2024/05/13|1,008文字
<定額残業代の失敗による打撃>
残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。
そのためには、自主的に学んだり、仕事の仕方を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。
これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。
もし、こうした結果が得られていないのならば、制度の導入や運用に誤りがあると思われます。
そして、制度の導入や運用に誤りがある場合には、定額残業代の有効性が否定されます。
否定されると、基本給など残業代を計算するときのベースとなるはずだった賃金に、定額残業代を加えた金額をベースとして残業代を計算し、定額残業代とは別に支給しなければならなくなります。
これは、複利計算の形で残業代の二重払いが発生することになります。
ですから、会社にとっては思わぬ打撃となります。
<正しい導入にはひと手間かかる>
基本給にあたる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。
このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、基本給が最低賃金を下回らないことが必要です。
この基本給から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。
文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。
こうした導入ができていないと、定額残業代は無効となりますから、労働者から別途残業代を請求されたら支払わなければなりません。
<正しい運用も手間がかかる>
定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。
なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。
もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。
そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。
誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。
<実務の視点から>
定額残業代は、ブラックな制度のように思われがちです。
しかし、正しい制度であれば、会社にも労働者にもメリットが多いはずです。
その反面、誤った制度にしてしまうと、会社は何らかの形で労働者から残業代の二重払いを請求されます。
定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。