2024/11/08|1,785文字
<就業規則にタイムカードで管理するという規定だけがある場合>
厚生労働省のモデル就業規則には、労働時間の管理について次の規定があります。
(始業及び終業時刻の記録)
第15条 労働者は、始業及び終業時にタイムカードを自ら打刻し、始業及び終業の時刻を記録しなければならない。
こうした規定が就業規則にある場合には、原則としてタイムカード通りに勤務したものと見られます。
もし労働時間の実際の管理がタイムカードによらないのであれば、就業規則違反とも言えますが、就業規則の変更手続を怠っているとも考えられます。
いずれにせよ、適法な状態ではないので速やかに是正すべきでしょう。
何か特別な事情があって、一部の労働者についてだけ就業規則とは異なる方法で労働時間の管理を行っている場合には、どのような範囲の人について、どのような場合に、タイムカードによらない管理をするのかについて、就業規則に定めておく必要があります。
就業規則がある場合に、就業規則の規定による労働時間の管理方法によらず、別の根拠で始業時刻や終業時刻を認定しようとしても、とても難しいのです。
始業時刻や終業時刻、休憩時間などの認定について、使用者側が労働者側の主張と違う考え方をとり、争いになることがあります。
労働者や退職者が未払賃金の支払を求めて労働審判や訴訟となった場合が典型です。
また、労働基準監督署の監督や会計検査院の調査などがあった場合には、就業規則通りに認定します。
使用者側が、これを否定して別の方法で認定してもらうのは至難の業です。
<タイムカードとは違う認定が可能な場合>
タイムカード通りに労働時間を認定したのでは、実際よりも長く計算されてしまうということがあります。
こうしたことを防ぎたいのであれば、就業規則に特別な規定を置き、それに沿った運用をすることで、本当の労働時間と計算上の労働時間との誤差を少なくすることができます。
しかし、このためには就業規則と運用の整備や社員教育が必要です。
これは、高度に専門的な知識と技術が必要ですから、導入に当たっては、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。
<タイムカードとは違う認定を可能にする就業規則>
就業規則に、タイムカードは職場への入場時刻と職場からの退出時刻を示しているということ、これは勤務時間の参考記録にはなるが、ここから直接労働時間を計算できるわけではないということを明示すべきです。
<たとえば残業時間の認定についての運用>
運用を整備しなければ、就業規則上の所定の終業時刻から退出時刻までが残業時間となってしまいます。
多くの会社では、このような状態になっています。
残業は、本来使用者から命じられて行うものですが、自己判断での残業が許されていたり、残業時間の管理がルーズだったりすれば、タイムカード通りに認定するしかなくなってしまいます。
まず、会社の上司など使用者から早出や残業を命じる場合には「残業指示書」により時間外勤務を命令します。
反対に、労働者が早出や残業の必要を感じて使用者に命令を求める場合には、あらかじめ「残業申請書」により申請し、使用者の命令があった場合には許されるという運用を徹底しなければなりません。
ただし、指示書や申請書が無いまま勝手に残業してしまった場合でも、働いたからには賃金を支払わざるを得ないというケースが多くあります。
しかし、これはルール違反ですから、きちんとした教育指導を前提として、懲戒処分の対象とすることもできます。
そして、早出や残業については、実際の勤務開始と勤務終了、そして行った業務を使用者に具体的に報告させる必要があります。喫煙や私用などで休憩した時間も申告させます。
使用者は、残業命令を出す場合や残業申請を許可する場合には、この報告内容を参考に判断することができますし、ダラダラ残業を阻止することもできます。
こうした運用についても、就業規則に規定しておくことが好ましいですし、ルール違反や虚偽の報告に対する懲戒処分を可能にするには、就業規則に具体的な懲戒規定が必要となります。
「残業代が一向に減らない」と悩んでいる経営者の方には、ぜひ取り組んでいただきたい課題です。
そして、こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談いただくことをお勧めします。