2025/07/19|1,215文字
<治療と仕事の両立支援>
治療と仕事の両立支援とは、がん、糖尿病、脳卒中、メンタルヘルスなどの疾病を抱える労働者が、就労を継続しながら適切な治療を受けられるよう職場が支援する仕組みです。
企業にとっても、経験豊富な人材の流出を防ぎ、多様性ある職場環境を実現するうえで重要な取組とされています。
<両立支援が必要となった背景>
治療と仕事の両立支援が強く求められるようになった背景には、次のような事情があります。
◯医療の進歩により「働きながら治療」が可能に
例えば、がんの5年生存率は年々向上し、入院期間も短縮され、通院しながら働く人が増えています。
◯労働人口の高齢化と長期就業の一般化
年齢とともに疾病リスクは高まります。すべてを離職で対応するのではなく、職場で柔軟な対応が求められる時代です。
◯法律上の配慮義務と働き方改革の一環
労働施策総合推進法などにおいても、「就業継続への配慮」が企業に求められています。
<両立支援の主な内容>
両立支援の具体的な内容には、次のものが含まれます。
- 柔軟な勤務形態の導入
フレックスタイムや時差出勤、テレワーク、一部業務の免除などにより、治療と勤務のスケジュール調整を可能にします。
- 就業上の調整・配慮
通院日への配慮、業務量の一時的軽減、静かな作業スペースの提供など、症状や治療内容に応じた職場環境の整備。
- 相談体制の整備
両立支援担当者(人事、産業医、直属上司など)が連携して個別に対応し、必要に応じて外部支援機関も活用します。
- 本人の意向確認と職場内合意形成のサポート
業務分担や配慮内容について、本人・職場・関係部門が認識を共有できるよう調整します。
<両立支援の進め方(厚労省モデル)>
以下の5ステップを基本とする進め方が推奨されています。
・本人からの申出(病名の開示は任意)
・主治医からの意見取得(診断書や「意見書様式」活用)
・就業上の配慮内容の検討・整理
・関係者との話し合いと合意
・就業上の措置の実施と定期的フォロー
※厚生労働省から「両立支援ガイドライン」が公表されています。
<職場での具体例>
・がん治療中の社員が、週2回の通院日に合わせて午後出社とし、業務負担を調整
・精神疾患で休職していた社員が復職後、段階的に勤務日数を増やすプログラムを実施
・糖尿病治療中の社員に昼休み中の血糖測定スペースを確保
<実効性を高めるために>
・制度の周知:イントラネットやオリエンテーションで、両立支援制度の存在と利用方法を伝えます。
・上司層の理解促進:業務のマネジメント力に直結するため、リーダー層向け研修が効果的です。
・支援ツールの整備:「両立支援プラン」や「確認シート」などのひな形があると、調整がスムーズになります。
<実務の視点から>
治療と仕事の両立支援は、働く人の健康とキャリアを両立させるための“職場と医療の橋渡し”のような取り組みです。
制度導入だけでなく、「相談してもよい」と思える職場風土の醸成がなにより大切です。