賃金の非常時払いが法定されています。従業員から請求があれば会社はすぐに支払わなければなりません。

2024/04/07|809文字

 

<賃金支払いの5原則>

賃金支払いの5原則は、次の5つのルールです。

1.通貨払いの原則

2.直接払いの原則

3.全額払いの原則

4.毎月1回以上払いの原則

5.一定期日払いの原則

これらは、すべて労働基準法第24条に規定されているルールです。

「原則」と呼ばれてはいますが、各企業が自由に例外を設定できるわけではありません。

違反に対しては、1人1回につき30万円以下の罰金刑が規定されています。

 

<非常時払いという例外>

これらの5原則に対する例外として、労働基準法の中に非常時払いが規定されています。

非常時払いは、本来は賃金を一定期日に支払えば良いのが原則なのに対して、一定期日以外で会社が支払い義務を負うという例外です。

労働者は賃金を主要な収入源としています。

そこで、出産、疾病、災害などの不時の出費を必要とする事情が生じた場合には、これに対応できるよう、その賃金の繰上げ払いを会社に請求できる権利が保障されています。〔労働基準法第25条〕

これが賃金の非常時払いです。

 

<非常時払いの対象>

法定された非常時払いの対象は、次のものに限られています。〔労働基準法施行規則第9条〕

 

・労働者の収入によって生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合

・労働者又はその収入によって生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合

・労働者又はその収入によって生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたって帰郷する場合

 

<非常時払いの性質>

非常時払いは、賃金の繰上げ払いであり「既往の労働に対する賃金」について認められます。

一方で、賃金は後払いが原則です。〔民法第624条〕

このことから、労働者は「既に行った労働」に対する賃金を、給料日前に支払うよう会社に請求できるだけです。

よく耳にする「前借り」というのは、これから行う予定の労働に対する賃金の支払いを含む概念です。しかし労働基準法は、前借りの権利までは保障していないのです。

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