雇用保険の不正受給に対する処分

2025/02/13|1,361文字

 

<不正受給とは>

失業手当(求職者給付の基本手当)や雇用継続給付(高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付)など、失業等給付の支給を受ける権利が無いのに、不正な手段によって支給を受けたり、支給を受けようとしたりすると、不正受給となります。

つまり、実際に給付を受けていなくても不正受給となります。

 

<不正受給の処分>

不正受給があった場合には、次のような処分が行われます。

・不正のあった日から、雇用継続給付、基本手当等の支給を受ける権利がなくなります(支給停止)。

・不正な行為により支給を受けた金額は、全額返還しなければなりません(返還命令)。

・さらに悪質な場合には、不正な行為により支給を受けた金額の最高2倍の金額の納付が命ぜられます(納付命令)。

この場合、不正受給した金額の返還と併せて、3倍の金額を納めなければなりません。

これらの支払を怠った場合は、財産の差し押えが行われる場合があります。

・刑法により処罰されることがあります。詐欺罪(刑法第246条第1項)の場合、10年以下の懲役に処せられます。

 

<事業主との連帯責任>

事業主が虚偽の申請書等を提出した場合は、事業主も連帯して返還命令や納付命令処分を受けることがあります。

また、同一事業所で一定期間に複数回連続して就職、離職、失業等給付の基本手当の受給を繰り返している人(循環的離職者)を再び雇用した場合は、雇用保険の受給資格決定前から再雇用予約があったものとして受給資格者本人だけでなく、事業主も共謀して不正受給したとして連帯して返還命令処分を受ける場合があります。

 

<ハローワークによる調査>

不正受給の疑いがある場合には、ハローワークによる調査が行われます。

失業等給付を受けていた人を採用した場合に、その人を採用した時期の点検等のため、ハローワークが事業主から関係書類を借りる場合があります。

また、循環的離職者を雇用する(雇用していた)事業主へ再雇用予約の有無等について、ハローワークが確認の連絡をする場合もあります。

 

ハローワークには、雇用保険給付調査官が配置され、不正受給者の摘発や実地調査を行なっています。この場合には、企業の訪問調査も行われています。

 

<不正受給のうっかりポイント>

労働者を採用した場合、雇用年月日の理解が不正確なために不正受給につながることがよくあります。

試用期間や見習期間も雇入れのうちですから、この期間の初日が雇用年月日となります。

この期間について失業等給付(基本手当)を受給すると不正受給になります。

 

失業等給付(基本手当)を受給している人が、内職、アルバイト、手伝等をした場合は、ハローワークへ申告をしなければなりません。

失業中にアルバイトなどをすること自体は違法ではありませんが、必要な申告を怠ると不正受給になります。

 

対象者本人から、雇入年月日、賃金や労働日数、働いていた期間等について、事実と相違する書類が提出されることもあります。

しかし、事業主は事実に基づく証明をしなければなりません。

万一、偽りの記入を求められても絶対に受け入れないようにしてください。

 

不正受給に関して、事業主の証明が誤っていたり、承知しながら見逃していたりした場合、事業主も連帯責任を問われることがあります。

うっかりしないように注意してください。

人事考課は相対評価か絶対評価か?

2025/02/12|1,275文字

 

<相対評価>

相対評価では、社内の評価対象の社員たちが基準となります。

上位3分の1の成績なら評価A、中位3分の1は評価B、下位3分の1は評価Cというように、評価A~評価Cの割合を予め決めておいて評価を決定します。

この方法では、社内や部署内での順位によって評価が決まることになります。

 

<絶対評価>

絶対評価では、世間一般の同業で働く人たちや同一職種の人たちが基準となります。

この方法では、評価対象の社員が皆優秀であれば全員が評価Aとなることもあり、反対に全員が評価Cとなることもありえます。

 

<社員の努力目標として>

相対評価なら、社員は社内や自部署で1番になることを目指します。

どうしても、「お山の大将」「井の中の蛙」ということになります。

また、社員同士が切磋琢磨すれば良いのですが、足の引っ張り合いも懸念されます。

絶対評価だと、最終目標は日本一や世界一ということになりそうです。

個人の性格にもよりますが、最終目標は高い方が良いのではないでしょうか。

 

<評価の変動>

相対評価で、自分の評価を上げるには、誰かを追い抜かさなければなりません。

下がれば「誰に抜かされたのだろう?」と疑心暗鬼になります。

絶対評価の場合、人事考課制度を導入し始めた頃は、社員たちが評価を意識せずに働いていますから、一般に評価が低くなります。

しかし、評価を意識して働くようになると、社員全体の評価が少しずつ向上する傾向が見られます。

こうして一定の期間、社員全体の評価が向上した後は、世間一般のレベルアップを上回って向上した場合に限り評価が上がり、前年と同じ働きぶりを続ける社員の評価は下がっていくことになります。

ここのところは、人事考課制度導入時に社員にきちんと説明しておかないと、不満が出やすいポイントでもあります。

 

<達成感と危機感>

相対評価では、全員がそろって向上した場合には達成感がありません。

反対に、全員がレベルダウンしても気付きにくいという危険があります。

社員に達成感や危機感を持たせるには、絶対評価の方が向いています。

 

<解雇の基準として>

やむを得ず整理解雇をするときは、過去数年間の評価が悪い社員を対象とすることも考えられます。

相対評価でも絶対評価でも、整理解雇の対象者を決める客観的な基準として、一定の合理性が認められるでしょう。

一方、相対評価で一定の期間にわたって成績の悪い社員を能力不足と考えて解雇した場合は、解雇権の濫用であり不当解雇となるので、その解雇は無効であるとされています。

相対評価なら、優秀な社員しかいない会社でも、一定の割合で評価の低い社員は必ずいるわけですから、評価を理由に「仕事ができない」と認定することはできないからです。

 

<実務の視点から>

人事考課制度をどのようにするかの判断は、各企業の裁量の幅が大きいのですが、会社や社員ひとり一人に対する影響だけでなく、そこから生じうる労働法上の問題を踏まえて検討するのなら、社会保険労務士への依頼をお勧めします。

実務的には、絶対評価をベースとして、相対評価による修正を加えたものが運用されています。

雇用継続給付の受給手続は受給者と従業員との共同作業となります

2025/02/11|791文字

 

<事業主の協力>

高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付に関する受給資格確認と支給申請の手続は、原則として、その対象者(被保険者)を雇用する事業主を経由して行うよう協力が求められています。

もし、手続に詳しい人がいなければ、社会保険労務士に依頼するなどして、受給が遅れないようにしましょう。

 

<通知書と申請書>

ハローワークで雇用継続給付についての支給決定が行われると、コンピューターでの処理後、「支給決定通知書」と「次回の支給申請書」が交付されます。

これらの書類には、次の3つの役目がありますので、対象者本人(被保険者)に渡しましょう。

・支給金額を通知する。

・次回の支給対象期間と支給申請の期限を通知する。

・高年齢雇用継続給付の場合には、年金との併給調整手続に使用する。

 

<正しく手続を>

高年齢雇用継続給付の支給額は、原則として、60 歳到達時(休業開始時)の賃金額と支給対象月(対象期間)に支払われた賃金額とを比較し、その低下に応じて決定されます。

そのため、給付金の支給決定後に、提出済みの賃金月額証明書や支給申請書について、賃金額の記載誤りや一部算入漏れ等があった場合には、正しい金額を計算し改めて支給するので、すでに支給された給付金を回収しなければならないケースが発生します。

 

また、育児休業給付や介護休業給付の支給対象期間中に職場復帰した場合の職場復帰日(介護休業終了日)の申告漏れがあった場合についても、正しく処理を行う必要があるため、上記と同様、すでに支給した給付金を回収しなければならないケースもあります。

 

こうした給付金の回収手続は、わずらわしいだけでなく、多額の給付金を一度に回収される場合もあるので、事業主や対象者(被保険者)に、かなりの負担・不利益を生じさせることもあります。

 

なるべく早く給付を受けられるよう、正確かつスピーディーな手続を心がけましょう。

職場での集団いじめと労災認定

2025/02/10|979文字

 

<集団いじめの危険性>

パワハラやセクハラは、加害者も直接の被害者も個人であることが多いものです。

しかし、職場環境や企業風土によっては、特定の個人が先輩や同僚から集団でいじめられることもありえます。

いじめによる自殺などの被害は、決して学校に限られたものではないのです。

 

加害者側は「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」という感覚、つまり、共同責任は無責任という感覚に陥っています。

「私だけが悪いわけではないから」という感覚でいじめに加わった場合、法律上はむしろ重い責任を負わされることになります。

刑法では共同正犯とされ、一部を実行したに過ぎなくても全部の責任を負わされます。〔刑法第60条〕

民法では共同不法行為とされ、実際に行為に及んだ人も、手助けした人も、そそのかした人も、ひとり一人が全ての損害に対する賠償責任を負わされます。〔民法第719条〕

 

<大阪地裁 平成22(2010)年6月23日判決>

被害者の女性は、同僚の複数の女性社員たちから集団で、しかも、かなりの長期間継続していじめを受けました。

その内容も、陰湿で常軌を逸した悪質なひどいいじめでしたから、被害者の女性が受けた心理的負荷は強度なものでした。

上司たちは気づかなかったり、気づいた部分についても何ら対応を採らなかったりという無責任な態度でした。

ついに、被害者の女性は上司に相談するのですが、上司が何も防止策を採らなかったために、かえって失望感を深めてしまいました。

こうして、被害者の女性は不安障害と抑うつ状態を発症し、労災と認定されたのです。

 

この被害者女性は、特に弱い人ではなく、同僚の女性社員たちからの集団いじめと、会社の不対応が発症の原因であると裁判所により認定されました。

 

この事件では、労働基準監督署に対する労災保険の給付請求があったのに対して、労働基準監督署長が不支給の処分をしたため、被害者の女性が裁判所に訴えを起こしたのでした。

行政の判断が最終結論ではなく、それに不服があれば、訴訟により決着をつけるという道が残されています。

会社から見れば、こうした事件を予防するためにも、多くの労働裁判例を検討して対策をとる必要があるということです。

「とてもそこまで行う人材を社内で確保できない」ということであれば、労働法に明るい弁護士や社会保険労務士に依頼することも考えなければなりません。

雇用保険の対象にならない人は限られています

2025/02/09|1,287文字

 

次の各項目のどれかに当てはまる労働者は、雇用保険の対象者(被保険者)とはなりません。

反対に、どれにも当てはまらない労働者を、雇い主側の判断で、対象から外し手続を行わないのは違法となります。

 

<1週間の所定労働時間が20 時間未満である人>

「1週間の所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書などにより、その人が通常の週に勤務すべきこととされている時間のことをいいます。

この場合の通常の週とは、祝日やその振替休日、年末年始の休日、夏季休暇などの特別休日を含まない週をいいます。

1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合には、その1周期の所定労働時間の平均を1週間の所定労働時間とします。

また、所定労働時間が複数の週を単位として定められている場合は、各週の平均労働時間で考えます。

1か月単位で定められている場合は、1か月の所定労働時間を12倍して52 で割った時間とします。

1年単位で定められている場合は、1 年の所定労働時間を52 で割った時間とします。

52で割るのは、1年がおよそ52週だからです。

所定労働時間は、残業手当の計算や、年次有給休暇取得時の賃金計算に必要です。

そして、基本的な労働条件として、労働条件通知書などの書面により、労働者に通知することが雇い主の法的義務とされています。

ですから、所定労働時間を決めないことは、雇い主に複数の罰則が重ねて適用される結果をもたらします。

どうしても決め難いのであれば、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

 

<同一の事業主の適用事業に継続して31 日以上雇用されることが見込まれない人>

「31 日以上雇用されることが見込まれる」というのは、次のような場合です。

・正社員など雇用期間を定めずに雇う場合

・有期労働契約で、最初の雇用期間が31日以上である場合

・有期労働契約で、最初の雇用期間は30日以内だが、契約期間の更新が予定されている場合

・有期労働契約で、最初は契約期間の更新を予定していなかったが、途中で更新することになり、結果的に31日以上の契約期間となる場合

・有期労働契約で、最初の雇用期間は30日以内だが、同様の契約で働いている人の多くが契約を更新され、実態として31日以上雇用されることが見込まれる場合

 

 <季節的に雇用される人であって次のどちらかにあてはまる人>

・4か月以内の期間を定めて雇用される人

・1週間の所定労働時間が30 時間未満の人

※いわゆる季節雇用の人についての基準です。

 

<学校教育法1条の学校、124 条の専修学校、134 条の各種学校の学生または生徒>

昼間の時間帯の授業に出席することの多い学生などです。

通信制、単位制、定時制などの場合には、雇用保険の対象となります。

 

<船員であって、特定漁船以外の漁船に乗り組むために雇用される人>(1年を通じて船員として雇用される場合を除く)

 

<国、都道府県、市区町村などの事業に雇用される人のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、雇用保険の求職者給付および就職促進給付の内容を超えると認められる人>

新店などが小さくて雇用保険の手続をする人がいないときに便利な申請

2025/02/08|860文字

 

<雇用保険の手続の原則と例外>

雇用保険に関する事務処理は、原則として事務所、営業所、出張所、店舗などの事業所ごとに行うことになっています。

 しかし、事業所の規模が小さくて、雇用保険の手続を担当する人が置けないなどの事情がある場合には、その事業所の所在地を管轄するハローワークに「雇用保険事業所非該当承認申請書」を提出し承認を受けることによって、本社、支社など上位の事業所が一括して手続を行えるようになります。

この場合、事業所の規模が小さいというのは、従業員の数が少ないとか、面積が狭いということではなくて、機能的に独立性を保てないことを意味します。

あくまでも、申請して承認を受ければ可能になるということですから、申請せずに会社の判断で本社、支店などがまとめて手続できるわけではありません。

 

<申請が承認されるための条件>

申請が承認されるためには、労働者が働く場所や施設(事務所、営業所、出張所、店舗など)が、次の条件をすべて満たすことが必要です。

ただし労働保険について、継続事業の一括が認可されている施設は、原則として条件を満たさなくても大丈夫です。

 

●事業所非該当承認基準

・人事上、経理上、経営上(または業務上)の指揮監督、賃金の計算、支払などに独立性が無いこと。

・健康保険、厚生年金保険、労災保険などについても、本社や主たる支社で一括処理されていること。

・労働者名簿、賃金台帳などの法定帳簿類が、本社や主たる支社に備え付けられていること。

 

この3つの条件のうち、1つ目の独立性については判断が微妙となりがちです。

不安があり、直接ハローワークに確認しにくい場合には、社会保険労務士にご相談ください。

 

<申請手続>

・提出書類・・・・・「雇用保険事業所非該当承認申請書」(41組)

・提出期日・・・・・申請しようとする都度すみやかに

・提出先・・・・・・・非該当承認対象施設の所在地を管轄するハローワーク

 

新たな店舗などで勤務する人について、雇用保険の手続が遅れてはいけませんから、後回しにせず、なるべく早く手続しましょう。

退職者の国民健康保険料の特例

2025/02/07|693文字

 

<退職後の健康保険>

退職後の健康保険には、今までの健康保険の任意継続、健康保険加入家族の扶養に入る、国民健康保険に入るといった選択肢があります。

多くの人は、任意継続と国民健康保険とで、保険料の安い方を選択します。

国民健康保険では、会社都合など非自発的離職をした人について、保険料(税)が減額される制度がありますので、対象者には会社から説明しておくのが良いでしょう。

 

<非自発的離職者の国民健康保険料(税)の軽減制度>

非自発的離職者の負担の軽減のため、国民健康保険料(税)の算定をする際に、前年の給与所得金額(他の所得は対象外)を100分の30の金額とみなして計算します。

これは、自己都合によらず離職した人の負担軽減措置であり、国の政策による制度です。

 

<対象者>

次の全てに当てはまる人が対象になります。

・離職日が平成21(2009)年3月31日以降

・離職時点で65歳未満

・ハローワークで失業の認定を受け次の事由に該当

雇用保険の特定受給資格者(例:倒産・解雇などによる離職)…離職理由欄が11、12、21、22、31、32

雇用保険の特定理由離職者(例:雇い止めなどによる離職)…離職理由欄が23、33、34

 

<軽減制度の対象期間>

軽減制度の対象期間は、雇用保険受給資格者証に記載されている離職日の翌日の属する月から翌年度末までです。

失業手当(雇用保険の基本手当)を受ける期間とは異なります。

 

<届出の方法>

健康保険証、雇用保険受給資格者証、マイナンバー(個人番号)確認書類、身元確認書類を用意のうえ、区市役所・町村役場で届出をします。

届出には、離職者のマイナンバーの記入が必要となります。

 

<退職者共通の特例免除>

申請者本人、世帯主または配偶者のいずれかが退職(失業等)された方で、納付が困難な方は、特例免除を申請できます。

https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kokuminnenkin.files/LN07.pdf

雇用保険の加入手続

2025/02/06|955文字

 

<資格取得と喪失>

雇用保険の適用事業所に雇用される労働者は、正社員、準社員、契約社員、パート、アルバイト等の呼称にかかわらず、原則として被保険者となります。

ただし、週所定労働時間が20時間未満などの例外があります。

日常用語では、加入者などといいますが、法律用語では保険の対象となる人という意味で被保険者といいます。

これらの労働者は、原則として、その適用事業所に雇用される日から被保険者資格を取得し、離職等となった日の翌日から被保険者資格を喪失します。

離職は退職に限られず、週所定労働時間が20時間未満となった場合等を含みます。

これら被保険者に関する手続は、すべて適用事業所の所在地を管轄するハローワークで行います。

 

<被保険者となる労働者を新たに雇用したとき>

・提出書類・・・・・「雇用保険被保険者資格取得届」

・提出期限・・・・・雇用した日の属する月の翌月10 日まで

・提出先・・・・・・・事業所の所在地を管轄するハローワーク

※提出期限は、東京都の場合は件数が多いため、雇用した日の属する月の翌月末日までとなっています。

 

<添付書類>

次のいずれかに該当する場合には、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿(タイムカード等)、その他社会保険の資格取得関係書類等その労働者を雇用したこと及びその年月日が明らかにするもの、有期契約労働者である場合には、書面により労働条件を確認できる就業規則、雇用契約書等の添付が必要です。

 

・事業主として初めての被保険者資格取得届を行う場合。

・被保険者資格取得届の提出期限を過ぎて提出する場合。

・過去3 年間に事業主の届出に起因する不正受給があった場合。

・労働保険料を滞納している場合。

・著しい不整合がある届出の場合。

・雇用保険法その他労働関係法令に係る著しい違反があった事業主による届出の場合。

 

株式会社等の取締役等であって従業員としての身分を有する人、事業主と同居している親族、在宅勤務者についての届出である場合には、雇用関係を確認するための書類の提出が必要です。

 

社会保険労務士、労働保険事務組合を通じて提出する場合には、次のいずれかに該当する場合のみ、添付書類が必要となります。

・届出期限を著しく(原則として6か月)徒過した場合

・ハローワークにおいて、届出内容を確認する必要がある場合

健康保険の扶養家族と収入などの条件

2025/02/05|462文字

 

<原則の基準>

扶養される家族の年間収入が130万円未満で、社会保険加入者(扶養する側の被保険者)の年間収入の半分未満であれば、扶養家族(被扶養者)になるというのが原則の基準です。

ただし、扶養される家族の年間収入が130万円未満であれば、社会保険加入者の年間収入の半分以上であっても、社会保険加入者の収入によって生計を維持していると認められる場合には、扶養家族になることができます。

 

<60歳以上の家族など>

扶養される家族が60歳以上の場合と、障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合には、年間収入の基準が180万円未満となります。

 

<別居の場合>

扶養される家族が社会保険加入者と別居している場合には、年間収入が130万円未満で社会保険加入者からの仕送り額よりも少ない場合に、扶養家族になることができます。

 

<20代から50代の配偶者>

20歳から59歳の配偶者を扶養家族とする場合には、健康保険の手続と同時に国民年金の手続が必要です。

社会保険に加入している側の配偶者が、勤務先に「国民年金第3号被保険者関係届」を提出します。

モデル就業規則には使用上の注意があります

2025/02/04|1,405文字

 

<モデル就業規則>

「モデル就業規則」は、厚生労働省(労働基準局監督課)がネットに公表しています。

誰でも、無料で使うことができます。

関係法令、通達、行政解釈に準拠していますので、適法な内容であることが担保されています。

必要な項目が網羅されていて、漏れがありませんので、企業の就業規則のひな形として、最適なものだと考えられます。

モデル就業規則の最新版(令和5年7月版)は、直近の関係法令等の規定を踏まえ就業規則の規定例を解説とともに示したものです。

このように、法改正などにもタイムリーに対応しています。

 

<注意点>

モデル就業規則には、活用に当たって次のような注意点が示されています。

 

本規則はあくまでモデル例であり、就業規則の内容は事業場の実態に合ったものとしなければなりません。したがって、就業規則の作成に当たっては、各事業場で労働時間、賃金などの内容を十分検討するようにしてください。

 

ひな形である以上、職場の実態に適合するようカスタマイズは必須です。

しかし、「どこをどう考えて」というのは難しいものです。

以下、カスタマイズの必要性が高い項目について検討します。

 

<就業規則の形式>

 

パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。〔第2条第2項〕

 

就業規則を「正社員就業規則」「パート社員就業規則」「アルバイト社員就業規則」などに分割すれば、各従業員は自分に関わる規則だけに目を通すことができて便利でした。

しかし、同一労働同一賃金が意識されるようになり、雇用形態による待遇の差が注目されています。

現在は、1冊の就業規則に全雇用形態の規定を網羅することも一考に値します。

なお、非正規社員にはパートタイム労働者だけでなく有期雇用労働者もいるのですから、正社員とは別の雇用形態の就業規則を規定するのであれば、全雇用形態を網羅して定める必要があります。

 

<休職制度>

 

労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。〔第9条第1項〕

 

この規定によれば、一定の条件を満たした社員は自動的に休職となるわけです。

しかし、たとえば復帰の見込みが無い場合にまで、一定の期間休職扱いにするのは不合理です。

多くの企業にとっては、「所定の期間休職とする」のではなく、「休職を命ずることがある」にするのが現実的でしょう。

 

<あいまい表現>

 

その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと。〔第11条第7号〕

正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。〔第68条第1項第2号〕

正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。〔第68条第2項第4号〕

素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。〔第68条第2項第7号〕

業務に重大な悪影響を及ぼす行為をしたとき。〔第68条第2項第12号〕

 

禁止規定の「ふさわしくない行為」、懲戒規定の「しばしば」「著しく」「重大な」というのは、個人によって判断の分かれる表現です。

具体的な言動について、該当する/しないが紛争の火種となりますから、こうした言葉を使わない方が余計なトラブルを発生させずに済みます。

たとえば、上記で「しばしば」という表現の付いている行為については、その回数よりも影響度が問題となります。

業務や労働環境に与えた不都合を踏まえて、臨機応変に対応できるようにするためにも、余計な表現は排除しておくのが良いと考えられます。

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