上司からの適切な指導に対してパワハラと主張し反発する社員への対応策

2025/08/01|1,339文字

 

「指導」と「パワハラ」の線引きは繊細な判断となります。

企業が職場の秩序を保ちつつ、社員の人権・感情にも配慮することは、労務管理の大きな課題の一つです。

適切な指導をパワハラと誤認され、業務命令に従わない社員がいる場合、感情論に流されず、事実・ルール・手続きに基づいて冷静に対応する必要があります。

 

状況分析の第一歩>

労働トラブルの解決は、その内容にかかわらず、事実の確認からスタートします。

まず、上司による指導が、「業務改善を目的とし、人格を否定しない形」で行われていたか記録を確認します(例:注意の文言・指導日時・目撃者の有無)。

反発の背景に、認識のすれ違いや感情的な要因がある可能性も考慮します。

パワハラと主張している理由(口調・内容・頻度など)を、本人から正式にヒアリングします。

感情的な反発であっても、その言葉の背後に何らかの不満・不安が潜んでいることが多いため、傾聴の姿勢が大切です。

 

会社の対応ステップ>

会社は、次の3ステップで対応します。

 

ステップ1. 第三者による客観的評価

人事部やコンプライアンス部門など、中立的な立場の部署が双方の言い分と証拠をもとに指導の適否を検証します。

必要に応じて産業医や外部の社労士・弁護士など専門家の意見も交えることで、公正性を担保します。

 

ステップ2. 社内規程の再確認・運用

就業規則やハラスメント防止規程を改めて確認し、「業務指導の範囲」や「懲戒事由」に関する規定を参照します。

社員が業務命令に従わない行為が「業務命令違反」に該当する場合、注意・指導の対象となります。

 

ステップ3. 双方へのフォローアップ

上司には、今後の指導スタイルや言葉遣いについて再確認・改善の機会を提供し、必要ならコミュニケーション研修等も検討します。

社員には、「指導の目的」「パワハラではない根拠」「業務命令違反のリスク」などを丁寧に説明したうえで、協力を求めます。

 

<再発防止のための改善策>

一人の社員についての対応を完了しても、再発防止のための改善策に取り組まないと、何度でも同じ問題が発生してしまいます。

次の改善策に取組みましょう。

 

1.記録の徹底

指導内容・社員の反応・会社の対応はすべて記録化し、後々の法的紛争への備えとします(面談記録、メール、社内文書等)。

証拠資料を残しておくことで、万一トラブルが発生した場合でも、早期解決が可能となります。

 

2.感情に配慮した対応

指導の正当性を主張するだけでなく、社員が「納得」できるような説明や場づくりが重要です。第三者の同席・段階的な説明などが有効です。

 

3.ハラスメント研修と組織文化の改善

社員だけでなく管理職層も含めたハラスメント研修を定期的に行い、「指導とハラスメントの境界」を共通認識として形成します。

上司と部下の関係に過度な上下意識がある場合は、双方向コミュニケーションを促進する組織文化への転換も必要です。

 

<実務の視点から>

社員が反発した際、「指導が適切であった」と結論づける前に、事実を丁寧に掘り下げ、公正かつ冷静なプロセスを踏むことが肝要です。

企業に求められるのは、指導の妥当性だけでなく「納得できる説明」と「誠意ある対応」です。

信頼関係の再構築を目指した対応こそが、長期的な職場の安定に繋がります。

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