2024/09/15|762文字
<健康保険証の効力>
会社で交付された健康保険証は、退職したり所定労働時間が減ったりして、健康保険の加入条件を満たさなくなると効力を失います。
この場合、保険証は会社を通じて協会けんぽなどの保険者に返却しなければならないのですが、たとえ手元に残しておいたとしても使えません。
乾電池は電池切れの状態になっても、新品の電池と見た目は変わりがないのですが使えません。
これと同じように、退職後に保険証を使うことはできません。
このことは、扶養家族が扶養から外れた場合の、その扶養家族の保険証にも当てはまります。
<効力切れの保険証を使うと>
退職後に誤って保険証を病院などの医療機関で使ってしまうと、後日、健康保険で支払われた医療費を、協会けんぽなどの保険者から資格を失った人に直接返還請求しているのです。
繰り返し請求されても返還しない場合は、裁判所へ支払督促申立てや少額訴訟等の法的手続を経て、強制執行(給与、預貯金等の差押え)による回収が行われます。
この場合、返還請求の対象となるのは自己負担額ではなくて医療費の全額です。
たとえば、5万円の医療費について自己負担3割で1万5千円を支払った場合に、返還請求を受けるのは1万5千円ではなくて5万円ということになります。
<返還請求の実態>
健康保険の資格喪失後、保険証を返却せずに医療機関等で使用して、協会けんぽから返還請求を行っているケースが全国で発生しています。
資格を失ったら速やかに保険証を返却しましょう。
<実務の視点から>
無効な保険証を使って治療を受けるのは、一種の詐欺です。
こうした不正なことをする人がいれば、保険料も上がってしまいます。
経済的な理由から、医療費の支払が困難な人に対しては、様々な救済措置が採られます。
困ったときは、総合病院の窓口、市町村役場などに相談してください。