうした困ったことにならないようにするには、次のような規定にしておけば良いのです。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条

2 死亡による退職のときの退職金を受ける遺族の範囲および順位は、次のとおりとします。

    ・配偶者(内縁関係にある者を含みます)

    ・子

    ・父母

    ・孫

    ・祖父母

    ・兄弟姉妹

3 同順位の者が2人以上ある場合には、その人数によって等分するものとします。

 

「就業規則の適用対象は社員だけだから、何かあったら、そこは話し合いで」という考え方は危険です。特に、社員が退職した後のことや、ご家族にも影響のあることについては、慎重に規定の内容を吟味する必要があるのです。

 

2019.05.30. 解決社労士 柳田 恵一

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<退職金支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに退職金を支給しているのであれば、退職金支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、退職金支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【退職金支払の一般的な理由】

長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、人材の確保・定着を図るため。

 

正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、こうした理由で退職金を支給するのは合理性があります。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに退職金が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに退職金が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者には、賃金の後払い、長年の功労に対する報償として退職金を支給する。

一方、新法対象者であるパート・有期労働者に対しては、退職金が無いことを前提として、退職金引当金に相当する額を賃金に上乗せして支給している。

そのため、職務の内容、職務の内容や配置の変更の範囲、その他の事情が同等であれば、無期・フルタイムの労働者よりも、新法対象者の方が賃金の時間単価が高い。

 

<企業の取るべき対応>

現在のところは裁判でも、「一般論として、長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図るなどの目的をもって無期契約労働者に対しては退職金制度を設ける一方、本来的に短期雇用を前提とした有期契約労働者に対しては退職金制度を設けないという制度設計をすること自体が、人事政策上一概に不合理であるということはできない」とされています。

また、同一労働同一賃金ガイドラインには、退職金についての具体的な記述がありません。

ですから、賃金の時間単価の違いや、勤続年数の実態を踏まえ、正社員など無期・フルタイムの労働者のみに退職金制度を設けることの合理性を検討し、不合理な部分があれば修正する、そして、裁判例の動向を踏まえつつ定期的な修正を行っていくことになります。

しかし、退職金の原資には限りがありますから、一部の従業員の退職金が減るのであれば不利益変更となります。この場合には、個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

長期的な展望に立ち、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2019.05.25. 解決社労士 柳田 恵一

<退職金倒産>

少し昔のことですが、企業が定年退職者の退職金を支払うことによって、倒産するという現象が生じました。

これは、第二次世界大戦直後の1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれた団塊の世代と呼ばれる人たちが、一斉に定年を迎えて退職することになり、企業が一度に多額の退職金を支払うことになったため、資金繰りができなくなって倒産したのでした。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の額)

第53条 退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。

 

勤続年数

支給率

5年未満

1.0

5年~10年

3.0

10年~15年

5.0

15年~20年

7.0

20年~25年

10.0

25年~30年

15.0

35年~40年

20.0

40年~

25.0

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文によれば、たとえば勤続23年で退職する人の退職時の基本給の額が40万円であれば、40万円×支給率10.0=400万円というように、簡単に計算することができます。

しかし、同い年の人がたくさんいて、同時に定年退職すれば、同時に退職金の支払いが生じます。企業によっては、これに耐えられない場合もあるでしょう。

また、基本給30万円、役職手当8万円、資格手当2万円という給与であれば、総支給額は40万円でも、退職金を計算するときに、基本給30万円×支給率となります。

ところが、同じ総支給額40万円でも、40万円すべてが基本給なら、退職金を計算するときは、基本給40万円×支給率となります。

結局、その会社の社員の年齢分布や、給与体系などによって、会社の負担は大きく異なってくるわけです。

 

<注意書きに注意>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

本規程例では、退職金の額の算定は、退職又は解雇の時の基本給と勤続年数に応じて算出する例を示していますが、会社に対する功績の度合い等も考慮して決定する方法も考えられることから、各企業の実情に応じて決めてください。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうして活用>

注意書きにあるように、「各企業の実情に応じて決めて」いれば安心です。

そのためには、規定を考えるときに、充分なシミュレーションをすることです。

現在の社員のうち、1年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、2年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、3年後に定年を迎える人たちの退職金合計額…を計算します。また、新人の入社を想定して、その分も加えます。

こうして、毎年必要な退職金の額を計算してみて、自分の会社に無理の無い金額であればOKです。

退職金の方式は、基本給×支給率というものだけではありません。最近では、ポイントの積み上げ制を導入する会社も増えていますし、全く違うやり方もあります。是非「各企業の実情に応じて決めて」ください。

 

2019.05.21. 解決社労士 柳田 恵一

<突然の退職申し出>

入社2年目のエース社員から、社長に退職願が提出されました。

「今日は16日ですから、月末退職でOKですよね。」と何だかうれしそうです。聞けば大学の先輩を通じて、大手企業にスカウトされたとか。先月結婚したのも転職が決まったからだそうです。

社長としては、辞めてほしくないですし、せめてきちんと引き継ぎを終わらせてほしいです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職)

第50条 前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 

①  退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して14日を経過したとき

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

よく見ると、退職を願い出て「会社が承認したとき」と書いてあります。では、会社が承認しなければ良いのでしょうか。

また、「14」には下線が引かれていますから、これを「100」に修正しても良いのでしょうか。

 

<注意書きに注意>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法(明治29年法律第89号)の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります(民法第627条第1項及び第2項)。

なお、月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日が20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります(民法第627条第2項)。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

特にここでは、労働基準法などではなく、民法の規定がポイントとなります。

 

<引き継ぎのポイント>

きちんと引き継ぎを完了させるには、次のようなことがポイントとなります。

・普段から退職や異動を想定して、短期間で引き継ぎを完了できるようにしておくこと

・退職にあたっては、引き継ぎを完了することが重要な業務であることを、就業規則にも明示しておくこと

・引き継ぎの拒否は、懲戒処分の対象となることを就業規則に規定すること

そして、年次有給休暇の取得を申し出たとしても、会社が時季変更権を行使できないような場合には、権利の濫用としてこれを拒否することが考えられます。ただ、円満に解決するには、年次有給休暇の買い取りも検討したいところです。

 

<突然辞められないためには>

これには地道な努力が求められます。つぎのようなことがポイントとなります。

・社員が自分の将来を思い描ける人事制度の構築(想定キャリアの明確化)

・経営理念の明確化と理解のための教育研修

・会社の魅力の抽出と社員へのアピール

・社員同士のコミュニケーションを密にし維持する仕組みづくり

 

2019.05.17. 解決社労士 柳田 恵一

<会社の損害>

何度も求人広告を出して何十万円もの経費をかけ、採用面接でもそれ相当の人件費がかかり、やっと採用し大事に育ててきた新人から、あっさり「辞める」と言われたら、経営者や採用担当者は「金返せ!」という気持ちになります。

 

さて、この場合の「会社の損害」とは何でしょうか。

 

まず、求人広告にどれだけの経費をかけるかは、会社の判断によるのであって、応募者と相談して決めるわけではありません。

これは、採用面接などについても同じことがいえます。

応募があった時に、「採用します!」と即決ならば、ほとんど経費がかかりません。もっとも、こんないい加減な採用はしないでしょう。

しかし、どれだけ手間暇をかけるかは、会社が判断します。

 

新人を育てるための経費も馬鹿になりません。場合によっては、会社の費用負担で研修に参加させたり、免許を取らせたりと、至れり尽くせりのこともあるでしょう。そうでなくても、上司や先輩が指導するのに人件費がかかったはずだと考えられます。

そうだとしても、これらは会社側の判断で行ったのであって、本人からたっての希望があって行ったというわけではないでしょう。

となれば、応募し採用された本人が認識できない損失についてまで、本人に費用を負担させることはできません。

 

制服も、会社のルールで使うことにしているわけですから、その経費を本人の負担にはできません。

 

こうしてみると、会社に何か特別な損害があったような場合でなければ、損害賠償の請求はできないだろうということは、しろうとにも判断のつくことです。

 

しかし、急に辞めたことにより、予定していた工事の人手が足りなくなり、工事ができなくなったとします。この場合には、発注者の信用を失うだけでなく、業界全体に悪評が流れてしまうかもしれません。こうなると、会社の損害は甚大です。

 

<労働基準法の規定>

損害賠償については、労働基準法に次の規定があります。

 

【賠償予定の禁止】

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

予定した仕事をしないというのは「労働契約の不履行」の一つですから、「入社から3年以内に退職すると300万円の罰金」などのルールは、労働基準法の禁止する賠償予定にあたるため違法となります。

しかし、「予定」するのではなく実際に損害が発生して、会社が損害額を証明できるのであれば、退職した社員に損害賠償を請求することができます。

 

<損害賠償請求の裁判>

裁判で損害賠償を請求する場合には、訴えを起こした原告側が証明責任を負います。

当たり前です。

損害賠償を請求された被告が、損害を与えていない、あるいは、〇円以上の損害は与えていないという証明に成功しないと裁判で負けてしまうというのは常識外れです。

言いがかり的に訴訟を提起して、相手が証明できなければ勝てるというのでは、そうした行為が横行してしまいます。

 

新人が辞めたことによって、会社に甚大な被害が及ぶということは稀でしょう。

しかし、ある程度の経済的な損失は発生します。

その損害額がいくらなのか、あるいは少なくともいくら以上なのか、計算できない場合には損害賠償の請求訴訟を提起しても敗訴してしまいます。

 

確信をもって客観的な損害額を算定できるような例外を除き、退職していく社員に損害賠償の話を持ち出すのは、単なる言いがかりになってしまう可能性が高いと考えられます。

 

2019.03.17.解決社労士

<民法改正>

平成29(2017)526日に民法改正案が参議院を通過し、成立した改正民法は、62日に公布されました。これによって改正民法は、2020年41日に施行されることになります。

民法の改正は、労働関係には影響が無いように見えます。しかし、労働契約も契約の一種ですから、民法は労働契約に適用されます。

 

<無期契約労働者からの退職申し出>

民法627条の改正により、正社員など無期契約労働者からの退職申し出の効果に、次の変更が発生します。

期間により報酬を定めている場合、たとえば完全月給制で欠勤控除が無い場合などは、退職日についての規定があります。たとえば、完全月給制で末日締切り、翌月15日支払いの場合、月給の計算期間は1日から末日です。30日ある月に、1日から15日までの間に退職を申し出れば当月の月末で退職、16日から月末までの間であれば翌月末日で退職となります。これが法改正により、退職の申し出がいつであっても、その申し出から2週間で退職ということになります。

また、6か月以上の期間により報酬が定められた労働者については、3か月前までに退職の申し出が必要でした。ところが法改正により、2週間前でよいことになります。

 

<具体的な影響>

完全月給制の場合、退職申し出のタイミングにかかわらず、給与の締日に退職ということでした。

法改正により、退職日がバラバラになり、就業規則(給与規程)に欠勤控除について、明確な計算方法が無いと困ることになります。

業務の引継ぎについても、引継ぎ期間は最低でも2週間だったのが、原則として2週間になってしまいます。

 

<合意退職なら>

ここまで述べたことは、従業員が会社に対して一方的に退職の申出を押し通すような場面を想定しています。

 

現実には、お互いトラブルを避けるため、従業員から退職の申出があった場合には、会社側が従業員と話し合って退職の段取りを決めるのが一般的です。

 

これは、合意退職という形になりますから、民法の規定にこだわらず柔軟な対応を取ることが可能です。

 

しかし、会社では突然の退職にも対応できるよう、普段からマニュアルを利用した業務遂行と業務改善を当たり前にしておきたいところです。

また、退職時のルールや異動の場合を含めた引継ぎのルールも、具体的に定めて正しく運用することで、生産性の低下を防止したいところです。

具体的に何をすべきか迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2018.12.14.解決社労士

<モデル就業規則では>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

【退職金の支給】

第52条 勤続  年以上の労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続  年未満の者には退職金を支給しない。また、第63条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。

2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

 

退職金制度は必ず設けなければならないものではありませんが、設けたときは、適用される労働者の範囲、退職金の支給要件、額の計算及び支払の方法、支払の時期などを就業規則に記載しなければなりません。

これを怠ると、労働基準法違反になります。

 

<慣行がある場合>

会社に就業規則が無い場合や、就業規則はあっても退職金についての規定が無い場合でも、一定の基準で計算された退職金が現に支給されているのであれば、退職者には退職金を受給する権利があるものと考えられます。

ただし、基準が不明確で、経営者に支給の有無や金額の判断が一任されているような場合には、退職者の方から会社に退職金の支払いを求めるのは困難です。あくまでも恩恵的なものであって、退職金の制度があるわけではないという説明ができるからです。

 

<会社の意向で特別に支給する場合>

もっとも、就業規則の規定や過去の例が無ければ退職金を支払えないわけではありません。

長年にわたり会社に多大な貢献をした人に特別に退職金を支給したり、事業縮小に伴い希望退職者を募る時に退職金の支給を条件としたりということがあります。

また、就業規則が規定する金額を上回る退職金が支給される場合もあります。

これらの特別扱いをする場合には、なぜ特別扱いをするのか、その具体的な理由を社内に明示するとともに、これらが前例となるわけではないことを、明確に説明しておく必要があります。これを怠ると、慣例があるものと勘違いしたその後の退職者から、退職金の支払いを求められてトラブルとなる可能性があるからです。

 

2018.11.06.解決社労士

<依然高い離職率>

平成30(2018)年10月23日、厚生労働省が平成27(2015)年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況について取りまとめ公表しました。

今回の取りまとめにより、新規高卒就職者の約4割、新規大卒就職者の約3割が、就職後3年以内に離職していることが分かりました。

厚生労働省では、新卒応援ハローワークなどでの相談・支援の他、こうした人々を含めた求職者に対応するため、平日の夜間と土日に電話とメールで利用できる無料相談窓口「おしごとアドバイザー」を通じて、引き続き支援を行っていくそうです。

新卒応援ハローワークというのは、全都道府県にあるワンストップで新卒者を支援する施設です。大学院・大学・短大・高専・専修学校などの学生や、これらの学校を卒業した人を対象に、学校との連携の下、ジョブサポーターによるきめ細かな支援など、様々なサービスを無料で行っています。

 

■ 新規学卒就職者の就職後3年以内離職率 ( )内は前年比増減
 【 大学 】 31.8% (▲0.4P)       【 短大など 】 41.5% (+0.2P)
 【 高校 】 39.3% (▲1.5P)       【 中学 】 64.1% (▲3.6P)

■ 新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率  ( )内は前年比増減

[ 事業所規模 ]

【大学】

【高校】

1,000 人以上

24.2% (▲0.1P)

25.3% (±0.0P)

500 ~999人

29.6% (▲0.2P)

32.9% (±0.0P)

100 ~499人

31.9% (±0.0P)

36.5% (▲1.4P)

30 ~99人

39.0% (+0.2P)

46.3% (▲0.8P)

5~29人

49.3% (▲0.9P)

55.9% (▲0.5P)

5人未満

57.0% (▲2.1P)

64.3% (+0.3P)

 

■ 新規学卒就職者の産業別就職後3年以内離職率のうち離職率の高い上位5産業
              ( )内は前年比増減     ※「その他」を除く

■ 大学

 

宿泊業・飲食サービス業

49.7% (▲0.5P)

教育・学習支援業

46.2% (+0.8P)

生活関連サービス業・娯楽業 

45.0% (▲1.3P)

医療、福祉 

37.8% (+0.2P)

小売業 

37.7% (▲0.9P)

 

■  高校      

 

宿泊業・飲食サービス業

63.2% (▲1.2P)

生活関連サービス業・娯楽業

59.2% (▲0.2P)

教育・学習支援業

56.5% (+0.5P)

小売業

48.8% (▲1.6P)

医療、福祉 

47.0% (+0.1P)

 

2018.10.24.解決社労士

<禁止する必要性>

幹部社員や高度に専門性の高い社員が退職すると、会社に大きなダメージが生じます。

ましてや、その社員がライバル企業に転職したのでは、ダブルパンチを食らうことになります。

会社としては、こうした事態を阻止したいところです。

 

<職業選択の自由>

一方で、退職していく社員には職業選択の自由があります。〔憲法22条1項〕

どのような職業を選択するかの自由は、ライバル企業に転職する自由を含みます。

もっとも、この職業選択の自由に会社と社員との合意で制限を設けたなら、原則として合意による制約は有効です。

ただし、その合意の内容が合理性を欠き公序良俗に反するのであれば無効になります。〔民法90条〕

 

<競業避止義務を有効にするために必要なこと>

ライバル会社への転職を禁止した場合、その禁止が無制約に許されるわけではありません。

次のようなことを考慮要素として、公序良俗違反とならないことが必要です。

・就業規則や誓約書に内容が明示されていること

・その社員が営業秘密に関わっていたこと

・正当な目的によること

・「同業他社」の範囲など制限の対象が妥当であること

・地域・期間が妥当に限定されていること

・特別な手当の支給など、相当の代償が与えられること

 これらの考慮要素のうち、範囲の限定と相当の代償は大きなウエイトを占めるでしょう。

代償措置としては、給与の上乗せや退職金の上乗せが考えられます。

社員のメリットが無いのに、会社側から一方的にライバル企業への転職を制限したのでは、合理性を欠き公序良俗に反するものと認定されてしまいます。

 

<違反された企業の対応>

社員が退職して競業避止義務に違反した場合、競業行為の差止めが考えられます。

しかし、会社在籍中に十分な代償措置が取られていなければ、これを主張するのは困難です。

また、損害賠償を請求するには損害額の証明が必要となるのですが、これもかなり困難です。

こうしたことから、退職金の減額が現実的な措置となるのですが、退職し退職金を受け取ってからライバル会社に転職するケースには対応できません。

就業規則に規定する場合には、「退職後1年以内に別表のライバル会社に就職した場合には、退職金の半額を会社に返還するものとする」のような規定が必要でしょう。

 もっとも、会社が社員を大切にし、社員が会社に恩を感じるようになっていれば、社員は安易に会社を辞めないでしょうし、ライバル企業に転職することもありません。

これを目指すのが会社としてベストな対応でしょう。

 

2018.07.02.解決社労士

<就業規則の規定>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)では、定年を満60歳とし、その後希望者を継続雇用する例として、次のような規定が示されています。

 

(定年等) 

第49条  労働者の定年は、満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者については、満65歳までこれを継続雇用する。

 

定年後の再雇用については、多くの企業で似たような規定を置いていると思われます。

 

<本人の希望>

「定年後も引き続き雇用されることを希望」の部分にトラブルの原因が隠れています。

定年退職後に、退職者から「再雇用を希望していたのに退職させられた。これは不当解雇である」と主張されることがあります。

具体的には、再雇用されていれば得られたはずの賃金と慰謝料の支払いを、会社に対して求めてくるわけです。

このとき、会社が「離職票に署名してある」と主張しても、退職者は「ハローワークで手続きできなくなると脅されて不本意ながら署名したに過ぎない」と反論するでしょう。

また、健康保険証の返却についても、退職者が「返却しなくても紛失扱いで手続きすると言われたので不本意ながら返却した」と主張するかもしれません。

 

このような言った/言わないのトラブルを防ぐために、再雇用の希望を書面で提出するルールにしている会社もあります。

しかし、退職者が提出したと言い、会社側が提出を受けていないと言うのでは、結局トラブルになってしまいます。

 

こうしたトラブルを防ぐためには、「再雇用確認書」のような書式を準備しておき、定年の2か月前までに希望の有無を記入して提出してもらうなどの運用にする必要があります。つまり、希望しても希望しなくても、定年を迎える社員から所定の書面を提出してもらい、再雇用の希望の有無がわかるようにしておくわけです。

 

<再雇用できない理由>

たとえ本人が希望しても、「解雇事由又は退職事由に該当」する労働者であれば、会社は再雇用を拒めるという部分にも、トラブルの火種が隠れています。

そもそも、定年を迎える直前になって解雇事由が発生することは稀ですし、このタイミングで退職事由が発生するというのは、本人が再雇用されずに退職したいという希望を表明している場合ではないでしょうか。

 

実際には、定年の数年前から解雇事由があって、会社側がこれを放置しているというケースがあります。「あと少しで定年を迎えるから」ということで我慢しているわけです。

たとえば、健康状態が不良でたびたび欠勤しているが治療を受けていない、ルール違反が多くて同じ部署のメンバーに迷惑をかけ続けている、新しい仕事を覚えられず会社が必要としている業務をこなせないといった事情を、会社側が我慢してしまうのです。

こうした場合に、定年と共に普通解雇や懲戒解雇を言い渡すというのは不合理です。本人にしてみれば、今まで不問に付されていたのに、定年のタイミングで解雇されるというのは納得できません。

 

「あと少しで定年を迎える」社員も、若い社員と同じように、問題点があれば注意・指導し改善が見られなければ、普通解雇や懲戒解雇を検討すべきです。

少し厳しいようにも思われますが、再雇用トラブルを防ぐには必要なことなのです。

 

2018.06.04.解決社労士

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