2024/09/13|1,424文字
<常識的な考え方>
「常識」という言葉の意味は曖昧ですが、一般的には、次の3つの内のどれかになると思われます。
1.誰もが持っている知識・情報
2.礼儀作法、マナー
3.当たり前の感覚、分別(ふんべつ)
職場で「常識」という言葉が出てきたときには、「社会人としての常識」を言っています。具体的な局面で、3つのうちのどの意味で使われているのか、区別して考える必要があるでしょう。
上司や先輩などが「そんな意見は常識外れだ!」「うちの会社では昔からこうしてるんだ。問題ない!」などという発言をすれば、これは明らかにパワハラとなります。
ところが、発言をした本人は、相手の考え方が常識とは違うと指摘することが、パワハラになることを、理解できていない可能性が高いのです。
<常識的な感覚、常識としての分別>
常識的な考え方、常識的な感覚、常識としての分別という意味での「常識」は、原則として個人ごとに異なります。
ただ、会社など特定の集団の中で、一部の事柄について共通認識が得られることで、「常識」が共有されることはあります。
しかし、こうした「常識」の実態にもかかわらず、多くの人に共通するものだという勘違いがあります。「世間一般の常識」という言葉はありますが、それがどれほど多くの人々に共有されているのか、共通しているのかは、確認のしようもありません。
<常識を巡るパワハラ>
「そんな意見は常識外れだ!」というのは、「私の中の常識とは違う」あるいは「社内の共通認識とは違う」という意味でしょう。これが事実だとしても、「そんな意見」が誤っているとは言えません。
一方で、「そんな意見」を言った人の人格を確実に傷つけています。
「そんな意見は常識外れだ!」という発言は、業務の遂行にも役立ちませんし、「そんな意見」を言った人の成長にもつながりません。つまり、正当な業務指示でも指導でもないのです。
「うちの会社では昔からこうしてるんだ。問題ない!」という発言についても、同じことが言えます。その昔、社内の共通認識に従って始めたことが、今もなお、社内の「常識」に適合しているかを、再検討するチャンスを逃す発言という点でも問題があります。
<ジェネレーションギャップ>
こうしたパワハラ発言が出てくるのは、ジェネレーションギャップが最大の要因と考えられます。
「近頃の若いもんは」というのは、世代による「常識」の違い、ジェネレーションギャップを端的に表した言葉です。そうすると、同世代での共通認識は、ある程度まで想定できるものの、世代を超えて共有している「常識」の存在は期待できません。
この「常識」の違いが、ハラスメントの原因にもなります。
部下に反省させるためなら、怒鳴るのも、多少の暴力をふるうのも仕方がないという昭和時代の「常識」が、パワハラの原因となります。
いつも笑顔で感謝の言葉を述べるのは、自分に好意を抱いている確たる証拠であるという昭和時代の勘違い、性的な言葉による「からかい」やボディータッチでさえ、職場の潤滑油とされた昭和時代の「常識」が、セクハラの原因となります。
異なる世代の人々が集まっている会社の中で、社員一人ひとりの「常識」に任せていては、必然的にトラブルが発生してしまいます。
会社が安全配慮義務を果たし、ハラスメントを防ぐには、社内の統一ルールと教育が必要なのです。様々な言葉の意味を統一し共有することで、業務の正常な遂行に必要な、社内での「常識」が共有されていきます。