2023/12/08|985文字
<使用者の義務>
労働時間の適正な把握は、労働安全衛生法による使用者の義務です。
この義務は、会社員だけでなく、美容師でも、医師でも、職人でも例外ではありません。
現在では、過重労働による労災の発生や長時間労働の問題がマスコミでも大きく取り上げられ、この義務が再認識されています。
<残業要否の判断>
こうした中でも、労働者の希望や申請により残業が認められている会社が多いというのは不思議な現象です。
そもそも、残業というのは使用者の命令によって行われるものです。
ですから、残業の要否を判断するのは、労働者ではなく使用者です。
そうでなければ、労働者の自由な判断で残業できることになり、好きなだけ残業代を稼げるということになってしまいます。
これでは会社が人件費をコントロールできません。
<残業命令のあり方>
だとしても、使用者がその都度、具体的な残業命令を出すことにしていたのでは大変です。
まず、包括的な残業命令を使用者から労働者に一覧表の形で示しておきましょう。
たとえば、小売店や飲食店であれば「その場でのクレーム対応が必要な時」「レジで違算が発生し再確認が必要な時」「店内にお客様が残っていて接客が必要な時」というように条件の形で示します。
そして、この一覧表に無いような突発的な理由で、残業の必要性が問題となったときには、労働者から使用者に残業命令を打診するのです。たとえば、地震によって商品や食器が店内に散乱して、ある程度まで片付けておく必要性が感じられる時などです。
使用者側が、ここまで残業の管理をしておけば、労働者の勝手な判断で残業しても、これに対する賃金の支払い義務は無いと主張しうることになります。
<やってはいけないこと>
残業命令をうやむやにして、労働者の残業管理を怠っておきながら、残業代をカットしてしまうのは、違法なサービス残業となってしまいます。
ダラダラ残業も、持ち帰り残業も、知っていて放置すると、使用者側が許したものと評価されてしまいます。
持ち帰り残業については、在宅勤務やテレワークの浸透により、労働時間に含まれることが正しく認識されるようになっています。
これらにも残業代を支払わなければなりません。
<実務の視点から>
残業そのものを減らすにも、残業代の支払いを減らすにも、合法的で適正な方法を検討するのであれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。