労働基準法の「基準」は、下限や禁止の「基準」を示しています。罰則に触れる行為は、労働基準法違反の犯罪ですから、送検され刑事裁判の対象となります。

2024/04/21|961文字

 

<「基準」の意味>

労働基準法の「基準」は、「最高」の水準を意味するものではありません。

そして、「標準」や「目安」を示しているわけでもないのです。

労働基準法の「基準」とは、この一線を踏み越えると違法になるというギリギリの「最低」水準や「限度」、「禁止事項」のことを言っています。

ですから、会社独自の判断で労働基準法に示された「基準」よりも労働者に有利なことをするのはかまいません。

たとえば、入社とともに年次有給休暇を14日付与するなどがその例です。

 

<「基準」の個別性>

労働基準法の「基準」は項目ごとに定められています。

「うちの会社は残業手当を多めに支給しているから、年次有給休暇は取らせなくてもいいだろう」など、全体のバランスで調整することはできません。

 

<違約金・賠償額の予定禁止>

「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」〔労働基準法第16条〕

かつては、中途で退職したり、会社に損害を与えたりした場合は、労働者だけでなくその家族も違約金を払う、損害賠償を行なうなどの契約が見られました。

しかし、これは労働者の退職の自由を奪うことになるので、労働基準法が罰則付きで明確に禁止したのです。

 

<「罰金」のあるブラック企業>

ところが実際には、遅刻したら罰金3千円、お皿を割ったら1枚につき千円など、気軽に労働基準法違反を犯している会社もあります。

そもそも「罰金」というのは、国家権力が科すものですから、民間企業が従業員から罰金を取るというのは明らかにブラックなわけです。

 

<実務の視点から>

社内での「常識」に従って昔から行われていることが、実は労働基準法違反ということがあります。

不幸にして、客観的な第三者からの指摘が無いままに、違反を繰り返している状態です。

仕事ができる人は、常に自分の中の常識を疑っています。

経営者が、自分の中の常識を疑わなくなれば、会社は社会の変化についていけません。

労働基準監督署への三六協定書の届出など形式的な面だけでなく、社内で行われていること全体について適法性が確保されているのか、労働条件審査を受けてみてはいかがでしょうか。

経営者や人事部が問題を感じていなくても、思わぬ落とし穴があるかもしれません。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

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