2024/09/12|1,273文字
<常識に反する言動>
「常識」という言葉の意味は曖昧ですが、一般的には、次の3つの内のどれかになると思われます。
1.誰もが持っている知識・情報
2.礼儀作法、マナー
3.当たり前の感覚、分別(ふんべつ)
職場で「常識」という言葉が出てきたときには、「社会人としての常識」を言っています。具体的な局面で、3つのうちのどの意味で使われているのか、区別して考える必要があるでしょう。
入社したばかりの新人に向かって「挨拶の仕方も知らないのか?常識だろう!」「10分前行動に違反しているぞ!」などという発言をすれば、これは明らかにパワハラとなります。
ところが、発言をした本人は、マナー違反の指摘がパワハラになることを、理解できていない可能性が高いのです。
<礼儀作法、マナーとしての常識>
社内での礼儀作法やマナーが「常識」と呼ばれることがあります。この意味での「常識」を欠く社員がいると、人間関係がぎくしゃくし、取引先との関係が悪くなることもあります。
ビジネスマナー研修を受講させ、上司や先輩が手本を示すことによって、「常識」を身に着けさせることができます。
たしかに、応接室や車内での席順、名刺交換の方法などは、ほとんどの企業に共通のビジネスマナーですから、全国的な「常識」ともいえます。しかし、挨拶の仕方については、まるで方言のように、地域や業界によってマナーが異なっていますから、転職すれば多少の修正が必要になります。
<マナー違反を指摘するパワハラ>
こうした違いの存在を知らない社員が、自分と異なるマナーを身に着けた新人社員を馬鹿にしたり、叱ったりすることで、パワハラが発生します。新人社員から見れば、他の社員はすべて先輩社員ですから、それだけで優越的な関係を背景とした言動となり、新人社員を萎縮させ働きにくくしてしまいます。
また、会社ぐるみでパワハラを行い、中途採用の社員を試用期間中に解雇してしまうなど、誤った判断をすれば訴訟に発展することもあります。
社内での礼儀作法とマナーを統一し、それが全企業統一の「常識」ではなく社内ルールであることを、社員に教育しておく必要があります。
<パワハラとならないために>
新卒採用の新人よりも、中途採用の新人の方が、マナー違反の指摘によるパワハラ被害を受けることが多いでしょう。
中途採用であれば、それなりの礼儀作法、マナーを身に着けていると期待されるからです。しかし、期待して良いのは、礼儀作法やマナーの全国全企業の共通部分です。地域、業界、業種によって異なるローカルルールについてまで、すべてを知っているはずがありません。
また、新人についてマナー違反と感じられることがあれば、マナー違反そのものを指摘することは無用であって、社内での共通マナーを丁寧に説明することが大事だということも、社内の共通認識とする必要があります。
一方で、社内で共通ルールとなっているマナーが、いつの間にか、その地域・業界での「常識」から外れている可能性もあります。同業他社のマナーがどうなっているのか、常に意識して情報を集めることも考えましょう。