営業ノルマが違法となる場合

2023/06/30|1,393文字

 

<営業ノルマの意味>

営業ノルマは、企業が部門ごと、あるいは個人ごとに設定する、売上や成約件数などの目標です。

目標を設定することで、モチベーションを維持することができ、管理もしやすくなります。

営業ノルマが、単なる目標値として掲げられているだけであれば、基本的には法的な問題を生じません。

しかし、企業が営業ノルマ達成に熱心なあまり、違法行為が発生してしまうことがあります。

 

<営業ノルマとパワハラ>

経営者や部門長から、各社員に向けて過剰な叱咤激励が行われ、個人の人格権が侵害されれば、パワハラとなってしまいます。

ましてや、ノルマを達成できない社員を叱りつけることは、行き過ぎた態様で行われやすく、パワハラとなる危険性が高まります。

民事上の不法行為に止まらず、犯罪が成立することもありますから、十分に注意が必要です。

 

<営業ノルマとサービス残業>

ノルマを達成したいがために、長時間労働に走る社員も出てきます。

営業部門では、残業手当に代えて、定額の営業手当が支給されていることもあります。

しかし、この場合でも、原則的な計算方法で算出した残業手当の金額が、営業手当を上回った場合には、毎月その過剰分を支給しなければ労働基準法違反となってしまいます。

ノルマ達成に向け、労働時間の延長ではなく、効率アップを図るように指導することが必要です。

 

<自爆営業>

社員に対し、ノルマ未達成部分の自腹購入をさせることは、そもそも労働契約の内容にはなりえませんので、一種の押し売りであり、労働基準法第16条の禁止する賠償予定の実行でもあって、違法行為であると解されます。

これはまた、賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)にも違反し、懲戒権の濫用(労働契約法第15条)にもなってしまいます。

 

<未達成を理由とする解雇>

たとえば「ノルマ未達成が3か月続いたら解雇」などの基準を設定し運用することは、解雇権の濫用(労働契約法第16条)になりますから無効です。

社員教育を十分に行い、無理のないノルマが設定されている中で、特定の社員だけが明らかな努力不足で達成できないような、特殊なケースでのみ、解雇が有効となりうるのです。

 

<未達成を理由とする懲戒処分>

仕事をさぼって、故意にノルマを達成しないような、本人の責任が重い特殊な場合には、懲戒処分が有効とされることもあるでしょう。

しかし一般には、懲戒権の濫用となり懲戒処分は無効とされます。

そもそも懲戒処分は、本人に反省を求め、態度を改めさせることに意義があります。

ノルマ未達成に対して懲戒処分を行ったからといって、ノルマを達成できるようになることが期待できない以上、懲戒処分の対象とすべきではないのです。

 

<未達成を理由とする給与減額>

ノルマを達成できない場合に、給与を減額するというのも、自爆営業と同様に、労働基準法違反や労働契約法違反になってしまいます。

しかし欠勤した場合に、欠勤控除を超えて給与を減額することが懲戒処分にあたる一方で、

皆勤した場合に皆勤手当が支給されるのは違法ではありません。

これと同様に、ノルマを達成した場合には報奨金が支払われ、未達成の場合には支払われないというのは必ずしも違法ではありません。

報奨金の金額が、基本的な賃金との比較で適正であり、報奨金が支払われない場合でも最低賃金法違反とならないのであれば、上手に運用することを考えたいものです。

 

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