同一労働同一賃金の問題点

2025/07/10|873文字

 

<同一労働同一賃金>

同一労働同一賃金とは、雇用形態に関係なく、同じ業務を行う労働者には同じ賃金を支払うべきだという考え方です。日本では2020年4月(中小企業は2021年4月)からこの原則が法的に適用され、企業は正社員と非正規社員の待遇差を合理的に説明する義務を負うようになりました。

 

<制度の問題点>

この制度にはいくつかの課題が指摘されています。

 

  1. 企業側の負担増

企業は非正規社員の待遇を正社員と均衡させるために、賃金や福利厚生の見直しを迫られます。その結果、人件費が増加し、経営を圧迫する可能性があります。特に中小企業では、コスト増を吸収する余裕がなく、雇用削減や業務の外注化を進めざるを得ないケースもあります。

 

  1. 非正規雇用の減少

企業が人件費を抑えるために、非正規雇用の枠を縮小する可能性があります。これにより、パートや契約社員として柔軟に働きたい人々の雇用機会が減少し、労働市場の選択肢が狭まる懸念があります。

 

  1. 賃金の引き下げ

企業が同一労働同一賃金に対応するために、正社員の賃金を引き下げる動きが出る可能性があります。これにより、正社員のモチベーション低下や労働意欲の減退が懸念されます。

 

  1. 従業員への説明負担

企業は待遇差が合理的であることを説明する義務を負いますが、その説明が不十分だと従業員の不満につながります。特に、賃金や手当の違いが曖昧な場合、労働者が納得できず、訴訟リスクが高まる可能性があります。

 

  1. 実際の運用の難しさ

同じ業務をしているように見えても、責任の範囲や業務の質が異なる場合があります。そのため、単純に賃金を統一するのではなく、業務内容や成果に応じた適正な評価制度を設ける必要があります。しかし、これを適切に運用するのは容易ではなく、企業の人事制度の見直しが求められます。

 

<実務の視点から>

同一労働同一賃金は、労働者の公平性を確保するための重要な制度ですが、企業の負担増や雇用機会の減少などの問題点もあります。企業は適切な説明と運用を行いながら、労働者の納得感を高める工夫が求められます。今後もこの制度の運用について議論が続くでしょう。

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