2024/08/06|1,650文字
<労働基準法の規定>
労働基準法によると、解雇する場合には30日前に予告しなければならないのが原則です。
30日前に予告する代わりに、12日分の解雇予告手当を支払うとともに18日前に予告するなど、足して30日になるという方法も取れます。
30日分の解雇予告手当を支払うとともに即日解雇も可能です。
この場合には、「後日支払う」という約束ではなく、現実に支払っておくことが必要です。
そして、試用期間中の労働者に対しては、最初の14日間に限り、解雇予告も解雇予告手当も不要です。
労働基準法には、こうした規定しかありません。
ですから、入社から14日間は解雇の有効要件が緩いという誤解が生じます。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者
<試用期間についての判例>
試用期間については、最高裁判所が解約権留保付労働契約だと言ったために、何か特別な契約期間であるかのように思われがちです。〔昭和44年12月12日三菱樹脂事件判決〕
しかし、最高裁判所が試用期間について述べたのは、判決を下すのに必要があって述べたわけではなく、傍論として、ついでに語っただけです。
試用期間であれば、本採用後よりも解雇のハードルが低くなる趣旨のことを述べていますが、具体的に、どの項目についてどの程度低くなるのかは語っていません。
結局、試用期間も本採用後も労働契約の期間であることに変わりはなく、両者の違いを明確に説明することはできません。
それでも、試用期間であれば、本採用後とは違った扱いができるという勘違いは、多くの企業に存在しています。
<解雇の制限>
試用期間の最初の14日間でも、解雇権濫用であれば不当解雇とされます。
不当解雇なら、使用者が解雇を通告し、解雇したつもりになっていても、その解雇は無効です。
一方、労働者は解雇を通告されて、解雇されたつもりになっていますから出勤しません。
しかしこれは、解雇権を濫用した使用者の方に原因がありますから、法的には無断欠勤と評価されません。
何か月か経ってから、労働者が解雇の無効に気付けば、法的手段に訴えて会社に賃金や賞与を請求することもあります。
これを使用者側から見れば、知らない間に労働者に対する借金が増えていったということになります。
このことについては、労働契約法に次のように規定されています。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
<実務の視点から>
一部の企業に端を発した法令の拡大解釈や、最高裁判所の判決に対する誤解が、いつの間にか「常識」となってしまうこともあるのです。
さらに、昨日まで正しかった常識も、法改正や判例変更によって、不適法になることがあります。
正しいことは、信頼できる社労士にご確認ください。