残業の記事

<よくある悪い例>

経営者側が「残業は月20時間までにしなさい」「残業禁止」などと言い放つだけなのは最悪のパターンです。

上司、同僚、部下の能力不足を一人で背負いこんで、毎月無理な長時間労働に追い込まれているスーパー社員は、過労死するか退職するかでしょう。

また、サービス残業が発生します。残業しても会社に申告しなければ、上司は黙認してしまうでしょう。あるいは、労働時間の管理がいい加減で、サービス残業に気付かないパターンもあります。サービス残業に耐えられなくなった社員は、退職後に会社に対して未払い賃金を請求します。一人がこれに成功すれば、みんなが同じことをします。

そして、仕事の持ち帰りも発生します。これによって顧客の個人情報や会社の機密が流出します。ありがちなのは、帰宅途中に過労で居眠りしてパソコンを盗まれるという事件です。マスコミに報道されると、会社は社会の信用を失います。

そもそも、安易な残業削減・残業禁止で会社が躍進したという実例はあるのでしょうか?

 

<残業削減目標の設定>

残業の削減を思いついたら、社員一人ひとりの能力と業務内容を具体的に確認して、無理のない目標を設定しなければ失敗します。

これができるのは、適正な社員教育、人事考課、給与・賞与など処遇への反映が正しくできている会社だけです。

 

<繁閑の差の縮小>

忙しい時間帯や繁忙期というのは、部署により個人により時間的なズレがあります。

その人でなければ、その部署のメンバーでなければできない仕事ばかりではありません。

少しでも手の空いている上司や他部署のメンバーが、忙しいところの応援に入れば良いのです。

これができるのは、社員の長期入院や退職者が出た時にあたふたしない会社だけです。

 

<臨時の異動>

多店舗展開の飲食店では、ある店のシフトに穴が開きそうなときに、他店からパート店員やアルバイト店員を借りてくるということが行われます。

人手の足りない部署に、足りている部署から人員を一時的に貸し出すわけです。

これをするためには、労働条件通知書などでどの範囲のお店までの応援がありうるのか、臨時の転勤もありうるのかなど、明確にしておくことが必要です。

 

<多機能化による対応>

ひとり一人の社員が、営業も、販売も、経理も、採用もできるというように多機能化されていれば、忙しいところに応援に入るのは容易です。

多機能化のためには、特別な研修を行ったり、他部署にイベント的に応援に行ったり、ジョブローテーションやキャリアパスを踏まえた計画的人事異動を行ったりの方法があります。

 

<正しい残業削減>

上手に目標を設定し、これを根拠と共に社員に提示する。社員の多機能化を進め、繁忙部署への応援を促進する。そして、応援に入れる社員は、入れない社員よりも一段高く評価して、それにふさわしい処遇とする。

このように残業削減には大変手間がかかります。

しかし少しでも改善を進めれば、生産性が向上し、強い会社、魅力的な会社へと成長していきます。

具体的なことは、信頼できる国家資格の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.09.18.解決社労士

<営業手当の意味>

営業手当は、営業という業務を担当することにより他の業務には無い負担があるため、その負担に応じて支給される所定労働時間内の業務に対する手当です。

ですから、所定労働時間外の残業代の代わりにはなりません。また、営業手当に残業代を含めるということもできません。

 

<よくある言い訳>

会社が営業手当を残業代の代わりに支給する、あるいは残業代を含めて支給するときの言い訳としては、「営業社員は勤務時間を把握できないから」というのが多いでしょう。

しかし、これが本当なら営業社員はサボり放題です。なぜなら、会社は営業社員の勤務時間を把握しないのですし、営業手当を支給しているから把握しなくても良いと思って安心しているからです。きちんと勤務時間を把握し、営業成績を正しく評価し、個人ごとの生産性を人事考課に反映させて、給与や賞与にメリハリをつけなければサボりは防げません。

反対に、過重労働による過労死の危険もあります。営業成績の上がらない社員は、サボりどころか長時間労働に走ります。営業成績の良い社員がたくさん働いているとは限らないのです。万一、営業社員が過労死あるいは自殺したときに、過重労働ではなかったという証拠が無ければ、遺族から慰謝料など多額の損害賠償を請求された場合に反論のしようがありません。

 

<退職者から未払い残業代を請求されたら>

残業代は25%以上の割増賃金なのですが、そのベースとなる賃金には営業手当が含まれます。会社としては、残業代の代わりに営業手当を支給していたつもりでも、その営業手当を加えた賃金の25%以上割増で計算することになるのです。会社にとっては、まるで残業代が複利計算になっているような感じを受けます。

恐ろしいのは、会社側に勤務時間のデータが無いために、退職者の手帳の記録などが証拠となりうることです。退職者の記録が誤っていることを一つひとつ立証するのは、とても無理なことでしょう。

そして、退職者は過去2年分の残業代を請求することになります。労働基準法の規定する消滅時効期間が2年だからです。しかも、すでに民法の改正があったため、消滅時効期間は5年に延長されるかもしれません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

営業社員の誰かが退職して、過去の未払い残業代を請求してきたら、在籍している営業社員の全員が同じことを考えても不思議ではありません。

たしかに、残業代の代わりに営業手当を支給する制度を適法に行う方法もあります。しかし、これは導入も運用もむずかしいのです。詳しいことは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.09.05.解決社労士

<民法改正>

平成29年5月26日に民法改正案が参議院を通過し、成立した改正民法は、6月2日に公布されました。これによって改正民法は、平成32年6月1日までに施行されることになります。

民法の改正は、労働関係には影響が無いように見えます。しかし、労働契約も契約の一種ですから、民法は労働契約に適用されます。

 

<未払い残業代請求権の消滅時効は2年>

民法167条1項は、債権の消滅時効期間を原則10年と規定しています。しかしこの例外として、民法174条1号が一般的な給与の消滅時効期間を1年と定めています。これでは、未払い賃金がある場合に、一定の手続きを取らなければ、労働者は1年で請求権を失ってしまうことになります。

これを救済するために、労働基準法115条は、賃金などの消滅時効期間を2年と定めています。労働基準法は民法の特別法ですから、矛盾する規定があれば、労働基準法が優先されるというルールです。

こうして、未払い残業代の請求権についての消滅時効期間は、現在2年となっています。実際、労働基準監督署が企業に監督に入った場合でも、未払い残業代の支払いについては、最大2年間まで遡っての指導となっていて、それ以上前の支払いまでは指導していません。

 

<民法改正による矛盾の発生>

改正民法は、債権の消滅時効期間を、権利者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できるときから10年としました。

これは労働基準法の定める2年よりも長いのです。「労働基準法は民法の特別法だから、矛盾する規定があれば労働基準法が優先される」というルールを当てはめてしまうと、労働者が未払い賃金を請求する権利は、一般の債権よりも短期間で時効消滅してしまうことになります。

これでは労働者を保護するための労働基準法は、その役割を十分に果たせません。

 

<矛盾解消のための労働基準法改正?>

あくまでも個人的な予測ですが、労働基準法115条は削除されると思います。

 

労働基準法115条 賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

 

退職手当というのは退職金のことで、この請求権は現在の消滅時効期間が5年です。

この条文が削除されれば、労働基準法と民法との矛盾は発生しませんし、未払い残業代の請求権についての消滅時効期間は、現在の2年から5年に延長されて労働者の保護も強化されます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

もちろんブラックな話ですが、「未払い残業代が摘発されたら過去2年分を支払えばいい」と考えている経営者の方もいらっしゃるでしょうか。

しかし、この「2年分」が「5年分」に変更されたら、会社は耐えられないかもしれません。

そもそも、未払い残業のある会社では、ごまかすために労働時間の管理がいい加減になっているものです。これが、社員のサボりや手抜きを助長していたり、働き以上の賃金を支給する原因となっていたりもします。

残業代込みの賃金という約束ならば、それを合法的に制度化し正しく運用すれば良いのです。

突然の法改正で困らないためにも、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.20.解決社労士

<労働基準監督署に相談した場合>

未払い賃金の金額を具体的に示して会社に請求したのに、支払いに応じてもらえなかったという場合には、すぐ相談に乗ってもらえます。

しかし、給与明細書を見て「残業代が付いていません」と会社に申し出ただけでは具体性に欠けます。この場合には、労働基準監督署に相談しても、まず会社にきちんと請求するように言われることが多いのです。

 

<自販機のたとえ話>

自販機にお金を入れて、商品のボタンを押して、商品は出てきたけれど、おつりが出てこないとき、自販機に書いてある連絡先に電話をかけます。

お金をいくら入れて、いくらの商品を買ったのかを話せば、駆けつけた係員が自販機を点検してから、出てこなかったお金を返してくれます。

しかし、「自販機にいくら入れたかは忘れました」「買った商品はすぐに飲んだし、何を買ったかは忘れました」と言えば、たとえそれが真実だったとしても返金できません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

不足する賃金の計算は、ネットで調べればやり方がわかるかもしれません。もしわからなければ、信頼できる社労士にご相談ください。

社労士ならば計算だけではなく、そもそも定額(固定)残業代になっていないか、雇用契約ではなく請負契約扱いになっていないか、労働時間の把握ができていないのではないか、といった広い視点から専門的に検討することになります。

場合によっては、会社の定める労働条件があやふやで、計算できないこともあります。こうした場合には、残業代の未払いよりも一段上の違法がありますから、その点について改めて労働基準監督署に相談したり、会社に適正な対応を要求したりが可能となります。

 

2017.08.03.解決社労士

<残業の性質>

残業は、会社が命じて社員に行わせるものです。具体的には、上司が業務上の必要から、部下に命じて行わせることになります。

少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。

そして、いつも上司がいるわけではありませんから、伝票の処理が終わらないときは残業しなさいとか、お客様のクレームがあったときは対応して報告書を作成するまでは残業しなさいという包括的な命令もありえます。

この場合には、ダラダラ残業の危険がありますから、上司は十分な事後チェックをしなければなりません。

 

<上司の怠慢>

ところが実際には、上司の命令が無いままに、部下が自己判断で残業することがあります。上司は、これを発見し、注意し、禁止しなければなりません。そうしなければ、際限なく残業代が発生しますから、人件費の垂れ流しになってしまいます。

このような管理能力を備えていない上司が、部下の残業を野放しにしておくと、上司による黙示の承認があったものとされ、会社は多額の残業代を支払うことになります。支払わなければ、サービス残業とされ、未払い残業代の請求が発生します。

上司には、部下を管理する役目があって、その分給料が高いのですが、上司が給料分働かないうえに、部下の余計な残業代まで負担するのですから、会社はたまったものではありません。

上司の管理能力の有無は、きちんと人事考課によって評価されなければなりません。管理能力の不足する上司が、適正に降格されなければ、会社全体の生産性が低下してしまいます。

 

<就業規則での対処>

業務が終了したら直ちに帰ることを規定しましょう。残業代が発生しなくても、ただそこに社員が残っているだけで、余計な光熱費が発生しますし、雑談などしようものなら、残業している社員の邪魔になります。それだけでなく、使用者の指揮命令下にあるものとされ、タイムカードを打刻した後の時間にも残業代が発生してしまいます。

残業は、上司の命令によって発生することを明記しましょう。上司の命令に応じるのではなく、自己判断で残業することは禁止しましょう。

こうした規定に違反する社員は、人事考課で適正に評価されなければなりません。場合によっては、懲戒処分の対象とする必要もあるでしょう。

 

<残業代を稼ぎたい社員の発見>

仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間は、本当の労働時間ではありません。

こうした時間の総合計が長い一方で、残業が発生している社員は、上司が注意指導して仕事をさせなければなりません。

これもまた、適正な人事考課と必要に応じた懲戒処分の対象となります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

担当者に対して「残業を減らしなさい」「残業は月20時間まで」などと言うのは、上司のあるいは会社側の責任放棄です。これでは、仕事が回らなくなるか、生産性が低下するか、サービス残業が発生してブラック企業に転落するかでしょう。

社内でうまく残業を減らせないのなら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.06.21.解決社労士

<定額残業代の失敗による打撃>

残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。そのためには、自主的に学んだり、仕事の仕方を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。

もし、こうした結果が得られていないのならば、制度の導入や運用に誤りがあると思われます。

そして、制度の導入や運用に誤りがある場合には、定額残業代の有効性が否定されます。否定されると、基本給など残業代を計算するときのベースとなるはずだった賃金に、定額残業代を加えた金額をベースとして、残業代を計算し定額残業代とは別に支給しなければならなくなります。

これは、複利計算の形で残業代の二重払いが発生することになります。ですから、会社にとっては思わぬ打撃となります。

 

<正しい導入は手間がかかる>

基本給にあたる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、基本給が最低賃金を下回らないことが必要です。

この基本給から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。

こうした導入ができていないと、定額残業代は無効となりますから、労働者から別途残業代を請求されたら支払わなければなりません。

 

<正しい運用も手間がかかる>

定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。

もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。

誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

定額残業代は、ブラックな制度のように思われがちです。

しかし、正しい制度であれば、会社にも労働者にもメリットが多いはずです。その反面、誤った制度にしてしまうと、会社は何らかの形で労働者から残業代の二重払いを請求されます。

定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.06.16.解決社労士

<社内でよくあるもの>

社内で従業員からの申し出により労働問題とされやすいのは、パワハラ、セクハラ、労働条件の不利益変更です。

これらは、従業員からの申し出があったとき、経営者が判断に困り、適切な対応ができないでいるうちに、社内で解決しきれない労働問題に発展することがあります。

会社に落ち度が無いという自信があれば、所轄の労働基準監督署に確認して、従業員に説明すれば良いでしょう。

そうでなければ、何かアクションを起こす前に、なるべく早く信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<訴訟や労働審判になるもの>

退職者からの、残業代請求、不当解雇、退職に伴う請求がメインです。

どう考えても円満退職だった退職者の代理人弁護士から、内容証明郵便が届いてビックリというパターンです。

在職中は会社に遠慮して言えなかった不平不満が、退職後に爆発するのですから意外性があります。

退職者ご本人にその気が無くても、ご家族やお知り合いの中には労働法に詳しい方がいらっしゃいます。そして、この方が労働者の権利を強く主張すると、退職者が同調して会社に請求することもあります。

 

<複合的なもの>

退職者から未払い残業代の請求がある場合、パワハラによる慰謝料請求が加わったりします。

セクハラの被害者が退職させられ、加害者が会社に残り、これを不満とした退職者からの慰謝料請求に、未払い残業代の請求が加わったりします。

パワハラの加害者として退職させられた人から、不当解雇を主張され、賃金、賞与、慰謝料を請求されることもあります。

権利の侵害を感じた退職者が弁護士に依頼すると、弁護士は依頼人に事実を確認し、これを法的に構成し、できる請求をすべてすることになります。

依頼人と弁護士との契約は、委任契約ですから、医師が治療にベストを尽くすのと同じように、弁護士も依頼人の権利実現にベストを尽くすわけです。

 

2017.06.03.解決社労士

<定額残業代のメリット>

定額残業代は良い仕組みです。

労働者にとっては、残業が少なくても定額残業代が保障されていますし、会社にとっては人件費が安定します。

しかし、それだけではありません。

残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。そのためには、自主的に学んだり、仕事の仕方を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。

もし、こうした結果が得られていないのならば、制度の導入や運用に誤りがあると思われます。

 

<定額残業代の正しい導入>

基本給にあたる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、基本給が最低賃金を下回らないことが必要です。

この基本給から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。

 

<誤った導入をすると>

定額残業代の計算が誤っていたり、割増率が法定の基準を下回っていたり、最低賃金法違反があったり、労働者への説明が不十分であったりすると、制度そのものが無効とされます。

この場合、労働基準監督署の監督が入ったり、労働審判が行われたりすると、基本給にあたる賃金に定額残業代を加えた金額を基本給として残業代を計算し、さかのぼって支払うことになるでしょう。

これは、実質的には残業手当の二重払いですから、会社にとって予定外の出費となります。このように、導入の失敗は大きなリスクとなります。

 

<定額残業代の正しい運用>

定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。

もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。

誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

定額残業代は、ブラックな制度のように思われがちです。ハローワークで求人票に定額残業代の表示をすることについては、窓口で慎重すぎる態度を示されてしまいます。

これは、誤った制度導入や運用があまりにも多いため、悪い印象を持たれてしまっているからでしょう。

定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.29.解決社労士

<労働時間を把握しない>

残業手当を支払うには、従業員の労働時間を適正に把握する必要があります。

支払う気の無い会社では、タイムカードなどの打刻をきちんとさせていません。

 

<所定労働時間・日数が不明>

時間給ならば、1時間当たりの賃金は明確ですから、残業手当の計算が可能です。

しかし、日給制や日給月給制の場合には、1日の所定労働時間が不明なら、1時間当たりの賃金がわからないので、残業手当の計算ができません。

さらに、月給制ならば、月間所定労働時間が不明なら、やはり1時間当たりの賃金がわからないので、残業手当の計算ができません。

こうした労働条件は、入社時と変更の都度、会社から従業員に書面で通知されていなければ違法です。それでも、残業手当を支払う気の無い会社では、「労働条件通知書」などを交付していません。

 

<人件費の削減>

残業手当を支払わないというのは、不当に人件費を削りたいわけです。ですから、従業員の数もギリギリあるいは不足しています。

一部の元気な従業員は、忙しくてバタバタしています。しかし、それよりも長時間労働で疲れた従業員が目立ちます。中には「どうせ残業代が出ないので」のんびりマイペースでやっている従業員もいます。全体として見れば、人件費を削った以上に、従業員の働きが低下しています。

人件費を削りたいのは経営者です。お客様、従業員、取引先、出資者、金融機関は喜びません。ライバル会社は少し喜ぶかもしれません。

当たり前ですが、会社の評判は口コミ情報で低下していきます。

経営者が、人件費を削減するのではなく、売上を伸ばす努力を進めるべきだと気付かなければ、その会社の未来はありません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「ブラック」を経営理念に掲げる経営者はいないでしょう。ブラック企業というのは、経営者が意図せずに、いつの間にかブラックになっているものです。

会社がブラックな方向に向かっていないかのチェックには、労働条件審査が役立ちます。信頼できる社労士にご相談してみてはいかがでしょうか。

 

2017.05.26.解決社労士

<定額(固定・みなし)残業代とは?>

1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

労働基準監督署では正しい運用を指導しています。しかし、正しい運用が難しいことから、ハローワークでは求人票に載せることを嫌います。

 

<ブラック運用1

対象となる従業員に計算根拠の説明が無い。あるいは、就業規則に具体的な規定が無い。これはブラックな運用です。

残業代の計算方法がわからなければ、給与を支給されたときに、誤っていてもわかりません。対象者全員に理解させることが必要です。

 

<ブラック運用2

残業時間が少ないと、定額残業代が減額される。これはブラックな運用です。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。「定額」残業代と言うことばから当然のことです。

定額残業代は、全く残業しなくても支給される最低保証額なのです。

 

<ブラック運用3

残業時間がどんなに多くても、残業代は増えず、定額残業代だけが支給される。これはブラックな運用です。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。賞与でまとめてということはできません。

そもそも定額残業代の基準時間が無いという悪質なものもあります。

 

<ブラック運用4

定額残業代に、深夜労働や法定休日労働の割増賃金を含めている。これは、多くの場合ブラックな運用です。

深夜労働や法定休日労働の分も定額にすることは、理論的には可能です。しかし、それぞれの基準時間と金額を明らかにする必要があって、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのであまり使われません。

 

<ブラック運用5

1時間あたりの基本賃金が、最低賃金法の基準を下回っている。これはブラックな運用です。

最低賃金は、年々上昇していますので、いつの間にか違法になってしまうケースもあります。給与の設定が春だと、最低賃金の変更が秋なので、この時点で違法になることも多いのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

定額残業代(固定残業代・みなし残業代)を使うなら、適法に運用しなければなりません。それだけではなく、適法に運用するとかえって人件費が割高になるという場合には、給与制度や人事制度を見直す必要があります。

それぞれの職場に合った制度をお考えでしたら、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.29.解決社労士

<残業代を減らすための選択肢>

残業代をカットするのは違法ですし、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法37条、119条〕

しかし、残業を全面的に禁止したのでは、仕事が回らなくなってしまいます。

そこで、ある程度まで残業を制限するという対策が取られます。人件費が予算の範囲内に収まるよう、うまく調整するわけです。これは役職者任せにするとうまくいきません。取締役と管理監督者が働き放題となり、すぐに否定されることになります。

結局、本当に必要な残業だけを認めようということになります。

 

<残業代の多い社員>

残業代の多い社員には、大きく分けて3つのパターンがあります。自己都合で残業する社員と、会社都合で残業する社員、そして能力不足の社員です。

 

<自己都合で残業する社員への対策>

自己都合というのは、生活のために多額の残業代を必要とする、家に居場所が無いなどの個人的な理由で残業するパターンです。本来の勤務時間帯には、おしゃべりをしたり席を外したりダラダラと過ごし、残業の時間帯には頑張っている姿が見られます。

上司が指導し、本来の勤務時間帯に職務に集中するようにさせること、プライバシーの侵害にならないよう気を付けながら、個人的な悩みについて相談に乗ることが対策となります。

 

<会社都合で残業する社員への対策>

会社都合というのは、仕事ができる優秀な社員なので仕事が集まってしまい、やむを得ず残業するパターンです。こういう社員は、始業時間前から残業時間帯までテキパキと仕事をこなしています。

上司が役割分担を見直すこと、代わりにできる人を育てることが対策となります。仕事ができる社員は、仕事を抱え込み他の社員に関与させたがらないことも多いのですが、マニュアルを作らせ他の社員に引き継がせることが必要となります。

 

<能力不足の社員への対策>

能力不足というと、何もできないように思われがちですが、ここでは担当業務が上手にできないことを言うものとします。

こうした能力不足の半分以上は、会社の教育不足によるものでしょう。

たとえば、事務仕事でエクセルを使う場合、コピーして貼り付ける操作でも、マウスの左クリックだけを使う方法、マウスの左右両方のクリックを使う方法、マウスは使わずにキーボードで行う方法、そしてこれらを組み合わせた方法があります。どのような操作が効率的であるかは、作業によって異なります。ところが、本人任せにしておくと1つの方法しか覚えません。これでは生産性が上がりません。

能力不足の社員は、頑張っているのですが、他の社員と同じ仕事を与えられても残業が発生してしまいます。スピード感が無いですし、やり直しが多いのも特徴です。しかし、上司の指導によって改善が期待できます。

 

<どのパターンかわからない場合には>

他部署に異動させてみると、どのパターンかが良くわかります。

自己都合の残業なら、異動の前後で残業時間が変化しません。仕事内容とは関係なく残業しているからです。

会社都合の残業なら、異動直後に残業が減り、その後徐々に増えていきます。異動先でも周囲での評価が高まり、任される仕事量が増えるからです。

能力不足の残業なら、異動直後の残業が多く、その後徐々に減っていきます。異動先の仕事を覚えれば、少しずつ効率が上がるからです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

いつの間にか残業代込みの給与になってしまっているのであれば、正式に定額残業代のしくみを定めて適正に運用したいところです。

また、残業代だけでなく、能力や貢献度に応じた給与にするためには、人事考課制度が必要です。

どちらも、社労士の得意分野ですから、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.13.解決社労士

<使用者の義務として>

労働時間の適正な把握は使用者の義務です。現在では、過重労働による労災の発生や長時間労働の問題がマスコミでも大きく取り上げられ、この義務が再認識されています。

 

<残業要否の判断>

こうした中でも、労働者の希望や申請により残業が認められている会社が多いというのは不思議な現象です。

そもそも、残業というのは使用者の命令によって行われるものです。ですから、残業の要否を判断するのは、労働者ではなく使用者です。

そうでなければ、労働者の自由な判断で残業できることになり、好きなだけ残業代を稼げるということになってしまいます。これでは会社が人件費をコントロールできません。

 

<残業命令のあり方>

だとしても、使用者がその都度、具体的な残業命令を出すことにしていたのでは大変です。

まず、包括的な残業命令を使用者から労働者に一覧表の形で示しておきましょう。たとえば、小売店や飲食店であれば「その場でのクレーム対応が必要な時」「レジで違算が発生し再確認が必要な時」「店内にお客様が残っていて接客が必要な時」というように条件の形で示します。

そして、この一覧表に無いような突発的な理由で、残業の必要性が問題となったときには、労働者から使用者に残業命令を打診するのです。たとえば、地震によって商品や食器が店内に散乱して、ある程度まで片付けておく必要性が感じられる時などです。

使用者側が、ここまで残業の管理をしておけば、労働者の勝手な判断で残業しても、これに対する賃金の支払い義務は無いと主張しうることになります。

 

<やってはいけないこと>

残業命令をうやむやにして、労働者の残業管理を怠っておきながら、残業代をカットしてしまうのは、違法なサービス残業となってしまいます。

ダラダラ残業も、持ち帰り残業も、知っていて放置すると、使用者側が許したものと評価されてしまいます。これらにも残業代を支払わなければなりません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

残業そのものを減らすにも、残業代の支払いを減らすにも、合法的で適正な方法を検討するのであれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.11.解決社労士

<スーパーマーケットと経営者を逮捕・送検>

江戸川労働基準監督署長は、スーパーマーケット経営会社とその代表取締役等を労働基準法違反の容疑で、平成2662日、東京地方検察庁に書類送検しました。

 

<逮捕・送検の理由>

このスーパーマーケット経営会社の代表取締役は、東京都江戸川区内の2店舖で勤務する従業員に残業代を支払いませんでした。

そこで、江戸川労働基準監督署労働基準監督官が、割増賃金の不払につき是正指導し、その是正措置結果について報告をするよう求めました。

ところが、この代表取締役は、部長A、課長Bと共謀し、平成25101日、労働基準監督官に対し、実際には支払をしていないのに、過去の賃金不払残業に対する割増賃金を遡及して支払ったとする虚偽の内容を記載した是正報告書を提出しました。

このウソの報告書提出が逮捕・送検の理由です。

 

<捜査が入ったキッカケ>

この会社に対しては、平成248月、平成256月に、江戸川労働基準監督署が、割増賃金の不払について是正するよう監督指導を行ってきました。

ところが、その指導にもかかわらず、違反行為を続けてきたので捜査に着手したのです。

そしてこの会社は、是正指導に対して是正報告を行っていたのですが、本社などを家宅捜索したところ、実際には遡及支払を行っていないことがわかり、ウソの報告であったことが判明したのです。

 

<サービス残業に対する指導>

各労働基準監督署では、事業者に対して適正な労働時間管理の徹底を図り、賃金不払残業を起こさせないことを重点とした監督指導を実施しています。

また、是正指導にも関わらず改善の意欲が認められず、賃金不払残業を繰り返し、または労働基準監督署に対し虚偽の報告を行うなど重大悪質な事業者に対しては、書類送検を含めて厳正に対処しています。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労働基準監督署は、退職者などからの申告に基づき、会社に抜き打ちの調査をすることがあります。また、事前に調査内容や調査日時を通知したうえで調査に入ることもあります。

通知があった場合には、ぜひ信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。調査への立会や、その後の報告書作成・提出を含め、会社の負担を最小限にして速やかな対応をすることができます。

また、顧問の社労士がいれば、抜き打ち調査への対応も安心です。

 

※労基署による監督をわかりやすく調査と表示したところがあります。

 

2017.03.03.解決社労士

<違法残業の発生パターン>

次のような状況下で、法定労働時間を超える勤務をさせると違法残業となります。

・三六協定の労働基準監督署長への届出をしていない

・三六協定の有効期限が切れたままになっている(有効期間は最長1年)

・労働者代表の選出方法が民主的ではないなどにより三六協定が無効

また、三六協定の限度を超える勤務をさせた場合にも違法残業となります。

結局、違法残業というのは、有効な三六協定が届出されない状態で法定労働時間を超える勤務があった場合と、三六協定に違反する勤務があった場合を指すものだといえます。

 

<パン製造販売業者を書類送検>

亀戸労働基準監督署は、平成27326日、労働基準法違反容疑で、パン製造販売業を営む会社の元東京工場エリアマネージャー(工場長)と元工場サンドイッチ部門チームリーダー(部門長)を東京地方検察庁に書類送検しました。

これでわかることは、社長などの経営者ではなくても「使用者」の立場にある者は、長時間労働を行わせたことについて責任を負うということです。

また、サービス残業が発生した場合に、勤務時間の集計をごまかして残業代未払いの原因を作った工場長や部門長が責任を負うこともあるということです。

 

<逮捕・送検の理由>

逮捕・送検の具体的な理由は次の2つです。

東京工場サンドイッチ部門に所属するパートタイム労働者3名(1日の所定労働時間6時間)に対し、最長で月139時間に達する時間外労働を行わせ、労働基準法36条で定める時間外労働協定(三六協定)の延長時間の限度を超える違法な時間外労働を行わせていたこと。

また、本来支払うべき時間外労働に対する割増賃金のうち3割程度の支払しかしていなかったこと。(1月当たり最大で約11万円の時間外手当の不払が発生)

これでわかることは、正社員だけでなくパート社員などについても、労働基準法の順守が求められるということです。

 

<逮捕・送検の背景>

厚生労働省では、長時間労働の抑制と過重労働による健康障害防止対策の強化を喫緊の課題として、平成269月に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減対策推進本部」が設置され、省をあげて取り組むようになりました。

各労働基準監督署でも、過重労働等の撲滅に向けた対策推進のため、著しい過重労働により労働基準法違反が認められるなど重大または悪質な事案に対しては司法処分を含め厳正な対応を強化することとしています。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社の人事担当者は、労働法を中心とする法改正には敏感だと思います。しかし、改正が確実になってから対応したのでは、予算取りや人員配置の問題があり、遅れをとってしまうこともあります。やはり、法改正情報の先取りはライバル企業に負けないためにも必要です。

また、国の政策転換にも目を光らせていないと、今まで大丈夫だったことが逮捕・送検の対象となったことに気付かないものです。

会社を守るためにも、法改正や政策転換の情報に明るい社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.03.02.解決社労士

<偉くなるとタイムカードはなくなる?>

タイムカードは、出勤時刻と退出時刻の記録を残し、労働時間を管理するために使われています。会社によっては、休憩時間や外出時間もタイムカードに記録しています。こんなことは誰でもわかっていることです。

ところが、「労働時間を管理するのは何のためか?」と問われると、残業手当の計算ができないと困るから、サービス残業になるといけないからという答えが返ってくることがあります。

タイムカードを使う目的を、残業手当の計算に絞ってしまうと、残業手当の付かない管理監督者にタイムカードは必要ないことになります。そして、やがてはタイムカードの無いことが、役職者の一種のステータスになります。

 

<タイムカードが無い悲劇>

たとえば、部長が勤務中に心臓発作で倒れたとします。過重労働による労災ではないかと疑われたとき、会社はこの部長が長時間労働ではなかったことをどのように証明するのでしょうか。家族が「帰宅は毎日24:00を過ぎていました。土日も出勤していました」と話したら、これが事実とは違っていても、会社は責任を免れないように思われます。

またたとえば、部長が通勤経路で意識を失い倒れたとします。通勤災害かも知れません。しかし、発見されたのが深夜で、仕事帰りなのかどうかすらわからなければ、労災保険の手続きをしようにも情報が足りません。

こうしたことを想定すると、取締役など経営者を除き、誰でもきちんと労働時間を管理するのが正しいことがわかります。

 

<目的を見失うと>

結局、タイムカードを使う目的は、あくまでも労働時間の管理であって、残業手当の計算はその一部に過ぎないのです。

会社の中には多くのルールが存在します。そして、思考の単純化のために、そのルールの存在理由を1つに絞って説明することも良く行われています。

しかし、これが危険なことは、上の例からも明らかでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社の就業規則を見直す場合、規定を増やすだけでなく削ることもあります。しかし、その規定を削って良いのか悪いのか、安易な判断は会社にとって大きなダメージにつながることもあります。

就業規則の改善や運用の見直しをお考えでしたら、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.02.17.解決社労士

<労働基準監督署による監督指導>

厚生労働省は、時間外労働などに対する割増賃金が支払われていないとして、平成27年度に労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表しました。

これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、不払の割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となったものを取りまとめたものです。

 

<平成27年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果>

(1) 是正企業数               1,348企業

うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、184企業

(2) 支払われた割増賃金合計額      99億9,423万円

(3) 対象労働者数              9万2,712人

(4) 1企業当たり平均741万円、労働者1人当たり平均11万円

(5) 1 企業での支払額のワースト3は、

・1億3,739万円(金融業)

・1億1,368万円(その他の事業(協同組合))

・  9,009万円(電気機械器具製造業)

 

<統計の注意ポイント>

上記の是正結果は、支払額が1企業で100万円以上のものだけを集計しています。100万円未満のものは集計対象に入っていませんので、実際の是正結果はこれらの件数を遥かに上回っています。

 

<サービス残業の落とし穴>

企業の対応として陥りやすい失敗としては、次のようなものがあります。

・昔から続けているやり方が正しいとは限らない。

・所定労働日数、所定労働時間が明確でなければ、割増賃金が計算できない。

・丼勘定で払い過ぎ部分と不払い部分があった場合、相殺されずに不払い部分の是正が求められる。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社として意図的に不払い残業を発生させているわけではないのに、割増賃金を計算するのに必要な労働条件があやふやで計算できていないケースがあります。

労働基準法などの基準がよくわからず、不必要な割増賃金を支払っているケースがあります。

「残業は使用者の命令により行う」という基本が崩れ、従業員の自己判断で残業が行われていて、会社が人件費のコントロール力を失っているケースがあります。

これらの問題を発見し改善するには、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.12.30.解決社労士

<割増賃金の必要な時間外労働・休日労働>

時間外労働(早出・残業)や休日労働は、一般社員から管理監督者に申請して行うものではありません。管理監督者から、一般社員に命令があって初めて行われるものです。

たしかに、一般社員が必要を感じて「残業しましょうか?」と管理監督者に確認することは、業務遂行の上で必要なことです。しかし、この場合でも、管理監督者の指示があって、初めて時間外労働として認められます。〔労働基準法33条、36条〕

 

<管理監督者に求められる行動>

時間外労働が命令に基づき行われるものである以上、管理監督者には、時間外労働の指示を出す権限があり、部門や店舗運営のために、適切な時間外労働の指示を出す義務を負っています。

個々具体的な業務についての残業命令もあるでしょう。しかし、多くの場合は、条件付きの残業命令となります。たとえば、次のようなものです。

・レジで違算が出たら原因の究明が完了次第勤務を終了すること。

・夜間設備工事の立会では工事人が全員退去次第勤務を終了すること。

こうした命令を前提としない時間外労働は、災害発生などの緊急時以外にはありえませんので、一般社員が居残っている場合には、管理監督者から速やかな勤務終了と事務所・店舗からの退出を促しましょう。

 

<タイムカードなどの正しい打刻>

勤務時間の管理方法は、就業規則に規定されているのが通常ですが、タイムカードなどで行われていることが多いでしょう。

そして会社には、労働者全員の勤務時間を適正に管理する義務があります。この義務は、残業手当が支給されない社員も対象となっています。

ところが実際には、勤務を開始した時のタイムカードなどの打刻、勤務を終了した時のタイムカードなどの打刻が、正しい時刻ではない場合があります。

これはルール違反ですので、管理監督者が自ら率先垂範すると共に、一般社員の正しいタイムカード打刻を指導する必要があります。

 

2016.12.26.

<厳しい残業制限>

会社は労働者に、法定労働時間の1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、法定労働時間の実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法32条〕

厳しいですが、これが労働基準法の制限です。この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法119条〕

ですから、基本的にこの法定労働時間を超えて残業させることは「違法残業」ということになります。

残業は、会社が労働者に命じて行わせるものですが、労働者が独断で残業しているのを野放しにしている場合にも、「残業させた」と評価されます。

 

<三六協定の免罰効果>

しかし会社は、労働者の過半数が加入する労働組合や、労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って18時間を超え、また週40時間を超えて労働者を働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

ここで「罰せられない」と言い、「適法になる」と言えないのは、適法であるためには残業させる根拠が就業規則などに規定されている必要があるからです。また、法定労働時間を超えた時間も、さらには三六協定の限度を超えた時間も、残業代支払いの対象となります。

 

<三六協定の届出>

労働者の過半数で組織される労働組合が無い場合には、その事業場ごとに労働者の過半数を代表する者を選出します。あくまでも労働者の代表ですから、会社からの指名ではなく従業員同志の話し合いを基本に民主的に選出します。

そして、労働時間の上限や休日出勤について、会社と代表とが書面で協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出ます。

協定書を届け出たときから協定が有効になりますので、手続きをしないで制限を超える残業があれば違法残業となります。

また、協定の期間は最長1年間ですから、毎年届け出が必要となります。

 

<三六協定を届け出ても違法となる場合>

まず、協定に定めた残業の上限時間を超える残業が「違法残業」となります。

つぎに、労働者の代表が民主的に選出されず、会社から指名されていた場合や会社から推薦を受けていた場合には、選出が無効なので協定も無効となり、協定が無い場合と同じように「違法残業」となります。

さらに、協定の届け出前や期限が切れた後の残業も「違法残業」となります。

 

マスコミでは「違法残業」という報道が時々クローズアップされます。その中には、本当に悪質なものもあるのですが、三六協定の有効期限切れに気付かなかっただけというのもあります。それでも違法は違法です。

有効期限切れなど起こさないように、顧問の社労士(社会保険労務士)に管理させることをお勧めします。

 

2016.11.07.

<管理監督者の基準>

管理監督者とは、経営方針の決定に参画し労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者です。

これは、役職とは無関係ですから、部長でも管理監督者ではなかったり、役職者ではなくても管理監督者であったりします。

具体的には、次のような基準から総合的に判断されます。

・労働時間の管理を受けていないこと

  遅刻、早退、欠勤は問題視されず、給与の減額もありません。

・一般従業員と比べて賃金面で優遇されていること

  給与や賞与がその地位にふさわしく優遇されていることが必要ですから、部下が長時間残業すると給与が逆転するとか、本人が最低の評価を受けたとしても部下が最高の評価を受けた場合よりも高額の賞与が支給されるような処遇が基本です。

・労務管理上の指揮権限があって管理的な仕事をしていること

人事考課を行う、年次有給休暇の許可を与える、業務の指示を与える、採用の決定権限があるなど、会社側の立場に立っていることです。

 

<残業手当の支給>

こうした基準で考えてみて、管理監督者といえる社員には残業手当の支給が不要です。

そもそも、時間管理する側の立場であって、自分自身は時間管理されていないのですから、残業手当の計算もできません。

 

<名ばかり管理職?>

上記のことからすると、「名ばかり店長」「名ばかり管理職」という言葉には違和感があります。

店長は確かに店長であり、管理職は確かに管理職であって、労働基準法上の管理監督者ではないので、「形ばかり管理監督者」と呼ぶのがふさわしいのです。

しかし、マスコミ向きではないですね。

 

<隠れ管理監督者>

会社によっては、肩書が課長でありながら、管理監督者の定義にピッタリあてはまる社員がいます。

たとえば、管理監督者の立場にありながら、社内での肩書が人事課長だと、給与規定の作成と運用が任されていて、自分自身に残業手当を支給するルールにしていることもあります。

こうしたおかしな「お手盛り」を防ぐには、社長自身が労働法に強くなるか、信頼できる社労士(社会保険労務士)と顧問契約を結ぶことが必要でしょう。

 

2016.11.06.

<残業が多い人のイメージ>

入社10年目の正社員Aさんが、毎日午後6時から10時まで残業しているとします。

他部署の管理職や社長から見れば、「Aさんは頑張っているなぁ。プライベートの時間をけずって、会社に貢献している」と見えることでしょう。

一方、Aさんと同期のBさんが毎日定時であがっていたらどうでしょう。「自分だけサッサと帰ってしまって、やる気が無いのか」と見えるかもしれません。

 

<残業が多いAさんの実情>

直属の上司からすると「相変わらずAさんは仕事が遅いなぁ。同じ仕事を与えても、Bさんなら定時であがるのに」という見方かもしれません。

Aさんは帰宅するとバタンキュー。休日は死んだように眠っています。家族は「かわいそうに。こんなになるまで働かせてひどい会社だ。いつか訴えてやる」と感じるものです。

いつも疲れが残っているAさんは、朝から調子が上がらずグダグダしているのではないでしょうか。このAさんの態度は、同僚や後輩にもだらしなく見え、悪影響を及ぼすかもしれません。

直属の上司としては、Aさんに重要な仕事や新しい仕事を任せることができません。何しろ、全く余力が無いのですから。

 

<残業しないBさんの実情>

直属の上司からすると「Bさんには余力がある。一段上の仕事を任せてみようか」ということになります。

Bさんには英会話スクールに通ったり、映画館で楽しんだりする時間があります。休日のプライベートも充実させることができます。それが、仕事に良い影響を与えています。

Bさんの働く姿は、同僚や後輩にも良い影響を与えています。後輩が目標にしているかもしれません。

 

<人件費の配分>

Aさんの残業が、違法なサービス残業であったとしても、Bさんと同じ給与ならもらい過ぎでしょう。ましてや、きっちり残業代が支給されているとしたら、会社に対する貢献度と支払われる給与は逆転しています。

さらに、上級の管理職から良く見えるAさんは、Bさんよりも高い評価を得て、より多額の賞与を支給されるかもしれません。

こうなると人件費の配分が、かなり不合理になってしまいます。

 

<こうしたことを防ぐには>

何となくのイメージではなく、客観的な評価基準に基づいた人事考課が必要です。

賞与の金額を決める人事考課で、残業が多いほど評価を下げる会社があります。方向性としては正しいでしょう。

残業時間の基準を設け、残業時間が基準より少ない社員に対しては、賞与の金額に「浮いた人件費」を上乗せするという会社もあります。

何となくのイメージで評価が決まる会社には、仕事のできない人ばかりが残り、仕事のできる人はあきれて去っていくという現象が見られます。

できる社員を定着させるためにも、みんなのやる気を引き出すためにも、きちんとした人事考課を実施しましょう。

 

本に書いてあったり、ネットで検索できたりする人事考課制度は、一般論に過ぎません。

会社の実情に合った人事考課制度の構築と運用については、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.11.03.

<安易な運用>

上司から部下へ「昨日は2時間の残業ごくろうさん。今日は2時間早く上がっていいよ」という話があると、部下はトクした気分になるかもしれません。

しかし、給与の時間単価が2,000円だとすると、2時間の法定外労働では、

2,000円×2時間×1.25=5,000円

となって、会社は5,000円以上の賃金支払い義務を負います。

一方で、2時間の欠勤控除では、

2,000円×2時間=4,000円

となって、残業代と欠勤控除をそれぞれ正しく計算すると、

5,000円-4,000円=1,000円

となって、プラスマイナスゼロではなくて、総支給額がプラス1,000円になるのが正しいということになります。

しかも、会社都合で2時間早退させたとしたら、休業手当も発生します。

2,000円×2時間×0.6=2,400円

これは、労働基準法26条に規定があります。

法律上、労働者は7,400円だけ多くの賃金を受け取れる計算になります。

しかも、労働法ですから「本人が同意」しても結論は変わりません。

 

<相殺の例外1>

きちんと手続きをして、フレックスタイム制を正しく運用していれば、ある日2時間残業して、別の日に2時間早退すると、結果的に相殺されたのと同じ効果が発生します。

これは、労働者が仕事の都合と個人の都合をバランス良く考えて、自由に労働時間を設定できることによる例外です。

 

<相殺の例外2>

中小事業主は当分の間対象外ですが、月60時間を超える時間外労働の割増賃金(割増率5割以上)については、労働者の健康確保の観点から、割増賃金の支払いに代えて有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。〔労働基準法37条3項〕

代替休暇制度の導入には、事業場の過半数組合、または労働者の過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

この協定では、a.代替休暇を与えることができる時間外労働の時間数の算定方法、b.代替休暇の単位、c.代替休暇を与えることができる期間、d.代替休暇の取得日の決定方法および割増賃金の支払い日を定めるべきとされています。

 

残業時間と早退時間の相殺を正しく行いたい場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

柳田事務所にご依頼いただければ、上手に運用するためのツールのご提供や、研修の実施など、よりスムーズに導入するためのサービスも行っております。

 

2016.09.29.

<労働法は労働者の味方>

労働基準法には労働者に対する罰則がないことからもわかるように、労働基準法をはじめとする労働法は労働者の保護を徹底しています。

したがって、その解釈にあたっても、労働者に明らかな権利濫用があったとか、世間の反感を買うような不誠実な態度が見られたとか、特別な事情がない限りは「労働者は悪くない」という解釈になります。

 

<労働者が勝手に残業している場合>

残業というのは、使用者の命令に応える形で行われるものです。ですから、労働者が勝手に行った残業に対して、使用者が賃金の支払義務を負うというのでは、人件費のコントロールはむずかしくなります。

ところが、労働者が勝手に残業したのに対して、「自分の勝手な判断で残業してはならない」ということを徹底的に指導しなければ、「会社が残業を黙認した」ということになり、残業代を支払わなければなりません。

これを防ぐには、就業規則に「自分の勝手な判断で残業してはならない」ということをきちんと規定し、違反した場合には、始末書をとって反省してもらう譴責(けんせき)処分などの懲戒規定が必要となることもあるでしょう。あるいは、人事考課の対象とすることも考えられます。

また、どのような場合に残業が必要か、包括的な基準と具体的な基準を書面化して労働者に示し教育しておく必要があります。これをしておかないと、上司の命令がなければ一切残業できないということになり不都合だからです。

 

<労働者がタイムカードの打刻を怠っているとき>

労基署はタイムカードなどの出勤退出の時刻を基準に、労働時間を正しく計算し直すよう求めてきます。ですから、労働者がきちんと打刻していなければ、計算できません。これは、労働者の自業自得であるようにも思えます。

ところが、きちんとタイムカードを打刻するように指導し、打刻もれがあれば、その都度正しい時刻を確認するのが、会社の責任だとされます。そして、労働者から「この日は23時頃まで残業した」「先月の日曜日はいつも4時間程度休日出勤した」という申し出があれば、基本的にはこれを信じて計算しなければなりません。

これを防ぐには、打刻の指導と、就業規則に打刻義務を規定し、必要に応じて懲戒処分についても規定を置き、人事考課の対象とすることも考えられます。

一般に、残業手当をきちんと支払わない職場では打刻もれが目立ちます。ですから、打刻もれが多いという点については、労基署の監督官も注目します。これは大きな注意ポイントでしょう。

 

<労働者がタイムカードを不正に打刻しているとき>

労働者が出勤直後にタイムカードを打刻せず、しばらく働いてから本来の出勤時刻に打刻するという不正があります。また、タイムカードを打刻してから残業するという不正もあります。

場合によっては、ミスの多い社員や加齢によって生産性の低下した社員が、能力不足をカバーするために自主的に行っていることもあるでしょう。

ところが客観的に見ると、これは会社が得をして、労働者が損をする行為です。そのため労基署の監督官は、会社が労働者に対して不正な打刻を強要しているのではないかと疑ってしまいます。

これを防ぐには、打刻を怠っている場合の対応に加えて、きちんとした評価基準の設定と、正しい人事考課が必要です。生産性の低い労働者については、同期の社員よりも基本給や時給が低いのは当然なことなのです。厳しい話ですが、これをきちんとしないと本人も苦しいですし、労基署からは違法行為を指摘されてしまいます。

 

<労働者に落ち度があって未払い賃金の支払が不要な場合とは>

残業が必要となる場合の基準を明確に示し教育して、労働者の個人的な判断による勝手な残業や休日出勤を禁止し、違反者に対する懲戒や人事考課の評価を落とすことも行っている会社で、教育されても注意されても懲戒処分を繰り返されても、身勝手な自主残業をやめない労働者に対しては、その部分の賃金支払い義務が発生しない場合もあるでしょう。

タイムカードを打刻しなかったり不正に打刻したりの場合にも、同様に考えてよいでしょう。

ただ、こうした社員を会社が放置しておくというのは、いかにも不自然です。解雇の対象になると思われるからです。

こうしてみると、解雇されずに働いている社員について、労基署から賃金未払いを指摘されたら、会社としては支払わねばならないのが当然ともいえます。

 

2016.08.13.

<原則の法定労働時間>

使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはなりません。〔労働基準法32条1項〕

もちろん、三六協定を交わし労基署に届け出れば、協定の範囲内での時間外労働は処罰の対象となりません。

ただし、法定労働時間を超える労働に対しては、時間外割増賃金の支払いが必要です。

ここで1週間というのは、就業規則などで取り決めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

 

<労働基準法施行規則による特例>

公衆の不便を避けるために必要なもの、その他特殊な必要があるものについては、その必要かつ労働者の健康・福祉を害しない範囲で、厚生労働省令による例外を設けることができることとされています。〔労働基準法施行規則25条の2第1項〕

こうして例外とされた特例措置対象事業場の法定労働時間は、平成13年4月1日から、1日8時間、1週44時間に改正されました。これが、時間外割増賃金の基準となります。

 

<特例措置対象事業場>

次に掲げる業種に該当する常時10人未満の労働者を使用する事業場が対象です。

 商業 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
 映画・演劇業 映画の映写、演劇、その他興業の事業
 保健衛生業 病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
 接客娯楽業 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

事業場の規模(人数)は、企業全体の規模をいうのではなく、工場、支店、営業所等の個々の事業場の規模をいいます。

 

2016.06.09.

<年俸制なら残業代は支払わなくてよい?>

プロ野球の選手なら年俸制で残業代の支払いはありません。

しかし一般の労働者には、残業代をはじめとする割増賃金の支給が原則必要です。

労働基準法は、時間外労働と休日労働・深夜労働の割増賃金を定めていて、年俸制を例外としていません。

この割増賃金の支払いを使用者に義務付ける理由は、法定労働時間と法定休日の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行おうとすることにあります。

この趣旨は、どのような賃金体系であっても変わりがありません。

また、たとえ三六協定の無い、あるいは協定の限度を超える違法残業であっても、割増賃金は支払わなければなりません。

 

<なぜ年俸制では割増賃金が割高なのか?>

年俸制における代表的な賃金の支払い方法には、次の二つがあります。

・賞与無し=年俸額の12分の1を月例給与として支給する

・賞与有り=年俸額の一部を賞与支給時に支給する(例えば、年俸の16分の1を月例給与として支給し、年俸の16分の4を二分して6月と12月に賞与として支給する)

このうち、賞与有りの支払い方法の場合には、賞与が割増賃金の算定基礎額に含まれるという通達があるのです。〔平成12年3月8日基収78〕

したがって、月例給与よりも高い「年俸の12分の1」を基準に割増賃金を計算することになりますから、ある意味、賞与の二重払いが発生するのです。

 

<書面をもって合意をすれば合法に>

労使の合意で年俸に割増賃金を含むものとする場合についても、上記の通達が基準を示しています。

年俸がいくらで、その中に何時間分の残業代としていくら含まれているのか、書面をもって合意し、その12分の1を超える残業が発生した月には、その都度不足分の残業代を月々の給与と共に支払えばよいのです。

ただし、深夜労働や休日出勤の割増賃金は別計算となります。

 

ちなみに実際の通達は、次のように言っています。

「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労基法37条に違反しないと解されるが、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働等を行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われていない場合は、労基法37条違反となることに留意されたい。また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、同条違反となることに留意されたい。」

 

2016.04.07.

<所定労働日数とは?>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

年次有給休暇など休暇の取得や欠勤の発生がありますので、実労働日数とは一致しません。

年間所定労働日数は、うるう年も平年と同じ日数とすることが多いようです。

月間所定労働日数は、大の月も小の月も同じ日数とすることが多いようです。

年間所定労働日数÷12=月間所定労働日数とするのが一般です。

 

<残業手当の計算>

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給×1.25などとして計算するのが一般です。

この場合、月間所定労働時間=1日の所定労働時間×月間所定労働日数で計算されます。

会社によっては、年間所定労働時間÷12を基準に直接月間所定労働時間を定めています。

月によって、月間所定労働日数が変動すると、残業手当の単価が月によって変動するなどの不都合が発生しうるので、同じ日数にするのが無難でしょう。

ここで勘違いしやすいのは、月間所定労働日数を超えて勤務したら残業が発生するのではないか、反対に下回ったら欠勤になるのではないかというものです。しかし、月間所定労働日数は月給から時間給を計算するために使っているので、直接に割増賃金や欠勤控除の基準となるものではありません。

 

<出勤率の計算>

労働基準法は、「全労働日の八割以上出勤」を年次有給休暇付与の条件としています。〔労働基準法39条1項〕

8割未満の出勤率なら、年次有給休暇を付与しなくてもかまいません。

ここで、「全労働日」とは所定労働日数を意味します。

つまり、所定労働日数が決まっていなければ、出勤率の計算ができませんから、年次有給休暇付与の可否が判断できません。「あの人は休みがちだから半分だけ付与しておこう」というアバウトなことはできないのです。

 

2016.03.26.

<正しい計算の法的根拠は?>

労働基準法には、残業手当を何分単位で計算するのか規定がありません。

しかし、規定が無いからといって、労働局や労働基準監督署が企業の残業代計算について、指導できないというのでは困ります。

そこで、法令の具体的な解釈が必要な場合には、行政通達が出されて、その内容が解釈の基準となります。

残業手当の計算についても、労働省労働局長通達が出されています。〔昭和63年3月14日基発第150号〕

531ページまである行政通達の220ページから221ページにかけて、次のような内容が記載されています。

 

次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、…違反としては取り扱わない。

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の合計について、1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げること。

・1時間当たりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数がある場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げること。

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の割増賃金の総額に1円未満の端数がある場合は、上記と同様に処理すること。

 

結局、この基準に沿った四捨五入は許されますし、たとえば常に切り上げるなど労働者に有利なルールで運用することも問題ありません。

 

<行政通達の効力は?>

この行政通達は、厚生労働省が労働局や労働基準監督署に、企業指導のための具体的な指針を示したものです。

ですから、労働基準法などの法律とは異なり、行政通達が直接企業を拘束するものではありません。

しかし、企業から「行政通達の内容が不合理だから従いません」と主張するためには、行政訴訟で指導の不当性を争い、裁判所に行政通達の違法性を確認してもらうしかないでしょう。

これは、立法機関が法律を作り、行政機関が執行し、司法機関がその違法性や違憲性を審査するという三権分立のあらわれです。

結局、現実的には、どの企業もこの行政通達に従うしかないでしょう。

 

<トイレに行ったら減給?>

これも法令には規定が無いのですが、一般に「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。仕事をしなければ賃金を支払う必要がないということです。

この原則をしゃくし定規にとらえると、トイレに行っても、タバコを吸っても、居眠りをしても、1分単位で給料を減らして良いように思えます。

しかし、この原則は労働契約の性質から導き出されています。労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによって成立する契約です。〔労働契約法6条〕

つまり「働くなら払います」の裏返しで、「働かないなら払いません」ということを言っているに過ぎません。

そもそも、労働契約を締結する際には、いちいち確認しなくても、トイレに行くことぐらいは当然に了解済みです。タバコについては、その職場のルールが説明されるでしょう。そして、居眠りについては、ひどければ懲戒処分の対象としておけば済むことです。

結局、労働時間の中には、労働以外のことをする時間もある程度含まれているという了解のもとで、労働契約が成立し給与も決められているといえるのです。

 

2016.03.23.

<定額(固定)残業代とは?>

1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

 

<そのメリットは?>

残業時間を減らしても給与が減らないので、長時間労働の抑制になります。

会社にとっても、人件費が安定するので予算・計画が立てやすくなります。

 

<合法的に運用するには?>

残業について1か月の基準時間を定めて、これに応じた定額の残業代を設定します。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。賞与でまとめてということはできません。

深夜労働や休日労働の割増賃金は、別計算で支給します。

深夜労働や休日労働の分も定額(固定)にすることは、理論的には可能です。しかし、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのでお勧めできません。

 

<具体的な計算方法は?>

1日8時間、1週40時間、1か月の勤務日数が22日で月給が設定されている場合を例にとります。

残業の基準時間が30時間で、基本給+定額残業手当=20万円にしたいときは、

定額残業手当=基本給÷(8時間×22日)×1.25×30時間なので、

20万円-基本給=基本給×37.5÷176

基本給×(37.5÷176+1)=20万円

基本給=20万円÷(37.5÷176+1)

これを計算すると、164,871円となります。

定額残業手当は、20万円-164,871円=35,129円です。

164,871円の基本給の場合、1か月の勤務時間が8時間×22日=176時間なら、

30時間分の残業手当は、(164,871円÷176時間)×30時間×1.25=35,129円で計算の正しいことが確認できます。

 

<その他の注意点>

このとき注意したいのは、最低賃金です。計算結果の基本給が、最低賃金×176時間を下回ると最低賃金法違反となります。

なお、基本給に定額残業代を含めたいときは、上記の基本給+定額残業手当を基本給として設定すればOKです。この場合でも、きちんと内訳を表示する必要がありますから、本来の基本給分がいくらで、定額の残業代が何時間分でいくらなのか明示しましょう。

さらに、残業時間が基準時間を超える場合に、残業手当を別途支給するときの基準額も示す必要があります。何も示さないと、定額残業代を含んだ基本給をベースに残業手当を計算することになって、人件費が膨らんでしまうので注意しましょう。

 

2016.02.19.