2025/01/06|1,232文字
<所定労働時間>
多くの企業の就業規則には、正社員の所定労働時間が1日8時間、1週40時間と定められています。
これは、労働基準法の法定労働時間にならったものです。
ところが、1か月の所定労働時間となると、企業によって大きな開きがあります。
法定時間外労働については、月給を1か月の所定労働時間で割って時間単価を算出し、これに法定時間外労働時間を掛け、さらに2割5分以上の割増をして計算することになります。
いわゆる残業代の計算です。
<予定労働時間>
この所定労働時間とは別に、「予定労働時間」とも呼ぶべき予定された労働時間があります。
これも1日あるいは1週であれば、所定労働時間と同じことが多いものです。
しかし、1か月の予定労働時間は、1日の所定労働時間に予定出勤日数を掛けて算出します。
たとえば、8時間労働で23日出勤であれば、184時間となります(8×23=184)。
これは、カレンダーや企業の休日ルールによって、毎月変動するものです。
<所定労働時間と予定労働時間の混同>
所定労働時間というのは、労働契約や労働条件の内容となるものです。
時間給であれば、時給に1か月の所定労働時間を掛けて、おおよその月収を把握することができます。
月給制であれば、月々の月給は定額であり、1か月あたりの予定労働時間は変動します。
従業員は、この「あたりまえ」のことに納得して働いているはずなのです。
<混同による給与計算>
正社員の給与のほとんどは、月給制であって、日給制ではなく、ましてや週給制でもありません。
そして、時間外労働や休日労働があれば、その分の賃金が加算されます。
このとき、昇給や降給が無い限り、1時間あたりの賃金単価は固定されているのが合理的です。
月々の生産性に連動して賃金単価が変動するなら合理的ですが、出勤予定日が増えれば単価が下がるというのは不合理です。
ところが実態としては、給与規程の中に「平均所定労働時間」という言葉が散見されます。
これは「平均予定労働時間」の意味であって、これはまさに「所定労働時間」であると考えられます。
もし賃金規程に「平均」の文字が入っていたなら、その合理性を検証する必要があるでしょう。
さらに大きな勘違いとして、「1か月の予定労働時間を超えたら残業代が発生するのではないか」「1か月の予定労働時間を下回ったら欠勤控除となるのではないか」というのがあります。
これらも、所定労働時間と予定労働時間の混同による勘違いですから、両者を明確に分けて運用する必要があるわけです。
<実務の視点から>
給与計算を前任者から引き継いだ通りにやっているだけ、あるいは外注に出しているのであれば、その不合理に気付かないのは当然です。
不合理なだけならともかく、違法であれば何年も前に遡って退職者の分まで計算し直して差額清算が必要になってきます。
税理士や会計士の先生のチェックしか受けていないのであれば、一度、社会保険労務士のチェックを受けておくよう強くお勧めします。