労災請求書は表現を工夫しましょう

2023/09/20|1,389文字

 

<早く給付を受けるために>

労災が発生して、労災保険の給付を受けるには、労働基準監督署長に所定の書類を提出します。

多いのは、治療費を無料にするための書類と賃金の一部を補償してもらうための書類ですが、これらの書き方にはコツがあります。

表現を工夫しないと、労基署から問い合わせの電話が入ったり、訂正を求められたり、書き直しが必要になったります。

被災者は一日も早く給付(お金)をもらいたいのですから、スムーズな手続きが望ましいのです。

 

<ポイントとなる記入欄>

これらの書類で一番のポイントは「災害の原因及び発生状況」の欄です。

この欄には、「(あ)どのような場所で (い)どのような作業をしているときに(う)どのような物又は環境に(え)どのような不安全な又は有害な状態があって(お)どのような災害が発生したかを詳細に記入すること」という注意書きがあります。

しかし、必ずしもこれらの項目をきちんと分け、すべて記入しなければならないわけではありません。

労災保険の給付対象であることが説明できていれば良いのです。

そして、勤務中の災害である業務災害の場合には、業務遂行性と業務起因性を示す必要があります。

 

<業務遂行性>

業務遂行性というのは、労働者が使用者の支配・管理下にある状況のことをいいます。

たとえば、「昼食のお弁当を買いに外出していて事故にあった」と書いてあれば、労基署の担当者は「労災ではない」と判断するでしょう。

しかし、「昼食のお弁当を買いに行く当番だったので休憩時間前に外出していて事故にあった」と書いてあれば、業務遂行性が認められ労災保険が適用されうるのです。

 

<業務起因性>

また、業務起因性というのは、業務にひそんでいる危険が現実化したと認められることをいいます。

たとえば、「空の段ボール箱を持って立ち上がったら腰を傷めた」と書いてあれば、労基署の担当者は「労災ではない」と判断する可能性が高いといえます。

しかし、「空の段ボール箱(縦80cm×横100cm×高さ120cm)を持って立ち上がる途中で、お客様から声を掛けられ振り返ったときに、腰をひねって傷めた」と書いてあれば、客観的に見て腰を傷めうる作業であること、お客様に対応したのだから業務であることが明らかになります。

 

<心がけとして>

提出された書類をチェックするのは、労基署の担当者です。

社内の人なら読んでわかる内容であっても、労基署の担当者が読んで業務遂行性と業務起因性が確認できなければ、手続きが滞ってしまうのです。

たとえば、パチンコ店の店員がケガをした状況について「災害の原因及び発生状況」の欄に記入したとします。

それが、社内の人やパチンコ店の常連客にわかる内容でも、パチンコ店に入ったことのない人が読んだらわからない内容では不十分なのです。

ですから、労働基準監督署長に提出する書類は、現場を見たことがない人でもわかるように、表現を工夫して作成しましょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

書類が下手で受けられるはすの給付が受けられないというのは、労災に限らず、年金でも、健康保険でも、雇用保険でも、実際に起きてしまっていることです。

ポイントは、書き手が読んでわかる書類ではなく、提出された側の素人が読んでわかる書類になっていることです。

不安な点があれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

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