2023/07/14|811文字
<通常の場合>
年次有給休暇を取得する場合には、労働者が前もって取得する日を指定するのが通常です(時季指定権)。
指定された日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。
労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、この時季変更権を使う余地がありません。
ですから、前もっての指定が必要なのです。
<遡ってでも年次有給休暇を取得させたい場合>
会社のために長い間貢献してくれた人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば気持よく送り出したいし送別会も盛大にやりたいです。
今まで、ろくに休暇が取れていないのならば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいと思います。
しかし、退職までの間にきちんと引継ぎを終わらせて欲しいし、すべて取得させるのはむずかしい。
そこで思いつくのは、遡っての取得です。
<遡っての年次有給休暇取得に問題は無いか>
過去に欠勤日があって、その日に年次有給休暇を充てる場合、会社が時季変更権を放棄するのであれば、基本的には遡っての取得に問題は無さそうです。
ただし、前年度に遡ると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。
社会保険料の計算も、場合によっては、やり直しが必要になるかもしれません。
それでも、元々の休日に年次有給休暇を取得させることはできませんから、遡ることには限界があります。
やはり、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買い取りです。
通常は、買い取りが許されないのですが、退職にあたって買い取ることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。
いずれにせよ、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。
ちょっとした裏技と思っていたことが、実は勘違いであって、労働法違反になることがあります。
本当に大丈夫か迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。