病気で就業規則を守れない人の懲戒解雇

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2019/12/18|1,374文字

 

<就業規則違反>

厚生労働省が公表するモデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

※分量が多いので一部の抜粋です。

 

【解雇】

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

 

⑥第66条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。

 

【懲戒の事由】

第66条  2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。

 

②正当な理由なく無断欠勤が  日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき。

③正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

⑦素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。

⑧数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき。

⑭その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

 

このように、就業規則違反の程度が重ければ、懲戒解雇もありうることが規定されています。

 

<懲戒処分の制限>

ただし、懲戒処分は次の制限を受けます。

 

労働契約法第15条【懲戒】

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

就業規則の懲戒規定には、明示されていないことも多いのですが、故意や重大な過失の存在が前提となっています。

故意や重大な過失が無い場合には、その行為を懲戒処分とすることについての「客観的に合理的な理由」は認めがたいですし、「社会通念上相当」であるともいえません。

病気によって、就業規則に定められたルールを守れない場合、一般には故意も過失も認められないでしょう。

懲戒解雇の対象とすることには無理があると考えられます。

 

<普通解雇>

このように、懲戒解雇とすることが認められないとしても、普通解雇を検討する余地があります。

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

「病気で就業規則を守れない」というのは、多くの場合「労働契約を守れない」ということになり、労働契約違反となりますから、普通解雇の対象にはなりえます。

 

<解雇の制限>

そして、解雇もまた次の制限を受けます。

 

労働契約法第16条【解雇】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

すべての解雇は、この制限を受けることになります。

「病気で就業規則を守れない」という場合には、「病気が治れば守れるようになる」可能性が含まれています。

就業規則に休職の規定を置いている会社であれば、その規定に従い一定の期間、回復を待つことになります。

また、就業規則に休職の規定を持たない会社であっても、一定の期間、回復を待たずに解雇するのは、解雇権の濫用として無効となる可能性が高いといえるでしょう。

 

解決社労士