2024/04/20|1,701文字
<休職制度>
休職とは、業務外での病気やケガなど、主に従業員側の個人的事情により、長期間にわたり働けない見込みとなった場合に解雇せず、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。
しかし、これは一般的な説明であって、休職の定義・条件、休職期間、復職等については、労働基準法にも規定がありません。
つまり、法令に違反しない限り、会社は休職制度を自由に定めることができますし、休職制度を設けないこともできます。
なぜなら、長期の欠勤は労働契約の債務不履行ですから、契約の一般原則からすれば、債務不履行は正当な契約解除の理由となるのですが、休職制度は、就業規則などの取り決めで、すぐには労働契約の解除をせずに、従業員の復帰を期待して一定の期間様子を見るという恩恵的な制度だからです。
<就業規則の規定による違い>
従業員の個人的な事情によって、長期間働けない見込みとなった場合に、本人から会社に休職を希望して、一定の期間、解雇を猶予してもらえるかについては、その会社の就業規則を確認して判断することになります。
よくある休職の規定としては、次のようなものがあります。
- 「休職とする」「休職を命ずる」
従業員からの申出がなくても、一定の条件を満たせば、自動的に休職扱いとなる規定です。
- 「休職を申し出ることができる」
従業員からの申出があれば、条件を満たしている限り、休職扱いとなる規定です。
- 「休職とすることがある」「休職を命ずることがある」
会社の判断によって、休職を決定する規定です。
- 「休職を申し出て会社が了承した場合には休職とする」
従業員と会社との合意によって、休職が決定される規定です。
<就業規則の規定に問題がある場合>
休職期間満了の時点で、休職理由が消滅していないときには解雇、あるいは労働契約の自動終了(自動退職)という効果を発生させる規定を置くことがあります。
この場合には、解雇予告期間の趣旨を踏まえ、休職期間は30日以上とすることが必要になるでしょう。〔労働基準法第20条第1項〕
また、休職の条件として「30日以上の欠勤」といった長期の欠勤を設定した場合には、年次有給休暇を取得した日が欠勤とはならないため、実質的に2か月以上の休業がなければ休職とならないなどの不都合が生じます。
休職事由にもよりますが、あまりに長期の欠勤を条件とすることは避けたいものです。
<休職規定のない場合>
就業規則に休職の規定がない場合、あるいは、そもそも就業規則がない場合であっても、労働者に休職を命ずることはできます。
休職を命じなければ、長期欠勤で退職となるところ、休職を命じて救済するわけですから、法令以上に有利な扱いをすることになるからです。
こうして、休職制度のない会社でも、休職の実績が積み重ねられてから、就業規則に規定を置くということも可能です。
ただ、行き当たりばったりの不公平で不合理な運用をすれば、休職扱いとならずに解雇されてしまった従業員から、解雇の無効を主張される可能性があります。
<休職制度の存在理由>
休職制度を設けるのは会社の自由ということであれば、あえて休職制度を設けるのはなぜなのかということになります。
これは、労働契約法の次の規定と大きな関わりがあります。
【労働契約法第16条:解雇】
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 |
つまり、しばらく会社を休み、労働契約の債務不履行があったとしても、解雇をするには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められないのであれば、解雇権の濫用とされ解雇の通告が無効になるということです。
解雇となれば、会社は貴重な労働力を失い、労働者は生活の糧を失うのですから、これに合理性はあるのかということが問われます。
そこで、従業員側にそれなりの事情がある場合には、一定の期間猶予を与え、期限内に復帰できれば、労働契約は解除されないという制度を設けて、解雇権の濫用を防止しているというわけです。
こうしてみると、休職制度を設けることに大きな意義があることが分かります。