2023/12/28|1,167文字
<定額(固定・みなし)残業代>
1か月の残業代を定額で支給するものです。
基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。
労働基準監督署では正しい運用を指導しています。
しかし、所轄の労働基準監督署に確認せず、誤った運用も多いことから、ハローワークでは求人票に載せることを嫌います。
<誤った運用その1>
対象となる従業員に、定額残業代の計算根拠について、何時間分だからいくらなど説明が無い。
あるいは、就業規則に残業代の計算方法について、具体的な規定が無い。
これは誤った運用です。
残業代について、具体的な計算方法が分からなければ、給与を支給されたときに、それが正しいのか誤っているのか分かりません。
対象者全員に、計算方法を理解させることは必須です。
<誤った運用その2>
残業時間が少ないと、定額残業代が減額される。
これも誤った運用です。
基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。
「定額」ですから当然のことです。
定額残業代は、全く残業しなくても支給される最低保証額なのです。
<誤った運用その3>
残業時間がどんなに多くても、残業代は増えず、定額残業代だけが支給される。
これは誤った運用です。
基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。
賞与でまとめてということはできません。
そもそも定額残業代の基準時間が無いという悪質なものもあります。
<誤った運用その4>
定額残業代に、深夜労働や法定休日労働の割増賃金を含めている。
これは、技術的な困難を伴いますから、多くの場合に誤った運用となります。
深夜労働や法定休日労働の分も定額にすることは、理論的には可能です。
しかし、それぞれの基準時間と金額を明らかにする必要があって、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのであまり使われません。
<誤った運用その5>
1時間あたりの基本賃金が、最低賃金法の基準を下回っている。
これも誤った運用です。
残業の基準時間を長く設定してしまうと、時間単価が下がってしまうのです。
最低賃金は、年々上昇していますので、いつの間にか違法になってしまうケースもあります。
給与の設定が春だと、最低賃金の変更が秋なので、この時点で違法になることも多いのです。
<実務の視点から>
定額残業代(固定残業代・みなし残業代)を使うなら、適法に運用しなければなりません。
それだけではなく、適法に運用するとかえって人件費が割高になるという場合には、給与制度や人事制度を見直す必要があります。
それぞれの職場に合った制度をお考えでしたら、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。
社労士であれば、社名を出すことなく、所轄の労働基準監督署で相談することも可能です。