2023/09/19|1,485文字
<憲法と就業規則>
それぞれの国の実情に応じて、それぞれの憲法があり法律があるように、それぞれの企業の実情に応じて、それぞれの就業規則が必要です。
なにしろ就業規則は、その企業の憲法であり法律ですから。
今の日本国憲法は、国民の人権を国家権力から守る構造になっています。
しかし、前の大日本帝国憲法は国家権力を守る構造になっていました。
就業規則の中にも、企業を守る要素が強いものと、労働者の権利を守る要素が強いものとがあります。
<理想を言えば>
ですから、経営者が自分の会社を守り自分の理想に近づけようとするなら、これを実現するための武器として自分で作った就業規則を持つべきです。
ただそのためには、少なくとも憲法、民法、そして労働基準法などの労働法、さらには刑法などについて、体系的な理解と知識が必要ですから、もともとそうした勉強をしてきた経営者でなければ手がつけられないかも知れません。
また、就業規則には「何をどう規定したらどうなるか」という独特な専門知識と事例経験も必要です。
これを習得するためには、さらに2~3年集中して学ばなければなりません。
<お手軽な方法>
知り合いの会社の就業規則を真似して…というのは最悪です。
よその会社の就業規則を真似してもメリットがありません。
経営者の考え方も違いますし、毎年のように改定されているのでなければ、法改正に追いついていなくて違法となってしまった部分も含まれているでしょう。
やはり、厚生労働省のモデル就業規則をベースに作るのが安全です。
これは、法改正に対応していて、適法であることが保証されているようなものですから。
あとはこれに経営者の思いや、会社の個性、実情、成長段階などを反映させれば出来あがりです。
とはいえ、解説の部分を丁寧に読まないと、きちんとした就業規則は作れません。
必要な部分と、必ずしも必要ではない部分の区別もつきません。
最低限、必要な法律知識は身につけておく必要はあります。
<詳しい人に任せる方法>
経営者が自分自身で就業規則を作り改定しなくても、社内に詳しい人がいたり、人事部門の責任者や担当者がいたりすれば、その人に任せるのも良いでしょう。
ただし、これには「お手盛り」の落とし穴があります。
企業で「お手盛り」というと、取締役が自分の報酬を自分で決めると多めの金額になるということを指すでしょう。
しかし、このことは就業規則にもあてはまります。
就業規則の作成・改定を任されたのが取締役ならばともかく、労働者であれば労働者に有利な規定になるのは当たり前です。
たとえば、人事課長に給与規程を作らせれば、自分に有利な給与体系を作るのは、たとえ悪意が無くても、無意識のうちにそうしてしまうのは仕方のないことです。
<社労士(社会保険労務士)の立場から>
より短期間で強力な就業規則にするには、信頼できる社労士(社会保険労務士)と経営者とで打ち合わせを重ね、作り上げていくのが賢い方法です。
たしかに報酬などの経費が発生します。
この報酬は、社労士が会社の実情に応じた就業規則を作成できる能力を身につけるために、多大な労力、時間、費用をかけたことによる正当なものです。
それでも、退職者から不当解雇を主張され、3か月から1年分の賃金プラス慰謝料を請求されることを1回でも防止できれば、すぐに元が取れる程度のものです。
社労士事務所によっては、顧問契約の範囲内で、少しずつ就業規則を改善していくサービスも行っています。
これは、就業規則を社内に定着させる点でも優れていると思います。
ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。