2024/01/17|1,841文字
<年次有給休暇を取得させる義務>
年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。
厳密には、労働基準法から法定の年次有給休暇が付与され、これを超える日数の有給休暇があれば、その部分は会社から付与されていることになります。
そして、労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定がなければ、使用者の方から積極的に取得させる義務はありませんでした。
ところが、平成31(2019)年4月1日に労働基準法の改正があり、労働者からの申し出がなくても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのです。
法改正前は、年次有給休暇の取得率が、労働者全体で50%を下回っていました。そこで働き方改革の一環として、少なくとも年5日については、使用者側で取得日を指定してでも、確実に取得させるという内容に改正されたのです。
<取得義務の対象となる労働者>
使用者が取得させる義務を負うのは、年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者が対象です。これは、付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことが配慮されています。
<取得義務の内容>
労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。企業によっては、この年次有給休暇を付与する基準日が前倒しされている場合もあります。
この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。
・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数
・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数 ・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数 |
<計画的付与制度>
年次有給休暇の計画的付与制度とは、就業規則に定め労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のことをいいます。
労使協定の内容によって、次のような計画的付与が可能となります。
・事業場全体の休業に合わせて年次有給休暇を一斉に取得させる。
・グループごとに交替で年次有給休暇を取得させる。 ・個人ごとに年次有給休暇計画表を作成し、これに合わせて取得させる。 |
しかし、年次有給休暇の計画的付与は、年次有給休暇の付与日数すべてについて認められているわけではありません。従業員が病気その他の個人的事由による取得ができるよう、指定した時季に与えられる日数を留保しておく必要があるためです。
年次有給休暇の日数のうち5日は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければなりません。このため、労使協定による計画的付与の対象となるのは年次有給休暇の日数のうち、5日を超えた部分となります。たとえば、年次有給休暇の付与日数が10日の労働者に対しては5日、20日の労働者に対しては15日までを計画的付与の対象とすることができます。
また、前年度取得されずに次年度に繰り越された日数がある場合には、繰り越された年次有給休暇を含めて5日を超える部分を計画的付与の対象とすることができます。ただし、計画的付与として時間単位年休を与えることは認められません。
<労使協定の内容>
計画的付与を行う場合には、就業規則に定めるところにより、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。
労使協定で定める項目は次のとおりです。
・計画的付与の対象者
・対象となる年次有給休暇の日数 ・計画的付与の具体的な方法 ・年次有給休暇の付与日数が少ない者の扱い ・計画的付与日の変更 |
<特別休暇を付与するという方法>
会社が計画的付与制度を運用するにあたって、年次有給休暇の一斉付与を考える場合に、問題となるのが、年次有給休暇が不足する従業員の存在です。
こうした場合でなくても、入社したばかりで年次有給休暇を付与されていない従業員には、計画的付与制度を適用することができません。
実務的には、年次有給休暇の付与日数が足りない従業員について、有給の特別休暇を与えることが行われています。特別休暇を就業規則に定めて運用することにより、画一的な制度の運用が可能となります。