退職後に受ける傷病手当金

2023/09/17|1,298文字

 

<健康保険法の規定>

健康保険法は、退職後であっても一定の条件を満たせば、傷病手当金を受給できるとしています。

 

【健康保険法第104条】

被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。

 

<1年以上の被保険者期間>

健康保険加入者(被保険者)の資格を喪失した日の前日までに、被保険者期間が1年以上あることが必要です。

退職によって資格を喪失する場合、健康保険は退職日まで有効で、翌日に資格を喪失することになります。

ただし、被保険者期間には、任意継続被保険者の期間や、共済組合の組合員の期間は含まれません。

勤務先や保険者が変わっても被保険者期間は通算されますが、途中に空白期間が1日でもあると通算されません。

 

<労務不能の状態>

療養のために労務不能である状態は、医学的見地からの判断となりますが、従事する業務に耐えられるかは、社会通念に基づいて判断されます。

実際に、時短勤務を行っている場合や、多少軽度な業務に切り替えて勤務している場合には、療養のために労務不能とはされません。

途中で職場に復帰しても、同一の傷病で再び労務不能となり休業した場合には、傷病手当金を受給できます。

ただし、支給開始日から受給期間を通算して、1年6か月が限度となります。〔健康保険法第99条第4項〕

 

<休業の継続>

健康保険法第99条第1項は、「被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する」と定めています。

退職日が、療養のために労務不能の期間の3日目であった場合には、連続3日の待期期間を経過してから権利が発生するため、傷病手当金は受給することができません。

結局、退職日が労務不能の期間の4日目以降であることが必要となります。

また、退職日に出勤してしまうと、それが引き継ぎなどのための短時間の勤務であったとしても、退職日に療養のために労務不能という条件を満たすことができなくなります。

ただし、労務不能の期間に年次有給休暇を取得しても、受給の条件を満たすことができます。

 

<実務への影響>

私傷病で休業を継続する被保険者が、きちんと傷病手当金を受給できるよう、会社としても配慮すべき点があるわけです。

また、休業する被保険者が勘違いしないよう、会社から適切な情報を提供することも大事です。

 

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