交通事故と健康保険

2024/01/16|967文字

 

<根強い誤解>

健康保険は、加入者(被保険者)と扶養家族(被扶養者)の病気、ケガ、出産、死亡に関して、必要な保険給付を行うことを目的とする制度です。

ケガや死亡の原因が交通事故でも、日常生活上のケガや病気の場合と同じく、健康保険で医師の診療を受けることができます。〔昭和43年10月12日保険発第106号通達〕

ところが、古くは世間一般で、交通事故の診療には健康保険が使用できないとの誤解が生じていました。

特に加害者のいる交通事故については、世間一般の誤解が、なかなか解けないということもあってか、厚生労働省から重ねて通達が発出されています。〔平成23年8月9日 保保発0809第3号通達〕

 

<保険診療を拒否する病院>

通達では明らかにされているのですが、交通事故によるケガの治療には、健康保険の利用について、法的な制約はありません。ですから、どの病院でも健康保険が使える建前です。

ところが現実には、健康保険の利用に応じない病院があります。これは、その病院が交通事故によるケガについては、自由診療にするという独自ルールを設けているような場合です。

健康保険等を利用した場合の、診療報酬の点数単価は1点10円ですが、自由診療の場合は、医師と患者の話し合いにより単価を決定することができるため、点数単価を1点20円前後としている病院もあります。

あえてこのような病院を選んで治療を受ける必要はないでしょう。

 

<高額療養費や傷病手当金>

健康保険が適用されるということは、治療費が高額になった場合に健康保険でその一部がまかなわれる高額療養費や、労務不能となって長期間欠勤する場合に賃金の一部が補償されることになる傷病手当金の制度も利用できるということです。

従業員の方が、交通事故にあいケガをして、場合によっては入院して、会社に高額療養費や傷病手当金について、相談してくることもあるでしょう。このとき、念のため、保険診療を受けられているか確認することをお勧めします。

 

<社内に周知を>

交通事故の診療には健康保険が使用できないとの誤解は、会社によっては、あるいは部署によっては、共通認識となっている恐れもあります。

こうした誤解を解くのは、本来は国の広報の役割なのですが、社内でも折に触れて、交通事故への健康保険の適用について、周知するようにしてはいかがでしょうか。

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