2024/05/12|1,249文字
<普通解雇>
懲戒解雇は、就業規則や雇用契約書、労働条件通知書などに具体的な規定がなければできません。
しかし普通解雇は、これらに規定がない場合でも民法が適用されるので、一定の条件を満たせば可能です。
〔民法第627条第1項〕
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
〔民法第627条第2項〕(赤文字は令和2年4月1日の改正で追加)
期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
通常、給与計算には締切日がありますので、給与支給が月1回であれば第2項の方が適用されます。
<解雇の意味>
雇い主から「これこれの条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。
労働契約は口頭でも成立します。
ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。
具体的には、雇用契約書、労働条件通知書などです。
解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。
<普通解雇>
狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。
労働契約違反としては、能力の不足により会社が必要な教育研修を行っても労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。
<解雇の制限>
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕
労働者の労働契約違反があった場合でも、雇い主はある程度まで労働契約の維持に向けた努力を示さなければ、解雇権の濫用とされ、解雇を通告しても無効になってしまいます。
能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合でも、雇い主は業務に必要な指導教育を十分に行っていなければ解雇できません。
労働者が業務上必要な指示に従わない場合でも、労働者に指示内容の重要性を説明し、指示に従うよう指導したうえでないと解雇できません。
雇い主は、その労働者を雇わないという選択もできたわけです。
それでも雇ったからには、雇ったことに対する責任があるということです。
<実務の視点から>
広義の普通解雇には、労働者の労働契約違反を理由とする解雇の他に、整理解雇が含まれます。
整理解雇とは、雇い主側の経営上の理由による解雇をいいます。
解雇は、解雇権の濫用とされれば無効になるわけですから、具体的なケースで解雇の有効性に疑問がある場合には、信頼できる社労士にご相談ください。