個の侵害型パワハラの防止とプライバシー権侵害の防止は企業の責任です。

2024/04/26|1,219文字

 

<パワハラとは>

職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる言動であって、次の3つの要素をすべて備えたものをいいます。

 

・職場での優越的な関係を背景としていること

・業務上必要かつ相当な範囲を超えていること

・労働者の就業環境を害しうるものであること

 

このうち、労働者の就業環境を害するというのは、業務効率が低下する人や出勤しにくくなる人が生じることをいいます。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

業務指示や指導が適正であっても、同時にあるいは相前後して、労働者の就業環境を害しうる言動があれば、これがパワーハラスメントとなります。

 

<パワハラの6類型>

パワハラを類型化したものとして、6類型が有名ですが、どれにも当てはまらない言動でも、パワハラとなることはあります。

1「身体的な攻撃」型のパワハラ

2「精神的な攻撃」型のパワハラ

3「人間関係からの切り離し」型のパワハラ

4「過大な要求」型のパワハラ

5「過小な要求」型のパワハラ

6「個の侵害」型のパワハラ

 

<個の侵害>

「個の侵害」は、私的なことに過度に立ち入ることをいいます。

労働者を職場外でも継続的に監視したり、個人の私物を写真で撮影したりすること、また、上司との面談等で話した性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、本人の了解を得ずに、他の労働者に暴露することは、「個の侵害」型のパワハラに該当すると考えられます。

法令や公的な文書では、誤解を避けるため、なるべく外来語を使わないように配慮していますが、「個の侵害」と言った場合の、「個」はプライバシーとほぼ同義と考えて良いでしょう。

 

<プライバシー権の根拠>

プライバシー権も、人権の一つとして認識されています。

人権とは、「全ての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」あるいは「人間が人間らしく生きる権利で、生まれながらに持つ権利」であると説明されます。

プライバシー権は、個人のプライベートな事柄について、本人の同意なく他人に勝手に調べられたり、その情報を利用されたり、第三者に開示されたりしない権利を指します。

「プライバシー権」という言葉は、日本国憲法にはないのですが、憲法第13条の「幸福追求権」を根拠に主張されています。

 

<プライバシーの侵害による犯罪>

プライバシーの侵害は、民事上は不法行為として扱われ、損害賠償の請求対象とされます。

しかし一方で、刑法は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定しています。〔第230条第1項名誉毀損罪〕

これば、職場の内外を問わず、事実の有無を問わずに成立する犯罪です。

このことを踏まえ、企業はパワハラ防止対策の枠を越えて、プライバシー権の保護に取り組む必要があるでしょう。

PAGE TOP