2023/06/08|966文字
<安易な運用>
上司から部下へ「昨日は2時間の残業ごくろうさん。今日は2時間早く上がっていいよ」という話があると、部下はトクした気分になるかもしれません。
しかし、給与の時間単価が2,000円だとすると、2時間の法定時間外労働では、
2,000円×2時間×1.25=5,000円
となって、会社は5,000円以上の賃金支払義務を負います。
一方で、2時間の欠勤控除では、
2,000円×2時間=4,000円
となって、残業代と欠勤控除をそれぞれ正しく計算すると、
5,000円-4,000円=1,000円
となって、プラスマイナスゼロではなく、総支給額がプラス1,000円になるのが正しいということになります。
しかも、会社都合で2時間早退させたとしたら、休業手当も発生します。
2,000円×2時間×0.6=2,400円
これは、労働基準法第26条に規定があります。
法律上、労働者は7,400円だけ多くの賃金を受け取れる計算になります。
しかも、労働法ですから「本人が同意」しても結論は変わりません。
<相殺の例外1>
きちんと法定の手続をして、フレックスタイム制を正しく運用していれば、ある日2時間残業して、別の日に2時間早退すると、結果的に相殺されたのと同じ効果が発生します。
これは、使用者側の指示によらず、労働者側が仕事の都合と個人の都合をバランス良く考えて、自由に労働時間を設定できることによる例外です。
<相殺の例外2>
月60時間を超える時間外労働の割増賃金(割増率5割以上)については、労働者の健康確保の観点から、割増賃金の支払に代えて有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。〔労働基準法第37条第3項〕
代替休暇制度の導入には、事業場の過半数組合、または労働者の過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。
この協定では、a.代替休暇を与えることができる時間外労働の時間数の算定方法、b.代替休暇の単位、c.代替休暇を与えることができる期間、d.代替休暇の取得日の決定方法および割増賃金の支払い日を定めるべきとされています。
残業時間と早退時間の相殺を正しく行いたい場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。
上手に運用するためのツールのご提供や、研修の実施など、よりスムーズに導入するためのサービスも行っております。