2025/09/14|1,547文字
<月経前症候群(PMS)とは?>
月経前症候群(Premenstrual Syndrome)は、月経の約1〜2週間前に現れる心身の不調で、女性の約7〜8割が何らかの症状を経験するとされています。代表的な症状には以下のようなものがあります。
・身体的症状:腹痛、頭痛、むくみ、倦怠感、乳房の張りなど
・精神的症状:イライラ、不安感、抑うつ気分、集中力低下など
症状の程度には個人差があり、日常生活や仕事に支障をきたすケースも少なくありません。
<なぜ会社のサポートが必要なのか?>
PMSは一時的な不調であるものの、周期的に繰り返されるため、職場でのパフォーマンスや人間関係に影響を与えることがあります。企業がPMSに対して適切な理解と配慮を示すことは、以下のような効果につながります。
・従業員の健康と働きやすさの向上
・欠勤・遅刻・業務ミスの予防
・女性活躍推進・ダイバーシティの実現
・職場の心理的安全性の向上
<法的・制度的な背景>
日本では、PMSに特化した法制度は存在しませんが、以下のような関連制度が企業の対応を支えています。
- 労働基準法第68条(生理休暇)
「女性労働者が生理日の就業が著しく困難な場合には、使用者は休暇を与えなければならない。」
この規定の趣旨からは、PMSが原因での不調により業務が困難な場合、企業は「生理休暇」を認めることが望ましいといえます。有給・無給のいずれでも可能ですが、就業規則で定める必要があります。
- 安全配慮義務(労働契約法第5条)
企業は、従業員が安全・健康に働けるよう配慮する義務を負っています。PMSによる不調もこの対象に含まれると解釈されます。
<実務的なサポートの具体例>
企業がPMSに対してできるサポートは、制度面・環境面・意識面の3つに分けて考えることができます。
- 制度面の対応
就業規則に明記し、取得方法や申請手続を簡素化します。プライバシーに配慮した運用が重要です。
フレックスタイム制、在宅勤務、時差出勤などを活用し、体調に応じた働き方を可能にすることも有効です。
体調不良時の業務調整も制度化します。業務量の軽減や座り仕事への変更など、個別の状況に応じた対応を検討します。
- 環境面の整備
一時的に横になれるスペースや静かな休憩室を設けることで、体調回復を促進します。
清潔で使いやすいトイレ、衛生用品の備え付けなど、安心して過ごせる環境づくりも大事です。
PMSの症状は室温や湿度に左右されることもあるため、快適な室内環境の維持が重要です。
- 意識面の啓発
PMSの理解を深め、適切な対応ができるよう、管理職向けの研修・教育を行います。偏見や無理解を防ぎます。
社内報やポスターなどで、PMSに関する知識や制度を周知し、相談しやすい雰囲気を醸成します。
相談窓口の設置など、産業医や人事担当者による相談体制を整え、個別の悩みに対応できるようにします。
<配慮と公平性のバランス>
PMSへの配慮は重要ですが、他の従業員との公平性も考慮する必要があります。以下のような視点が求められます:
症状の程度は外からは分かりにくいため、自己申告を基本とします。
チーム内での業務分担や事前の引き継ぎ体制を整え、業務への影響を最小限にする工夫をします。
性別に関係なく「体調不良への配慮」として位置づけ、特定の性別に偏らない制度設計が、職場全体の納得感につながります。
<実務の視点から>
月経前症候群に対する会社のサポートは、女性の健康と働きやすさを守るだけでなく、職場全体の生産性と信頼関係を高める重要な取り組みです。制度・環境・意識の3つの側面から、誰もが安心して働ける職場づくりを目指すことが、企業の持続的な成長にもつながります。
「体調に合わせて柔軟に働ける職場」は、すべての人にとって理想的な環境です。