2024/10/07|1,453文字
<コロナ転居>
コロナの影響で、感染者の多い地域から少ない地域へ転居する動きも見られました。
ほとんどの場合、会社からの指示ではなく自己都合での転居です。
また、在宅勤務が定着してくると、会社の近くにある家賃の高い物件に住むよりは、会社から離れた家賃の安い物件に住むことを考える従業員も増えました。
あえて観光地に転居する従業員まで出てきましたし、実家で両親と暮らし始める従業員もいました。
こうした場合、自己都合で転居した従業員の通勤手当が、大幅に増額されることは防げないのでしょうか。
<就業規則の規定>
通勤手当をどのように支給するかは、労働基準法などに規定がありません。
就業規則にどう定めるかは、基本的に各企業の自由です。
基本的に「実費を支給する」という規定であれば、従業員が自己都合で転居した場合でも、通勤手当が実費を基準に支給されることになり、大幅に増額されることがあるでしょう。
「月額7万円を上限として」というように、通勤手当の上限額が規定されているのであれば、これを上回る費用は個人負担となります。
「ただし、自己都合で転居したことにより通勤の費用が増加した場合には、その増加分は従業員の負担とする」という規定であれば、元の住居を基準とした通勤手当の支給となります。
<不利益変更の回避>
就業規則を変更して、通勤手当に上限額を設けると、これを上回る費用が発生している従業員に不利益が生じます。
不利益変更を回避するためには、「ただし、令和6年10月30日以前に入社した従業員には、通勤手当の上限を設けない」という但し書きを加えるなどの配慮が必要でしょう。
また、就業規則を変更して、「自己都合で転居したことにより通勤の費用が増加した場合には、その増加分は従業員の負担とする」という規定にする場合にも、「なお、令和6年10月30日以前の転居による通勤費用の増加にはこれを適用しない」という規定を加えるなどの配慮が必要でしょう。
<在宅勤務者の出勤費用>
自宅での勤務と出勤しての勤務が半々という場合には、出勤日数に応じた通勤手当の支給額が就業規則に規定されているのではないでしょうか。
出勤日数にかかわらず、「1か月につき6か月通勤定期代の6分の1を支給する」というような規定の場合、出勤日数の違いによる不公平が発生することもありますから、出勤予定日数に応じた支給額にするなどの合理的な規定に改めることも検討したいところです。
なお、在宅勤務が常態化している従業員に対して、本社への出勤を命ずるような場合、通常の勤務地は自宅ですから、本社と自宅との往復にかかる経費は、旅費交通費となるのが通常でしょう。
また、かなり遠方であれば、出張旅費規程などの適用によって、給与部分と経費部分とに分割されると思われます。
<同一労働同一賃金との関係>
正社員など通常の労働者と、非正規社員とで、通勤手当の支給基準を異にする会社もあります。
こうした待遇の違いについて、合理的な説明が簡単であれば良いのですが、難しいのであれば、出勤予定日数に応じた共通の規定に改めてはいかがでしょうか。
つまり、自己都合の転居や在宅勤務への対応とあわせて、同一労働同一賃金への対応を踏まえた通勤費支給規程に改善するわけです。
<実務の視点から>
就業規則の変更となると、社内への周知は必須です。
しかし通勤手当については、従業員の関心も高いでしょうから、単に周知するだけではなく、変更までの期間を十分にとり、具体例を示して十分な説明をしておくことも必要です。