2025/09/24|1,146文字
職場でのモラルハラスメント(モラハラ)は、目に見えにくく、放置されがちな問題ですが、従業員の精神的健康や職場環境に深刻な影響を及ぼします。企業としては、早期発見・適切な対応・再発防止の3つの柱を意識することが重要です。
<モラハラとは何か?>
モラハラ(モラルハラスメント)とは、言葉や態度によって相手に精神的苦痛を与える嫌がらせ行為です。暴力や性的言動を伴わないため、パワハラやセクハラとは異なり、第三者からは気づかれにくいのが特徴です。
モラハラは同僚間や部下から上司への言動でも起こり得ます。
<モラハラの具体例>
以下のような行為は、モラハラに該当する可能性があります。
・人格否定・侮辱:「お前は無能だ」「辞めた方がいい」などの暴言
・無視・仲間外し:挨拶を返さない、会議や飲み会に呼ばない
・過度な干渉:プライベートな事情(結婚、子育てなど)への執拗な質問
・業務妨害:過剰な業務を押し付ける、逆に仕事を与えない
・陰口・誹謗中傷:他の社員に悪評を流す、SNSでの攻撃
これらの行為は、被害者の就業環境を害し、精神的疾患や離職につながる恐れがあります。
<モラハラを放置するリスク>
企業がモラハラを放置すると、以下のようなリスクが生じます。
・職場環境の悪化:チームの信頼関係が崩れ、生産性が低下
・離職率の上昇:優秀な人材の流出
・法的責任:加害者だけでなく、企業も使用者責任を問われる可能性あり(民法第715条)
・企業イメージの低下:SNSや口コミでの炎上リスク
<企業が取るべき対応策>
被害者を出さないためにも、企業を守るためにも、次の対策が必要です。
- 予防策の整備
就業規則への明記:「モラハラを含むあらゆるハラスメントの禁止」を規定
ハラスメント研修の実施:管理職・一般社員向けに定期的な教育を行う
相談窓口の設置:社内外に相談できる体制を整備
- 発生時の対応
事実確認:被害者・加害者・周囲の証言や記録をもとに客観的に調査
迅速な対応:加害者への注意・指導、必要に応じて懲戒処分
被害者への配慮:配置転換、メンタルヘルス支援、業務調整など
- 再発防止
職場環境の改善:閉鎖的な組織文化の見直し、風通しの良い職場づくり
定期的なアンケート調査:匿名で職場の雰囲気や人間関係を把握
管理職の意識改革:部下の声に耳を傾ける姿勢を育成
<実務の視点から>
モラハラは、見えにくいからこそ放置されやすく、被害者に深刻な影響を与える問題です。企業は「気づかない」「忙しいから後回し」といった姿勢を改め、予防・対応・再発防止の体制を整えることが求められます。
職場の安心感は、従業員のパフォーマンスと定着率を高め、企業の持続的成長にもつながります。モラハラ対策は、単なるコンプライアンス対応ではなく、組織の健全性を守るための重要な経営課題なのです。