残業の記事

<原則の割増賃金>

使用者は、過重な労働に対する労働者への補償のため、原則として次の割増賃金を支払う義務があります。

・1日8時間または1週40時間を超えて時間外労働させた場合25%以上

(特例対象事業場では、1週44時間が基準となります)

・深夜(原則として午後10時~翌日午前5時)に労働させた場合25%以上

・週1日の法定休日に労働させた場合35%以上

 

 <割増賃金の計算基礎>

割増賃金の計算の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当を含めなくてもかまいません。ただしこれは、名称ではなく内容により判断されます。

 

<割増の条件が重なった場合>

深夜に時間外労働を行った場合には、25% + 25% = 50% 以上の割増賃金です。

法定休日に深夜労働を行った場合には、35% + 25% = 60% 以上の割増賃金です。

しかし、法定休日に時間外労働を行った場合には、35%以上の割増賃金です。

この割増賃金ですが、働き方改革の推進により残業手当が減ってしまう不都合を緩和するために、割増率を法定の率よりも高く設定する動きが見られます。

 

<「限度時間」を超える時間外労働>

「限度時間」とは、「時間外労働の限度に関する基準」が定める時間のことで、1か月45時間、1年間360時間です。

「限度時間」を超える時間外労働については、法定割増賃金率(25%以上)を超える率とするよう努めなければなりません。そして、具体的な割増率は三六協定に明記することになります。

たとえば、「限度時間」を超える時間外労働の割増率を30%とした会社の場合には、深夜労働と重なれば 30% + 25% = 55% 以上の割増賃金となります。

 

<1か月60時間を超える時間外労働>

1か月60時間を超えて時間外に労働させた場合には、50%以上の割増賃金となります。

したがって、1か月60時間を超える時間外労働のうち、深夜労働と重なる部分は50% + 25% = 75% 以上の割増賃金となります。

 

<中小企業の例外>

1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金は、中小企業については適用が猶予されていますので、「限度時間」を超える時間外労働の割増率が適用されています。

適用が猶予される中小企業の範囲は、次のとおり業種ごとに、資本金の額または出資の総額と常時使用する労働者数の限度が決められています。

小売業 ― 5,000万円以下 または 50人以下

サービス業 ― 5,000万円以下 または 100人以下

卸売業 ― 1億円以下 または 100人以下

その他 ― 3億円以下 または 300人以下

「資本金の額または出資の総額」と「企業全体での常時使用する労働者の数」のどちらかが基準以下であれば、中小企業として適用が猶予されることになります。

 

<猶予期間の終了>

 

働き方改革関連法により、中小企業でも2023年4月1日からは1か月に60時間を超える時間外労働を行わせた場合、50%以上の割増賃金を支払う義務が課せられることになります。

 

2018.11.26.解決社労士

<特別条項付き三六協定>

原則として、三六協定の範囲内で時間外労働や休日出勤が許されるわけですが、どうしても臨時的に「限度時間」を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、「特別条項付き三六協定」を結ぶことにより、「限度時間」を超える時間を延長時間とすることができます。

ここで「限度時間」とは、「時間外労働の限度に関する基準」が定める時間のことで、1か月45時間、1年間360時間です。

 

<特別条項に定める内容>

「特別条項付き三六協定」では、次の項目について定める必要があります。

・原則としての延長時間(限度時間以内の時間)

・限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない具体的な「特別の事情」

・一定期間途中で「特別の事情」が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続

・限度時間を超える一定の時間

・限度時間を超えることができる回数

 

<特別条項を定めるときの注意点>

「特別の事情」はできるだけ具体的に定めます。また、臨時的なものに限られ、一時的または突発的であること、全体として1年の半分を超えないことが見込まれることが必要です。

さらに、長時間の労働(週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた場合)により疲労の蓄積が認められ、または健康上の不安を有している労働者が申し出た場合には、医師の面接指導を受けさせる義務が会社に発生します。〔労働安全衛生法66条の8、66条の9、104条〕

特別条項付き三六協定によっても、1か月の延長時間は80時間までと考えるのが、現在でも常識的な上限となっています。

働き方改革関連法により、このことが罰則付きで法定されましたので、特に注意が必要です。

 

2018.11.25.解決社労士

 

働き方改革関連法についての通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日基発0907第1号)」が公表されました。

 

第4 中小事業主における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の見直し(新労基法第138条及び整備法附則第1条関係)

1 趣旨

 中小事業主において特に長時間労働者の比率が高い業種を中心に、関係行政機関や業界団体等との連携の下、長時間労働の抑制に向けた環境整備を図りつつ、中小事業主に使用される労働者の長時間労働を抑制し、その健康確保等を図る観点から、月 60 時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする労働基準法第 37 条第1項ただし書の規定について、中小事業主にも適用することとしたものであること。

 

 2 猶予措置の廃止(新労基法第 138 条関係)

 上記1の趣旨に基づき、労働基準法第 138 条を削除し、中小事業主についても月 60 時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上としなければならないものとするものであること。

 なお、週休制の原則等を定める労働基準法第 35 条が必ずしも休日を特定すべきことを求めていないことに着目し、月 60 時間を超える時間外労働に対する5割以上の割増賃金率の適用を回避するために休日振替を行うことにより、休日労働の割増賃金率である3割5分以上の割増賃金率を適用することは、労働基準法の趣旨を潜脱するものであり、望ましくないことに留意 すること。

 

 3 施行期日(整備法附則第1条関係)  

 猶予措置の廃止に係る改正規定の施行期日は、平成 35 年4月1日である こと。

 

法改正により、月間60時間超の時間外労働に対する割増賃金率は、2割5分以上から5割以上に引き上げられています。

この法改正は、中小企業には猶予されていましたが、2023年4月1日から中小企業であっても大企業と同様に5割以上の割増率となります。

社内で月間60時間を超える残業をする人がいるのなら、2割5分の割増率であっても、もう一人雇った方が、会社の人件費は安くて済みます。

幸い2023年度に施行されるということですので、東京オリンピックが終わってから、チャンスを伺って新人を雇うのが得策でしょう。

 

2018.10.07.解決社労士

<定額(固定)残業代>

1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

残業時間を減らしても給与が減らないので、長時間労働の抑制になります。

会社にとっても、人件費が安定するので人件費の予算や計画が立てやすくなります。

 

<適法性>

かつては違法な運用が横行していたために、定額(固定)残業代そのものが悪であるかのように言われていました。

しかし、適法に運用する会社が増えてきており、必ずしも悪いものとは見られなくなりました。

ハローワークの求人票でも、正しく内容を明示すれば問題ないものとして扱われています。

適法な導入と運用の概要は次のとおりです。

まず、残業について1か月の基準時間を定めて、これに応じた定額の残業代を設定します。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。

賞与でまとめて支給することはできません。

深夜労働や休日労働の割増賃金は、別計算で支給する方式をお勧めします。

たしかに、深夜労働や休日労働の分も定額(固定)にすることは、理論的には可能です。

しかし、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのでお勧めできません。

この点は、労働基準監督署でも、このように指導されているはずです。

 

<具体的な計算方法>

定額(固定)残業代の設定に必要な計算はやや複雑ですから、Excelなど表計算ソフトを活用した方が良いと思います。

ここでは、1日8時間、1週40時間、1か月の勤務日数が22日で月給が設定されている場合を例にとります。

残業の基準時間が30時間で、基本給+定額残業手当=25万円にしたいときは、

定額残業手当=基本給÷(8時間×22日)×1.25×30時間なので、

25万円-基本給=基本給×37.5÷176

基本給×(37.5÷176+1)=25万円

基本給=25万円÷(37.5÷176+1)

これを計算すると、206,089円となります。

定額残業手当は、25万円-206,089円=43,911円です。

206,089円の基本給の場合、1か月の勤務時間が8時間×22日=176時間なら、

30時間分の残業手当は、(206,089円÷176時間)×30時間×1.25=43,911円で計算の正しいことが確認できます。

※ただし実際の給与計算では、円未満の端数処理のルールがありますから、上記のとおりにいかない部分もあります。

 

<その他の注意点>

このとき注意したいのは、最低賃金です。

計算結果の基本給が、最低賃金×176時間を下回ると最低賃金法違反となります。

上記の例では、206,089円÷176時間=1,170円ですから、1時間あたりの賃金が1,170円となり、現在どの都道府県でも最低賃金を上回ります。

しかし、基本給+定額残業手当=20万円の場合を想定すると、1時間あたりの賃金が936円となり、東京都や神奈川県では最低賃金を下回ってしまいます。

これでは最低賃金法違反となってしまいます。

なお、基本給に定額残業代を含めたいときは、上記の基本給+定額残業手当を基本給として設定すればOKです。この場合でも、きちんと内訳を表示する必要がありますから、本来の基本給分がいくらで、定額の残業代が何時間分でいくらなのかを対象者に明示しましょう。

さらに、残業時間が基準時間を超える場合に、残業手当を別途支給するときの基準額も示す必要があります。

何も示さないと、定額残業代を含んだ基本給をベースに残業手当を計算することになってしまいます。

これでは、想定外に人件費が膨らんでしまうので注意しましょう。

 

2018.09.08.解決社労士

<スタートは法定手続きから>

フレックスタイム制は、労働基準法の規定によって認められています。

この規定に定められた手続きを省略して、形ばかりフレックスタイム制を導入しても、すべては違法であり無効となります。

そのポイントは次のとおりです。

・業務開始時刻と業務終了時刻は労働者が決めることにして、これを就業規則などに定めます。

・一定の事項について、会社側と労働者側とで労使協定を交わし、協定書を保管します。これを労働基準監督署長に提出する必要はありません。

 

<無効だとどうなるのか>

上記の法定手続きをせずに、残業時間を8時間分貯めると1日休むことができるというようなインチキな運用をしても無効です。

無効ということは、フレックスタイム制が無いものとして賃金の計算をしなければなりません。

間違って、フレックスタイム制のルールで賃金を計算して支払ってしまった場合には、不足する差額分を追加で支払わなければなりません。

たとえば、法定労働時間を超える8時間の残業に対しては、10時間分の賃金支払いが必要です。

( 8時間 × 1.25 = 10時間 )

しかも、消滅時効の関係で、最大2年分遡って精算することになります。

 

<違法だとどうなるのか>

正しい手続でフレックスタイム制を導入した場合を含め、次のような違法な運用が見られます。

・残業手当を支払わない。

・残業時間が発生する月は年次有給休暇を取得させない。

・残業時間を翌月の労働時間に繰り越す。

・業務開始時刻や業務終了時刻を上司など使用者が指定してしまう。

・コアタイムではない時間帯に会議を設定し参加を義務づける。

・18歳未満のアルバイトにフレックスタイム制を適用してしまう。

違法だと、労働基準法の罰則に触れるため罰せられることがあります。

 

2018.08.30.解決社労士

 <上司による管理>

上司は部下の仕事ぶりを管理しています。しかし、部下が全員帰るまで、上司が会社に残っているというのも不合理です。

ある程度育った部下のことは信頼して、ひとりで残業させるというのも許されるでしょう。

しかし、部下だけで残業させておいてノーチェックというのも、上司としての職責を果たしていないことになります。

残業代が欲しくてただ残っているだけの部下に気付かないのではお話になりません。

 

<勝手に残業したのなら>

残業は、会社が社員に命じて行わせるものです。具体的には、上司が業務上の必要から、部下に命じて行わせることになります。

少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。

それなのに、部下が自己判断で勝手に会社に残って働いたのなら、上司が指導しなければなりません。

しかし、この場合でも最初の1回は残業代を支払わなければなりません。なぜなら、会社側である上司の教育指導不足が原因だからです。

 

<残業命令があったとしても>

たしかに「明日の会議の資料を完成させてから上がるように」とは言ったものの、残業時間の長さの割に完成度が低いのであれば、上司から部下に具体的な事情を聴かなければなりません。

解らなかったり迷ったりで時間がかかったのであれば、上司も一緒に残業すべきだったのかもしれません。

能力不足が原因であれば、少なくとも会議資料の作成については、ひとりで残業させないようにする必要があるでしょう。

 

<ひとり残業を発生させない工夫を>

ひとりで残業するというのはモチベーションが下がりますし、たった一人のために光熱費をかけるというのも不合理です。

たとえ部下が残業の必要性を主張したとしても、ひとり残業になるのなら、上司はその部下を帰らせる勇気を持つべきです。

残業の必要性を申し出るタイミングが遅いのなら、仕事の進め方やスケジューリングについての指導が必要です。

仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間の総合計が長い一方で残業が発生している社員は、人件費の割に仕事が進んでいないことになります。

このような部下に対しては、上司の徹底的な指導が必要でしょう。

 

2018.08.28.解決社労士

<労働基準監督署の調査(監督指導)と改善>

平成30(2018)810日、厚生労働省が平成29年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表しました。

これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への調査(監督指導)を行った結果、平成294月から平成303月までの期間に不払だった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。

調査(監督指導)の対象となった企業では、定期的にタイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか確認するなど、賃金不払残業の解消のためにさまざまな取組が行われています。

厚生労働省では、引き続き、賃金不払残業の解消に向け、調査(監督指導)を徹底していくとのことです。

 

【平成29年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント】

(1) 是正企業数                               1,870企業(前年度比 521企業の増)

      うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、

                                                         262企業(前年度比 78企業の増)

(2) 対象労働者数                               20万5,235人(同 107,257人の増)

(3) 支払われた割増賃金合計額   446億4,195万円(同 319億1,868万円の増)

(4) 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり2,387万円、労働者1人当たり22万円

※支払額が1企業で合計100万円以上となったケースだけの統計

 

<発覚例1

◆タイムカード打刻後に作業を行うよう指示されているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆タイムカードの記録とメールの送信記録とのかい離や労働者からのヒアリング調査などから、タイムカード打刻後も作業が行われており、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

・かつては、労働基準監督署が立入調査(監督指導)を行う場合、タイムカードなどの資料を確認する他、経営者や人事部門の社員の話を聞く形で行われました。現在ではこれらに加えて、労働基準監督官が直接労働者に聞取り調査(ヒアリング調査)を行えるようになっているため、賃金不払残業の実態は明らかになりやすくなっています。

 

<発覚例2

◆インターネット上の求人情報等の監視情報を受けて、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、自己申告(労働者が始業・終業時刻をパソコンに入力)により労働時間を管理していたが、自己申告の記録とパソコンのログ記録や入退室記録とのかい離が認められ、また、月末になると一定の時間を超えないよう残業を申告しない状況がうかがわれるなど、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

監視情報

厚生労働省は、平成27年度から委託事業により、インターネット上の賃金不払残業などの書き込み等の情報を監視、収集する取組を実施している。労基署は、この情報に基づき必要な調査等を行うこととしている。

 

・自己申告による残業時間をもとに残業手当を支給すれば適法というわけではありません。あくまでも、勤務の実態に応じた支払でなければ賃金不払残業となります。

 

<発覚例3

◆違法な長時間労働が行われているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、自己申告(労働者がパソコン上の勤怠管理システムへ入力)による労働時間管理を行っていたが、自己申告の記録と入退室記録とのかい離、労働者からのヒアリング調査などから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

・パソコンの使用履歴や建物への出入りの記録は、労基署にとって基本的なチェック項目です。自己申告制の場合には、事実との違いを会社が定期的にチェックすることも義務づけられています(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。

 

2018.08.14.解決社労士

<残業の性質>

残業は、会社が社員に命じて行わせるものです。具体的には、上司が業務上の必要から、部下に命じて行わせることになります。

少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。

そして、いつも上司がいるわけではありませんから、伝票の処理が終わらないときは残業しなさい、お客様のクレームがあったときは対応して報告書を作成するまでは残業しなさいという包括的な命令もありえます。

この場合には、ダラダラ残業の危険がありますから、上司は十分な事後チェックをしなければなりません。

ところが、社員がこの原則に違反して残業してしまった場合、タイムカードなどに出退勤の記録が残っている以上、会社は残業代を支払わざるを得ません。

 

<残業代を稼ぎたい社員の行動>

仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間は、本当の労働時間ではありません。

こうした時間の総合計が長い一方で、残業が発生している社員は、人件費の割に仕事が進んでいないことになります。

つまり、生産性が低いわけですから、これを人事考課に反映させて評価を低くし、賞与の金額を下げたり昇給を抑えたりということは、人事考課制度本来の目的にかなっています。

 

<残業したがらない社員の行動>

早く会社を出て、家に帰りたい、飲みに行きたい、パチンコをしたいなど、個人的な欲求から残業したがらない社員もいます。

残業の本来の性質からすれば、周囲の雰囲気を察して自発的に残業を打診しないからといって評価を下げてしまうのは、人事考課制度の適切な運用ではありません。

しかし、上司から残業命令が出ても、これを無視して業務を離れてしまうのは、評価を下げる正当な理由となりますし、しばしば行われれば懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<残業と人事考課との関係>

このように、残業時間の多寡と評価との関係は単純ではありません。

残業が多い理由、あるいは、少ない理由を踏まえて評価を考えることが必要で

す。

単純に考えれば、自己都合の身勝手な残業と残業拒否は評価を下げるといえるでしょう。

 

<大前提として>

法定労働時間を超える残業は、所轄労働基準監督署長への三六協定書の届出が無ければ違法になってしまいます。

そもそも、就業規則に残業を命じる場合がある旨を規定しておかなければ、残業を命じる根拠がありません。

こうした手続き的なことは、残業の大前提となりますから、足元をすくわれないよう、しっかりと行っておきましょう。

 

2018.06.13.解決社労士

<人件費を考えると>

たとえば、月給20万円の社員を3人雇って、月45時間の残業をさせるよりは、4人雇って残業ゼロにした方が、同じ人件費でも生産性が上がります。

 

********以下は細かい説明です********

 

月給20万円の社員が、月に45時間残業しているとします。

月間所定労働時間が174時間(8時間勤務で週休2日)だとすると、時間単価は、

 

20万円 ÷ 174時間 = 1,150円(円未満切り上げ)

 

法定外残業の割増賃金は、

 

1,150円 × 1.25 1,438円(円未満切り上げ)

 

毎月45時間残業しているとすると、その残業代は、

 

1,438円 × 45時間 = 64,710

 

これが3人だと、

 

64,710円 × 3人 = 194,130

 

これは、ほぼ1人分の月給に相当します。

 

つまり、ある会社に、あるいは、ある部署に3人いて、毎月45時間残業しているのなら、もう一人雇って残業しないことにすれば、同じ人件費で生産性が上がるということです。

 

なぜなら、3人が残業した時間は、

 

45時間 × 3人 = 135時間

 

これは、月間所定労働時間の174時間を大きく下回るわけですから、4人で今までより多くの仕事をこなせますし、疲労も軽減されるので生産性が上がるということになります。

 

もちろん、残業代を不当にカットしていれば、この計算は狂ってきます。

しかし、日本は法治国家です。

「残業代をキッチリ支払っていてはやっていけない」などという会社はやがて消えます。

ですから、上の計算は長期的に見れば正しいと思います。

 

<人間関係を考えると>

社長を含め4人の会社が1人増員して5人にすると、人間関係が66%も複雑になりますから、報連相やコミュニケーションが弱い会社ではギクシャクしてしまいます。

 

********以下は細かい説明です********

 

紙の上に4つの点を打って、そのうちの2つの点を結ぶ線を引くと、全部で6本の線を引くことができます。これは、4人いる場合に人間関係が6通りできることを意味します。

 

紙の上に5つの点を打って、そのうちの2つの点を結ぶ線を引くと、全部で10本の線を引くことができます。これは、5人いる場合に人間関係が10通りできることを意味します。

 

ちなみに、社員がn人の場合の人間関係は、n(n-1)÷2 通りとなります。

 

こうして、4人から5人に1人増えただけで、人間関係は6通りから10通りに66%も増えてしまうことになります。

 

<増員するにあたっては>

物理的な対応も必要です。

机やロッカー、制服など、什器・備品も増やさなければなりません。

社内のルール作りも急がれます。

従業員が10名になれば、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届出を行う必要がありますし、安全衛生推進者の選任なども必要になってきます。

こうしてみると、社員を増やすのも気が重いものです。

しかし、事業拡大のためには、人員の増加はやむを得ません。

 

ルール作り、労務管理、労働安全衛生といったことについては、それを専門に行っている国家資格者の社会保険労務士(社労士)がいるわけですから、悩んでいないで委託することをお勧めします。

 

2018.03.05.解決社労士

<労働者の過半数を代表する者とは>

就業規則の新規作成・変更の所轄労働基準監督署長への届出や、「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」など労使協定を締結する際に、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出し、労働者側の締結当事者とする必要があります。

 

<正しい選出手続きが必要な理由>

過半数代表者になることができる労働者の範囲は限定されていて、選出手続きにも制限があります。

この過半数代表者の選出が適正に行われていない場合には、たとえば36協定を締結し労働基準監督署長に届け出ても無効となります。

つまり、36協定書の届出をきちんとしてあっても、そもそもその協定書が無効とされれば、残業させたことがすべて違法になってしまうというリスクがあります。

 

<過半数代表者となることができる労働者>

労働基準法412号に規定する管理監督者でないことが必要です。

管理監督者とは、一般的には部長、工場長など、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指します。

しかし、この基準を誤って解釈している会社が多いのが実態です。

過半数代表者の選出に当たっては、役職者は避けた方がよいでしょう。

 

<労働者全員での選出>

選出手続きは、投票、挙手の他に、労働者の話し合いや持ち回り決議などでも構いませんが、労働者の過半数がその人の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きがとられていることが必要です。

また、選出に当たっては、パートやアルバイトなどを含めたすべての労働者が手続きに参加できるようにします。

こうした手続きがとられたことの記録を残しておくことをお勧めします。

 

<会社側が関与しない選出>

会社の代表者が特定の労働者を指名したり、候補者を数名指定してその中から選出したりするなど、使用者の意向によって過半数代表者が選出されたと疑われる場合、その過半数代表者選出は無効です。

 

<選出手続きを行うこと>

社員親睦会の幹事などを自動的に過半数代表者にした場合や、社内で特定の立場にある人が自動的に過半数代表者になるというのでは、その人は「選出」されたわけではありませんので、過半数代表者の選出にはなりません。

過半数代表者の選出手続きは、それ自体を独立させて行いましょう。

 

思わぬところで足元をすくわれないよう、専門家の関与は必要です。

労務管理について専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

 

2017.12.25.解決社労士

<YOMIURI ONLINE 20171128日の報道>

YOMIURI ONLINE によると、違法残業事件で有罪判決が確定した大手広告会社・電通(東京)への取材で、事実上の未払い残業代として計約23億円を社員に支給することになったそうです。

社員の自己申告に基づいて勤務時間を改めて精査した結果で、20174月から今年3月の間の未払い残業代を一時金として支払うそうです。

自己啓発や情報収集名目で、職場に残る社員が多数いたということです。

 

<勤務時間を改めて精査>

電通が、勤務時間を改めて精査したということは、労働時間の適正な把握ができていなかったことを認めているのでしょう。

2017年120日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定され公開されました。

各企業は、このガイドラインに沿って労働時間を把握することになります。

 

<20174月から今年3月の間>

電通は、20174月から今年3月の間の未払い残業代を支払うそうですが、何故1年分にしたのかはわかりません。

会社側が独自に調査を進め、自主的に事実上の未払い残業代を支払うので、1年間という期間については、会社としての判断によるのでしょう。

これがもし社員からの請求であれば、過去2年分の請求になると思われます。

なぜなら、賃金の請求権の消滅時効期間は2年間だからです。〔労働基準法115条〕

この2年間というのは、民法が一般の賃金について消滅時効期間を1年間と定めているのに対して、労働者保護のため期間を延長しているものです。〔民法1741号〕

 

<民法改正による影響>

2017年526日、「民法の一部を改正する法律」が参議院で可決・成立し、同年62日に公布されました。

施行日は、原則として公布日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

改正民法は、債権者が権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間で時効消滅するという規定になっています。

労働基準法が今のまま、2年間の消滅時効期間を規定していたのでは、労働者保護の趣旨に反しますから、労働基準法115条が削除されて改正民法が適用されるのではないでしょうか。

そうなると、会社は過去5年分から10年分の未払い残業代を請求されるようになるわけです。

あくまでも個人的な見解です。

 

<自己啓発や情報収集名目>

自己啓発や情報収集名目で職場に残っている場合、これを残業時間に含めるべきかというと、どういう名目で残っているかは基準になりません。

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により、労働者が業務に従事する時間です。

また、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の明示または黙示の指示により、業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当します。

社内に残って行う自己啓発や情報収集は、業務に必要があって行うのではないでしょうか。業務に無関係な自己啓発や情報収集なら、会社の設備や物品を使って行うことを上司が黙認しないでしょう。

結局、自己啓発や情報収集名目であっても、会社側がこれを許している場合には、労働時間に該当する場合が多いことになります。

 

2017.11.28.解決社労士

<連合総研のアンケート結果>

連合総研201710月に実施した「勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート調査」から、次の結果が出ています。

 

●正社員の5割超が勤務時間外のメール等の対応、4 割が持ち帰り残業あり

 

勤務時間以外の時間や休日に行った業務・作業について、<ある>と回答した割合は、「メール・電話・SNSの対応」が46.8%、「呼び出しを受けて出勤」が28.5%、「持ち帰り残業」が30.9%でした。

就業形態別に<ある>の割合をみると、いずれも正社員で高く、「メール・電話・SNSの対応」が5 割、「持ち帰り残業」が4 割を超えています。とくに、正社員の2 割超で「メール・電話・SNSの対応」が「常にある」(7.3%)、「よくある」(13.4%)と回答し、相対的に頻度が高くなっています。

 

●長時間労働者は勤務時間外のメール等の対応、持ち帰り残業時間も長い

 

勤務時間以外に行った業務・作業についての1 か月あたり平均時間数は、「メール・電話・SNSの対応」が3.6 時間、「持ち帰り残業」が5.5 時間でした。

週実労働時間別にみると、50 時間以上の層で、「メール・電話・SNSの対応」が6 時間を超え、「持ち帰り残業」が10 時間前後に達しています。

 

●2割超が勤務時間外のメール等の対応、持ち帰り残業は労働時間にあたらないとの認識

 

勤務時間以外に行った業務・作業の時間は労働時間にあたると思うかをたずねたところ、「メール・電話・SNSの対応」については、5 割超が「あたる」、2 割超が「あたらない」と回答、「持ち帰り残業」については、6割弱が「あたる」、2割超が「あたらない」と回答しました。

業務・作業の頻度別にみると、いずれも頻度が多くなるほど「あたる」、頻度が少なくなるほど「あたらない」の割合が高くなっています。

 

●持ち帰り残業を上司にまったく伝えていない人は45

 

勤務時間以外に行う(行った)業務・作業を上司に「まったく伝えていない」割合は、「メール・電話・SNSの対応」が38.7%、「持ち帰り残業」が45.0%でした。

いずれも、業務・作業の頻度が多くなるほど、「すべて伝えている」と「ほとんど伝えている」を合わせた割合は高くなっています。反対に、業務・作業の頻度が少なくなるほど、「まったく伝えていない」割合が高くなっています。

 

<会社はどう対応するか>

「勤務時間外を拘束するメールや持ち帰り残業は、どの会社でもある程度はあるので仕方がない」とは言っていられません。

このアンケートでは、呼び出しを受けての出勤、持ち帰り残業、メール等の対応が常にある人は負担・ストレスを強く感じていることや、メール等の対応、持ち帰り残業時間が長くなるほど負担・ストレスを強く感じていることが明らかにされています。

メンタルヘルス障害が発生すれば、会社は責任を問われますし、戦力ダウンや経済的損失は免れません。

 

欠員が出たらすぐに有能な人材を採用できるような時代ではなくなりました。

人手不足クライシスと言われる今、働き手にとって魅力的な会社でなければ思うように人材が確保できません。

勤務時間外を拘束するメールや持ち帰り残業があるのは、業務内容に見合った人手が確保されていない証拠です。経営者は危機感を持つべきです。

 

少なくとも会社がブラックと言われないように法令を順守すること、会社が経済的な負担を抑えつつ働くことのメリットを増やすこと、生産性を上げるためのルールや仕組みを整備することなどによって人手不足クライシスに対抗しなければなりません。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

2017.11.18.解決社労士

<就業規則にタイムカードで管理するという規定だけがある場合>

厚生労働省のモデル就業規則には、労働時間の管理について次の規定があります。

 

(始業及び終業時刻の記録)

第15条 労働者は、始業及び終業時にタイムカードを自ら打刻し、始業及び終業の時刻を記録しなければならない。

 

こうした規定が就業規則にある場合には、原則としてタイムカード通りに勤務したものと見られます。

もし労働時間の実際の管理がタイムカードによらないのであれば、就業規則違反とも言えますが、就業規則の変更手続きを怠っているとも考えられます。

いずれにせよ、適法な状態ではないので速やかに是正すべきでしょう。

 

何か特別な事情があって、一部の労働者についてだけ就業規則とは異なる方法で労働時間の管理を行っている場合には、どのような範囲の人について、どのような場合に、タイムカードによらない管理をするのかについて、就業規則に定めておく必要があります。

 

就業規則がある場合に、就業規則の規定による労働時間の管理方法によらず、別の根拠で始業時刻や終業時刻を認定しようとしても、とても難しいのです。

始業時刻や終業時刻、休憩時間などの認定について、使用者側が労働者側の主張と違う考え方をとり、争いになることがあります。労働者や退職者が未払い賃金の支払いを求めて労働審判や訴訟となった場合が典型です。

また、労働基準監督署の監督や会計検査院の調査などがあった場合には、就業規則通りに認定します。使用者側が、これを否定して別の方法で認定してもらうのは至難の業です。

 

タイムカードとは違う認定が可能な場合>

タイムカード通りに労働時間を認定したのでは、実際よりも長く計算されてしまうということがあります。

こうしたことを防ぎたいのであれば、就業規則に特別な規定を置き、それに沿った運用をすることで、本当の労働時間と計算上の労働時間との誤差を少なくすることができます

しかし、このためには就業規則と運用の整備や社員教育が必要です。これは、高度に専門的な知識と技術が必要ですから、導入に当たっては、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

<タイムカードとは違う認定を可能にする就業規則>

就業規則に、タイムカードは職場への入場時刻と職場からの退出時刻を示しているということ、これは勤務時間の参考記録にはなるが、ここから直接労働時間を計算できるわけではないということを明示すべきです。

 

<たとえば残業時間の認定についての運用>

運用を整備しなければ、就業規則上の所定の終業時刻から退出時刻までが残業時間となってしまいます。

多くの会社では、このような状態になっています。

残業は、本来使用者から命じられて行うものですが、自己判断での残業が許されていたり、残業時間の管理がルーズだったりすれば、タイムカード通りに認定するしかなくなってしまいます。

 

まず、会社の上司など使用者から早出や残業を命じる場合には「残業指示書」により時間外勤務を命令します。

反対に、労働者が早出や残業の必要を感じて使用者に命令を求める場合には、あらかじめ「残業申請書」により申請し、使用者の命令があった場合には許されるという運用を徹底しなければなりません。

 

ただし、指示書や申請書が無いまま勝手に残業してしまった場合でも、働いたからには賃金を支払わざるを得ないというケースが多くあります。

しかし、これはルール違反ですから、きちんとした教育指導を前提として、懲戒処分の対象とすることもできます。

 

そして、早出や残業については、実際の勤務開始と勤務終了、そして行った業務を使用者に具体的に報告させる必要があります。食事や私用などで休憩した時間も申告させます。

使用者は、残業命令を出す場合や残業申請を許可する場合には、この報告内容を参考に判断することができますし、ダラダラ残業を阻止することもできます。

 

こうした運用についても、就業規則に規定しておくことが好ましいですし、ルール違反や虚偽の報告に対する懲戒処分を可能にするには、就業規則に具体的な懲戒規定が必要となります。

 

「人手不足の反面、人件費が一向に減らない」と悩んでいる経営者の方には、ぜひ取り組んでいただきたい課題です。

そして、こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談いただくことをお勧めします。

 

2017.11.07.解決社労士

<割増になる理由>

労働基準法は、18時間、週40時間を労働時間の基準として定め、この基準を超える労働に対しては、割増賃金の支払いを義務づけています(労働基準法37条)。

本来であれば自由である使用者と労働者との間の労働契約に、労働基準法による国家の介入があって、割増賃金の支払いが義務づけられています。

これは長時間労働を抑制して、労働者の命と健康を守り、家庭生活や社会生活の時間を確保するのが目的です。

 

<労働者の命と健康を守る>

1日8時間、週40時間を超えて、もっと長時間働きたい労働者もいます。

 

まず、今の仕事が気に入っていて、納得がいくまで働きたいという労働者がいます。

たとえば企画、制作、デザイン部門で働く若手は、納得のいく物ができるまで、じっくり時間をかけて取り組みたいと思います。

「残業代は要らないから、やりたいだけやらせて欲しい」という人もいます。

これは、一種の仕事中毒の状態でもあります。

ですから、会社が残業を抑制しなければ、命と健康がおびやかされます。

どんな仕事にも締切があり、個人的に納得がいくかどうかではなくて、会社として客観的に求める出来栄えのレベルがあるわけですから、このことをしっかりと教育して、一つひとつの仕事に厳格な制限時間を設け、生産性を高めるよう求めることが必要です。

 

また、出世のため一定の成果を上げたいので、十分な労働時間を確保したいという労働者がいます。

こういう労働者のいる会社は、人事考課の基準に問題があるかもしれません。

会社側から見れば、他の人よりも多くの人件費をかけて成果を出しても、生産性が上がるわけではなく、会社の利益は増大しません。

残業手当が増えることは、会社にとって人件費の負担が増えることですから、人事考課にあたっては、残業時間が多いことをマイナス評価にするのが理にかなっています。

残業が多いと頑張っているように見えて評価が上がるという、昭和時代の人事考課は見直す必要があります。

 

<家庭生活や社会生活の時間を確保する>

たとえば、扶養家族が増え、家庭生活の維持のため収入を増やしたいという労働者がいます。

子供が生まれたとか、親を扶養に入れるようになったなどの事情があります。

本人としては、将来の昇給よりも、とりあえず残業代が欲しいと思っています。

この場合でも、本人の希望で残業することを理由に、残業代をカットしたり、割増しない賃金を支払ったりということはできません。

労働基準法の割増賃金は、本人の個人的な事情や希望とは関係なく義務付けられているものです。

むしろ、割増賃金とすることによって、少ない残業時間で多くの賃金を得られるようにして、家庭生活の時間を増やす狙いがあります。

 

さらに、学生は夏休みなどの長期休暇にたくさん働いておきたいと考えます。

しかし、長時間労働によって学業がおろそかになり、卒業できないという事態も現に発生しています。

やはり学生はしっかり勉学に励むための時間が必要です。こうして、学生生活の時間を確保する必要があることは明らかです。

この趣旨から、アルバイトでも残業すれば割増賃金が発生するという労働基準法の規定には合理性があります。

 

労働基準法を順守しつつ、人件費を抑制し定着率を高めるには、採用の工夫と教育研修の強化が必須課題です。

人手不足クライシスといわれる今、こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

2017.11.06.解決社労士

<残業手当の理由>

労働基準法は、18時間、週40時間を労働時間の基準として定め、この基準を超える労働に対しては、割増賃金の支払いを義務づけています(労働基準法37条)。

本来であれば自由である使用者と労働者との間の労働契約に、労働基準法による国家の介入があって、割増賃金の支払いが義務づけられています。

これは長時間労働を抑制して、労働者の命と健康を守り、家庭生活や社会生活の時間を確保するのが目的です。

 

<仕事が遅いと給与が増える?>

同じ初任給の新人Aと新人B2人に全く同じ単純作業を任せたとします。

たとえば、A4サイズ2枚の資料を三つ折りにして封筒に詰めるというような作業です。

これを新人Aと新人Bに同じ分量ずつ行ってもらいます。

新人A6時間で終わらせ、余った2時間で別の仕事をして残業せずに帰ったとします。

新人B10時間かかってしまい、2時間の割増賃金が発生したとします。

この場合、新人Bの給与は、新人Aの給与よりも多くなります。

「仕事が遅いのは自分のせいだから残業代は支払わない」というのは、労働基準法に違反します。

 

<請負の場合なら>

A4サイズ2枚の資料を三つ折りにして封筒に詰める作業1万枚分を外注に出したとします。

この場合気になるのは、納期を守ってもらえるのか、仕上がりは綺麗かということです。

どんな人が何人で何時間作業するのかは気になりません。請負代金には影響しないのです。

 

<雇用契約と請負契約との違い>

雇用の場合には、働き手に対して使用者が口出しできます。

それどころか、教育指導もできますし、ある程度の配置転換もできます。

一方、請負の場合には、働き手の顔ぶれを確認して「上手なやり方を指導させなさい」「他の人に交代させなさい」という口出しはできません。

つまり雇用の場合には、書類の封筒詰めなら不得意な新人Bには分担させず、新人Aに任せるなり、新人Bに上手なやり方を指導するなりして、残業代を削減できるということです。

少なくとも、作業開始の1時間後に、「どうも新人Bは苦手のようだ」と気づいて役割分担を変更することはできます。

 

<残業代を削減するための教育>

教育指導の強化は、生産性の向上に直結します。

また、自分を育ててくれる会社に対しては、愛社精神も高まり「ずっとこの会社で働いていこう」という気持ちを生み出します。

人手不足クライシスと言われる今、教育こそが企業の利益の源泉となります。

とはいえ必要な教育は、外部の研修に参加させたり、資格を取得させたりではありません。

ひとり一人が担当している具体的な業務を効率的にこなし、さらに改善できるようにするには、職場ごとのカスタマイズされた教育が必要です。

自社でまかない切れない場合には、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

2017.11.05.解決社労士

<よくある悪い例>

経営者側が「残業は月20時間までにしなさい」「残業禁止」などと言い放つだけなのは最悪のパターンです。

上司、同僚、部下の能力不足を一人で背負いこんで、毎月無理な長時間労働に追い込まれているスーパー社員は、過労死するか退職するかでしょう。

また、サービス残業が発生します。残業しても会社に申告しなければ、上司は黙認してしまうでしょう。あるいは、労働時間の管理がいい加減で、サービス残業に気付かないパターンもあります。サービス残業に耐えられなくなった社員は、退職後に会社に対して未払い賃金を請求します。一人がこれに成功すれば、みんなが同じことをします。

そして、仕事の持ち帰りも発生します。これによって顧客の個人情報や会社の機密が流出します。ありがちなのは、帰宅途中に過労で居眠りしてパソコンを盗まれるという事件です。マスコミに報道されると、会社は社会の信用を失います。

そもそも、安易な残業削減・残業禁止で会社が躍進したという実例はあるのでしょうか?

 

<残業削減目標の設定>

残業の削減を思いついたら、社員一人ひとりの能力と業務内容を具体的に確認して、無理のない目標を設定しなければ失敗します。

これができるのは、適正な社員教育、人事考課、給与・賞与など処遇への反映が正しくできている会社だけです。

 

<繁閑の差の縮小>

忙しい時間帯や繁忙期というのは、部署により個人により時間的なズレがあります。

その人でなければ、その部署のメンバーでなければできない仕事ばかりではありません。

少しでも手の空いている上司や他部署のメンバーが、忙しいところの応援に入れば良いのです。

これができるのは、社員の長期入院や退職者が出た時にあたふたしない会社だけです。

 

<臨時の異動>

多店舗展開の飲食店では、ある店のシフトに穴が開きそうなときに、他店からパート店員やアルバイト店員を借りてくるということが行われます。

人手の足りない部署に、足りている部署から人員を一時的に貸し出すわけです。

これをするためには、労働条件通知書などでどの範囲のお店までの応援がありうるのか、臨時の転勤もありうるのかなど、明確にしておくことが必要です。

 

<多機能化による対応>

ひとり一人の社員が、営業も、販売も、経理も、採用もできるというように多機能化されていれば、忙しいところに応援に入るのは容易です。

多機能化のためには、特別な研修を行ったり、他部署にイベント的に応援に行ったり、ジョブローテーションやキャリアパスを踏まえた計画的人事異動を行ったりの方法があります。

 

<正しい残業削減>

上手に目標を設定し、これを根拠と共に社員に提示する。社員の多機能化を進め、繁忙部署への応援を促進する。そして、応援に入れる社員は、入れない社員よりも一段高く評価して、それにふさわしい処遇とする。

このように残業削減には大変手間がかかります。

しかし少しでも改善を進めれば、生産性が向上し、強い会社、魅力的な会社へと成長していきます。

具体的なことは、信頼できる国家資格の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.09.18.解決社労士

<営業手当の意味>

営業手当は、営業という業務を担当することにより他の業務には無い負担があるため、その負担に応じて支給される所定労働時間内の業務に対する手当です。

ですから、所定労働時間外の残業代の代わりにはなりません。また、営業手当に残業代を含めるということもできません。

 

<よくある言い訳>

会社が営業手当を残業代の代わりに支給する、あるいは残業代を含めて支給するときの言い訳としては、「営業社員は勤務時間を把握できないから」というのが多いでしょう。

しかし、これが本当なら営業社員はサボり放題です。なぜなら、会社は営業社員の勤務時間を把握しないのですし、営業手当を支給しているから把握しなくても良いと思って安心しているからです。きちんと勤務時間を把握し、営業成績を正しく評価し、個人ごとの生産性を人事考課に反映させて、給与や賞与にメリハリをつけなければサボりは防げません。

反対に、過重労働による過労死の危険もあります。営業成績の上がらない社員は、サボりどころか長時間労働に走ります。営業成績の良い社員がたくさん働いているとは限らないのです。万一、営業社員が過労死あるいは自殺したときに、過重労働ではなかったという証拠が無ければ、遺族から慰謝料など多額の損害賠償を請求された場合に反論のしようがありません。

 

<退職者から未払い残業代を請求されたら>

残業代は25%以上の割増賃金なのですが、そのベースとなる賃金には営業手当が含まれます。会社としては、残業代の代わりに営業手当を支給していたつもりでも、その営業手当を加えた賃金の25%以上割増で計算することになるのです。会社にとっては、まるで残業代が複利計算になっているような感じを受けます。

恐ろしいのは、会社側に勤務時間のデータが無いために、退職者の手帳の記録などが証拠となりうることです。退職者の記録が誤っていることを一つひとつ立証するのは、とても無理なことでしょう。

そして、退職者は過去2年分の残業代を請求することになります。労働基準法の規定する消滅時効期間が2年だからです。しかも、すでに民法の改正があったため、消滅時効期間は5年に延長されるかもしれません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

営業社員の誰かが退職して、過去の未払い残業代を請求してきたら、在籍している営業社員の全員が同じことを考えても不思議ではありません。

たしかに、残業代の代わりに営業手当を支給する制度を適法に行う方法もあります。しかし、これは導入も運用もむずかしいのです。詳しいことは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.09.05.解決社労士

<民法改正>

平成29年5月26日に民法改正案が参議院を通過し、成立した改正民法は、6月2日に公布されました。これによって改正民法は、平成32年6月1日までに施行されることになります。

民法の改正は、労働関係には影響が無いように見えます。しかし、労働契約も契約の一種ですから、民法は労働契約に適用されます。

 

<未払い残業代請求権の消滅時効は2年>

民法167条1項は、債権の消滅時効期間を原則10年と規定しています。しかしこの例外として、民法174条1号が一般的な給与の消滅時効期間を1年と定めています。これでは、未払い賃金がある場合に、一定の手続きを取らなければ、労働者は1年で請求権を失ってしまうことになります。

これを救済するために、労働基準法115条は、賃金などの消滅時効期間を2年と定めています。労働基準法は民法の特別法ですから、矛盾する規定があれば、労働基準法が優先されるというルールです。

こうして、未払い残業代の請求権についての消滅時効期間は、現在2年となっています。実際、労働基準監督署が企業に監督に入った場合でも、未払い残業代の支払いについては、最大2年間まで遡っての指導となっていて、それ以上前の支払いまでは指導していません。

 

<民法改正による矛盾の発生>

改正民法は、債権の消滅時効期間を、権利者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できるときから10年としました。

これは労働基準法の定める2年よりも長いのです。「労働基準法は民法の特別法だから、矛盾する規定があれば労働基準法が優先される」というルールを当てはめてしまうと、労働者が未払い賃金を請求する権利は、一般の債権よりも短期間で時効消滅してしまうことになります。

これでは労働者を保護するための労働基準法は、その役割を十分に果たせません。

 

<矛盾解消のための労働基準法改正?>

あくまでも個人的な予測ですが、労働基準法115条は削除されると思います。

 

労働基準法115条 賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

 

退職手当というのは退職金のことで、この請求権は現在の消滅時効期間が5年です。

この条文が削除されれば、労働基準法と民法との矛盾は発生しませんし、未払い残業代の請求権についての消滅時効期間は、現在の2年から5年に延長されて労働者の保護も強化されます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

もちろんブラックな話ですが、「未払い残業代が摘発されたら過去2年分を支払えばいい」と考えている経営者の方もいらっしゃるでしょうか。

しかし、この「2年分」が「5年分」に変更されたら、会社は耐えられないかもしれません。

そもそも、未払い残業のある会社では、ごまかすために労働時間の管理がいい加減になっているものです。これが、社員のサボりや手抜きを助長していたり、働き以上の賃金を支給する原因となっていたりもします。

残業代込みの賃金という約束ならば、それを合法的に制度化し正しく運用すれば良いのです。

突然の法改正で困らないためにも、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.20.解決社労士

<労働基準監督署に相談した場合>

未払い賃金の金額を具体的に示して会社に請求したのに、支払いに応じてもらえなかったという場合には、すぐ相談に乗ってもらえます。

しかし、給与明細書を見て「残業代が付いていません」と会社に申し出ただけでは具体性に欠けます。この場合には、労働基準監督署に相談しても、まず会社にきちんと請求するように言われることが多いのです。

 

<自販機のたとえ話>

自販機にお金を入れて、商品のボタンを押して、商品は出てきたけれど、おつりが出てこないとき、自販機に書いてある連絡先に電話をかけます。

お金をいくら入れて、いくらの商品を買ったのかを話せば、駆けつけた係員が自販機を点検してから、出てこなかったお金を返してくれます。

しかし、「自販機にいくら入れたかは忘れました」「買った商品はすぐに飲んだし、何を買ったかは忘れました」と言えば、たとえそれが真実だったとしても返金できません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

不足する賃金の計算は、ネットで調べればやり方がわかるかもしれません。もしわからなければ、信頼できる社労士にご相談ください。

社労士ならば計算だけではなく、そもそも定額(固定)残業代になっていないか、雇用契約ではなく請負契約扱いになっていないか、労働時間の把握ができていないのではないか、といった広い視点から専門的に検討することになります。

場合によっては、会社の定める労働条件があやふやで、計算できないこともあります。こうした場合には、残業代の未払いよりも一段上の違法がありますから、その点について改めて労働基準監督署に相談したり、会社に適正な対応を要求したりが可能となります。

 

2017.08.03.解決社労士

<残業の性質>

残業は、会社が命じて社員に行わせるものです。具体的には、上司が業務上の必要から、部下に命じて行わせることになります。

少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。

そして、いつも上司がいるわけではありませんから、伝票の処理が終わらないときは残業しなさいとか、お客様のクレームがあったときは対応して報告書を作成するまでは残業しなさいという包括的な命令もありえます。

この場合には、ダラダラ残業の危険がありますから、上司は十分な事後チェックをしなければなりません。

 

<上司の怠慢>

ところが実際には、上司の命令が無いままに、部下が自己判断で残業することがあります。上司は、これを発見し、注意し、禁止しなければなりません。そうしなければ、際限なく残業代が発生しますから、人件費の垂れ流しになってしまいます。

このような管理能力を備えていない上司が、部下の残業を野放しにしておくと、上司による黙示の承認があったものとされ、会社は多額の残業代を支払うことになります。支払わなければ、サービス残業とされ、未払い残業代の請求が発生します。

上司には、部下を管理する役目があって、その分給料が高いのですが、上司が給料分働かないうえに、部下の余計な残業代まで負担するのですから、会社はたまったものではありません。

上司の管理能力の有無は、きちんと人事考課によって評価されなければなりません。管理能力の不足する上司が、適正に降格されなければ、会社全体の生産性が低下してしまいます。

 

<就業規則での対処>

業務が終了したら直ちに帰ることを規定しましょう。残業代が発生しなくても、ただそこに社員が残っているだけで、余計な光熱費が発生しますし、雑談などしようものなら、残業している社員の邪魔になります。それだけでなく、使用者の指揮命令下にあるものとされ、タイムカードを打刻した後の時間にも残業代が発生してしまいます。

残業は、上司の命令によって発生することを明記しましょう。上司の命令に応じるのではなく、自己判断で残業することは禁止しましょう。

こうした規定に違反する社員は、人事考課で適正に評価されなければなりません。場合によっては、懲戒処分の対象とする必要もあるでしょう。

 

<残業代を稼ぎたい社員の発見>

仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間は、本当の労働時間ではありません。

こうした時間の総合計が長い一方で、残業が発生している社員は、上司が注意指導して仕事をさせなければなりません。

これもまた、適正な人事考課と必要に応じた懲戒処分の対象となります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

担当者に対して「残業を減らしなさい」「残業は月20時間まで」などと言うのは、上司のあるいは会社側の責任放棄です。これでは、仕事が回らなくなるか、生産性が低下するか、サービス残業が発生してブラック企業に転落するかでしょう。

社内でうまく残業を減らせないのなら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.06.21.解決社労士

<定額残業代の失敗による打撃>

残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。そのためには、自主的に学んだり、仕事の仕方を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。

もし、こうした結果が得られていないのならば、制度の導入や運用に誤りがあると思われます。

そして、制度の導入や運用に誤りがある場合には、定額残業代の有効性が否定されます。否定されると、基本給など残業代を計算するときのベースとなるはずだった賃金に、定額残業代を加えた金額をベースとして、残業代を計算し定額残業代とは別に支給しなければならなくなります。

これは、複利計算の形で残業代の二重払いが発生することになります。ですから、会社にとっては思わぬ打撃となります。

 

<正しい導入は手間がかかる>

基本給にあたる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、基本給が最低賃金を下回らないことが必要です。

この基本給から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。

こうした導入ができていないと、定額残業代は無効となりますから、労働者から別途残業代を請求されたら支払わなければなりません。

 

<正しい運用も手間がかかる>

定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。

もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。

誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

定額残業代は、ブラックな制度のように思われがちです。

しかし、正しい制度であれば、会社にも労働者にもメリットが多いはずです。その反面、誤った制度にしてしまうと、会社は何らかの形で労働者から残業代の二重払いを請求されます。

定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.06.16.解決社労士

<社内でよくあるもの>

社内で従業員からの申し出により労働問題とされやすいのは、パワハラ、セクハラ、労働条件の不利益変更です。

これらは、従業員からの申し出があったとき、経営者が判断に困り、適切な対応ができないでいるうちに、社内で解決しきれない労働問題に発展することがあります。

会社に落ち度が無いという自信があれば、所轄の労働基準監督署に確認して、従業員に説明すれば良いでしょう。

そうでなければ、何かアクションを起こす前に、なるべく早く信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<訴訟や労働審判になるもの>

退職者からの、残業代請求、不当解雇、退職に伴う請求がメインです。

どう考えても円満退職だった退職者の代理人弁護士から、内容証明郵便が届いてビックリというパターンです。

在職中は会社に遠慮して言えなかった不平不満が、退職後に爆発するのですから意外性があります。

退職者ご本人にその気が無くても、ご家族やお知り合いの中には労働法に詳しい方がいらっしゃいます。そして、この方が労働者の権利を強く主張すると、退職者が同調して会社に請求することもあります。

 

<複合的なもの>

退職者から未払い残業代の請求がある場合、パワハラによる慰謝料請求が加わったりします。

セクハラの被害者が退職させられ、加害者が会社に残り、これを不満とした退職者からの慰謝料請求に、未払い残業代の請求が加わったりします。

パワハラの加害者として退職させられた人から、不当解雇を主張され、賃金、賞与、慰謝料を請求されることもあります。

権利の侵害を感じた退職者が弁護士に依頼すると、弁護士は依頼人に事実を確認し、これを法的に構成し、できる請求をすべてすることになります。

依頼人と弁護士との契約は、委任契約ですから、医師が治療にベストを尽くすのと同じように、弁護士も依頼人の権利実現にベストを尽くすわけです。

 

2017.06.03.解決社労士

<定額残業代のメリット>

定額残業代は良い仕組みです。

労働者にとっては、残業が少なくても定額残業代が保障されていますし、会社にとっては人件費が安定します。

しかし、それだけではありません。

残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。そのためには、自主的に学んだり、仕事の仕方を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。

もし、こうした結果が得られていないのならば、制度の導入や運用に誤りがあると思われます。

 

<定額残業代の正しい導入>

基本給にあたる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、基本給が最低賃金を下回らないことが必要です。

この基本給から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。

 

<誤った導入をすると>

定額残業代の計算が誤っていたり、割増率が法定の基準を下回っていたり、最低賃金法違反があったり、労働者への説明が不十分であったりすると、制度そのものが無効とされます。

この場合、労働基準監督署の監督が入ったり、労働審判が行われたりすると、基本給にあたる賃金に定額残業代を加えた金額を基本給として残業代を計算し、さかのぼって支払うことになるでしょう。

これは、実質的には残業手当の二重払いですから、会社にとって予定外の出費となります。このように、導入の失敗は大きなリスクとなります。

 

<定額残業代の正しい運用>

定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。

もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。

誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

定額残業代は、ブラックな制度のように思われがちです。ハローワークで求人票に定額残業代の表示をすることについては、窓口で慎重すぎる態度を示されてしまいます。

これは、誤った制度導入や運用があまりにも多いため、悪い印象を持たれてしまっているからでしょう。

定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.29.解決社労士

<労働時間を把握しない>

残業手当を支払うには、従業員の労働時間を適正に把握する必要があります。

支払う気の無い会社では、タイムカードなどの打刻をきちんとさせていません。

 

<所定労働時間・日数が不明>

時間給ならば、1時間当たりの賃金は明確ですから、残業手当の計算が可能です。

しかし、日給制や日給月給制の場合には、1日の所定労働時間が不明なら、1時間当たりの賃金がわからないので、残業手当の計算ができません。

さらに、月給制ならば、月間所定労働時間が不明なら、やはり1時間当たりの賃金がわからないので、残業手当の計算ができません。

こうした労働条件は、入社時と変更の都度、会社から従業員に書面で通知されていなければ違法です。それでも、残業手当を支払う気の無い会社では、「労働条件通知書」などを交付していません。

 

<人件費の削減>

残業手当を支払わないというのは、不当に人件費を削りたいわけです。ですから、従業員の数もギリギリあるいは不足しています。

一部の元気な従業員は、忙しくてバタバタしています。しかし、それよりも長時間労働で疲れた従業員が目立ちます。中には「どうせ残業代が出ないので」のんびりマイペースでやっている従業員もいます。全体として見れば、人件費を削った以上に、従業員の働きが低下しています。

人件費を削りたいのは経営者です。お客様、従業員、取引先、出資者、金融機関は喜びません。ライバル会社は少し喜ぶかもしれません。

当たり前ですが、会社の評判は口コミ情報で低下していきます。

経営者が、人件費を削減するのではなく、売上を伸ばす努力を進めるべきだと気付かなければ、その会社の未来はありません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「ブラック」を経営理念に掲げる経営者はいないでしょう。ブラック企業というのは、経営者が意図せずに、いつの間にかブラックになっているものです。

会社がブラックな方向に向かっていないかのチェックには、労働条件審査が役立ちます。信頼できる社労士にご相談してみてはいかがでしょうか。

 

2017.05.26.解決社労士

<定額(固定・みなし)残業代とは?>

1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

労働基準監督署では正しい運用を指導しています。しかし、正しい運用が難しいことから、ハローワークでは求人票に載せることを嫌います。

 

<ブラック運用1

対象となる従業員に計算根拠の説明が無い。あるいは、就業規則に具体的な規定が無い。これはブラックな運用です。

残業代の計算方法がわからなければ、給与を支給されたときに、誤っていてもわかりません。対象者全員に理解させることが必要です。

 

<ブラック運用2

残業時間が少ないと、定額残業代が減額される。これはブラックな運用です。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。「定額」残業代と言うことばから当然のことです。

定額残業代は、全く残業しなくても支給される最低保証額なのです。

 

<ブラック運用3

残業時間がどんなに多くても、残業代は増えず、定額残業代だけが支給される。これはブラックな運用です。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。賞与でまとめてということはできません。

そもそも定額残業代の基準時間が無いという悪質なものもあります。

 

<ブラック運用4

定額残業代に、深夜労働や法定休日労働の割増賃金を含めている。これは、多くの場合ブラックな運用です。

深夜労働や法定休日労働の分も定額にすることは、理論的には可能です。しかし、それぞれの基準時間と金額を明らかにする必要があって、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのであまり使われません。

 

<ブラック運用5

1時間あたりの基本賃金が、最低賃金法の基準を下回っている。これはブラックな運用です。

最低賃金は、年々上昇していますので、いつの間にか違法になってしまうケースもあります。給与の設定が春だと、最低賃金の変更が秋なので、この時点で違法になることも多いのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

定額残業代(固定残業代・みなし残業代)を使うなら、適法に運用しなければなりません。それだけではなく、適法に運用するとかえって人件費が割高になるという場合には、給与制度や人事制度を見直す必要があります。

それぞれの職場に合った制度をお考えでしたら、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.29.解決社労士

<残業代を減らすための選択肢>

残業代をカットするのは違法ですし、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法37条、119条〕

しかし、残業を全面的に禁止したのでは、仕事が回らなくなってしまいます。

そこで、ある程度まで残業を制限するという対策が取られます。人件費が予算の範囲内に収まるよう、うまく調整するわけです。これは役職者任せにするとうまくいきません。取締役と管理監督者が働き放題となり、すぐに否定されることになります。

結局、本当に必要な残業だけを認めようということになります。

 

<残業代の多い社員>

残業代の多い社員には、大きく分けて3つのパターンがあります。自己都合で残業する社員と、会社都合で残業する社員、そして能力不足の社員です。

 

<自己都合で残業する社員への対策>

自己都合というのは、生活のために多額の残業代を必要とする、家に居場所が無いなどの個人的な理由で残業するパターンです。本来の勤務時間帯には、おしゃべりをしたり席を外したりダラダラと過ごし、残業の時間帯には頑張っている姿が見られます。

上司が指導し、本来の勤務時間帯に職務に集中するようにさせること、プライバシーの侵害にならないよう気を付けながら、個人的な悩みについて相談に乗ることが対策となります。

 

<会社都合で残業する社員への対策>

会社都合というのは、仕事ができる優秀な社員なので仕事が集まってしまい、やむを得ず残業するパターンです。こういう社員は、始業時間前から残業時間帯までテキパキと仕事をこなしています。

上司が役割分担を見直すこと、代わりにできる人を育てることが対策となります。仕事ができる社員は、仕事を抱え込み他の社員に関与させたがらないことも多いのですが、マニュアルを作らせ他の社員に引き継がせることが必要となります。

 

<能力不足の社員への対策>

能力不足というと、何もできないように思われがちですが、ここでは担当業務が上手にできないことを言うものとします。

こうした能力不足の半分以上は、会社の教育不足によるものでしょう。

たとえば、事務仕事でエクセルを使う場合、コピーして貼り付ける操作でも、マウスの左クリックだけを使う方法、マウスの左右両方のクリックを使う方法、マウスは使わずにキーボードで行う方法、そしてこれらを組み合わせた方法があります。どのような操作が効率的であるかは、作業によって異なります。ところが、本人任せにしておくと1つの方法しか覚えません。これでは生産性が上がりません。

能力不足の社員は、頑張っているのですが、他の社員と同じ仕事を与えられても残業が発生してしまいます。スピード感が無いですし、やり直しが多いのも特徴です。しかし、上司の指導によって改善が期待できます。

 

<どのパターンかわからない場合には>

他部署に異動させてみると、どのパターンかが良くわかります。

自己都合の残業なら、異動の前後で残業時間が変化しません。仕事内容とは関係なく残業しているからです。

会社都合の残業なら、異動直後に残業が減り、その後徐々に増えていきます。異動先でも周囲での評価が高まり、任される仕事量が増えるからです。

能力不足の残業なら、異動直後の残業が多く、その後徐々に減っていきます。異動先の仕事を覚えれば、少しずつ効率が上がるからです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

いつの間にか残業代込みの給与になってしまっているのであれば、正式に定額残業代のしくみを定めて適正に運用したいところです。

また、残業代だけでなく、能力や貢献度に応じた給与にするためには、人事考課制度が必要です。

どちらも、社労士の得意分野ですから、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.13.解決社労士

<使用者の義務として>

労働時間の適正な把握は使用者の義務です。現在では、過重労働による労災の発生や長時間労働の問題がマスコミでも大きく取り上げられ、この義務が再認識されています。

 

<残業要否の判断>

こうした中でも、労働者の希望や申請により残業が認められている会社が多いというのは不思議な現象です。

そもそも、残業というのは使用者の命令によって行われるものです。ですから、残業の要否を判断するのは、労働者ではなく使用者です。

そうでなければ、労働者の自由な判断で残業できることになり、好きなだけ残業代を稼げるということになってしまいます。これでは会社が人件費をコントロールできません。

 

<残業命令のあり方>

だとしても、使用者がその都度、具体的な残業命令を出すことにしていたのでは大変です。

まず、包括的な残業命令を使用者から労働者に一覧表の形で示しておきましょう。たとえば、小売店や飲食店であれば「その場でのクレーム対応が必要な時」「レジで違算が発生し再確認が必要な時」「店内にお客様が残っていて接客が必要な時」というように条件の形で示します。

そして、この一覧表に無いような突発的な理由で、残業の必要性が問題となったときには、労働者から使用者に残業命令を打診するのです。たとえば、地震によって商品や食器が店内に散乱して、ある程度まで片付けておく必要性が感じられる時などです。

使用者側が、ここまで残業の管理をしておけば、労働者の勝手な判断で残業しても、これに対する賃金の支払い義務は無いと主張しうることになります。

 

<やってはいけないこと>

残業命令をうやむやにして、労働者の残業管理を怠っておきながら、残業代をカットしてしまうのは、違法なサービス残業となってしまいます。

ダラダラ残業も、持ち帰り残業も、知っていて放置すると、使用者側が許したものと評価されてしまいます。これらにも残業代を支払わなければなりません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

残業そのものを減らすにも、残業代の支払いを減らすにも、合法的で適正な方法を検討するのであれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.11.解決社労士

<スーパーマーケットと経営者を逮捕・送検>

江戸川労働基準監督署長は、スーパーマーケット経営会社とその代表取締役等を労働基準法違反の容疑で、平成2662日、東京地方検察庁に書類送検しました。

 

<逮捕・送検の理由>

このスーパーマーケット経営会社の代表取締役は、東京都江戸川区内の2店舖で勤務する従業員に残業代を支払いませんでした。

そこで、江戸川労働基準監督署労働基準監督官が、割増賃金の不払につき是正指導し、その是正措置結果について報告をするよう求めました。

ところが、この代表取締役は、部長A、課長Bと共謀し、平成25101日、労働基準監督官に対し、実際には支払をしていないのに、過去の賃金不払残業に対する割増賃金を遡及して支払ったとする虚偽の内容を記載した是正報告書を提出しました。

このウソの報告書提出が逮捕・送検の理由です。

 

<捜査が入ったキッカケ>

この会社に対しては、平成248月、平成256月に、江戸川労働基準監督署が、割増賃金の不払について是正するよう監督指導を行ってきました。

ところが、その指導にもかかわらず、違反行為を続けてきたので捜査に着手したのです。

そしてこの会社は、是正指導に対して是正報告を行っていたのですが、本社などを家宅捜索したところ、実際には遡及支払を行っていないことがわかり、ウソの報告であったことが判明したのです。

 

<サービス残業に対する指導>

各労働基準監督署では、事業者に対して適正な労働時間管理の徹底を図り、賃金不払残業を起こさせないことを重点とした監督指導を実施しています。

また、是正指導にも関わらず改善の意欲が認められず、賃金不払残業を繰り返し、または労働基準監督署に対し虚偽の報告を行うなど重大悪質な事業者に対しては、書類送検を含めて厳正に対処しています。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労働基準監督署は、退職者などからの申告に基づき、会社に抜き打ちの調査をすることがあります。また、事前に調査内容や調査日時を通知したうえで調査に入ることもあります。

通知があった場合には、ぜひ信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。調査への立会や、その後の報告書作成・提出を含め、会社の負担を最小限にして速やかな対応をすることができます。

また、顧問の社労士がいれば、抜き打ち調査への対応も安心です。

 

※労基署による監督をわかりやすく調査と表示したところがあります。

 

2017.03.03.解決社労士

<違法残業の発生パターン>

次のような状況下で、法定労働時間を超える勤務をさせると違法残業となります。

・三六協定の労働基準監督署長への届出をしていない

・三六協定の有効期限が切れたままになっている(有効期間は最長1年)

・労働者代表の選出方法が民主的ではないなどにより三六協定が無効

また、三六協定の限度を超える勤務をさせた場合にも違法残業となります。

結局、違法残業というのは、有効な三六協定が届出されない状態で法定労働時間を超える勤務があった場合と、三六協定に違反する勤務があった場合を指すものだといえます。

 

<パン製造販売業者を書類送検>

亀戸労働基準監督署は、平成27326日、労働基準法違反容疑で、パン製造販売業を営む会社の元東京工場エリアマネージャー(工場長)と元工場サンドイッチ部門チームリーダー(部門長)を東京地方検察庁に書類送検しました。

これでわかることは、社長などの経営者ではなくても「使用者」の立場にある者は、長時間労働を行わせたことについて責任を負うということです。

また、サービス残業が発生した場合に、勤務時間の集計をごまかして残業代未払いの原因を作った工場長や部門長が責任を負うこともあるということです。

 

<逮捕・送検の理由>

逮捕・送検の具体的な理由は次の2つです。

東京工場サンドイッチ部門に所属するパートタイム労働者3名(1日の所定労働時間6時間)に対し、最長で月139時間に達する時間外労働を行わせ、労働基準法36条で定める時間外労働協定(三六協定)の延長時間の限度を超える違法な時間外労働を行わせていたこと。

また、本来支払うべき時間外労働に対する割増賃金のうち3割程度の支払しかしていなかったこと。(1月当たり最大で約11万円の時間外手当の不払が発生)

これでわかることは、正社員だけでなくパート社員などについても、労働基準法の順守が求められるということです。

 

<逮捕・送検の背景>

厚生労働省では、長時間労働の抑制と過重労働による健康障害防止対策の強化を喫緊の課題として、平成269月に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減対策推進本部」が設置され、省をあげて取り組むようになりました。

各労働基準監督署でも、過重労働等の撲滅に向けた対策推進のため、著しい過重労働により労働基準法違反が認められるなど重大または悪質な事案に対しては司法処分を含め厳正な対応を強化することとしています。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社の人事担当者は、労働法を中心とする法改正には敏感だと思います。しかし、改正が確実になってから対応したのでは、予算取りや人員配置の問題があり、遅れをとってしまうこともあります。やはり、法改正情報の先取りはライバル企業に負けないためにも必要です。

また、国の政策転換にも目を光らせていないと、今まで大丈夫だったことが逮捕・送検の対象となったことに気付かないものです。

会社を守るためにも、法改正や政策転換の情報に明るい社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.03.02.解決社労士

<偉くなるとタイムカードはなくなる?>

タイムカードは、出勤時刻と退出時刻の記録を残し、労働時間を管理するために使われています。会社によっては、休憩時間や外出時間もタイムカードに記録しています。こんなことは誰でもわかっていることです。

ところが、「労働時間を管理するのは何のためか?」と問われると、残業手当の計算ができないと困るから、サービス残業になるといけないからという答えが返ってくることがあります。

タイムカードを使う目的を、残業手当の計算に絞ってしまうと、残業手当の付かない管理監督者にタイムカードは必要ないことになります。そして、やがてはタイムカードの無いことが、役職者の一種のステータスになります。

 

<タイムカードが無い悲劇>

たとえば、部長が勤務中に心臓発作で倒れたとします。過重労働による労災ではないかと疑われたとき、会社はこの部長が長時間労働ではなかったことをどのように証明するのでしょうか。家族が「帰宅は毎日24:00を過ぎていました。土日も出勤していました」と話したら、これが事実とは違っていても、会社は責任を免れないように思われます。

またたとえば、部長が通勤経路で意識を失い倒れたとします。通勤災害かも知れません。しかし、発見されたのが深夜で、仕事帰りなのかどうかすらわからなければ、労災保険の手続きをしようにも情報が足りません。

こうしたことを想定すると、取締役など経営者を除き、誰でもきちんと労働時間を管理するのが正しいことがわかります。

 

<目的を見失うと>

結局、タイムカードを使う目的は、あくまでも労働時間の管理であって、残業手当の計算はその一部に過ぎないのです。

会社の中には多くのルールが存在します。そして、思考の単純化のために、そのルールの存在理由を1つに絞って説明することも良く行われています。

しかし、これが危険なことは、上の例からも明らかでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社の就業規則を見直す場合、規定を増やすだけでなく削ることもあります。しかし、その規定を削って良いのか悪いのか、安易な判断は会社にとって大きなダメージにつながることもあります。

就業規則の改善や運用の見直しをお考えでしたら、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.02.17.解決社労士

<労働基準監督署による監督指導>

厚生労働省は、時間外労働などに対する割増賃金が支払われていないとして、平成27年度に労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表しました。

これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、不払の割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となったものを取りまとめたものです。

 

<平成27年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果>

(1) 是正企業数               1,348企業

うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、184企業

(2) 支払われた割増賃金合計額      99億9,423万円

(3) 対象労働者数              9万2,712人

(4) 1企業当たり平均741万円、労働者1人当たり平均11万円

(5) 1 企業での支払額のワースト3は、

・1億3,739万円(金融業)

・1億1,368万円(その他の事業(協同組合))

・  9,009万円(電気機械器具製造業)

 

<統計の注意ポイント>

上記の是正結果は、支払額が1企業で100万円以上のものだけを集計しています。100万円未満のものは集計対象に入っていませんので、実際の是正結果はこれらの件数を遥かに上回っています。

 

<サービス残業の落とし穴>

企業の対応として陥りやすい失敗としては、次のようなものがあります。

・昔から続けているやり方が正しいとは限らない。

・所定労働日数、所定労働時間が明確でなければ、割増賃金が計算できない。

・丼勘定で払い過ぎ部分と不払い部分があった場合、相殺されずに不払い部分の是正が求められる。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社として意図的に不払い残業を発生させているわけではないのに、割増賃金を計算するのに必要な労働条件があやふやで計算できていないケースがあります。

労働基準法などの基準がよくわからず、不必要な割増賃金を支払っているケースがあります。

「残業は使用者の命令により行う」という基本が崩れ、従業員の自己判断で残業が行われていて、会社が人件費のコントロール力を失っているケースがあります。

これらの問題を発見し改善するには、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.12.30.解決社労士

<割増賃金の必要な時間外労働・休日労働>

時間外労働(早出・残業)や休日労働は、一般社員から管理監督者に申請して行うものではありません。管理監督者から、一般社員に命令があって初めて行われるものです。

たしかに、一般社員が必要を感じて「残業しましょうか?」と管理監督者に確認することは、業務遂行の上で必要なことです。しかし、この場合でも、管理監督者の指示があって、初めて時間外労働として認められます。〔労働基準法33条、36条〕

 

<管理監督者に求められる行動>

時間外労働が命令に基づき行われるものである以上、管理監督者には、時間外労働の指示を出す権限があり、部門や店舗運営のために、適切な時間外労働の指示を出す義務を負っています。

個々具体的な業務についての残業命令もあるでしょう。しかし、多くの場合は、条件付きの残業命令となります。たとえば、次のようなものです。

・レジで違算が出たら原因の究明が完了次第勤務を終了すること。

・夜間設備工事の立会では工事人が全員退去次第勤務を終了すること。

こうした命令を前提としない時間外労働は、災害発生などの緊急時以外にはありえませんので、一般社員が居残っている場合には、管理監督者から速やかな勤務終了と事務所・店舗からの退出を促しましょう。

 

<タイムカードなどの正しい打刻>

勤務時間の管理方法は、就業規則に規定されているのが通常ですが、タイムカードなどで行われていることが多いでしょう。

そして会社には、労働者全員の勤務時間を適正に管理する義務があります。この義務は、残業手当が支給されない社員も対象となっています。

ところが実際には、勤務を開始した時のタイムカードなどの打刻、勤務を終了した時のタイムカードなどの打刻が、正しい時刻ではない場合があります。

これはルール違反ですので、管理監督者が自ら率先垂範すると共に、一般社員の正しいタイムカード打刻を指導する必要があります。

 

2016.12.26.

<厳しい残業制限>

会社は労働者に、法定労働時間の1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、法定労働時間の実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法32条〕

厳しいですが、これが労働基準法の制限です。この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法119条〕

ですから、基本的にこの法定労働時間を超えて残業させることは「違法残業」ということになります。

残業は、会社が労働者に命じて行わせるものですが、労働者が独断で残業しているのを野放しにしている場合にも、「残業させた」と評価されます。

 

<三六協定の免罰効果>

しかし会社は、労働者の過半数が加入する労働組合や、労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って18時間を超え、また週40時間を超えて労働者を働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

ここで「罰せられない」と言い、「適法になる」と言えないのは、適法であるためには残業させる根拠が就業規則などに規定されている必要があるからです。また、法定労働時間を超えた時間も、さらには三六協定の限度を超えた時間も、残業代支払いの対象となります。

 

<三六協定の届出>

労働者の過半数で組織される労働組合が無い場合には、その事業場ごとに労働者の過半数を代表する者を選出します。あくまでも労働者の代表ですから、会社からの指名ではなく従業員同志の話し合いを基本に民主的に選出します。

そして、労働時間の上限や休日出勤について、会社と代表とが書面で協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出ます。

協定書を届け出たときから協定が有効になりますので、手続きをしないで制限を超える残業があれば違法残業となります。

また、協定の期間は最長1年間ですから、毎年届け出が必要となります。

 

<三六協定を届け出ても違法となる場合>

まず、協定に定めた残業の上限時間を超える残業が「違法残業」となります。

つぎに、労働者の代表が民主的に選出されず、会社から指名されていた場合や会社から推薦を受けていた場合には、選出が無効なので協定も無効となり、協定が無い場合と同じように「違法残業」となります。

さらに、協定の届け出前や期限が切れた後の残業も「違法残業」となります。

 

マスコミでは「違法残業」という報道が時々クローズアップされます。その中には、本当に悪質なものもあるのですが、三六協定の有効期限切れに気付かなかっただけというのもあります。それでも違法は違法です。

有効期限切れなど起こさないように、顧問の社労士(社会保険労務士)に管理させることをお勧めします。

 

2016.11.07.

<管理監督者の基準>

管理監督者とは、経営方針の決定に参画し労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者です。

これは、役職とは無関係ですから、部長でも管理監督者ではなかったり、役職者ではなくても管理監督者であったりします。

具体的には、次のような基準から総合的に判断されます。

・労働時間の管理を受けていないこと

  遅刻、早退、欠勤は問題視されず、給与の減額もありません。

・一般従業員と比べて賃金面で優遇されていること

  給与や賞与がその地位にふさわしく優遇されていることが必要ですから、部下が長時間残業すると給与が逆転するとか、本人が最低の評価を受けたとしても部下が最高の評価を受けた場合よりも高額の賞与が支給されるような処遇が基本です。

・労務管理上の指揮権限があって管理的な仕事をしていること

人事考課を行う、年次有給休暇の許可を与える、業務の指示を与える、採用の決定権限があるなど、会社側の立場に立っていることです。

 

<残業手当の支給>

こうした基準で考えてみて、管理監督者といえる社員には残業手当の支給が不要です。

そもそも、時間管理する側の立場であって、自分自身は時間管理されていないのですから、残業手当の計算もできません。

 

<名ばかり管理職?>

上記のことからすると、「名ばかり店長」「名ばかり管理職」という言葉には違和感があります。

店長は確かに店長であり、管理職は確かに管理職であって、労働基準法上の管理監督者ではないので、「形ばかり管理監督者」と呼ぶのがふさわしいのです。

しかし、マスコミ向きではないですね。

 

<隠れ管理監督者>

会社によっては、肩書が課長でありながら、管理監督者の定義にピッタリあてはまる社員がいます。

たとえば、管理監督者の立場にありながら、社内での肩書が人事課長だと、給与規定の作成と運用が任されていて、自分自身に残業手当を支給するルールにしていることもあります。

こうしたおかしな「お手盛り」を防ぐには、社長自身が労働法に強くなるか、信頼できる社労士(社会保険労務士)と顧問契約を結ぶことが必要でしょう。

 

2016.11.06.

<残業が多い人のイメージ>

入社10年目の正社員Aさんが、毎日午後6時から10時まで残業しているとします。

他部署の管理職や社長から見れば、「Aさんは頑張っているなぁ。プライベートの時間をけずって、会社に貢献している」と見えることでしょう。

一方、Aさんと同期のBさんが毎日定時であがっていたらどうでしょう。「自分だけサッサと帰ってしまって、やる気が無いのか」と見えるかもしれません。

 

<残業が多いAさんの実情>

直属の上司からすると「相変わらずAさんは仕事が遅いなぁ。同じ仕事を与えても、Bさんなら定時であがるのに」という見方かもしれません。

Aさんは帰宅するとバタンキュー。休日は死んだように眠っています。家族は「かわいそうに。こんなになるまで働かせてひどい会社だ。いつか訴えてやる」と感じるものです。

いつも疲れが残っているAさんは、朝から調子が上がらずグダグダしているのではないでしょうか。このAさんの態度は、同僚や後輩にもだらしなく見え、悪影響を及ぼすかもしれません。

直属の上司としては、Aさんに重要な仕事や新しい仕事を任せることができません。何しろ、全く余力が無いのですから。

 

<残業しないBさんの実情>

直属の上司からすると「Bさんには余力がある。一段上の仕事を任せてみようか」ということになります。

Bさんには英会話スクールに通ったり、映画館で楽しんだりする時間があります。休日のプライベートも充実させることができます。それが、仕事に良い影響を与えています。

Bさんの働く姿は、同僚や後輩にも良い影響を与えています。後輩が目標にしているかもしれません。

 

<人件費の配分>

Aさんの残業が、違法なサービス残業であったとしても、Bさんと同じ給与ならもらい過ぎでしょう。ましてや、きっちり残業代が支給されているとしたら、会社に対する貢献度と支払われる給与は逆転しています。

さらに、上級の管理職から良く見えるAさんは、Bさんよりも高い評価を得て、より多額の賞与を支給されるかもしれません。

こうなると人件費の配分が、かなり不合理になってしまいます。

 

<こうしたことを防ぐには>

何となくのイメージではなく、客観的な評価基準に基づいた人事考課が必要です。

賞与の金額を決める人事考課で、残業が多いほど評価を下げる会社があります。方向性としては正しいでしょう。

残業時間の基準を設け、残業時間が基準より少ない社員に対しては、賞与の金額に「浮いた人件費」を上乗せするという会社もあります。

何となくのイメージで評価が決まる会社には、仕事のできない人ばかりが残り、仕事のできる人はあきれて去っていくという現象が見られます。

できる社員を定着させるためにも、みんなのやる気を引き出すためにも、きちんとした人事考課を実施しましょう。

 

本に書いてあったり、ネットで検索できたりする人事考課制度は、一般論に過ぎません。

会社の実情に合った人事考課制度の構築と運用については、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.11.03.

<安易な運用>

上司から部下へ「昨日は2時間の残業ごくろうさん。今日は2時間早く上がっていいよ」という話があると、部下はトクした気分になるかもしれません。

しかし、給与の時間単価が2,000円だとすると、2時間の法定外労働では、

2,000円×2時間×1.25=5,000円

となって、会社は5,000円以上の賃金支払い義務を負います。

一方で、2時間の欠勤控除では、

2,000円×2時間=4,000円

となって、残業代と欠勤控除をそれぞれ正しく計算すると、

5,000円-4,000円=1,000円

となって、プラスマイナスゼロではなくて、総支給額がプラス1,000円になるのが正しいということになります。

しかも、会社都合で2時間早退させたとしたら、休業手当も発生します。

2,000円×2時間×0.6=2,400円

これは、労働基準法26条に規定があります。

法律上、労働者は7,400円だけ多くの賃金を受け取れる計算になります。

しかも、労働法ですから「本人が同意」しても結論は変わりません。

 

<相殺の例外1>

きちんと手続きをして、フレックスタイム制を正しく運用していれば、ある日2時間残業して、別の日に2時間早退すると、結果的に相殺されたのと同じ効果が発生します。

これは、労働者が仕事の都合と個人の都合をバランス良く考えて、自由に労働時間を設定できることによる例外です。

 

<相殺の例外2>

中小事業主は当分の間対象外ですが、月60時間を超える時間外労働の割増賃金(割増率5割以上)については、労働者の健康確保の観点から、割増賃金の支払いに代えて有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。〔労働基準法37条3項〕

代替休暇制度の導入には、事業場の過半数組合、または労働者の過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

この協定では、a.代替休暇を与えることができる時間外労働の時間数の算定方法、b.代替休暇の単位、c.代替休暇を与えることができる期間、d.代替休暇の取得日の決定方法および割増賃金の支払い日を定めるべきとされています。

 

残業時間と早退時間の相殺を正しく行いたい場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

柳田事務所にご依頼いただければ、上手に運用するためのツールのご提供や、研修の実施など、よりスムーズに導入するためのサービスも行っております。

 

2016.09.29.

<労働法は労働者の味方>

労働基準法には労働者に対する罰則がないことからもわかるように、労働基準法をはじめとする労働法は労働者の保護を徹底しています。

したがって、その解釈にあたっても、労働者に明らかな権利濫用があったとか、世間の反感を買うような不誠実な態度が見られたとか、特別な事情がない限りは「労働者は悪くない」という解釈になります。

 

<労働者が勝手に残業している場合>

残業というのは、使用者の命令に応える形で行われるものです。ですから、労働者が勝手に行った残業に対して、使用者が賃金の支払義務を負うというのでは、人件費のコントロールはむずかしくなります。

ところが、労働者が勝手に残業したのに対して、「自分の勝手な判断で残業してはならない」ということを徹底的に指導しなければ、「会社が残業を黙認した」ということになり、残業代を支払わなければなりません。

これを防ぐには、就業規則に「自分の勝手な判断で残業してはならない」ということをきちんと規定し、違反した場合には、始末書をとって反省してもらう譴責(けんせき)処分などの懲戒規定が必要となることもあるでしょう。あるいは、人事考課の対象とすることも考えられます。

また、どのような場合に残業が必要か、包括的な基準と具体的な基準を書面化して労働者に示し教育しておく必要があります。これをしておかないと、上司の命令がなければ一切残業できないということになり不都合だからです。

 

<労働者がタイムカードの打刻を怠っているとき>

労基署はタイムカードなどの出勤退出の時刻を基準に、労働時間を正しく計算し直すよう求めてきます。ですから、労働者がきちんと打刻していなければ、計算できません。これは、労働者の自業自得であるようにも思えます。

ところが、きちんとタイムカードを打刻するように指導し、打刻もれがあれば、その都度正しい時刻を確認するのが、会社の責任だとされます。そして、労働者から「この日は23時頃まで残業した」「先月の日曜日はいつも4時間程度休日出勤した」という申し出があれば、基本的にはこれを信じて計算しなければなりません。

これを防ぐには、打刻の指導と、就業規則に打刻義務を規定し、必要に応じて懲戒処分についても規定を置き、人事考課の対象とすることも考えられます。

一般に、残業手当をきちんと支払わない職場では打刻もれが目立ちます。ですから、打刻もれが多いという点については、労基署の監督官も注目します。これは大きな注意ポイントでしょう。

 

<労働者がタイムカードを不正に打刻しているとき>

労働者が出勤直後にタイムカードを打刻せず、しばらく働いてから本来の出勤時刻に打刻するという不正があります。また、タイムカードを打刻してから残業するという不正もあります。

場合によっては、ミスの多い社員や加齢によって生産性の低下した社員が、能力不足をカバーするために自主的に行っていることもあるでしょう。

ところが客観的に見ると、これは会社が得をして、労働者が損をする行為です。そのため労基署の監督官は、会社が労働者に対して不正な打刻を強要しているのではないかと疑ってしまいます。

これを防ぐには、打刻を怠っている場合の対応に加えて、きちんとした評価基準の設定と、正しい人事考課が必要です。生産性の低い労働者については、同期の社員よりも基本給や時給が低いのは当然なことなのです。厳しい話ですが、これをきちんとしないと本人も苦しいですし、労基署からは違法行為を指摘されてしまいます。

 

<労働者に落ち度があって未払い賃金の支払が不要な場合とは>

残業が必要となる場合の基準を明確に示し教育して、労働者の個人的な判断による勝手な残業や休日出勤を禁止し、違反者に対する懲戒や人事考課の評価を落とすことも行っている会社で、教育されても注意されても懲戒処分を繰り返されても、身勝手な自主残業をやめない労働者に対しては、その部分の賃金支払い義務が発生しない場合もあるでしょう。

タイムカードを打刻しなかったり不正に打刻したりの場合にも、同様に考えてよいでしょう。

ただ、こうした社員を会社が放置しておくというのは、いかにも不自然です。解雇の対象になると思われるからです。

こうしてみると、解雇されずに働いている社員について、労基署から賃金未払いを指摘されたら、会社としては支払わねばならないのが当然ともいえます。

 

2016.08.13.

<原則の法定労働時間>

使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはなりません。〔労働基準法32条1項〕

もちろん、三六協定を交わし労基署に届け出れば、協定の範囲内での時間外労働は処罰の対象となりません。

ただし、法定労働時間を超える労働に対しては、時間外割増賃金の支払いが必要です。

ここで1週間というのは、就業規則などで取り決めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

 

<労働基準法施行規則による特例>

公衆の不便を避けるために必要なもの、その他特殊な必要があるものについては、その必要かつ労働者の健康・福祉を害しない範囲で、厚生労働省令による例外を設けることができることとされています。〔労働基準法施行規則25条の2第1項〕

こうして例外とされた特例措置対象事業場の法定労働時間は、平成13年4月1日から、1日8時間、1週44時間に改正されました。これが、時間外割増賃金の基準となります。

 

<特例措置対象事業場>

次に掲げる業種に該当する常時10人未満の労働者を使用する事業場が対象です。

 商業 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
 映画・演劇業 映画の映写、演劇、その他興業の事業
 保健衛生業 病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
 接客娯楽業 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

事業場の規模(人数)は、企業全体の規模をいうのではなく、工場、支店、営業所等の個々の事業場の規模をいいます。

 

2016.06.09.

<年俸制なら残業代は支払わなくてよい?>

プロ野球の選手なら年俸制で残業代の支払いはありません。

しかし一般の労働者には、残業代をはじめとする割増賃金の支給が原則必要です。

労働基準法は、時間外労働と休日労働・深夜労働の割増賃金を定めていて、年俸制を例外としていません。

この割増賃金の支払いを使用者に義務付ける理由は、法定労働時間と法定休日の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行おうとすることにあります。

この趣旨は、どのような賃金体系であっても変わりがありません。

また、たとえ三六協定の無い、あるいは協定の限度を超える違法残業であっても、割増賃金は支払わなければなりません。

 

<なぜ年俸制では割増賃金が割高なのか?>

年俸制における代表的な賃金の支払い方法には、次の二つがあります。

・賞与無し=年俸額の12分の1を月例給与として支給する

・賞与有り=年俸額の一部を賞与支給時に支給する(例えば、年俸の16分の1を月例給与として支給し、年俸の16分の4を二分して6月と12月に賞与として支給する)

このうち、賞与有りの支払い方法の場合には、賞与が割増賃金の算定基礎額に含まれるという通達があるのです。〔平成12年3月8日基収78〕

したがって、月例給与よりも高い「年俸の12分の1」を基準に割増賃金を計算することになりますから、ある意味、賞与の二重払いが発生するのです。

 

<書面をもって合意をすれば合法に>

労使の合意で年俸に割増賃金を含むものとする場合についても、上記の通達が基準を示しています。

年俸がいくらで、その中に何時間分の残業代としていくら含まれているのか、書面をもって合意し、その12分の1を超える残業が発生した月には、その都度不足分の残業代を月々の給与と共に支払えばよいのです。

ただし、深夜労働や休日出勤の割増賃金は別計算となります。

 

ちなみに実際の通達は、次のように言っています。

「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労基法37条に違反しないと解されるが、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働等を行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われていない場合は、労基法37条違反となることに留意されたい。また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、同条違反となることに留意されたい。」

 

2016.04.07.

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2018.09.29.解決社労士

<正しい計算の法的根拠は?>

労働基準法には、残業手当を何分単位で計算するのか規定がありません。

しかし、規定が無いからといって、労働局や労働基準監督署が企業の残業代計算について、指導できないというのでは困ります。

そこで、法令の具体的な解釈が必要な場合には、行政通達が出されて、その内容が解釈の基準となります。

残業手当の計算についても、労働省労働局長通達が出されています。〔昭和63年3月14日基発第150号〕

531ページまである行政通達の220ページから221ページにかけて、次のような内容が記載されています。

 

次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、…違反としては取り扱わない。

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の合計について、1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げること。

・1時間当たりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数がある場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げること。

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の割増賃金の総額に1円未満の端数がある場合は、上記と同様に処理すること。

 

結局、この基準に沿った四捨五入は許されますし、たとえば常に切り上げるなど労働者に有利なルールで運用することも問題ありません。

 

<行政通達の効力は?>

この行政通達は、厚生労働省が労働局や労働基準監督署に、企業指導のための具体的な指針を示したものです。

ですから、労働基準法などの法律とは異なり、行政通達が直接企業を拘束するものではありません。

しかし、企業から「行政通達の内容が不合理だから従いません」と主張するためには、行政訴訟で指導の不当性を争い、裁判所に行政通達の違法性を確認してもらうしかないでしょう。

これは、立法機関が法律を作り、行政機関が執行し、司法機関がその違法性や違憲性を審査するという三権分立のあらわれです。

結局、現実的には、どの企業もこの行政通達に従うしかないでしょう。

 

<トイレに行ったら減給?>

これも法令には規定が無いのですが、一般に「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。仕事をしなければ賃金を支払う必要がないということです。

この原則をしゃくし定規にとらえると、トイレに行っても、タバコを吸っても、居眠りをしても、1分単位で給料を減らして良いように思えます。

しかし、この原則は労働契約の性質から導き出されています。労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによって成立する契約です。〔労働契約法6条〕

つまり「働くなら払います」の裏返しで、「働かないなら払いません」ということを言っているに過ぎません。

そもそも、労働契約を締結する際には、いちいち確認しなくても、トイレに行くことぐらいは当然に了解済みです。タバコについては、その職場のルールが説明されるでしょう。そして、居眠りについては、ひどければ懲戒処分の対象としておけば済むことです。

結局、労働時間の中には、労働以外のことをする時間もある程度含まれているという了解のもとで、労働契約が成立し給与も決められているといえるのです。

 

2016.03.23.