2025/04/06|1,354文字
<就業規則の定め>
休職は、労働基準法などに規定がなく、各企業の定める就業規則に従って運用されます。
モデル就業規則の最新版(令和5(2023)年7月版)は、休職について次のように規定しています。
【休職】
第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
① 業務外の傷病による欠勤が か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき 年以内 ② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき 必要な期間 2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。 3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。 |
<休職前の年次有給休暇取得>
就業規則には、一定の期間欠勤が続くと休職となり、あるいは休職を命じられるという規定が多いでしょう。
この場合、年次有給休暇を取得すれば欠勤にはなりませんから、休職となることを嫌って、ある程度の日数の年次有給休暇を取得してから、欠勤が発生するようになるのが通常です。
また、社会保険料や住民税の控除ができる程度の給与を確保するためにも、年次有給休暇の取得が有効です。
本人の考え方次第ですが、欠勤や休職をなるべく避けたいということで、年次有給休暇をすべて使い果たしてから欠勤が発生することもあります。
<休職中の年次有給休暇取得>
休職中は労働義務がありません。
労働義務が無い日について、年次有給休暇を取得する余地はありませんから、休職期間に年次有給休暇を取得することはできません。
法令には規定がありませんが、同趣旨の通達があります(昭和31.2.13基収489号)。
これは、就業規則で毎年三が日が休日の企業で、三が日に年次有給休暇を取得できないのと同じです。
したがって、休職期間を年次有給休暇の残日数分だけ延長ということもありません。
<復帰後の年次有給休暇取得>
休職期間の満了とともに、あるいは期間満了前に休職事由が消滅して職務に復帰した場合には、年次有給休暇の残日数を限度に取得することができます。
特に私傷病を理由に休職となった場合には、治療の必要から通院のために年次有給休暇を取得する必要性は高いのですが、休職前にすべての年次有給休暇を取得し尽くしていると、この必要に応じることができません。
休職するにあたって、復帰の可能性が高いのであれば、通院のための年次有給休暇を残しておく必要性も高いといえます。
<実務の視点から>
休職者が、復帰できるかできないかは結果論です。
企業の方から「年次有給休暇を◯日残しておいたほうが良い」といったアドバイスをするのは適切ではありません。
あくまでも、本人の意思で年次有給休暇の取得を申し出るようにしてもらうべきです。
また、病気休暇の制度があれば、業務外の傷病による休職の場合には、病気休暇の取得も併せて考えます。
年次有給休暇も病気休暇も本人の権利ですから、企業側から不確実な見込みでアドバイスすることは避けましょう。