2025/07/18|1,196文字
<障害者雇用促進法>
障害者雇用促進法は、障害のある人がその能力や適性に応じて働く機会を確保し、継続的な雇用を図ることを目的とする法律です。企業には「障害者の雇用義務」に加え、合理的配慮が求められています。
この合理的配慮とは、「過度な負担とならない範囲で、障害のある労働者が職場での不利益を受けないよう必要な変更・調整を行うこと」を指し、その支援の仕組みのひとつが相談窓口の整備です。
<合理的配慮の具体例>
例えば以下のような調整が、合理的配慮に該当します。
・車いす利用者のための通路確保、段差解消
・聴覚障害者に対して筆談やメール等を活用したコミュニケーションの工夫
・発達障害者に配慮した業務の段階的指導、明確なマニュアル提供
・精神障害者のストレス軽減を考慮した勤務時間の柔軟化 など
<相談窓口の役割と重要性>
合理的配慮に関する相談窓口は、以下のような目的で設置されます。
◯障害のある労働者本人や支援者の声を拾い上げる
現場での困りごとや調整要望を早期に把握し、不利益の未然防止を図ります。
◯雇用主側の対応力を高める
障害特性や職場の状況に応じた適切な配慮の内容を整理し、関係部署と連携して具体策を検討します。
◯社内コミュニケーションの調整役として機能
当事者・上司・同僚との間に入って、調整と合意形成を進める仲介的な役割も担います。
<窓口で受ける主な相談内容>
・勤務環境や業務内容に関する調整要望
・障害に関連する配慮が不十分だと感じるケース
・同僚や上司の理解不足に起因するストレス
・産業医面談や通院配慮のスケジュール調整
・面接や採用選考時の配慮についての相談 など
<窓口運営のポイント>
窓口の運営にあたっては、次のようなことがポイントとなります。
◯本人の意向を尊重する傾聴姿勢
「何が不便か」ではなく、「どうすれば働きやすいか」を丁寧に対話することが基本です。
◯守秘義務の徹底と心理的安全性の確保
本人の同意なしに情報を漏らさない、相談しやすい雰囲気づくりが重要です。
◯中立性と柔軟性
人事部門だけでなく、障害者職業生活相談員や産業医・外部支援機関とも連携し、専門的視点を加えて対応します。
◯合理的配慮の「過重な負担」判断も慎重に
企業側にも無理のない範囲で調整を行う必要があるため、そのバランス判断が求められます。
<社内での位置づけと周知方法>
相談窓口の機能を十分に発揮させるためには、次のような社内施策が有効です。
・採用時・配属時のガイダンスで窓口を案内
・イントラネットや社内報を通じた定期的な情報発信
・障害者雇用に関する研修・啓発を通じた理解の促進
<実務の視点から>
障害者が安心して働き続けられる環境には、個別の配慮を当たり前に話し合える風土と、その対話を支える仕組みが欠かせません。
合理的配慮に関する相談窓口はその要であり、障害の有無にかかわらず誰もが働きやすい職場づくりの出発点ともいえるでしょう。