2024/04/06|1,156文字
<定額残業代のメリット>
定額残業代は良い仕組みです。
労働者にとっては、残業が少なくても定額残業代が保障されていますし、会社にとっては人件費が安定します。
しかし、それだけではありません。
残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。
そのためには、自主的に学んだり、仕事の仕方を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。
これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。
もし、こうした結果が得られていないのならば、制度の導入や運用に誤りがあると思われます。
<定額残業代の正しい導入>
基本給にあたる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。
このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、基本給が最低賃金を下回らないことが必要です。
この基本給から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。
文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。
人間は変化を嫌います。
良い制度を導入する場合でも同じです。
定額残業代には、悪いイメージもありますからなおさらです。
<誤った導入をすると>
定額残業代の計算が誤っていたり、割増率が法定の基準を下回っていたり、最低賃金法違反があったり、労働者への説明が不十分であったりすると、制度そのものが無効とされます。
この場合、労働基準監督署の監督が入ったり、労働審判が行われたりすると、基本給にあたる賃金に定額残業代を加えた金額を基本給として残業代を計算し、さかのぼって支払うことになるでしょう。
これは、実質的には残業代の二重払いですから、会社にとって想定外の出費となります。
このように、導入の失敗は大きなリスクとなります。
<定額残業代の正しい運用>
定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。
なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。
もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。
そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。
誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。
<実務の視点から>
定額残業代は、ブラックな制度のように思われがちです。
ハローワークで求人票に定額残業代の表示をすることについては、窓口で慎重すぎる態度を示されてしまいます。
これは、誤った制度導入や運用があまりにも多いため、悪い印象を持たれてしまっているからでしょう。
定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。