2024/12/23|975文字
<法令に出てくる「合理的」>
労働契約法には「合理的な」という言葉が7回出てきます。〔1条、7条、10条、15条、16条、19条本文、19条2号〕
しかし、ここでいう「合理的な」という言葉がどういう意味なのかは、労働契約法の中に説明がありません。
障害者基本法第4条には、「合理的な配慮」という言葉が使われていて、その具体例については議論が活発です。
しかし、そもそも「合理的な配慮」という言葉の意味については、統一されていないように思われます。
法令や裁判に出てくる基本的な用語の意味が確定していないと、私たちが具体的な事実に当てはめて考えることがむずかしくなってしまいます。
<辞書の説明>
「合理的」という言葉を辞書で調べると、次のように書かれています。
大辞林 第三版
論理にかなっているさま。因習や迷信にとらわれないさま。
目的に合っていて無駄のないさま。
デジタル大辞泉
道理や論理にかなっているさま。
むだなく能率的であるさま。
辞書ですから、様々な場所で使われている「合理的」に共通する意味を表示しているのでしょう。
法令や裁判に出てくる「合理的」の意味にぴったり当てはまるようには思えません。
<たとえば解雇について>
労働契約法は、解雇について次のように定めています。
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
とても抽象的な表現です。
ですから、具体的に使用者が労働者を解雇しようとしたときに、それがこの規定に触れて無効になってしまうのか、それとも有効になるのかを判断するのは困難です。
使用者自身の判断で解雇に踏み切るのはリスクが大きすぎますから、専門家である社会保険労務士などに具体的な事情を話して判断を求めるのが安全です。
そして、この労働契約法第16条の「合理的な理由」というのは、一般的には「労働契約法の趣旨や目的に適合する理由」ということになります。
労働契約法の目的は他の多くの法令と同じように、第1条に書かれています。
これと他の条文全体の趣旨から、「合理的な理由」の意味が確定されるわけです。
もっとも、関連条文に判断の手がかりがある場合には、こちらの根拠が有力となりますので、具体的な事情に応じた判断が必要であれば、専門家に相談することをお勧めします。