2024/07/12|1,384文字
<算定基礎届提出時の調査>
6月中旬、会社宛に算定基礎届の用紙、総括表などが郵送で届きます。
このとき、提出日時を指定する内容のお手紙が同封されていることがあります。
一般には、算定基礎届関係の書類は事務センターに郵送するのですが、提出日時を指定された場合には、管轄の年金事務所に持参ということになっています。
提出にあたっては、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、源泉所得税領収証書などの書類や事業主印を持参するように案内されています。
そして、お手紙には「調査」という文字が入っていて、驚いてしまうかもしれません。
何か不正を疑われているのか、怪しいと思われているのか、なぜ自分の会社が対象となったのかについての説明はありません。
実は、3年から5年に1回の間隔で、すべての事業所が調査対象となっています。
すべての事業所が対象ですから、年金事務所が何かの意図をもって選んでいるわけではありません。
<調査の趣旨>
お手紙には、調査の趣旨として「社会保険適用の適正化」とだけ書かれています。
具体的には、次のような点が調査の対象となっています。
・社会保険の加入条件を満たす人について加入の届出があるか
・社会保険の加入条件を満たしていない人が加入扱いになっていないか
・加入したときの報酬の届出の金額が正しいか
・算定基礎届の内容が正しいか
・報酬が大きく変動して一定の条件を満たした場合の届出があるか
これらの手続について、税理士などに頼んでしまっている会社もあります。
しかし、税理士は年度単位で集計するのに対し、算定基礎届以外の手続は日常的に発生します。
そもそも、税理士の仕事ではなくて、社会保険労務士でなければ業務として行えない手続なのです。〔社会保険労務士法第27条〕
ですから、こうした手続を顧問の税理士などが、きちんとできなくても仕方がないですし、そもそもお任せしてはいけないのです。
<不備が見つかった場合>
手続の誤りや不足を指摘されると、さかのぼって正しい手続を行うことになります。
保険料についても、支払い過ぎは還付されますし、不足はまとめて徴収されます。
社会保険料は高いですから、まとめて徴収されるのは辛いです。
反対に還付されるのも、無利子で多額の金銭を貸し付けていたようなものですから喜べません。
社会保険というのは条件を満たせば自動的に加入しています。
手続をしていないのは、手続をサボっているだけで、加入手続をしなければ加入しないことになるわけではありません。
赤ちゃんが生まれた時、出生届を出さなければ戸籍が無いだけで、赤ちゃんの存在が否定されるわけではないのと似ています。
<書類の追加郵送>
調査に必要な書類が不足している場合には、後から所轄の年金事務所に郵送するよう求められます。
そもそも調査の具体的な趣旨が示されていませんので、どのような書類が必要なのか、本当のところは分からなかったわけですから仕方ありません。
もっとも、調査の趣旨を良くわかるようにして案内を出していたら、多くの会社は尻込みしてしまうでしょう。
調査の趣旨を具体的に示さないのは、それなりの意図があるのかもしれません。
<実務の視点から>
算定基礎届の提出日時を指定されたら、相談相手は税理士ではなくて社労士です。
このことは、税理士の先生に確認すればすぐに分かります。
ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。