労働基準法で一番重い罰則

2025/06/25|1,018文字

 

<労働基準法第5条「強制労働の禁止」>

労働基準法第5条は、以下のように規定されています。

「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」

この条文は、労働者の基本的人権を守るための極めて重要な規定です。

労働契約は本来、労使双方の自由な意思に基づいて締結されるべきものであり、暴力や脅迫によって無理やり働かせることは、法的にも倫理的にも許されません。

 

<最も重い罰則の内容>

この第5条に違反した場合、労働基準法の中で最も重い刑罰が科されます。

拘禁刑:1年以上10年以下

罰金刑:20万円以上300万円以下

併科:拘禁刑と罰金刑が同時に科されることもある

この罰則は、他の労働基準法違反(例:残業代未払い、休憩時間の未付与など)と比べて、突出して重いのが特徴です。

 

<これほど重い理由>

強制労働は、単なる労働条件の違反ではなく、人権侵害にあたる行為です。

国際的にもILO(国際労働機関)条約などで厳しく禁止されており、日本もこれに加盟しています。

また、過去には「技能実習生制度」などで、実質的に強制労働に近い状況が問題視されたこともあり、社会的にも非常に敏感なテーマです。

 

<強制労働に該当する具体例>

以下のような行為が、強制労働とされる可能性があります。

退職を申し出た労働者に対し、脅迫して辞めさせない

寮や社宅に住むことを強制し、外出や連絡を制限する

パスポートや在留カードを取り上げて帰国を妨げる(外国人労働者の場合)

金銭的制裁や借金を理由に、労働を強制する

これらは、労働者の「自由意思」を奪う行為であり、重大な違法行為です。

 

<両罰規定と企業責任>

労働基準法には「両罰規定」があり、違反行為を行った個人(例:上司や管理職)だけでなく、法人(企業)自体も罰則の対象となります。

たとえば、ある管理職が部下に対して脅迫的に残業を強制した場合、その管理職だけでなく、企業にも罰金刑が科される可能性があります。

 

<実務上の影響とリスク>

強制労働に該当する行為が発覚した場合、以下のような深刻な影響が生じます。

労働基準監督署による臨検監督(立入調査調査・是正勧告)

・刑事告発・逮捕・送検

・企業名の公表(厚生労働省の「ブラック企業リスト」)

・社会的信用の失墜、採用難、取引停止

・損害賠償請求(精神的苦痛や逸失利益)

罰則以上に、企業の存続に関わるリスクがあることを理解する必要があります。

PAGE TOP