退職願の提出期限を就業規則にどのように規定しておいても、民法の規定により、正社員などは退職届提出の14日後に退職できます。

2024/04/19|1,458文字

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(令和5(2023)年7月版)は、従業員の退職について、次のように規定しています。

 

【退職】

第52条  前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。

①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき

 

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、労働契約の合意解除がなされたことになります。この場合には、退職予定日の◯日前までに提出しなければならないということはなく、即日退職であっても、合意によって退職できることになります。

これに対して、従業員が「退職願を提出して  日を経過したとき」の方は、規定を素直に解釈すれば、会社側が退職の申し出を拒んだとしても、一定の日数の経過により労働契約が解除されるわけですから、従業員から会社に対する一方的な契約解除ということになります。ここでは、「退職願」と言っていますが、「退職届」「辞職届」と呼んだ方がふさわしいでしょう。

結局、会社に退職願が提出されて会社が承認すればその時点で、承認しなくても  日経過すれば退職の効果が生じるという解釈になります。

 

<実務上の運用>

しかし、就業規則に「退職願を提出して  日を経過したとき」は退職とするという規定があっても、現実には、退職願が提出されてから、規定の日数をカウントして該当日に退職とするような運用は行われていません。

従業員からの退職願には、「◯年◯月◯日をもって退職いたしたく」という形で、退職予定日が記載されているのが一般的です。

これに対して会社の態度としては、退職願の内容をそのまま承認することもあり、退職しないよう慰留することもあり、また、退職そのものは了承しつつ、退職日の変更を求める場合もあります。

そして、引き継ぎをどうするか、年次有給休暇の消化をどうするか、最終出勤日と退職日をどうするかなど、労使で協議のうえ内容を確定していくことになります。

こうした実務上の運用は、「退職願」という言葉にも忠実なものといえます。

 

<民法と就業規則>

民法の規定によれば、正社員など期間の定めのない雇用の場合、従業員はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

就業規則には「退職願を提出して30日を経過したとき」あるいは「退職予定日の30日以上前に退職願を提出」などと規定されていることもありますが、退職希望者から民法の規定を持ち出されると反論できません。

この場合には、提出されたのが「退職願」であったとしても、従業員の意図としては「退職届」「辞職届」ということになります。表題が違うので書き直してもらうというのは意味がありませんので、会社としては従業員の意思をそのまま受け入れるしかありません。

 

<実務の視点から>

結局、民法の「14日」という規定は、就業規則の規定とは別のところに存在していると考えられます。

会社は、引き継ぎもしないで退職されると困ることもありますから、就業規則には退職にあたって引き継ぎを完了させる義務の規定を置いておくべきですし、引き継ぎを完了させずに退職した場合のペナルティーを懲戒規定に置いておくことも考えるべきでしょう。

理想をいえば、14日後に退職する従業員がいても困らないような体制を整えておくことが安心ではあります。

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