労働時間の記事

<出勤簿の重要性>

会計検査院がハローワークを通じて会社の調査に入る場合には、この出勤簿の提出を求めてきます。

それだけ出勤簿は重要視されているということです。

 

<出勤簿の体裁>

たしかに出勤簿を使用している会社も数多くあります。

その内容は、出勤日、公休日、休暇、欠勤など1日単位で区分して記入し、1か月単位で集計したものがほとんどです。

これは、給与計算や年次有給休暇管理の補助簿として用いられています。

ところがハローワークに持参すると「これは出勤簿ではない」と言われてしまいます。

 

<法定帳簿としての出勤簿>

ハローワークの想定する出勤簿は、出勤日の始業時刻と終業時刻が明示されていて、1か月の勤務時間が集計されたものです。

パソコンやタイムカードなどで勤務時間を管理している会社であれば、それが出勤簿の代わりになりますから、別に作る必要はありません。

出勤簿を本当に必要とするのは、出勤簿によって勤怠管理をしている一部の会社だけということになります。

 

2018.12.10.解決社労士

<1人当たりの労働時間>

厚生労働省が公表した「平成30年版過労死等防止対策白書」では、労働者1人当たりの労働時間について次のようにまとめられています。

 

我が国の労働者1人当たりの年間総実労働時間は緩やかに減少している。

平成29(2017)年は前年比3時間の減少となっており、5年連続で減少している。

総実労働時間を所定内労働時間、所定外労働時間の別にみると、所定内労働時間は長期的に減少傾向が続いている一方、所定外労働時間は、平成 21(2009)年以降、増加傾向にあり、平成 28(2016)年にわずかに減少したものの、平成 29 年は前年比2時間増加の 131時間となっている。

 

ここで「所定内労働時間」とは、事業所の就業規則や労働契約で定められた、正規の始業時刻と終業時刻との間の実労働時間数のことで、休憩時間は差し引かれています。

また、「所定外労働時間」とは、早出、残業、臨時の呼出、休日出勤等の実労働時間数のことです。

「総実労働時間」は、「所定内労働時間」と「所定外労働時間」の合計です。

 

働き方改革の影響が出る前から、総実労働時間に減少傾向が見られたことになります。

 

<労働時間減少の原因>

1人当たりの労働時間が減少傾向にある原因は、次のように説明されています。

 

一般労働者とパートタイム労働者の別にみると、一般労働者の総実労働時間は平成 21 年

を除き、2,000 時間を超えているが、パートタイム労働者の総実労働時間は横ばいから微減で推移している。

一方、パートタイム労働者の割合は、近年、増加傾向にあることから、近年の労働者1人当たりの年間総実労働時間の減少は、パートタイム労働者の割合の増加によるものと考えられる。

 

ここで「一般労働者」とは、「常用労働者」のうち「パートタイム労働者」を除いた労働者のことをいいます。原則として、正社員のように1日の所定労働時間が最も長く、1週の所定労働日数が最も多い者のことです。職場により基準が異なります。

「パートタイム労働者」は、「常用労働者」のうち次のいずれかに該当する労働者のことをいいます。やはり、職場により基準が異なります。

(1) 1日の所定労働時間が一般の労働者よりも短い者。

(2) 1日の所定労働時間が一般の労働者と同じで1週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない者。

なお、1か月未満の期間を定めて雇われている者は、「常用労働者」ではないので、「一般労働者」にも「パートタイム労働者」にも含まれません。

 

いずれにせよ、手品の種明かしのような説明で、実態としては正社員の労働時間が減少していないことが分かります。

特に、「運輸業,郵便業」、「建設業」、「製造業」、「情報通信業」では、全産業平均よりも労働時間が長くなっているそうです。

 

<長時間労働の実態>

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成 30 年7月 24 日閣議決定)では、2020 年までに週労働時間 60 時間以上の雇用者の割合を5%以下とすることを目標としています。

 

総務省「労働力調査」で雇用者(非農林業)の月末1週間の就業時間別の雇用者の割合の推移をみると、1週間の就業時間が 60 時間以上である者の割合は、最近では平成 15(2003)、16(2004)年の 12.2%をピークとして減少傾向にある。

平成 21 年に大きく減少した後、平成 22(2010)年に一時増加した。

平成 22 年以降は緩やかな減少を続けていたものの、平成 29 年は前年比同率の 7.7%となっており、月末 1 週間の就業時間が 60 時間以上である雇用者数は前年比で約3万人増加し、432 万人となっている。

 

結論として、長時間労働が安定して減少傾向にあるとは言えないわけです。

 

<長時間労働の担い手>

「平成30年版過労死等防止対策白書」から抽出すると、次の傾向が見られます。

 

・30 歳代、40 歳代で月末の1週間に 60 時間以上就業している者の割合が高い。

・平成 27(2015)年以降、30 代男性より 40 代男性の方が割合が高くなっている。

・女性では、他の年齢層に比べ、40 代、50 代で週 60 時間以上就業している者の割合が低い。

・企業の従業者規模によりそれほど大きな差異はない。ただ平成 29 年は、規模が小さくなるに従って、その割合が高くなっている。

・業種別に見ると、平成 29 年は、「運輸業,郵便業」、「教育,学習支援業」、「建設業」で割合が高く、「医療,福祉」、「電気 ・ ガス ・ 熱供給 ・ 水道業」で割合が低い。

 

2018.11.08.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

統計調査などによっては、異なる意味で使用されることもありますが、基本的なものをまとめてみました。

 

<常用労働者>

次のうちいずれかに該当する労働者のこと。

(1) 期間を定めずに雇われている者。

(2)  1か月以上の期間を定めて雇われている者。

つまり、1か月未満の期間を定めて雇われている者は、常用労働者ではない。

 

<パートタイム労働者>

「常用労働者」のうち次のいずれかに該当する労働者のこと。

職場により基準が異なる。

(1) 1日の所定労働時間が一般の労働者よりも短い者。

(2) 1日の所定労働時間が一般の労働者と同じで1週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない者。

 

<一般の労働者>

「常用労働者」のうち「パートタイム労働者」を除いた労働者のこと。

原則として、正社員のように1日の所定労働時間が最も長く、1週の所定労働日数が最も多い者。

職場により基準が異なる。一般労働者とも言う。

 

<所定内労働時間数>

事業所の就業規則や労働契約で定められた、正規の始業時刻と終業時刻との間の実労働時間数のこと。休憩時間は差し引かれる。

所定労働時間とも言う。

統計資料では、労働者によって異なる場合に、最も多くの労働者に適用されるものを、その企業の所定内労働時間数としている。変形労働時間制が採用されている場合には、期間内の平均をその企業の所定内労働時間数としている。

 

<所定外労働時間数>

早出、残業、臨時の呼出、休日出勤等の実労働時間数のこと。

 

<総実労働時間数>

「所定内労働時間数」と「所定外労働時間数」の合計。

 

<変形労働時間制>

週40時間、1日8時間の労働時間の原則に対して、一定の期間内で例外を認める制度。

1年単位の変形労働時間制、1か月単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、フレックスタイム制がある。

 

<みなし労働時間制>

特定の事情により、労働時間の算定が困難であったり、通常と同じ算定方法が適切でなかったりする場合に、労使協定等により定めた時間を労働したものとみなす制度。

事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制がある。

 

<事業場外みなし労働時間制>

営業社員など、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮・監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務を遂行する場合に、所定労働時間、または労使協定等により通常必要とされる時間を労働したものとみなす制度。

 

<専門業務型裁量労働制>

研究開発など、その業務の性質上その遂行の方法や時間配分の決定等に関し具体的な指示をすることが困難として法定されている業務に就かせた場合に、あらかじめ定めた時間労働したものとみなすことを労使協定により定める制度。

 

<企画業務型裁量労働制>

事業運営に関する企画、立案、調査、分析の業務を行うホワイトカラー労働者を対象として、労使委員会で決議した時間労働したものとみなす制度。

導入には、労使委員会で5分の4以上の多数による決議が必要であり、また、対象労働者本人の同意が必要。

 

<勤務間インターバル>

実際の終業時刻から次の始業時刻までの間隔。

これを一定時間以上空ける制度を、勤務間インターバル制度という。

 

<時間外労働>

法定労働時間(原則、1日8時間、1週40時間)を超えて労働させることをいう。

時間外労働の割増賃金も、法定労働時間を超える部分について発生する。

 

2018.10.31.解決社労士

<再雇用後の賃金>

会社と労働者とで定年後も働き続けることの合意がなされる場合に、労働条件については、どうしても賃金ばかりが重視されがちです。

再雇用の実績が多い会社では、定年前の賃金のおよそ何パーセントという相場の形成があるでしょうから、賃金についての合意の形成は比較的容易かもしれません。

年金については、性別と生年月日によって支給開始の時期が異なりますし、60代前半と65歳以降とでは支給額が大きく異なります。また、配偶者の生年月日によって、加給年金額や振替加算についても違いが出てきます。

これらを踏まえて、期間ごとの賃金変動まで合意しておくこともあります。

 

<年次有給休暇>

定年前は、毎年20日の年次有給休暇が付与される一方で、2年前に付与された年次有給休暇は時効消滅するという実態があると思われます。

しかしこれは、週5日勤務を前提としているわけです。

定年後の再雇用で、所定労働日数や所定労働時間が変われば、年次有給休暇の付与日数は変わるかもしれません。

変わるのであれば、これについても再雇用対象者に確認しておく必要があります。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

「勤続期間」は定年前と定年後を通算します。定年後の再雇用だからといって、定年前の年次有給休暇が自動的に消滅するわけではありません。

 

さて、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。これは労働基準法の改正によるものです。

法改正後は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、基準日から1年以内の期間に、年次有給休暇のうち5日については、その取得を確実にしなければなりません。

「年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者」という限定がありますので、この部分についても再雇用対象者にあらかじめ説明が必要でしょう。

 

<社会保険>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が常時雇用者(正社員など)の4分の3以上というのが原則の基準です。

ただし、大企業などで特定適用事業所となっている場合には、1週間の所定労働時間が20時間以上で加入となります。

 

この基準により社会保険に加入しない場合には、扶養家族(被扶養者)を含めて国民健康保険の保険料を支払うことになりますし、扶養している配偶者は国民年金保険料を支払うことになります。

定年前の健康保険であれば、扶養家族の分の保険料は発生しなかったのに、国民健康保険に切り替わると、扶養家族扱いにはならず保険料が高くなることも多いでしょう。

また国民年金に切り替わると、扶養している配偶者についても「第三号被保険者」ではなくなりますので国民年金保険料がかかることになります。

 

社会保険料は高額ですから、社会保険の加入基準との関係で、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数を決める必要があります。

 

<雇用保険>

雇用保険の加入基準は、会社の規模にかかわらず1週間の所定労働時間が20時間以上となっています。

20時間を下回ると、安定した雇用関係に無いということで、雇用保険では「離職」という扱いになります。

なお、現在は毎年4月1日時点で満64歳以上の労働者の雇用保険料は免除されています。しかし、この免除制度は2020年4月1日をもって廃止されます。

 

人手不足を背景として、定年後の再雇用が盛んになっています。これに伴うトラブルも増加しています。会社に長年貢献してきた従業員とのトラブルは、会社にとって大きな打撃となってしまいます。十分な話し合いをもって労働条件を決定するようお願いいたします。

 

2018.09.11.解決社労士

<スタートは法定手続きから>

フレックスタイム制は、労働基準法の規定によって認められています。

この規定に定められた手続きを省略して、形ばかりフレックスタイム制を導入しても、すべては違法であり無効となります。

そのポイントは次のとおりです。

・業務開始時刻と業務終了時刻は労働者が決めることにして、これを就業規則などに定めます。

・一定の事項について、会社側と労働者側とで労使協定を交わし、協定書を保管します。これを労働基準監督署長に提出する必要はありません。

 

<無効だとどうなるのか>

上記の法定手続きをせずに、残業時間を8時間分貯めると1日休むことができるというようなインチキな運用をしても無効です。

無効ということは、フレックスタイム制が無いものとして賃金の計算をしなければなりません。

間違って、フレックスタイム制のルールで賃金を計算して支払ってしまった場合には、不足する差額分を追加で支払わなければなりません。

たとえば、法定労働時間を超える8時間の残業に対しては、10時間分の賃金支払いが必要です。

( 8時間 × 1.25 = 10時間 )

しかも、消滅時効の関係で、最大2年分遡って精算することになります。

 

<違法だとどうなるのか>

正しい手続でフレックスタイム制を導入した場合を含め、次のような違法な運用が見られます。

・残業手当を支払わない。

・残業時間が発生する月は年次有給休暇を取得させない。

・残業時間を翌月の労働時間に繰り越す。

・業務開始時刻や業務終了時刻を上司など使用者が指定してしまう。

・コアタイムではない時間帯に会議を設定し参加を義務づける。

・18歳未満のアルバイトにフレックスタイム制を適用してしまう。

違法だと、労働基準法の罰則に触れるため罰せられることがあります。

 

2018.08.30.解決社労士

<みなし労働時間制が使われるケース>

出張や外回りの営業のように事業場外で行われる業務は、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難になる場合が発生します。

こうした場合に労働時間を適正に算定するため、みなし労働時間制が利用されてきました。

 みなし労働時間の算定方法は次の要領です。

労働者が労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事した場合に、労働時間を算定するのが困難なときには、所定労働時間だけ労働したものとみなされます。〔労働基準法38条の2第1項〕

ただし、その業務を遂行するため通常の場合、所定労働時間を超えて労働することが必要になる場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされます。〔労働基準法38条の2第1項但書〕

この場合、業務の遂行に通常必要とされる時間は、会社と労働者代表などとの労使協定により定めることができます。〔労働基準法38条の2第2項〕

 

<制度利用の注意点>

労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし労働時間が算定されます。

また、労働時間の算定が困難かどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより客観的に判断されます。現在では、携帯電話などで随時指示が出されるケースが多く、こうした場合には原則として適用対象となりません。

 

<ガイドラインの改定>

旧「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」は、平成29(2017)120日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に改められました。

全体としては大きな変更がありません。

ただ、自己申告制で労働時間を把握する場合の取扱いが、きわめて具体的になりました。

これは、社外での勤務が多いこと、営業手当や定額残業代を支給していることを理由に、適正な労働時間の把握を放棄している企業が目立ったからだと聞いています。

また、労働時間の適正な把握に関連するサービスの充実も背景にあると思われます。

ほんの一例ですが、SONYが提供しているクラウド型勤怠管理システムのAKASHIは、低コストでパソコン、iPad、スマートフォン、FeliCaカード、ネットワーク対応ICカードリーダーによる打刻ができますし、オフィスでも出先からでも打刻を行えます。スマートフォンのGPS機能を使うことで、位置情報も記録できます。

こうしたサービスを利用することで、会社は適正な労働時間の把握という法的義務を果たすことができますし、まじめに勤務する外回り担当者と、そうでもない担当者との不公平も解消することができるでしょう。

 

2018.08.19.解決社労士

<調査の概要>

平成30(2018)807日、厚生労働省が平成29年度に、長時間労働が疑われる25,676事業場に対して実施した、労働基準監督署による調査(監督指導)の結果を取りまとめ公表しました。

この調査(監督指導)は、各種情報から時間外・休日労働数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等についての労災請求が行われた事業場を対象としています。

対象となった25,676事業場のうち、11,592事業場(45.1%)で違法な時間外労働が確認され、是正・改善に向けた指導が行われました。

なお、このうち実際に1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、8,592事業場(違法な時間外労働があったものの74.1%)でした。

 

【平成29年4月から平成30年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場:25,676事業場

 このうち、18,061事業場(全体の70.3%)で労働基準関係法令違反あり。

(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]

  ① 違法な時間外労働があったもの:11,592事業場(45.1%)

    うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

       月80時間を超えるもの:        8,592事業場(74.1%)

        うち、月100時間を超えるもの:     5,960事業場(51.4%)

        うち、月150時間を超えるもの:       1,355事業場(11.7%)

        うち、月200時間を超えるもの:     264事業場( 2.3%)

  ② 賃金不払残業があったもの:1,868事業場(7.3%)

     うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

       月80時間を超えるもの:        1,102事業場(59.0%)

  ③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:2,773事業場(10.8%)

 

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]

  ① 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,986事業場(81.7%)

         うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

                    月80時間を超えるもの:      13,658事業場(65.1%)

  ② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,499事業場(17.5%)

      うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

            月80時間を超えるもの:       1,878事業場(41.7%)

 

<労働基準監督署の監督指導>

日常用語としては「調査」なのですが、正しくは「監督指導」です。

調査が入った後には、ほとんどの場合、会社が「是正勧告書」「指導票」という2種類の書類を受け取ることになります。

「是正勧告書」は、法律違反があるので、すぐに正しい形に改めなさいという趣旨です。

会社はこれに対応して、改善内容をまとめた「是正報告書」を労働基準監督署長に提出するのが一般です。

万一放置して、再び法律違反が見つかると、刑事事件として送検されることがあります。もちろん、ウソの「是正勧告書」を提出しても罰せられます。

「指導票」は、法律違反ではないけれど改善が望ましいという指導の内容が書かれています。

調査が入ったとき、専門知識のある人が立ち会えば、労働基準監督署の監督官も穏やかに指導します。

しかし、専門知識の無い人が調査に立会うと、わかりにくい説明をして誤解され、法律違反を指摘されることもあります。

社内に専門家がいないのであれば、事前の準備から事後の対応まで、信頼できる国家資格者の社労士にご用命ください。

 

2018.08.13.解決社労士

<労働時間の認定基準>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

<着替えの時間は労働時間>

就業時間中に着用を義務づけられている制服や、特定の作業を行う場合に必ず着用することになっている作業服に着替える時間は労働時間です。

もちろん、出勤してきたときの元の私服に着替える時間も労働時間です。

しかし、着用が義務付けられているわけではなく、着用するかどうかが労働者個人の自由であれば、一般に着替えの時間は労働時間に含まれません。

さらに、自宅から制服を着て出勤し、制服のまま帰宅すれば、着替え時間の問題はなくなるわけですが、業務以外で制服の着用を許してしまうと、所得税法上非課税とされる制服等には当たらないものとされる恐れもあり、この場合には、給与等として源泉徴収をする必要が発生してしまいます。

 

<他に労働時間となるケース>

昼休み中の来客当番や電話番、参加が義務づけられている研修や行事、警報や電話への対応が義務づけられている仮眠時間も労働時間です。

 

<黙認で労働時間となってしまうケース>

残業というのは、労働者が使用者から命令されて行うものです。

労働者がやりたくてやるのでもなく、労働者の勝手な判断でやるのでもありません。

ですから、たった1回だけ、労働者の勝手な判断で残業していたら、使用者から「勝手な残業は許しません」と注意して終わります。

しかし、何度も繰り返されていて、使用者側が見て見ぬふりをしていたら、残業について黙示の承認があったと判断されることもあります。

すると、時間外割増賃金が発生します。

これを防ぐため、就業規則には「自己判断での残業は許されないこと」「業務終了後は職場に残ってはならないこと」を規定しておきましょう。

 

<労働時間とならないケース>

通勤時間と同様に、出張先への往復時間も労働時間とはなりません。

ただし、物品の運搬を目的とする業務の移動時間は労働時間に該当します。

しかし、これを徹底してしまうと、出張が多い労働者の勤務時間が少なく計算され、出張の無い労働者との間で大きな不公平が発生してしまいます。

単純に出張先への往復時間を労働時間として賃金計算を行うか、別途、出張手当などを支給することによって不公平を解消する必要があるでしょう。

 

2018.08.04.解決社労士

<大綱の概要>

政府が平成30(2018)724日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更を閣議決定しました。

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、平成26(2014)年に成立した「過労死等防止対策推進法」に基づいて、平成27(2015)年7月に初めて策定されましたが、約3年を目途に見直すこととなっていました。

 

<新しい大綱のポイント>

1.新たに「過労死等防止対策の数値目標」を立てて、変更前の大綱に定められた「週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下」など3分野の数値目標を改めて掲げるとともに、勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標など新たな3つの分野の数値目標を掲げた。

数値目標は次の通り。

・2020年までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする。

・2020年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする。

 

2.「国が取り組む重点対策」において、「労働行政機関等(都道府県労働局、労働基準監督署又は地方公共団体)における対策」を新たに項立てし、関係法令等に基づき重点的に取り組む対策として、下記3点などを明記した。

 (1) 長時間労働の削減に向けた取組みの徹底

 (2) 過重労働による健康障害の防止対策

 (3) メンタルヘルス対策・ハラスメント対策

 

3.調査研究における重点業種等(過労死等が多く発生している又は長時間労働者が多いとの指摘がある職種・業種)として、自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療を引き続き対象とするとともに、近年の状況を踏まえ、建設業、メディア業界を追加した。また、上記重点業種等に加え、宿泊業等についての取組みも記載した。

 

4.勤務間インターバル制度を推進するための取組みや、若年労働者、高年齢労働者、障害者である労働者等への取組みについて新たに記載した。

 

 

5.職場のパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントを包括的に「職場におけるハラスメント」として位置付け、その予防・解決のための取組みを記載した。

 

<勤務間インターバルとは>

インターバル(interval)とは、間隔、合間、休憩時間のことをいいます。

そして、勤務間インターバルとは、実際の終業時刻から次の始業時刻までの間隔をいいます。

たとえば、仕事を18:00に終えて帰宅し、翌日9:00に勤務を開始すれば、勤務間インターバルは15時間ということになります。

 

1日の区切りは真夜中の0時だということで、残業が深夜に及んだ場合に、23:50で一度終業とし翌日00:10を始業として、労働時間の計算を23:50までと、翌日00:10からに分けて計算している企業が、労働基準監督署の是正勧告を受けたという報道がありました。

このように労働時間を0時で区切って計算すると、実質的には継続して残業している場合でも、18時間の法定労働時間を超える時間が少なく計算され、割り増しの残業代も少なくなってしまうという不合理が発生します。

こうした不合理な事態の発生を防止するため、通達によって、1日の労働時間を計算する場合には、その人の労働契約上の始業時刻が区切りとされています。

つまり、就業規則や労働条件通知書などによって決まっている日々の始業時刻が、残業代を計算するうえでの1日の労働時間の区切りということになります。

ですから上記の例では、勤務間インターバルが20分ということではなく、23:50から00:10は単なる休憩時間という扱いになります。

 

早番・遅番のように、始業時刻が日々変わる制度を取っている場合には、シフトの組み方によって、極端に短い勤務間インターバルが発生するかもしれません。

こうした可能性がある職場では、働き手の健康維持のため、つまり生産性維持のため、就業規則などに勤務間インターバルの基準を設ける必要があるでしょう。

さらに、長時間の残業が常態化している職場では、過重労働や長時間労働を改善するとともに、勤務間インターバルの基準設定が必要となります。

 

この制度を上手く導入すれば、返済不要の助成金を受給できます。

気になる方は、社会保険労務士にお問い合わせください。

 

2018.07.27.解決社労士

<就業規則と労働契約(雇用契約)との優先順位>

 

労働契約は、会社と各労働者との個別契約です。

一方、就業規則に定めてあることは、その就業規則が適用される労働者に共通するのが原則です。

そして、就業規則に定めきれない各労働者に特有のことは労働契約に定められます。

原則として、就業規則が労働契約に優先します。〔労働基準法93条、労働契約法12条〕

ところが、就業規則が優先という法律の規定は、労働契約が就業規則よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして就業規則に従うという内容になっています。

ですから、労働契約の中に就業規則よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結論として、就業規則と労働契約の規定のうち、その労働者にとって有利なものが有効となります。

 

<具体的な判断>

就業規則と労働契約を比べて、違いがある部分については労働者に有利な方が有効となるとはいえ、これが簡単ではないのです。

たとえば、午後1時から3時の間はお客様が少なくてお店が暇だとします。

就業規則には、休憩時間が1時間と書かれているけれども、店長がパートさんとの労働契約更新にあたって「これからは休憩を2時間にしましょう」と提案し、パートさんがこれに合意したらどうでしょう。

多くの方にとっては、拘束時間が変わらないのに収入が減るので不利になると考えられます。

ところが、自宅が職場の隣にあって「ラッキー!昼休みに洗濯が済ませられるわ」と喜ぶパートさんがいるかもしれません。

労働法全体の考え方からすると、休憩時間は長い方が労働者に有利と考えられています。

しかし、必ずしもそうではありませんから、ここは会社と労働者との話し合いで解決したいところです。

 

2018.07.13.解決社労士

<ニュース>

賃貸住宅建設の大東建託で、神奈川県内の支店が労使協定で定められた上限を超えて社員に時間外労働をさせたとして、6月上旬に労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが分かったそうです。

この是正勧告の前提となる監督(調査)の中で、過酷な労働実態や、残業時間の「過少申告」があったと複数の社員や元社員が証言しているそうです。

この元社員は、残業時間を実際より短く申告していたそうです。「残業を月70時間超つけると始末書を書かされ、残業時間も修正させられると上司から聞いた」からだそうです。

 

<残業の制限規定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

 

<三六協定>

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署に届け出た場合には、協定の定めに従って18時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

 

<その手続き>

労働組合が無い場合には、その事業場ごとに労働者の過半数を代表する者を選出します。あくまでも労働者の代表ですから、会社からの指名ではなく従業員同志の話し合いを基本に民主的に選出します。

そして、労働時間の上限や休日出勤について、会社と代表とが書面で協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出ます。

協定書を届け出たときから協定が有効になりますので、手続きをしないで制限を超える残業があれば違法残業となります。

また、協定の期間は最長1年間ですから、毎年届け出が必要となります。

 

<協定書を届け出ても違法となる場合>

まず、協定に定めた残業の上限時間を超える残業が「違法残業」となります。

今回の大東建託の場合がこれに該当します。

つぎに、労働者の代表が民主的に選出されず、会社に指名されていた場合にも協定が無効ですから「違法残業」となります。

さらに、協定書の届け出前や期限が切れた後の残業も「違法残業」となります。

 

<問題の本質>

店長、支店長、営業所長は、より少ない人件費でより多くの営業利益を上げることがその使命です。

しかし、「三六協定を遵守したうえで」という前提が抜け落ちていることが多々あります。

社員研修でも、営業利益を上げるためのプラスの研修は盛んに行われ参加率も高いのに対して、足元をすくわれないためのマイナスの研修は少なめで参加率も低くなります。

今回のようにマスコミに報道されてしまうと、その支店だけではなく、全社的にダメージを受けてしまいます。

労働法遵守に向けられる努力が足りないと、全社的なダメージを受けることがあるのは、企業にとって恐ろしい事実です。

労働基準法や労働契約法など労働法については、アリの一穴となりうるのですから、対策を怠らないようにしましょう。

 

2018.07.07.解決社労士

<フレックスタイム制>

フレックスタイム制は、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1箇月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決め、その生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことができる制度です。〔労働基準法32 条の3

労働基準法の範囲内で認められる特例ですし、導入するには就業規則と労使協定での規定が必要です。ここを省略して運用すると違法ですし無効になります。

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)にはフレックスタイム制の規定例が見当たらないのですが、労働基準監督署などで配布される「フレックスタイム制の適正な導入のために」というパンフレットには、次のような規定例があります。

 

 (適用労働者の範囲)

第○条 第○条の規定にかかわらず、企画部に所属する従業員にフレックスタイム制を適用する。

第○条 フレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午前6時から午前10 時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後3時から午後7時までの間とする。

  ② 午前10 時から午後3時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、所属長の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。  

 (清算期間及び総労働時間)

第○条 清算期間は1箇月間とし、毎月26 日を起算日とする。   

  ② 清算期間中に労働すべき総労働時間は、154 時間とする。  

 (標準労働時間)

第○条 標準となる1日の労働時間は、7時間とする。  

 (その他)

第○条 前条に掲げる事項以外については労使で協議する。

 

あくまでも規定例ですから、これをそのまま使うのではなく、それぞれの職場に合わせて修正することが必要です。

その際、法令の制限を超えた修正をしてしまうと、その部分は無効になってしまいます。不安があれば、運用を含め社会保険労務士にご相談ください。

 

<労使協定の規定>

労使協定には、次の各項目を定めます。

 

・対象となる労働者の範囲

 対象となる労働者の範囲は、全社員、特定の部署、特定の部署の一部の社員、あるいは個人ごとに指定することもできます。

 

・清算期間

清算期間とは、労働者が労働すべき時間を定める期間のことで、清算期間の長さは、現在の法律では1箇月以内に限ります。そして、賃金の計算期間に合わせて1箇月とすることが一般的です。

 

・清算期間における起算日

 毎月1日から月末まで、16 日から翌月15日までなど、清算期間を明確にする必要があります。

 

・清算期間における総労働時間

清算期間における所定労働時間のことです。

 この時間は、清算期間を平均し、1週間の労働時間が40 時間(特例措置対象事業場は44 時間)以内になるように定めなければなりません。

 ここで、特例措置対象事業場とは、常時10 人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業のことです。

 一般には、40時間 ÷ 7日 × 暦の日数 で計算されます。

 暦の日数が30日の月なら、171.4時間となります。

 1か月単位でみて制限を上回ってはいけませんから、端数は切捨てで設定します。

 

・標準となる1日の労働時間

 フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合には、

その日に標準となる1日の労働時間労働したものとして取扱うことが必要です。

 

・コアタイム

 コアタイムは、労働者が出勤日に必ず働かなければならない時間帯です。

設けないことも可能です。

なるべく短い方が、フレックスタイム制の効果は大きくなりますが、会社の労務管理の都合も考えて設定しましょう。

 特定の日や曜日だけコアタイムを変えたり、コアタイムを1日の中に複数設けることも可能です。

 

・フレキシブルタイム

 労働者が勤務できる時間帯に制限を設ける場合は、その開始時刻と終了時刻を定める必要があります。

 労働者の勤務時間を30分単位で区切り、その中から選ぶような仕組みはできません。

 

<残業時間の計算>

「清算期間における総労働時間」を超えて勤務した時間が残業時間ですから、時間外割増賃金の支払い対象となります。清算期間が1箇月であれば、1日や1週単位での計算は不要です。ここが、賃金計算上のメリットになります。

ただし、1週間丸々出勤した場合には、法定休日出勤の賃金を別に計算し、フレックスタイム制での労働時間には加えません。

また、精算期間内の残業時間を、次の精算期間の早帰りなどで相殺することはできません。清算期間をまたいでしまっては、清算期間の意味がありません。また、賃金の全額払いの原則〔労働基準法241項本文〕にも反します。

労働時間が「清算期間における総労働時間」に足りないときは、その時間分だけ欠勤控除をすることになりますが、年次有給休暇の取得によって総労働時間を補うことも多いでしょう。

 

2018.06.25.解決社労士

<フレックスタイム制>

フレックスタイム制は、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1箇月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決め、その生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことができる制度です。〔労働基準法32 条の3

労働基準法の範囲内で認められる特例ですし、導入するには就業規則と労使協定での規定が必要です。ここを省略して運用すると違法ですし無効になります。

 

<コアタイムとフレックスタイム>

一般的なフレックスタイム制は、1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分けています。

コアタイムは必ず設けなければならないものではありませんから、全部をフレキシブルタイムとすることもできます。

コアタイムがほとんどでフレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる1日の労働時間がほぼ一致している場合、始業時刻、終業時刻のうちどちらか一方だけを労働者の決定にゆだねている場合、始業時刻、終業時刻は労働者の決定にゆだねるとしながら、始業から必ず8時間は労働しなければならない旨義務付けている場合などは、フレックスタイム制ではないとされることがありますのでご注意ください。

そもそも、これらの場合にはフレックスタイム制のメリットがありません。

 

<出勤日や労働時間の決定>

たとえば、コアタイム以外の時間帯に、使用者側が会議を設定し労働者の出席を求めることは、フレックスタイム制の趣旨に反します。

ただ、使用者側が全く口出しできないというわけではなく、労働者と話し合って合意することは許されます。

仕事の内容を踏まえつつ、労働者同士で話し合って出勤日や労働時間を決めることも可能です。むしろ、そうすべきです。

使用者側からの一方的な押し付けであってはならないということです。

 

<フレックスタイム制のメリット>

労働者にとっては、生活と仕事のバランスを図ることができます(ワークライフバランス)。

また、使用者にとっても、効率的な労働力の提供を受けることにより、生産性の向上を図ることができます。

疲れた状態で業務に取り組むことを避ける一方で、必要がある場合には業務の完成までやり遂げるという運用が可能ですから、生産性が上がります。ただし、出勤日や勤務時間帯の選択は労働者にゆだねられますから、労働者がフレックスタイム制の意味を理解し正しく活用しなければなりません。

一般には、ある日に2時間残業して別の日に2時間早帰りして相殺するということはできません。なぜなら、割り増し賃金の分だけ労働者が損するからです。しかし、フレックスタイム制を正しく導入・運用すれば、この相殺も可能です。

 

<制度活用のために>

労働者の一人ひとりが、自分の好きなときに勤務しても良いということを勘違いすると、昨日も朝寝坊、今日も朝寝坊、いつ出勤するのか分からないことになりそうです。

そして、さっきまでいた人が、いつの間にか帰ってしまい困ったということもありえます。

実際に、こうしたことが原因で、せっかく導入したフレックスタイム制を使わなくなってしまう職場が多いのも事実です。

労働者が、始業終業の時間を自由に決められるというのは、使用者側から強制されないという意味なのです。一人ひとりが、その日の気分で変えられるという意味ではありません。

出勤日と勤務時間帯は、職場内での仕事の連動をよく考えて、みんなで話し合って決めましょう。この話し合いによるコミュニケーションの強化も、隠れた効果の一つです。無駄な仕事やダブりの仕事が見つかって、長時間労働の改善につながることもあります。

そして決めた結果は、自分の部署だけでなく他部署にも広く知らせておくようにしましょう。ホワイトボードとネットで共有したスケジュール表があれば万全です。

そして変更があれば、ただちに修正します。

ここのところが、フレックスタイム制活用の最大のポイントだと考えられます。

 

2018.06.24.解決社労士

<ノーワーク・ノーペイの原則>

「ノーワーク・ノーペイ」とは、「労働者の労務提供がなければ会社は賃金を支払わなくてよい」という原則のことです。

これを直接規定した法令はありませんが、労働契約法には次の規定があります。

 

(労働契約の成立)

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

つまり、労働者の労働に対して使用者が賃金を支払う約束だということです。

裏を返せば、労働者が労働しなければ使用者に賃金支払い義務は無いのです。

もちろん、使用者側に何か落ち度があれば、賃金の全額または一部の支払義務が生ずることはあります。

 

それでも、電車の遅れに対して、一般には使用者側に落ち度が無いので、やはり賃金の支払い義務は無いのです。

つまり、電車が遅れて勤務できなかった時間の賃金について、会社が欠勤控除をせず、全額支払うというのは、法令によるものではなく、会社の恩恵的な取扱いだということになります。

ただ、電車の遅れによる遅刻について欠勤控除をしない会社の比率は高いですから、欠勤控除をするルールの会社では社員の不満が生じやすいでしょう。

 

<証明を求める会社>

遅刻の報告書に遅延証明書を添えれば、証明された遅延時間の範囲内で、欠勤控除をしないというルールの会社が多数派でしょう。

遅延証明書は、多くの鉄道会社でネット交付のサービスがありますから、ずいぶんお手軽になってきました。

 

<証明を求めない会社>

遅延証明書が無くても、本人が申し出れば欠勤控除をしないというルールの会社もあります。

改札口で遅延証明書をもらうための列に並ぶよりは、1分でも早く業務を開始してもらった方が、会社にとって得かもしれません。

また電車遅延の情報は、ネットで容易に得られるようになりましたから、社員のひとり一人から遅延証明書をもらうよりも、人事部門で一括して情報を把握し処理した方が、人件費の節減になります。

 

<問題社員のケース>

欠勤控除をしない会社の場合、次のような不正行為がありえます。

本当は寝坊してタクシーで駆けつけたのに、ネットで検索して、たまたま電車の遅延情報を見つけたから、遅延証明書をダウンロードして使用するということはありえます。

大雪などで、早朝から電車の大幅遅延が見込まれているのに、いつも通りの時刻に自宅を出発し、遅延証明書の範囲で賃金が得られるなら良しとする社員もいます。

このあたりは、教育研修や人事考課の適正な運用で対応すべきことでしょう。

 

<鉄道会社の賠償義務>

さて、電車の遅れによって賃金が減ったら、社員は減った分の賃金を損害として鉄道会社に請求できるのでしょうか。

直感的に無理だというのはわかります。

鉄道会社と乗客との間には旅客運送契約があります。読んだことがなくても有効なのは、電気会社やガス会社などとの契約と同様です。

この旅客運送契約に関して、各鉄道会社は営業規則を定めていて、鉄道会社は運行不能や2時間以上の遅延の場合などに料金の払い戻しはするものの、それ以上の損害等について責任を負わないことになっています。

 

2018.05.29.解決社労士

<計算上の不利益>

ある日2時間残業して、翌日2時間早退して、これで相殺したことにすると賃金の面で問題があります。

労働基準法371項には次の規定があって、法定労働時間を超える労働には25分以上の割増賃金を支払わなければなりません。

 

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

ある日、法定労働時間を超えて2時間残業した場合、その2時間の賃金は、就業規則や労働条件通知書などに示された25分以上割増の賃金です。

2時間 × 1.25 2.5時間

ですから、2.5時間分以上の賃金支払いが必要です。

これと、早退による2時間分の賃金のマイナス(欠勤控除)とで相殺すると、0.5時間分以上の賃金が消えてしまうのです。

 

これでは割増賃金を支払わないことになりますから、労働基準法371項に違反し、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」という罰則適用の対象になってしまいます。〔労働基準法119条〕

 

<不利益が無い場合>

ある人の所定労働時間が毎日4時間であれば、2時間残業しても法定労働時間の範囲内ですから、割増賃金は発生しません。翌日2時間早退して、これで相殺したことにしても、賃金計算上の不利益はありません。

また、割増賃金を就業規則や労働条件通知書などに25分と規定し、4時間の残業と5時間の早退とで相殺するという運用ならば、賃金計算上の不利益はありません。

4時間 × 1.25 5時間

こうした計算で、労働者に不利益が無いのなら違法ではないようにも思われます。

しかし、労働基準法により、残業代は残業代、早退による欠勤控除は欠勤控除として、それぞれ別項目で賃金台帳に示さなければなりません。

労働基準法108条には次の規定があります。

 

(賃金台帳)

第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

 

そして、労働基準法施行規則54条により、次の事項を記入することになります。

・氏名

・性別

・賃金計算期間

・労働日数

・労働時間数

・時間外労働、休日労働および深夜労働の時間数

・基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額

・労使協定により賃金の一部を控除した場合はその金額

 

こうしたことから、たとえ賃金計算上の不利益が無い場合でも、残業時間と早退時間はそれぞれ集計して賃金台帳に記入しなければなりません。

 

<フレックスタイム制の運用>

きちんと手続きをして、フレックスタイム制を正しく運用していれば、ある日2時間残業して、別の日に2時間早退すると、結果的に相殺されたのと同じ効果が発生します。〔労働基準法32条の3

これは、1か月間など労使協定で定められた清算期間内の総労働時間と、実際の勤務時間の合計との比較で、時間外労働や欠勤の時間を集計する仕組みだからです。

労働者が仕事の都合と個人の都合をバランス良く考えて、自由に労働時間を設定できることによる例外です。

就業規則の規定や労使協定が無いのに、フレックスタイム制に似せた運用をしてしまわないように注意しましょう。

 

<月60時間を超える時間外労働>

中小事業主は当分の間対象外ですが、月60時間を超える時間外労働の割増賃金(割増率5割以上)については、労働者の健康確保の観点から、割増賃金の支払いに代えて有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。〔労働基準法373項〕

代替休暇制度の導入には、事業場の過半数組合、または労働者の過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

この協定では、a.代替休暇を与えることができる時間外労働の時間数の算定方法、b.代替休暇の単位、c.代替休暇を与えることができる期間、d.代替休暇の取得日の決定方法および割増賃金の支払い日を定めるべきとされています。

これは、残業時間と早退時間との相殺ではなくて、残業時間と休暇との相殺になります。

中小企業の場合はもちろん、大企業であっても労使協定の無いまま、「8時間残業したら1日休んでよし」といった乱暴な運用は違法ですから注意しましょう。

 

2018.05.11.解決社労士

<過重労働解消キャンペーン>

平成30(2018)年4月23日に、厚生労働省から「過重労働解消キャンペーン」での重点監督の実施結果について取りまとめた資料が公表されました。これは、平成29(2017)年11月に行われたキャンペーンの結果です。

この重点監督は、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や、若者の「使い捨て」が疑われる事業場などを含め、労働基準関係法令の違反が疑われる7,635事業場に対して集中的に実施されたものです。

その結果、5,029事業場(全体の65.9%)で労働基準関係法令違反が確認され、そのうち 2,848 事業場(37.3%)で違法な時間外労働が認められたため、それらの事業場に対して、是正に向けた指導が行われました。

 

<重点監督結果のポイント>

⑴  監督指導の実施事業場:7,635 事業場

このうち、5,029事業場(全体の65.9%)で労働基準関係法令違反あり。

⑵  主な違反内容

ア 違法な時間外労働があったもの:2,848 事業場(37.3%)

 うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるもの:1,694事業場(59.5%)

 うち、月100時間を超えるもの:1,102事業場(38.7%)

 うち、月150時間を超えるもの:  222事業場( 7.8%)

 うち、月200時間を超えるもの:   45事業場( 1.6%)

イ 賃金不払残業があったもの:   536 事業場( 7.0%)

ウ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:778 事業場(10.2%)

⑶  主な健康障害防止に係る指導の状況 [(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]

ア 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:5,504 事業場(72.1%)

うち、時間外・休日労働を月80時間以内に削減するよう指導したもの: 3,075事業場(55.9%)

イ 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:1,232 事業場(16.1%)

 

※上記のうち、80時間・100時間という基準は「過労死ライン」と呼ばれるものです。脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があるためにこの基準が設けられています。

 

<監督(調査)が入ったら>

以上の結果を見てどのように感じるかは、各人各様だと思います。

ただ、社会保険労務士の立場からすると、専門知識が無いために、無意識のうちに法令違反を招いている経営者の方々が多いように思われます。

監督(調査)が入ると、違法な部分を是正するように「是正勧告書」が交付され指導を受けます。これは、「勧告書」という名称なのに、「違法なのですぐに是正しなさい」という趣旨ですから、放置すると再度監督(調査)が入って検挙されかねません。

似た書類として「指導票」というのもあります。こちらは、「違法ではないけれど改善をお勧めします」という趣旨ですから、計画的な改善に努めれば良いわけです。

いずれにせよ、監督(調査)が入っても、何ら指摘を受けないのがベストですし、何か指摘を受けても適切な対応をすれば問題ありません。

もし、社内に専門職の社員を確保できないのであれば、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ご用命ください。

 

2018.04.27.解決社労士

<通勤時間>

自宅から仕事の現場に直接向かった場合、これは通勤となり労働時間にはなりません。

同様に、仕事の現場から直接帰宅した場合、これも通勤となり労働時間にはなりません。

ただし、会社からの指示により、会社に寄ってから現場に向かう場合には、会社に寄るところまでが通勤時間であり、その後は労働時間となります。

同様に、会社からの指示により、現場での仕事を終えた後、会社に寄ってから帰宅する場合には、会社での勤務終了までが労働時間となります。

ですから、余計な労働時間が発生し、残業手当などが増えないようにするためには、直行直帰を徹底するのが合理的です。

 

<労働時間の適正な把握>

旧「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」は、平成29(2017)年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に改められました。

全体としては大きな変更がありません。

しかし、自己申告制で労働時間を把握する場合の取扱いが、極めて具体的になりました。

これにより、現場に直行し直帰する従業員の労働時間を把握する場合にも、安易な自己申告が許されなくなっています。

 

最も確実なのは、使用者が自ら現認することにより、始業時刻、休憩時間、終業時刻を確認することです。

ここで「使用者」というのは、社長などの事業主に限定されてはいません。

このことについて、労働基準法は次のように規定しています。

 

第十条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

 

つまり、労働者であっても、事業主のために他の労働者を管理する者は、その限りにおいて使用者の立場にあるということです。

工事現場などで、会社から労働者の指揮監督を任されている職長は、まさにこの使用者にあたりますから、職長が各従業員の始業時刻、休憩時間、終業時刻を確認し記録すれば、労働時間の適正な把握が可能です。

ただ、会社が職長などに労働時間の管理を任せる場合には、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の内容を理解させ、必要な研修を行うことが前提になるものと考えられます。

 

2018.03.27.解決社労士

<不法就労のニュース>

あるラーメンチェーンの大阪・ミナミの店舗で、外国人留学生らを不法に働かせたとして、大阪府警が週内にも、入管難民法違反(不法就労助長)の疑いで、社員らと会社について書類送検する方針を固めたそうです。(平成3034日)

 

<留学生の就労制限>

留学生は、勉強をするために留学生の資格で入国しています。

アルバイトをするというのは、勉強とは違う活動ですから、入国資格との関係では、資格外の活動だということになります。

そこで、留学生がアルバイトをするには、住居地を管轄する地方入国管理官署に資格外活動許可の申請を行い、資格外活動許可書の交付を受けなければなりません。

一方、留学生アルバイトを雇う場合には、この資格外活動許可書に書いてある許可条件を確認し、条件の範囲内で勤務時間などの労働条件を決めることになります。

留学生アルバイトの場合には、通常、週28時間以内の勤務が許されていますが、夏休みなどの長期休暇中は週40時間に延長されます。長期休暇の期間も、資格外活動許可書で確認します。

 

<労働法の遵守>

ニュースになったのは、入管難民法違反(不法就労助長)の点だけです。

しかし、労働基準法違反や労働安全衛生法違反などにも注意する必要があります。

これらの労働法は、国籍にかかわらず日本で働く人に適用されますから、言葉や習慣の違いへの対応が必要になります。

まず、採用にあたって交付する労働条件通知書は、留学生アルバイトが理解できなければなりません。日本語が良くわからなければ、本人のわかる言語で作成したものを交付し、説明する必要があります。

就業規則などのルールも、理解できる言語で作成し、説明する必要があります。

また、労働災害防止のため、「熱い」「入るな」などの表示も、わかる言語で行う必要があります。

さらに、最低賃金法を守ることはもちろん、日本国籍ではないことを理由に、賃金を低く設定することも許されません。

なんとなく、外国人であれば安い賃金で雇えるようなイメージもありますが、これはブラック企業が、ほとんど人身売買に近いことまで行っているために、そうした誤解を与えているに過ぎないのです。

 

2018.03.06.解決社労士

<勤務間インターバルとは>

インターバル(interval)とは、間隔、合間、休憩時間のことをいいます。

そして、勤務間インターバルとは、実際の終業時刻から次の始業時刻までの間隔をいいます。

たとえば、仕事を18:00に終えて帰宅し、翌日9:00に勤務を開始すれば、勤務間インターバルは15時間ということになります。

 

<就労条件総合調査では>

平成29 年就労条件総合調査の概況(平成29 12 27 日厚生労働省公表)によると、勤務間インターバルについて、次のような結果が出ています。

 

1年間を通じて実際の終業時刻から始業時刻までの間隔が11 時間以上空いている労働者の状況別の企業割合をみると、「全員」が37.3%と最も多く、次いで「ほとんど全員」が34.3%となっています。

また、「全くいない」が9.2%、「ほとんどいない」が3.5%となっています。

 

勤務間インターバル制度の導入状況別の企業割合をみると、「導入している」が1.4%、「導入を予定又は検討している」が5.1%、「導入の予定はなく、検討もしていない」が92.9%となっています。

 

勤務間インターバル制度の導入の予定はなく、検討もしていない企業についてその理由別の企業割合をみると、「当該制度を知らなかったため」が40.2%と最も多く、次いで、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」が38.0%となっています。

 

<休憩時間との違い>

1日の区切りは真夜中の0時だということで、残業が深夜に及んだ場合に、23:50で一度終業とし翌日00:10を始業として、労働時間の計算を23:50までと、翌日00:10からに分けて計算している企業が、労働基準監督署の是正勧告を受けたという報道がありました。

このように労働時間を0時で区切って計算すると、実質的には継続して残業している場合でも、18時間の法定労働時間を超える時間が少なく計算され、割り増しの残業代も少なくなってしまうという不合理が発生します。

こうした不合理な事態の発生を防止するため、通達によって、1日の労働時間を計算する場合には、その人の労働契約上の始業時刻が区切りとされています。

つまり、就業規則や労働条件通知書などによって決まっている日々の始業時刻が、残業代を計算するうえでの1日の労働時間の区切りということになります。

ですから上記の例では、勤務間インターバルが20分ということではなく、23:50から00:10は単なる休憩時間という扱いになります。

 

<勤務間インターバルを考えるべき場合とは>

早番・遅番のように、始業時刻が日々変わる制度を取っている場合には、シフトの組み方によって、極端に短い勤務間インターバルが発生するかもしれません。

こうした可能性がある職場では、働き手の健康維持のため、つまり生産性維持のため、就業規則などに勤務間インターバルの基準を設ける必要があるでしょう。

さらに、長時間の残業が常態化している職場では、過重労働や長時間労働を改善するとともに、勤務間インターバルの基準設定が必要となります。

 

2018.01.08.解決社労士

<スタートは法定手続きから>

フレックスタイム制は、労働基準法の次の規定によって認められています。この規定に定められた手続きを省略して、形ばかりフレックスタイム制を導入しても、すべては違法であり無効となります。

 

第三十二条の三 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

一 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。)

三 清算期間における総労働時間

四 その他厚生労働省令で定める事項

 

長い条文ですが、ポイントは次のとおりです。

・業務開始時刻と業務終了時刻は労働者が決めることにして、これを就業規則などに定めます。

・一定の事項について、会社側と労働者側とで労使協定を交わし、協定書を保管します。これを労働基準監督署長に提出する必要はありません。

 

<よくある違法な名ばかりフレックス>

上記の法定手続きをせずに、残業時間を8時間分貯めると1日休むことができるというインチキな運用は多いようです。

この残業時間は、割増賃金の対象となる法定時間外労働でしょうから、25%以上の割増が必要です。

つまり、8時間の残業に対しては、10時間分の賃金支払いが必要です。

( 8時間 × 1.25 10時間 )

だからと言って、残業時間を6時間24分貯めると1日休めるという運用も違法です。

( 6時間24分 × 1.25 8時間 )

計算上はこのとおり正しいのですが、労働基準法が認めていないことを勝手にやってもダメなのです。

 

<フレックスタイム制導入後の違法な運用>

せっかく正しい手続でフレックスタイム制を導入しても、次のような違法な運用が見られます。

・残業手当を支払わない。

・残業時間が発生する月は年次有給休暇を取得させない。

・残業時間を翌月の労働時間に繰り越す。

・業務開始時刻や業務終了時刻を上司など使用者が指定してしまう。

・コアタイムではない時間帯に会議を設定し参加を義務づける。

・18歳未満のアルバイトにフレックスタイム制を適用してしまう。

 

<メリットはあるのか>

導入手続きと正しい運用が面倒に感じられるフレックスタイム制ですが、導入手続きは最初に1回だけですし、運用は慣れてしまえば問題ありません。

私生活と仕事との調整がしやすくなりますから、生産性の向上が見込めます。

これを誤解して、人件費を削減する仕組みだと捉えると上手く機能しません。

 

<活用のポイント>

勤務時間の情報を上手く社内外と共有することが大事です。

また、業務開始時刻と業務終了時刻を自由に決められるとはいえ、労働者個人の好みで決めて良いわけではありません。

仕事のスケジュールや、他部署や取引先などとの連動を考えながら、同僚、関連部署の社員、取引先などと相談しながら決めることになります。

しかし、これをすることによって、他部署や社外とのコミュニケーションも良くなりますし、業務の連動も取りやすくなります。

つまり、生産性の向上につながるわけです。

 

人手不足の今、社員数の少ない会社ほど、フレックスタイム制活用のメリットは大きいでしょう。

フレックスタイム制の導入をキッカケに、社員の多機能化を図ることも可能です。

具体的にどうしたら良いのかという専門的なことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

2017.11.25.解決社労士

<連合総研のアンケート結果>

連合総研201710月に実施した「勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート調査」から、次の結果が出ています。

 

●正社員の5割超が勤務時間外のメール等の対応、4 割が持ち帰り残業あり

 

勤務時間以外の時間や休日に行った業務・作業について、<ある>と回答した割合は、「メール・電話・SNSの対応」が46.8%、「呼び出しを受けて出勤」が28.5%、「持ち帰り残業」が30.9%でした。

就業形態別に<ある>の割合をみると、いずれも正社員で高く、「メール・電話・SNSの対応」が5 割、「持ち帰り残業」が4 割を超えています。とくに、正社員の2 割超で「メール・電話・SNSの対応」が「常にある」(7.3%)、「よくある」(13.4%)と回答し、相対的に頻度が高くなっています。

 

●長時間労働者は勤務時間外のメール等の対応、持ち帰り残業時間も長い

 

勤務時間以外に行った業務・作業についての1 か月あたり平均時間数は、「メール・電話・SNSの対応」が3.6 時間、「持ち帰り残業」が5.5 時間でした。

週実労働時間別にみると、50 時間以上の層で、「メール・電話・SNSの対応」が6 時間を超え、「持ち帰り残業」が10 時間前後に達しています。

 

●2割超が勤務時間外のメール等の対応、持ち帰り残業は労働時間にあたらないとの認識

 

勤務時間以外に行った業務・作業の時間は労働時間にあたると思うかをたずねたところ、「メール・電話・SNSの対応」については、5 割超が「あたる」、2 割超が「あたらない」と回答、「持ち帰り残業」については、6割弱が「あたる」、2割超が「あたらない」と回答しました。

業務・作業の頻度別にみると、いずれも頻度が多くなるほど「あたる」、頻度が少なくなるほど「あたらない」の割合が高くなっています。

 

●持ち帰り残業を上司にまったく伝えていない人は45

 

勤務時間以外に行う(行った)業務・作業を上司に「まったく伝えていない」割合は、「メール・電話・SNSの対応」が38.7%、「持ち帰り残業」が45.0%でした。

いずれも、業務・作業の頻度が多くなるほど、「すべて伝えている」と「ほとんど伝えている」を合わせた割合は高くなっています。反対に、業務・作業の頻度が少なくなるほど、「まったく伝えていない」割合が高くなっています。

 

<会社はどう対応するか>

「勤務時間外を拘束するメールや持ち帰り残業は、どの会社でもある程度はあるので仕方がない」とは言っていられません。

このアンケートでは、呼び出しを受けての出勤、持ち帰り残業、メール等の対応が常にある人は負担・ストレスを強く感じていることや、メール等の対応、持ち帰り残業時間が長くなるほど負担・ストレスを強く感じていることが明らかにされています。

メンタルヘルス障害が発生すれば、会社は責任を問われますし、戦力ダウンや経済的損失は免れません。

 

欠員が出たらすぐに有能な人材を採用できるような時代ではなくなりました。

人手不足クライシスと言われる今、働き手にとって魅力的な会社でなければ思うように人材が確保できません。

勤務時間外を拘束するメールや持ち帰り残業があるのは、業務内容に見合った人手が確保されていない証拠です。経営者は危機感を持つべきです。

 

少なくとも会社がブラックと言われないように法令を順守すること、会社が経済的な負担を抑えつつ働くことのメリットを増やすこと、生産性を上げるためのルールや仕組みを整備することなどによって人手不足クライシスに対抗しなければなりません。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

2017.11.18.解決社労士

<ガイドラインの改定>

旧「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」は、平成29年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に改められました。

全体としては大きな変更がありません。

ただ、自己申告制で労働時間を把握する場合の取扱いが、きわめて具体的になりました。

これは、社外での勤務が多いこと、営業手当や定額残業代を支給していることを理由に、適正な労働時間の把握を放棄している企業が目立ったからだと聞いています。

 

<自己申告制についての取扱い>

タイトルが「やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合」となっています。

これは、通常の方法では労働時間が把握できないような例外的な場合に、「やむを得ず」許されるに過ぎないということを、最初に示しているわけです。

ある特定の日に、どうしても勤務終了時刻が把握できないので、その時刻だけは自己申告させるというような運用になるでしょう。

 

・自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても、自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと

 

・自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること

 

・使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること

 

<労働時間の把握についての会社の責任>

やむを得ず自己申告制にすることがある場合でも、労働者の十分な教育指導を前提とすること、正しく自己申告をしていない恐れがあれば、実態の調査をしなければならないこと、「残業は月間○時間以内にしなさい」などの指導が許されないことなどが、具体的に示されています。

労働者が「自主的に」労働時間を少なめに申告しても、経営者側は、これを許してはならないことも示されています。

 

ここまで厳しい基準で自己申告制を適正に運用することは困難ですし、あえて自己申告制を使った場合には、その部分について企業の負うリスクは大きくなってしまいます。

たとえば、退職者から会社に対して未払い残業代の請求があった場合には、自己申告による労働時間が否定されやすいということになります。

このガイドラインは、本音では自己申告させて欲しくないと言っているのでしょう。

こうなると、今まで一部に自己申告制を使っていた企業も、これを改めて、タイムカードなどによる一般的な労働時間管理にすることが得策だということになります。

 

具体的にどう切り替えるかは、専門性の高い話になりますから、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

2017.11.15.解決社労士

<就業規則にタイムカードで管理するという規定だけがある場合>

厚生労働省のモデル就業規則には、労働時間の管理について次の規定があります。

 

(始業及び終業時刻の記録)

第15条 労働者は、始業及び終業時にタイムカードを自ら打刻し、始業及び終業の時刻を記録しなければならない。

 

こうした規定が就業規則にある場合には、原則としてタイムカード通りに勤務したものと見られます。

もし労働時間の実際の管理がタイムカードによらないのであれば、就業規則違反とも言えますが、就業規則の変更手続きを怠っているとも考えられます。

いずれにせよ、適法な状態ではないので速やかに是正すべきでしょう。

 

何か特別な事情があって、一部の労働者についてだけ就業規則とは異なる方法で労働時間の管理を行っている場合には、どのような範囲の人について、どのような場合に、タイムカードによらない管理をするのかについて、就業規則に定めておく必要があります。

 

就業規則がある場合に、就業規則の規定による労働時間の管理方法によらず、別の根拠で始業時刻や終業時刻を認定しようとしても、とても難しいのです。

始業時刻や終業時刻、休憩時間などの認定について、使用者側が労働者側の主張と違う考え方をとり、争いになることがあります。労働者や退職者が未払い賃金の支払いを求めて労働審判や訴訟となった場合が典型です。

また、労働基準監督署の監督や会計検査院の調査などがあった場合には、就業規則通りに認定します。使用者側が、これを否定して別の方法で認定してもらうのは至難の業です。

 

タイムカードとは違う認定が可能な場合>

タイムカード通りに労働時間を認定したのでは、実際よりも長く計算されてしまうということがあります。

こうしたことを防ぎたいのであれば、就業規則に特別な規定を置き、それに沿った運用をすることで、本当の労働時間と計算上の労働時間との誤差を少なくすることができます

しかし、このためには就業規則と運用の整備や社員教育が必要です。これは、高度に専門的な知識と技術が必要ですから、導入に当たっては、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

<タイムカードとは違う認定を可能にする就業規則>

就業規則に、タイムカードは職場への入場時刻と職場からの退出時刻を示しているということ、これは勤務時間の参考記録にはなるが、ここから直接労働時間を計算できるわけではないということを明示すべきです。

 

<たとえば残業時間の認定についての運用>

運用を整備しなければ、就業規則上の所定の終業時刻から退出時刻までが残業時間となってしまいます。

多くの会社では、このような状態になっています。

残業は、本来使用者から命じられて行うものですが、自己判断での残業が許されていたり、残業時間の管理がルーズだったりすれば、タイムカード通りに認定するしかなくなってしまいます。

 

まず、会社の上司など使用者から早出や残業を命じる場合には「残業指示書」により時間外勤務を命令します。

反対に、労働者が早出や残業の必要を感じて使用者に命令を求める場合には、あらかじめ「残業申請書」により申請し、使用者の命令があった場合には許されるという運用を徹底しなければなりません。

 

ただし、指示書や申請書が無いまま勝手に残業してしまった場合でも、働いたからには賃金を支払わざるを得ないというケースが多くあります。

しかし、これはルール違反ですから、きちんとした教育指導を前提として、懲戒処分の対象とすることもできます。

 

そして、早出や残業については、実際の勤務開始と勤務終了、そして行った業務を使用者に具体的に報告させる必要があります。食事や私用などで休憩した時間も申告させます。

使用者は、残業命令を出す場合や残業申請を許可する場合には、この報告内容を参考に判断することができますし、ダラダラ残業を阻止することもできます。

 

こうした運用についても、就業規則に規定しておくことが好ましいですし、ルール違反や虚偽の報告に対する懲戒処分を可能にするには、就業規則に具体的な懲戒規定が必要となります。

 

「人手不足の反面、人件費が一向に減らない」と悩んでいる経営者の方には、ぜひ取り組んでいただきたい課題です。

そして、こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談いただくことをお勧めします。

 

2017.11.07.解決社労士

労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)が改正され、平成29年10月1日から適用されています。

 

<改正点1>

地域の実情に応じ、労働者が子どもの学校休業日や地域のイベント等に合わせて年次有給休暇を取得できるよう配慮することが盛り込まれました。

 

↓これを受けて

 

事業主の皆さんは、子どもの学校休業日や地域のお祭り、イベント等に合わせて労働者が年次有給休暇を取得できるよう配慮することが求められます。

また、平成30年4月から、キッズウィークがスタートします。

分散化された子どもの学校休業日に合わせて子供たちの親を含め、労働者が年次有給休暇を取得できるよう配慮することが求められます。

 

<改正点2>

公民権の行使又は公の職務の執行をする労働者について、公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行する労働者のための休暇制度等を設けることについて検討することが盛り込まれました。

 

↓これを受けて

 

事業主の皆さんは、公民権の行使又は公の職務の執行をする労働者のための休暇制度等を設けることについて検討を迫られることになります。

また、労働者が裁判員として刑事裁判に参画することは「公の職務の執行」に当たり、裁判員法第100条により、労働者が裁判員としての職務を行うため休暇を取得したこと等により、解雇その他不利益な取扱いをすることは禁止されています。

 

<改正点3>

仕事と生活の調和や、労働者が転職により不利にならないようにする観点から、雇入れ後初めて年次有給休暇を付与するまでの継続勤務期間を短縮すること、年次有給休暇の最大付与日数に達するまでの継続勤務期間を短縮すること等について、事業場の実情を踏まえ検討することが盛り込まれました。

 

↓これを受けて

 

労働基準法上、年次有給休暇は、入社6か月後に付与され(8割以上の出勤要件あり。)、その日から起算して6年後に最大付与日数となりますが、事業主の皆さんは、仕事と生活の調和や、労働者が転職により不利にならないようにする観点から、雇入れ後初めて年次有給休暇を付与するまでの継続勤務期間や年次有給休暇の最大付与日数に達するまでの継続勤務期間を短縮すること等について前向きに検討することになります。

 

<罰則はないけれど>

事業主が労働時間等見直しガイドラインに積極的に取り組まなくても、罰則があるわけではありません。

しかし、求人に対する応募者の数と質、労働者の定着率に大きな差が生じることになります。

人手不足クライシスとも言われる今、前向きな取組による費用対効果を考えつつというのでは手遅れになりかねません。

人手不足は嵐のようにやって来て去って行くのではなく、今後も続く見込みです。

自社にとって何をどうするのがベストか迷うところがあれば、ぜひ信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

2017.10.10.解決社労士

<過労死等防止対策白書とは>

平成29年10月6日に、政府が過労死等防止対策推進法に基づき、「過労死等防止対策白書」(正式には「平成29年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」)を閣議決定しました。

その具体的な内容は、厚生労働省ホームページからダウンロードできます。

政府刊行物センターなどで販売されるのは、10月下旬からの予定となっています。

 

過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)

(年次報告)

第6条 政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならない。

 

この条文によると、行政府である内閣が、国民の代表者で構成される国会に対して、我が国における過労死等の状況と政府が講じた対策を報告するものであることがわかります。

 

<過労死等防止対策>

厚生労働省では、「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会」の実現に向け、引き続き過労死等防止対策に取り組んでいくとしています。

ここで「過労死等」というのは、業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡、もしくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡またはこれらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害と定義されています。

マスコミなどで報道されている場合には、「過労死」という言葉が使われていても、必ずしも定義が明確ではないので注意が必要です。

 

<政府の設定した目標>

政府は平成27年7月24日に、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するため、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を閣議決定しました。

その中で、具体的な目標が次のように設定されています。

 

週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にする(平成32年まで)

一般の事業では、法定の週労働時間が40時間ですから、1週間の法定外残業時間を20時間未満にしようということです。

 

・年次有給休暇取得率を70%以上にする(平成32年まで)

労働基準法に定められている年次有給休暇について、付与された日数の70%以上を取得させるということです。

 

・メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上にする(平成29年まで)

大企業では対策が進んでいますが、80%以上というのは頭数が基準ではなく事業場数が基準ですから、中小企業にも対策が求められていることになります。

 

これらの目標が、行政府である内閣から、国民の代表者で構成される国会に対して示されたということは、もし目標が達成できなければ、政府は国民に対して政治責任を負うということです。

 

政府が労働関係の政策を推進する場合、一般には次の手順で行っていると思います。

1. 国民に周知するための広報を強化する。

2. 国会に企業の努力義務を定める法案を提出して成立させる。

3. 罰則付きの法的義務を定める改正法案を提出して成立させる。

4. 指導と取締りを強化し、罰則の適用を厳格にしていく。

 

今回のように目標の期限がタイトな場合には、手順が省略されて急ピッチで進められることもあります。

各企業は法改正の動向に敏感に反応し、ある程度先回りして対応の計画・準備をすることが必要になります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

各企業が法改正に先回りして対応するというのはむずかしいと思います。

現状で、次のような問題を抱えている企業は、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

・月間80時間以上の残業が当たり前になっている社員がいる。

・労働時間の把握が不正確な社員がいる。

・社員が年次有給休暇を取得できていない。

・経営者がメンタルヘルス対策について具体的な宣言をしていない。

 

2017.10.07.解決社労士

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

労働時間に対しては賃金を支払わなければなりません。

 

<喫煙やおしゃべりの時間は労働時間なのか>

それでは、上の労働時間の定義からすると、喫煙やおしゃべりの時間は労働時間になるのでしょうか?

使用者の指揮命令から離れ、自由に喫煙やおしゃべりを許されている時間は、労働時間にはあたりません。

しかし、本当に使用者の指揮命令から離れていれば、労働者が喫煙のために離席してもおしゃべりしても、使用者側である管理職の皆さんは気付かないはずなのです。

管理職の皆さんが「なんだ、またタバコか」「いつまで、おしゃべりしているんだ」と不快に感じるのは、そうした労働者を指揮命令下に置いているからなのです。

ということは、使用者の指揮命令下にあって、労働時間であるにもかかわらず、使用者が喫煙やおしゃべりを黙認している時間ということになります。

したがって、喫煙やおしゃべりの時間を、労働時間から差し引くこと、給与計算のうえで欠勤控除することには無理があるといえるのです。

 

<管理職失格の証し>

「うちの部下は、何度もタバコを吸いに行ったり、おしゃべりしたりする。ああいう時間は、給料を払わなくてもいいのでは?」と言う管理職がいたら、その人は管理職として不適格です。

なぜなら、部下を指揮命令下に置く能力が不足しているからです。そういう人は、担当者として実績を上げたとしても、管理能力は無いのですから、スーパー担当者としての、あるいは専門職やプロフェッショナルとしての処遇をしてあげるべきなのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

ある管理職から、部下のサボりを相談されたら、人事部門は部下の方に目を向けます。しかし、顧問の社労士であれば、そうした話を持ちかけた管理職に目を向けます。

会社を正しい方向に導くには、第三者である専門家の目が必要であることの一例です。

会社を強くしたい成長させたいと本気で考えるのであれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.31.解決社労士

<基本的な資質不足>

仕事をサボるような人は、採用しないのが一番です。

採用面接の段階で、次のような傾向が見られる人は、サボり癖のあることが疑われますので、よく観察して怪しければ採用を見送るのが得策です。

・履歴書の文字が乱雑

・履歴書の文字が抜けている

・濁点や半濁点が付いていない

・カタカナのコとユ、シとツ、ナとメ、ソとリとンが書き分けられない

・身だしなみがルーズ

・態度が馴れ馴れしい

履歴書については、作成に制限時間は無いですし、何度でも再確認できるわけですから、ここで手を抜いている人は仕事でも手を抜きます。

 

<労働時間の把握>

労働時間の把握が大雑把な会社でサボるのは簡単です。

そうでなくても、たとえば労働基準法に従い、事業場外労働のみなし労働時間制が適用されている社員については、使用者の指揮監督が十分に及びません。

本当にみなし労働時間制が必要か、再検討の余地があります。

また、労働時間の適正な把握は、使用者に義務付けられています。そして、この義務を果たすため、社員にも協力を求めることができます。

ですから、社員にも一定の義務を課しつつ、労働時間の把握をきちんとしましょう。

具体的には、電話やメールでの定時報告、日報の活用などが考えられます。

 

<適正な人事考課>

たとえサボっていても、十分な営業成績を維持していれば、勤務態度の悪さで他の社員に対する悪影響はあるものの、大目に見ることもできるでしょう。

しかし、サボりは営業成績の低下となって現れることが多いものです。適正な人事考課を行い、給与や賞与などに反映させることができるように、仕組みを整えましょう。

サボってもサボらなくても、成果を上げても上げなくても、給与や賞与に大きな差が出ないのなら、サボりたくなるのは当然です。

 

<人事異動との関係>

営業部門に異動となった時から、開放感や自由を感じてでしょうか、サボり出す社員もいます。

この場合には、再び内勤に戻すことを打診し、改善が見られなければ、実際に異動させるしかないでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

GPSを使うなど厳格な管理は、社員の反発を招き、士気が低下するかも知れません。

それぞれの職場に合った仕組みの導入・活用と社員教育については、信頼できる社労士にご相談ください。

サボりを無くして、生産性を向上させましょう。

 

2017.07.30.解決社労士

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

<直行直帰の場合の労働時間>

会社に立ち寄らず、直接工事現場などに行き、そこから直接帰宅する場合には、自宅から現場までの移動時間と現場から自宅までの移動時間が、使用者の指揮命令下に置かれない状態のことがあります。

この場合には、現場での勤務時間が労働時間ということになります。

ですから、なんとなく移動時間を労働時間に含めて賃金を計算しているのであれば、会社の人件費負担がその分だけ多めになっている可能性があります。

 

<労働時間となる場合>

直行直帰の移動時間でも、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価され、その時間に対する賃金の支払いが必要な場合も多いものです。たとえば、次のような場合には労働時間となります。

・使用者から自宅を何時に出発するかを指示されている場合

・一度会社に立ち寄ってから現場に向かう場合の会社から現場までの移動時間

・移動中に同僚と仕事の打合せをするように使用者から指示されている場合

・一緒に移動するメンバーの中に行動や時間の管理をする者がいる場合

・使用者から移動中に物品の監視をするように指示されている場合

 

<黙認で労働時間となるケース>

たとえば、使用者から移動中の打合せを指示していなくても、それがなんとなく自主的に行われていて、使用者側が見て見ぬふりをしていたら、黙示の指示があったものとみなされ、労働時間になってしまう場合もあります。

複数のメンバーで直行直帰する場合には、「仕事の話などせず趣味の話でもしながらくつろいで過ごしなさい」ということになっていれば、労働時間にはならないわけです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

実際に労働時間に含まれるかどうかは、専門的で客観的な判断が必要になりますから、就業規則に定めるなどルール化する場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

後になってから、未払い賃金を請求されると、一度に予定外の出費が発生しますから注意したいところです。

 

2017.07.24.解決社労士

<報告書の負担>

報告書の作成には、個人差はあるものの、それなりの時間がかかります。

報告書の無駄を省くことは、会社にとって人件費の削減となり、生産性が向上し、一方で社員のストレス軽減となります。

つまり、メンタルヘルス対策にもなるのです。

 

<報告書の種類>

日報、週報、月報という時間の区切りにより内容が異なってきます。日報は一番負担が重く、人件費がかかります。月報は負担が軽い一方で、情報の伝達が遅くなる可能性があります。

本当に毎日の報告が必要なのか、毎週の報告が必要なのか、項目ごとに見直しをかけてみましょう。

 

<報告書の内容>

そのタイミングで数字は必要か、翌日ではダメなのか、感想は必要か、事実だけではダメなのか、見直すポイントが最も多いのは報告書の内容です。

その内容が必要だとしても、その報告書の中に必要なのか、別の報告書に移した方が良いのではないかを検討してみましょう。

 

<手書きかパソコンか>

パソコンを使って報告書を作成させるのが主流となっています。

しかし、手書きなら30分で作成できる報告書を、パソコンで3時間かけて作っていたら、おそらく無駄な残業時間が発生しています。なにより、本人のストレスが半端ではありません。

どうしてもパソコンが苦手な社員には、手書きで報告書を作成させましょう。メールで送信する必要があるのなら、誰かがスキャンしてメールに添付すれば良いだけです。

 

<報告書作成の時間帯>

営業社員などが帰社後に報告書を作成するパターンは多いものです。しかし、翌日や翌々日に作成してはダメなのでしょうか。

帰社後に報告書を作成したら、その時間は丸々残業時間になります。「営業手当」を支給しているから残業代を支払わないというのは、ブラック企業のやることです。

持ち帰って自宅で書かせるのも、残業時間となります。その時間に対する割増賃金を支払わないのも、これまたブラック企業のやることです。

しかし、翌日の手空き時間や移動時間に書かせるのなら、残業時間とはなりにくいでしょう。たしかに、仕事の密度が上がって辛いかもしれませんが、本人にとっても長時間労働の予防になりますし、会社にとっては人件費の削減になります。

 

<報告書作成のための教育>

短時間で優れた報告書を作成できるよう、社員教育も大事です。教育にお金と時間をかければ、何倍にもなってかえってきます。

「飢えた人に魚を与えれば、一日の飢えから救うことができる。代わりに魚の釣り方を教えれば、一生の飢えから救うことができる」という名言があります。

人手不足の時代には、どうしても社員教育が後回しになります。しかし、これでは会社の成長が望めません。

人手不足の対策としても、一人ひとりの能力向上は重要です。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

報告書の見直しにしても、社員教育にしても、社内でまかないきれない場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.07.21.解決社労士

<サボりが発覚したら>

「勤務時間中に営業社員が仕事をサボっている」という情報が入ったら、まずは事実を確認しましょう。

その営業社員がサボっていた日時と時間帯、場所、行動、服装、一緒にいた人、手荷物など、人違いであるなどの言い逃れができないようにしましょう。押さえられる証拠があれば、それも集めて保管しておきます。

 

<本人への事情聴取>

あくまでも、就業規則に具体的に違反するようなサボりであった場合や、欠勤控除をすべき長時間のサボりであったことが前提ですが、その営業社員と面談して事実確認をします。

本人が事実を認め反省していれば、口頭で注意し、注意の内容を文書にして、社長あるいは担当役員まで確認の署名をもらい、本人の署名も得ておきます。この文書を会社で保管します。ちょっと面倒に思われますが、サボりを繰り返した場合には、懲戒処分をするにあたって必要な手順となります。

本人が事実を認めない場合には、営業日報の内容などを手掛かりに事実を確認します。また、他の社員やお客様などからも情報を集めます。こうしてサボりの事実が確認できた場合には、本人の反省が無い分だけ、懲戒処分を検討する必要性が高まります。

反対に、人違いや勘違いなどが判明した場合には、丁重にお詫びし、情報収集の相手となった社員やお客様の誤解も解いてあげなければなりません。

 

<サボりを繰り返すなら>

口頭注意から、文書による注意へと切り替えます。それでも繰り返すなら、さらに重い懲戒処分、そして退職勧奨や懲戒解雇へと進むこともあるでしょう。

こうしたことを正しく行うのは、骨の折れることです。

失敗すると、本人が反省するどころか、会社に対して慰謝料を含め損害の賠償を求めてくることもあります。

最初にサボりが発見された時点で、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.07.08.解決社労士

<違法残業の発生パターン>

次のような状況下で、法定労働時間を超える勤務をさせると違法残業となります。

・三六協定の労働基準監督署長への届出をしていない

・三六協定の有効期限が切れたままになっている(有効期間は最長1年)

・労働者代表の選出方法が民主的ではないなどにより三六協定が無効

また、三六協定の限度を超える勤務をさせた場合にも違法残業となります。

結局、違法残業というのは、有効な三六協定が届出されない状態で法定労働時間を超える勤務があった場合と、三六協定に違反する勤務があった場合を指すものだといえます。

 

<建設業の特殊性>

三六協定には、法定労働時間を上回って勤務させる場合の限度時間を定めます。

この限度時間についても、労働省(現厚生労働省)告示「労働時間の延長の限度等に関する基準」により、その上限が定められています。

一般には、1か月で45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)、1年で360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は320時間)と規定されています。

ところが建設業では、この基準が適用除外となっています。工事の受注量は変動しやすいですし、作業は天候に左右されやすいですから、時間外労働に一定の上限を設けることはむずかしいからです。

こうしたことから、労働基準法上、建設業では残業が無制限にできてしまうことになります。

 

<残業時間の基準>

しかし、法的な制限が無いというだけで、長時間労働によって労働者に何があっても責任を負わないということではありません。

「法定労働時間を上回る残業時間が1か月で100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均が80時間を超えた場合」という基準が、次のように多く用いられています。

・「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日付基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)

・「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日付基発1226第1号厚生労働省労働基準局長通達)

・ハローワークで雇用保険給付手続きをした場合に自己都合退職ではなく会社都合退職として特定受給資格者となる基準

このように、建設業の場合でも、健康管理措置上の上限があると考えられます。

 

2017.05.04.解決社労士

<出勤日や勤務時間を決めておかないやり方>

出勤日や勤務時間は、雇い入れにあたって雇い主が労働者に明示しておくべき労働条件の一つです。

しかし、月や週ごとに、話し合いで出勤日や勤務時間を決めることも違法ではありません。

実際、シフトを組んで勤務予定を立てている場合、基準となる出勤日数が決まっていないことがあります。

さらに、労働者が主体となって、自分の都合に合わせで出勤日を決めるというのも、何ら法令違反にはなりません。

ただ、これではヒマなときに多くの人がシフトに入り、忙しいときに人手が足りないという不合理が発生してしまいます。

 

<せめて出勤日数が決まっていれば>

話し合いで出勤日数の基準が決められていれば、少なくともその日数分は、シフトに入らなければ、契約違反になります。

もし、雇い主側の都合でシフトに入れる日数が少ないのであれば、法律上は、労働者から足りない日数分の給与を、損害として賠償請求できる場合があります。

しかも、嫌がらせや差別でシフトに入れなかったのであれば、精神的損害に対する賠償を請求できることもあります。

 

<休業手当の支払いが必要となる場合>

労働基準法は、もともとの出勤日に会社側の責任で出勤させられなくなったら、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことを義務付けています。

会社側の判断で回避できる可能性があったのに、休業せざるを得なくなったときは、会社に責任があるとされています。

たとえば、経営不振で操業を減らす、資材や取引先の都合で操業できない、お客が少ないため営業を中止するという理由で休業することは、経営上の判断が招いた結果ですから、休業手当を支払う必要があります。

しかし、会社の判断では回避できない理由、たとえば天災や地震により操業が不可能になった、会社の行動とは関係ない理由で法令等に基づき休業を命じられたなどの理由による休業については、会社に責任はないとされています。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

以上のことから、出勤日や勤務時間を決めておかなければ、会社が負わなくて済む責任もあるといえます。しかし、効率の良い人員配置は出来なくなってしまいます。

どのように労働条件を決めるのが効率的か、迷ったら信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.04.15.解決社労士

<社会保険の加入基準>

大多数の会社では、1週間の所定労働時間が30時間以上で、1か月の所定労働日数が17日以上の従業員は、原則として社会保険の加入基準を満たすことになります。

そして、一度この基準を満たし社会保険に入った後で、労働時間が減少し、この基準を下回った場合には、社会保険から抜けるのが原則となります。

ただし、基準を下回るのが12か月程度で、やがて元の状態に戻ることが見込まれるなら、社会保険に入ったままとなります。

 

<労働契約(雇用契約)の変更>

労働時間が減少し、その状態が長く続くと見込まれる場合には、労働契約を変更する必要があります。

労働契約の変更は口頭でも可能ですが、労働条件は使用者から労働者に書面で示されるのが原則ですから、労働契約書の内容を改定し、新しい労働契約書を交わすのが一般的です。

実体に合わせて労働契約書を変更しておかないと、たとえば年次有給休暇の付与日数が変更されているのに、これに気付かないなどの不都合があります。

たとえば週5日勤務の従業員が、週4日勤務になって1週間の所定労働日数が30時間を下回れば、付与日数は減少します。

ところが、労働契約をそのままにしておいて、週5日勤務の契約で週4日の出勤となると、出勤率が8割を下回り、年次有給休暇が付与されないことにもなりかねません。

やはり、労働契約書は勤務の実態に合わせて改定しておくことをお勧めします。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

顧問の社労士がいれば、従業員ひとり一人の勤務時間などの実態に合わせ、社会保険や雇用保険で必要な手続きや、労働契約の変更について、タイムリーに対応することができます。

しかし、社内に対応できる社員がいなければ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.02.11.解決社労士

<月間所定労働日数の必要性>

月給制の場合に、残業手当や欠勤控除の計算基準となる時間単価は、

月給÷(1日の所定労働時間×月間所定労働日数)

で計算されます。

これが毎月変動すると、給与計算をする人は大変です。いきおい、残業手当も欠勤控除も計算しなくなるのではないでしょうか。

残業手当を計算しないと、ブラック企業の代名詞であるサービス残業が発生します。

欠勤控除を計算しないと、遅刻しても叱られるだけで、給料が減らないわけですから、なんとなく遅刻が増えてくるでしょう。

きちんと残業手当を支払っている会社では、頭の良い人が仕事をためておいて、残業単価の高いときにまとめて残業するということもあるでしょう。これでは、わざと仕事を遅らせることになります。

やはり、毎月一定の月間所定労働日数を設定しておく必要があるでしょう。

 

<年間労働日数からの算出>

たとえば、土日・祝日と1229日~13日だけが休日だとします。

これなら年間の労働日数の計算は、単純なように見えます。それでも、祝日は日曜日と重なると月曜日が振替休日になるのですが、土曜日と重なっても振替休日は生じません。体育の日のように、日曜日と重ならない祝日もあります。

年末年始の1229日~13日も、カレンダーによって短かったり長かったりします。こうして休日の数は、その年によって増えたり減ったりするのです。

これらすべてについて、確率を計算しながら平均値を求めるのは少し面倒です。

最近新設された山の日のように、祝日が増えることもあります。

むしろ、最近3年間の本来の出勤日を数えて平均値をとった方が楽な場合が多いでしょう。

そして、月間所定労働日数は年間労働日数を12で割れば計算できます。1日未満の端数は、労働者に不利にならないように切り捨てるのが基本です。

 

<給与計算にあたって間違えやすいこと>

たとえば、月間所定労働日数を22日と決めたとします。

ある人が、会社のルールに従って休みをとっていたら、ある月は24日出勤となり、また別の月は20日出勤となったとします。

このとき「休日出勤手当が発生するのかな?」「欠勤になるのかな?」と迷うことがあるようです。

しかし、答えはどちらもノーです。

月給制の場合に、残業手当や欠勤控除の計算基準となる時間単価は、

月給÷(1日の所定労働時間×月間所定労働日数)

で計算されます。

つまり、月間所定労働日数は時間単価の計算に使うだけです。

休日出勤や欠勤は、1週間を一区切りとして計算しますので、ここに月間所定労働日数は出てこないのです。遅刻・早退や残業も1日単位での計算が基本です。

結局、月間所定労働日数は給与計算をする人だけが意識していて、他の従業員はカレンダーを見ながら会社のルールに従って出勤していることになります。

 

月間所定労働日数を固定した日数に決めないまま給与計算をしている会社、あるいは外部に委託している会社は、従業員のモチベーションを低下させている恐れがあります。

これを含め、給与計算について失敗が無いか、信頼できる社労士(社会保険労務士)にチェックさせることをお勧めします。

 

2016.10.07.解決社労士

<実例として>

小さな飲食店では、アルバイトがシフト制で、始業時刻も終業時刻もその日によって違うということがあります。休憩もあったり無かったり、休憩開始の時刻もその日によって臨機応変にというわけです。

シフトを組む段階で、お店の都合とアルバイトの都合とをすり合わせて何とかしのいでいるわけですから、あらかじめ決めておくというのが無理なようにも思えます。

ましてや当日のお客様の状態によって、当初の計画どおりにはいかないこともあります。

「雇い入れ通知書」「労働条件通知書」をきちんとアルバイトに交付しなければ、労働基準法違反とは言われるけれど、決めようがなければ許してもらえるのでしょうか。

いえ、ダメです。労働条件の明示義務違反については、30万円以下の罰金という罰則があります。〔労働基準法120条1号)〕

何とかしなければなりません。

 

<ではどうするか>

労働条件が決まっていないと、年次有給休暇付与の有無や日数が決まらない、社会保険や雇用保険の加入対象かどうかがわからない、残業代の計算もできないなどなど、ブラック企業丸出しの状態になります。

これを避けるには、平均値から「標準」となるものを割り出して、「雇い入れ通知書」「労働条件通知書」に示せば良いのです。

つまり、入社時は本人の実績が無いですから、同じような状態のアルバイトを参考に、「標準的な始業時刻」「標準的な終業時刻」を決めます。この通りに働くわけではなく、あくまでも年次有給休暇などの基準として使うわけです。

同じように、「標準的な休憩時間」「標準的な時間外労働」「標準的な休日出勤の日数」なども決めます。

これで「雇い入れ通知書」が作れます。

そして、ある程度勤務が続いて、実態が「雇い入れ通知書」と離れてしまったら、内容を修正して「労働条件通知書」に示せば良いのです。

 

「平均値と言われてもよくわからない」という場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。書類の作り方だけではなく、効率の良いシフトの組み方など、実質的な内容についての相談も可能です。

 

2016.10.02.

<実例として>

いつもは午前9時に出勤して、正午から午後1時まで昼食休憩をとり、午後6時までが定時で、しばしば残業している人がいるとします。これはかなり一般的な例でしょう。

この人が仕事の都合で正午に出勤し、翌日の午前2時まで出勤した場合には、午後10時から翌日午前2時までが深夜労働となり、2割5分以上の割増賃金の対象となることは明らかです。

また、途中で午後6時から1時間の夕食休憩をとったとして、正午から翌日午前2時までのうち、勤務開始から実働8時間を超える午後9時以降の勤務時間について、残業手当が発生することも明らかです。

しかし、真夜中の0時で一度区切って、正午から真夜中の0時までの12時間から1時間の休憩時間を引いてこの日は11時間勤務として、真夜中の0時から2時間の勤務は翌日の勤務時間としてカウントして良いのでしょうか。

言い換えれば、ある日の勤務時間を集計するのに、真夜中の0時で区切って良いのでしょうか。

 

<法令の規定>

実は法令には規定がありません。

それでは困るので、通達が出されています。法律は国会が作るのですが、あまり細かいところまでは規定し切れませんので、行政機関が解釈の基準を出しているのです。

日付をまたいで勤務した場合には、翌日の始業時刻までの労働が前日の勤務とされます。〔昭和63年1月1日基発第1号通達〕

こんなとき、ある人の始業時刻がきちんと決まっていなければ計算できません。そこで、労働基準法は基本的な労働条件について書面で労働者に通知するなどの義務を規定しているわけです。それでも、わからないときは通常の始業時刻で計算するしかありません。

通常の始業時刻をまたいで長時間勤務した場合には、そこまでで一度集計して残業時間を確定して残業手当を支給することになります。そして、通常の始業時刻から翌日分の勤務時間を計算すれば良いのです。

 

法令に規定が無いとき、自社で基準を作ると、通達違反であったり、判例とは違っていたり、あるいは典型的な不合理を含むものであったりという失敗が起こりがちです。迷ったら信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.01.

<事件として報道されるキッカケ>

飲食店の素直なアルバイトAくんが店長に呼ばれます。

店長「売り上げが下がっているのでキミには辞めてもらうことになった」

Aくん「はい、わかりました」

翌日、Aくんは親戚のおじさんに、アルバイトをクビになった話をします。

おじさん「解雇予告手当は?もらっていないなら労基署に相談だな」

Aくん「はい、わかりました」

Aくんが労基署の監督官に事情を話します。

監督官「時給は?1日と1週間の所定労働時間は?書類をもらったでしょ」

Aくん「時給はたしか950円です。所定…とか、書類とかはありません」

こうして、労基署はアルバイト先の店舗に連絡し、さらに調査に入ります。

この飲食店がチェーン店だと、本社や各店舗に調査が入り、報道機関の知るところとなる可能性があります。

キッカケは、こんなものです。アルバイトのAくんが無知で素直でも、家族や親戚までがすべてそうだとは限りません。

 

<なぜそんなことになるのか?>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法120条〕

30万円の損失で済めばマシです。マスコミやネットの書き込みの威力で、1店舗だけでなく会社全体が立ち直れなくなる可能性があります。

 

<なぜバレるのか?おおごとになるのか?>

所定労働時間が決まっていなければ、解雇予告手当だけでなく、年次有給休暇を取得した場合の賃金計算や、残業した時の割増賃金の計算ができません。

つまり、所定労働時間が決まっていないアルバイトについては、会社が有給休暇を与える気もなく、残業手当を払う気もないのだということが、労基署にはバレバレなのです。調査に入るのは当然でしょう。

 

<どうしたらよいのか?>

飲食店では、アルバイトが2時間勤務の日もあれば10時間勤務の日もあるというシフトのことがあります。アルバイトやお店の都合で、1週間全く勤務しないことも週6日勤務することもあります。

このような場合には、固定した所定労働時間を決めることができません。

しかし、実態に合わせて平均値で規定しても、有給休暇や残業手当の計算は可能となります。

たとえば、「9:00から21:00の間で実働平均5時間」「週平均3.5日勤務」としておき、実態と大きく離れたら、書面を作り直して交付すればよいのです。

これで、アルバイトの年次有給休暇の付与日数についても、迷うことはありません。有給休暇の取得については、労働基準法の改正も予定されています。1週間の所定勤務日数と所定労働時間が決まっていないので、付与日数すらわからないという危険な状況は解消しておきたいものです。

A4判で両面印刷すれば、1人の労働者に交付する書面は、たったの1枚で済みます。これを怠るのは、そのリスクを考えると得策ではないでしょう。

 

2016.08.17.