就職氷河期世代の活躍促進に向けた取組み

2025/09/09|1,588文字

 

就職氷河期世代とは?>

「就職氷河期世代」とは、1990年代半ばから2000年代初頭にかけて、バブル崩壊後の景気低迷により新卒採用が極端に減少した時期に、学校を卒業した世代を指します。おおむね1970年代前半〜1980年代前半生まれの人々が該当し、卒業時に正社員としての就職が困難だったため、非正規雇用や不安定な職に就かざるを得なかった人が多くいます。

この世代は現在40代〜50代となり、キャリア形成や生活基盤の面で長期的な影響を受けていることから、政府や自治体は「活躍促進」に向けた支援を強化しています。

 

なぜ支援が必要なのか?>

就職氷河期世代が抱える課題は多岐にわたります。

まず、正規雇用の機会が少なかったという事情があります。新卒時に正社員になれず、その後もキャリア形成が難しく、非正規雇用が長期化したケースが多いという実態があります。

また、若年期に非正規社員として働き、十分なスキル習得の機会が得られず、現在の労働市場で不利な立場に置かれています。

こうした中で、安定した収入や社会保障が得られず、生活保護や支援制度に頼らざるを得ない人もいます。

さらに、年齢や職歴の空白を理由に、採用を敬遠されるケースもあり、再チャレンジの機会が限られています。

こうした課題は、個人の問題にとどまらず、労働力不足や社会保障制度の持続可能性にも影響を及ぼすため、社会全体での対応が求められています。

 

主な支援施策と取組み>

政府は「就職氷河期世代支援プログラム(2019年〜)」を中心に、以下のような多面的な支援を展開しています。

 

1. 正規雇用への移行支援

・ハローワークによる専門支援窓口の設置

就職氷河期世代向けに専用の相談窓口を設け、キャリア相談や求人紹介を実施。

・企業への助成金制度

氷河期世代を正社員として採用した企業に対して、一定の助成金を支給(例:特定求職者雇用開発助成金)。

・トライアル雇用制度の活用

一定期間の試用雇用を通じて、企業と求職者のマッチングを支援。

 

2. 職業訓練・スキルアップ支援

・公共職業訓練の優先枠の設定

IT、介護、製造などの分野で、氷河期世代向けの訓練コースを設置。

・資格取得支援や学び直しの機会提供

eラーニングや夜間講座など、働きながらでも学べる環境を整備。

・ジョブ・カード制度の活用

職務経歴やスキルを整理し、企業とのマッチングに活用。

 

3. 地域・自治体による支援

・地域若者サポートステーション

地域密着型の相談・支援拠点で、就労支援や社会参加の促進を図る。

・自治体独自の採用枠の設置

一部自治体では、氷河期世代向けの公務員採用枠を設け、安定した職への道を開いている。

・地域企業との連携による雇用創出

地元企業と連携し、職場体験やインターンシップを通じた雇用促進を実施。

 

4. 社会参加・孤立防止の支援

・居場所づくり・交流イベントの開催

同世代同士の交流や情報共有を通じて、孤立感の軽減を図る。

・生活支援との連携

就労支援と生活保護、住宅支援などを一体的に提供することで、包括的な支援を実現。

 

成果と今後の課題>

これらの取組みにより、一定の成果は見られていますが、課題も残されています。

・支援対象者の把握が難しい

就職氷河期世代の中でも、支援につながっていない層が多く、アウトリーチが課題。

・企業側の理解促進が必要

年齢や職歴にとらわれず、ポテンシャルを評価する採用文化の醸成が求められる。

・継続的な支援体制の構築

一過性の施策ではなく、長期的な視点での支援が不可欠。

 

<実務の視点から>

就職氷河期世代の活躍促進は、個人の尊厳回復だけでなく、社会全体の活力向上にもつながる重要な課題です。

支援の鍵は「再チャレンジの機会を開くこと」と「社会全体の理解と協力」です。

制度の活用だけでなく、企業・地域・個人がそれぞれの立場で支え合うことで、誰もが活躍できる社会の実現に近づいていきます。

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