2023/07/24|1,101文字
<管理監督者の基準>
管理監督者の範囲を、会社の方針で決めることはできません。それにもかかわらず、就業規則に「次長以上は管理監督者」などという規定を置いていれば、未払い残業代の発生が疑われます。
管理監督者とは、経営方針の決定に参画し労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者です。
これは、役職とは無関係ですから、部長でも管理監督者ではなかったり、役職者ではなくても管理監督者であったりします。
具体的には、次のような基準から総合的に判断されます。
【労働時間の管理を受けていないこと】
遅刻、早退、欠勤は問題視されず、給与の減額もありません。
会議への遅刻が非難されることはありますが、「定時」に遅刻して非難されることはありません。
【一般従業員と比べて賃金面で優遇されていること】
給与や賞与がその地位にふさわしく優遇されていることが必要です。
部下が長時間残業すると、支給額が逆転するような給与ではいけません。
評価によって、賞与の支給額が部下に逆転されるのもいけません。
【労務管理上の指揮権限があって管理的な仕事をしていること】
人事考課を行う、休暇の許可を与える、業務の指示を与える、正社員採用の決定権限があるなど、会社側の立場に立っていることです。
<残業手当の支給>
こうした基準をすべて満たしていて、管理監督者といえる社員には残業手当の支給が不要です。
そもそも、時間管理する側の立場であって、自分自身は時間管理されていないのですから当然でしょう。
ただし健康管理上、会社は労働時間の把握義務を負っているという微妙な関係です。
つまり、いつ出勤し、いつ業務を終了するかは、管理監督者の裁量に任されていますが、結果としての労働時間は会社が把握しなければならないのです。
<名ばかり管理職>
これらのことからすると、「名ばかり店長」「名ばかり管理職」という言葉には違和感があります。
店長は確かに店長であり、管理職は確かに管理職であって、労働基準法上の管理監督者ではないので、「形ばかり管理監督者」と呼ぶのがふさわしいのです。
しかし、この表現はマスコミ向きではないですね。
<隠れ管理監督者>
会社によっては、肩書が課長でありながら、管理監督者の定義にピッタリあてはまる社員がいます。
たとえば、管理監督者の立場にありながら、社内での肩書が人事課長だと、給与規定の作成と運用が任されていて、自分自身に残業手当を支給するルールにしていることもあります。
こうしたおかしな「お手盛り」を防ぐには、経営者が労働法に強くなるか、信頼できる社労士(社会保険労務士)と顧問契約を結ぶことが必要でしょう。