社会保険料の労使折半

2025/06/26|1,044文字

 

<社会保険料の労使折半の正当性と実態>

社会保険料の「労使折半(労働者と事業主が半分ずつ負担する)」という仕組みは、日本の社会保障制度の根幹をなす重要な制度設計です。

しかし、「なぜ事業主が半分も負担するのか?」「本当に折半といえるのか?」という疑問も根強くあります。

 

<社会保険料の「労使折半」>

社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険など)の保険料は、原則として労働者と事業主が半分ずつ負担します。これを「労使折半」と呼びます。

たとえば、厚生年金保険料が18.3%であれば、労働者が9.15%、事業主も9.15%を負担します。

 

<事業主が半分を負担する正当な理由?>

(1)制度の起源:ビスマルク体制

この仕組みの起源は、19世紀ドイツのビスマルクによる社会保険制度にあります。国家と企業が共同で労働者の生活を支えるという思想のもと、企業が保険料の半分を負担する「労使折半」が導入されました。

(2)資本主義の恩恵に対する「参加料」

企業は、法制度、インフラ、教育、治安など、社会が提供する基盤の上で利益を得ています。したがって、社会の安定に対して一定の責任を負うべきであり、社会保険料の折半はその「参加料」と言われます。

(3)労働者の生活安定は企業の利益にもつながる

労働者が病気や老後の不安なく働ける環境は、企業にとっても生産性や定着率の向上という形で利益をもたらします。社会保険制度は、企業と労働者の「共通利益」を守る仕組みでもあります。

 

本当に「折半」といえるのか?>

(1)形式的には折半

法律上、保険料は「労使折半」と明確に定められており、事業主は労働者と同額を負担しています。これは給与明細書や年金制度の設計にも反映されています。

(2)実質的には「労働者が負担している」という見方も

一部の論者は、「企業が負担しているように見えて、実際には人件費として給与に転嫁されている」と指摘します。つまり、企業は「給与+社会保険料負担分」を総人件費として予算化しており、労働者の賃金がその分抑えられている可能性があるという主張です。

この見方に立てば、「折半」とは名ばかりで、実質的には労働者が全額負担しているともいえます。

 

<制度の透明性と今後の課題>

ねんきん定期便には事業主負担分が記載されていないため、「企業がどれだけ負担しているか」が見えにくいという問題があります。

制度の「見える化」や「説明責任」が求められており、企業側の負担を明示することで、社会保険制度への理解と納得感を高める必要があります。

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