2024/10/13|1,440文字
<生理休暇取得の権利>
「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と規定され、これに違反すると30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法第68条、第120条第1号〕
つまり、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を取るのは権利であり、使用者に当たる人がこれを妨げれば、それは労働基準法違反の犯罪ということになります。
ここで「使用者」には、個人事業なら事業主、会社なら会社そのもの、代表者、取締役、理事、人事部長、労務課長などが含まれます。〔労働基準法第10条〕
<パワハラとは>
パワハラは、職場での力関係に基づく嫌がらせです。
年齢、経験年数、能力、地位、権限、人気などのパワーを持った人が、自分から見てある側面で「劣る」と思える相手に対して、主に指導の名目で嫌がらせをします。
多少不快感や損害を与えたとしても、指導に伴うものはある程度仕方がないという勘違いが多発しています。
<パワハラになるかならないかの基準>
生理日の就業が著しく困難な女性が生理休暇を取得しようとした時に、「仕事を優先しろ」「使えない」などの発言をすることは、明らかにパワハラです。
また、無限定に漠然と「お前は生理休暇なんか取るな」と発言した場合には、生理日の就業が著しく困難な場合を含めて生理休暇の取得を妨げる発言ですから、権利の侵害でありパワハラになります。
これに対して、普通に勤務することが困難ではない程度の苦痛を伴う生理を理由に生理休暇を取得することや、生理中であることそのものを理由に生理休暇を取得することは、労働基準法も認めていません。
ですから、生理中の女性が朝から普通に勤務していて、お天気が良いので午後から遊びに行くため「生理休暇を取得したい」と言ったのなら、これに対して「今日は生理休暇を取るな」という指導は正当なものであり、パワハラにはならないのが普通です。
実際には、生理の苦痛は本人にしかわからないでしょう。
上司としては、女性から「生理休暇を取得したい」という申し出があれば、これを拒否できないことになります。
ただ、生理休暇を取得しておきながら、レジャー施設に出かけて絶叫マシンで楽しんでいる様子がSNSなどにアップされたら、不正に生理休暇を取得したものとして、懲戒処分の対象となりうるというのも事実です。
この辺りについては、女性社員に対する教育指導が必要でしょう。
<セクハラにもあたる場合>
セクハラは、性的なことについての嫌がらせです。
職場に限らず、性的なことに対する興味が特に強い人がいます。こうした人が、「いたずら」「からかい」のつもりで「嫌がらせ」をするとセクハラになるのですが、本人は道徳に反しないと思っているので、反省することなく繰り返します。
生理休暇について言えば、「生理の周期から考えて今日休暇を取るのはおかしい」「その歳で生理休暇を申し出るのは変だ」などという発言はセクハラになります。
これは、相手の人格の尊厳を無視して、踏み込みすぎた発言となるからです。
<実務の視点から>
生理休暇など労働者の権利についての知識習得は従業員任せにはできません。
会社が教育研修を実施する義務を負っています。
また、パワハラ、セクハラ、マタハラについては教育だけでなく、就業規則などにその定義を明らかにし、懲戒処分の対象とすることも必要です。
こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。