2023/07/23|1,175文字
<解雇の法的性質>
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生じます。〔民法第623条〕
そして解雇は、使用者の労働者に対する雇用契約の解除です。
ただし、使用者による解雇が、解雇権の濫用にあたる場合には無効となります。〔労働契約法第16条〕
たとえ使用者が、労働者に解雇を通告して解雇したつもりになっていたとしても、その解雇が客観的に合理的な理由を欠き、または、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇は無効であって、労働者は使用者に対する権利を失わないことになります。
この場合、解雇を通告された労働者は、給与や賞与を受けるなど労働者の権利を主張できるわけです。
実際に労働者が働いていないとしても、それは解雇を通告した側の落ち度によるものとされ、労働者は働かずして給与を受け取れることになります。
このように、解雇というのは、雇用契約の解除という民事的効果をもたらすものですから、トラブルになれば、金銭による解決が図られることになります。
<犯罪と刑罰>
犯罪とは、法によって禁じられ刑罰が科される事実・行為をいいます。
刑法には、不当解雇罪のような規定がありません。
ですから、不当解雇だからといって、必ずしも刑罰が科されるわけではありません。
しかし、労働基準法などには、一定の解雇を禁止する規定があり、これに対応する罰則も規定されています。
【解雇制限:労働基準法第19条第1項】
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によって休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。 |
つまり、業務災害により休業する労働者がいる場合、あるいは、産前産後休業をする労働者がいる場合には、原則として休業終了後30日以内に解雇することができません。
この禁止に違反した場合、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」という罰則もあります。〔労働基準法第119条第1号〕
【解雇の予告:労働基準法第20条第1項本文】
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。 |
つまり、解雇予告の期間を置かず、解雇予告手当の支払もなしに解雇することは、原則として違法な解雇となり、この規定に違反した場合、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」という罰則もあります。〔労働基準法第119条第1号〕
<結論として>
不当解雇のすべてが犯罪となるわけではありません。
しかし、労働基準法などに触れると罰則が適用される解雇もあり、こうした解雇は一種の犯罪になりうるわけです。