2023/05/24|1,128文字
<副業がある場合の労働時間>
複数の事業場で労働した場合の労働時間については、労働基準法第38条第1項に次の規定があります。
【時間計算】
第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。 |
つまり、複数の事業場で労働した場合の労働時間は、通算するということです。
そして、同じ会社の異なる事業場だけでなく、異なる会社で労働する場合にも、異なる事業場で働くことになるので、この規定が適用されるという通達があります。〔昭和23年5月14日基発769号〕
こうして、副業している労働者については、自社と他社とで労働時間を通算(合算)し、総労働時間を管理しなければなりません。
<副業がある場合の時間外割増賃金>
副業している労働者について、自社と他社とで労働時間を通算(合算)し、総労働時間で見たときに法定労働時間を上回れば、時間外割増賃金が発生することになります。
ただ、この場合に、自社と他社のどちらが時間外割増賃金を支払うことになるのか、労働基準法には規定がありません。
この点については、後から雇い入れた会社が時間外割増賃金を支払うものと解釈されています。
なぜなら、雇い入れにあたって、その労働者が別の会社で勤務していないか、確認したうえで採用すべきだと考えられているからです。
例外的に、2つの会社での所定労働時間の合計が、法定労働時間を超えない場合には、雇い入れの前後にかかわらず、一方の会社で法定時間外労働をさせることになれば、その会社が割増賃金を負担するものとされています。
しかし採用面接で、副業について確認することが義務付けられているわけではありません。
確認したところ、応募者が副業しているのに「していません」と嘘をついて採用された場合でも、この嘘だけを理由に解雇することは、解雇権の濫用となり無効となることが多いと思われます。
<副業先の労働時間の把握>
副業先は、副業している労働者の労働時間を他社に申告する義務を負っていません。
ですから、副業先から労働時間の情報をもらうことは、個人情報でもあり困難です。
結局、副業している労働者から、副業先の労働時間の情報を得るしかありません。
しかし、従業員から「他社に申告する必要があるので、私の労働時間に関する情報をください」という申し出があっても、会社はこれに応じる義務がありません。
やはり、副業先の労働時間については、労働者から自己申告してもらう他ありません。
そして、虚偽の申告があった場合でも、虚偽であることを確認するのは極めて困難ですから、会社が確認不足を責められることもないと考えられます。
ただ、自己申告させる制度だけは、整えておかなければなりません。