年次有給休暇の取得率を高める方法

2025/09/19|1,185文字

 

年次有給休暇の取得率向上は、単なる制度運用の問題ではなく、職場の風土・業務設計・マネジメントの在り方に深く関わる課題です。働き方改革関連法により、年5日の取得義務が課されて以降も、取得率が伸び悩む企業は少なくありません。

 

<現状の把握と課題の特定>

まずは、自社の年休取得状況を正確に把握することが出発点です。

取得率を定量的に把握します。部署別・職種別・年齢層別などで取得率を分析し、偏りや傾向を明らかにします。

従業員へのアンケートや面談を通じて、「忙しくて取れない」「周囲に気を使う」「制度が分かりづらい」など取得しにくい理由のヒアリングを行います。

属人化した業務や、代替要員の不在など、制度以前の業務体制の課題を確認します。業務設計の問題点の洗い出しです。

 

<法令遵守と制度整備>

取得率向上には、まず制度的な裏付けと運用の徹底が必要です。

年5日取得義務の確実な履行のため、対象者をリストアップし、取得状況を管理します。未取得者には計画的付与や個別通知を行います。

年休の届出方法・取得単位(半日・時間単位)・取得制限の有無などを明記し、従業員に周知します。

時間単位年休制度や、計画的付与制度などを活用することで、取得のハードルを下げます。

 

<業務体制の見直し>

制度があっても、業務が回らなければ休めません。業務設計の見直しが不可欠です。

業務内容を洗い出し、マニュアル化・引き継ぎ体制の整備を進めます。

業務の属人化を防ぎ、誰かが休んでも業務が滞らない体制を構築します。

業務量の波を見える化し、閑散期に年休取得を集中させる工夫をします。

 

<管理職の意識改革と支援>

年休取得の可否は、現場の管理職の姿勢に大きく左右されます。

管理職に対し、年休取得の法的義務・健康管理・業務設計の重要性について教育し、取得促進の責任を明確にします。

部下の年休取得率を管理職の評価項目に加えることで、取得促進を業務目標として位置づけることもできます。

管理職自身が積極的に年休を取得し、模範を示すことで、職場全体の心理的ハードルを下げます。

 

<社内啓発とコミュニケーション>

制度や体制が整っていても、従業員が「休んでいい」と感じられる職場づくりが重要です。

心身のリフレッシュ・生産性向上・ワークライフバランスの確保など、年休取得の意義を社内報やポスターで伝えます。

「年休チャレンジ月間」や「リフレッシュ休暇推奨週間」など、遊び心のある取得促進キャンペーンで取得を後押しします。

実際に年休を取得した社員の声やエピソードを紹介し、取得への安心感を広げます。

 

<ITツールの活用>

取得率向上には、届出・管理のしやすさも重要です。

勤怠管理システムの導入により、年休残日数の見える化や、スマホからの届出機能などを整備し、利便性を高めます。

未取得者へのリマインド機能や、管理職へのアラート機能を活用し、取得漏れを防ぎます。

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