定年後の再雇用で賃金が減額

2025/06/24|946文字

 

<定年後再雇用制度>

高年齢者雇用安定法により、企業は希望する従業員に対して65歳までの雇用確保が義務付けられています(2025年4月から完全義務化)。

このため、多くの企業が「再雇用制度」や「勤務延長制度」を導入しています。

再雇用制度は、一度定年退職した後、契約社員などとして再び雇用される制度です。

勤務延長制度は、定年後もそのまま雇用契約を継続する制度です。

 

<賃金減額の実態と背景>

再雇用後の賃金は、定年前と比べて平均で20~30%程度減額されるケースが多く見られます。その背景には以下のような事情があります。

・雇用形態が無期から有期契約に変わる

・労働時間や責任範囲が縮小される

・年金受給とのバランスを考慮される

・企業側の人件費圧縮の必要性

 

<適法・違法の一般的な判断基準>

  • 適法とされるケース

再雇用後の業務の負担や責任が軽くなり、労働条件が変更された場合には、合理的な理由があるとされ、減額は適法と判断されることがあります。

  • 違法とされるケース

一方で、業務内容や責任が定年前とほぼ同じであるにもかかわらず、大幅な賃金減額が行われた場合は、「同一労働同一賃金」の原則に反し、違法とされる可能性があります。

 

<裁判例から見る判断基準>

最高裁平成30年6月1日判決では、定年前と同様の業務を行っていたにもかかわらず、賃金が20%以上減額された再雇用について、一部違法と判断されました。

このように、裁判所は以下の点を重視して判断します:

・業務内容や責任の程度

・配置転換の有無

・労働時間や勤務形態の変化

・労使間の合意の有無

 

<労働者が取れる対処法>

もし不当な賃金減額があったと感じた場合には、以下のような対応が考えられます。

  1. 会社に説明を求める:業務内容と賃金の整合性について確認。
  2. 労働組合に相談:団体交渉を通じて待遇改善を図る。
  3. 労働局や弁護士に相談:法的手段を検討する。

 

<今後の展望と課題>

2025年の法改正により、65歳までの雇用確保が完全義務化され、70歳までの就業機会確保も努力義務として求められています。

これにより、企業はより柔軟かつ公平な再雇用制度の設計が求められます。

一方で、賃金減額の問題は「高齢者の働きがい」や「生活の安定」に直結するため、制度の透明性と納得感のある運用が今後の大きな課題です。

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