無戸籍の解消に向けて

2023/09/05|1,077文字

 

<無戸籍の問題>

日本には、約1万人の無戸籍者がいると言われています。

戸籍がなければ、健康保険の扶養家族(被扶養者)にもなれませんから、生まれてすぐ適正な医療を受けられない可能性が高いのです。

無国籍のままでは、義務教育も受けられませんし、銀行口座の開設、携帯電話の契約、運転免許やパスポートの取得もできないことになります。

 

<無戸籍の理由>

戸籍法第49条は、出生から14日以内に届出をしなければならないと定めています。ところが、出生届を出す義務のある親などが、何らかの理由で出さないことにより子どもが無戸籍者になります。

これには、さまざまなケースがありますが、一番多いのは、離婚後に新たなパートナーとの間に子どもが生まれた場合です。

女性が、夫との離婚後300日以内に、子を出産した場合には、その子は民法上、別れた夫の子と推定されるため、実際には新たなパートナーの子であっても、原則として、夫を父とする出生の届出以外では受理されません。

このような戸籍上の扱いを避けるために、母が子の出生の届出をしないことによって、子が無戸籍になっているとの指摘があります。

 

<嫡出推定の制度>

民法は、生まれた子の父が誰であるかを法律上早期に確定して子の利益を図るため、嫡出推定という制度を設けています。

具体的には、婚姻の成立した日から200日を経過した日より後に生まれた子、または、離婚等により婚姻を解消した日から300日以内に生まれた子を、夫の子と推定することとしています。

 

<民法改正1:嫡出推定>令和6年4月1日施行

婚姻の成立した日から200日以内に生まれた子についても、夫の子と推定することとし、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子については、母が前の夫以外の男性と再婚した後に生まれた場合には、再婚後の夫の子と推定することとしました。

これにより、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子であっても、母が前の夫以外の男性と再婚した後に生まれた場合には、再婚後の夫を父とする出生の届出が可能となります。

 

<民法改正2:嫡出否認の訴え>令和6年4月1日施行

今の民法では、夫のみが、嫡出否認の訴えにより、父子関係を否定することができることとされています。

これが民法の改正により、子および母も嫡出否認の訴えを提起できるようになります。

また今の民法は、嫡出否認の訴えの出訴期間を1年としていますが、法改正によって出訴期間が3年に伸長されます。

これによって、子または母は、自ら嫡出否認の訴えを提起し、これを認める判決を得た上で、前の夫を父としない出生の届出が可能となります。

 

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