労働基準法が残業手当を割増賃金としている理由

2024/11/06|1,401文字

 

<割増になる理由>

労働基準法は、18時間、週40時間を法定労働時間として定め、この基準を超える労働に対しては、割増賃金の支払を義務づけています(労働基準法第37条)。

本来であれば自由である使用者と労働者との間の労働契約に、労働基準法による国家の介入があって、割増賃金の支払が義務づけられています。

これは長時間労働を抑制して、労働者の命と健康を守り、家庭生活や社会生活の時間を確保するのが目的です。

 

<労働者の命と健康を守る>

1日8時間、週40時間を超えて、もっと長時間働きたい労働者もいます。

 

まず、今の仕事が気に入っていて、納得がいくまで働きたいという労働者がいます。

たとえば企画、制作、デザイン部門で働く若手は、納得のいく物ができるまで、じっくり時間をかけて取り組みたいと思います。

「残業代は要らないから、やりたいだけやらせて欲しい」という人もいます。

これは、一種の仕事中毒の状態でもあります。

ですから、会社が残業を抑制しなければ、命と健康がおびやかされます。

どんな仕事にも締切があり、個人的に納得がいくかどうかではなくて、会社として客観的に求める出来栄えのレベルがあるわけですから、このことをしっかりと教育して、一つひとつの仕事に厳格な制限時間を設け、生産性を高めるよう求めることが必要です。

 

また、出世のため一定の成果を上げたいので、十分な労働時間を確保したいという労働者がいます。

こういう労働者のいる会社は、人事考課の基準に問題があるかもしれません。

会社側から見れば、他の人よりも多くの人件費をかけて成果を出しても、生産性が上がるわけではなく会社の利益は増大しません。

残業手当が増えることは、会社にとって人件費の負担が増えることですから、人事考課にあたっては、残業時間が多いことをマイナス評価にするのが理にかなっています。

残業が多いと頑張っているように見えて評価が上がるという、昭和時代の人事考課は見直す必要があります。

 

<家庭生活や社会生活の時間を確保する>

たとえば、扶養家族が増え、家庭生活の維持のため収入を増やしたいという労働者がいます。

子供が生まれたとか、親を扶養に入れるようになったなどの事情があります。

本人としては、将来の昇給よりも、とりあえず残業代が欲しいと思っています。

この場合でも、本人の希望で残業することを理由に、残業代をカットしたり、割増しない賃金を支払ったりということはできません。

労働基準法の割増賃金は、本人の個人的な事情や希望とは関係なく義務付けられているものです。

むしろ、割増賃金とすることによって、少ない残業時間で多くの賃金を得られるようにして、家庭生活の時間を増やす狙いがあります。

 

さらに、学生は夏休みなどの長期休暇にたくさん働いておきたいと考えます。

しかし、長時間労働によって学業がおろそかになり、卒業できないという事態も現に発生しています。

やはり学生はしっかり勉学に励むための時間が必要です。

こうして、学生生活の時間を確保する必要があることは明らかです。

この趣旨から、アルバイトでも残業すれば割増賃金が発生するという労働基準法の規定には合理性があります。

 

労働基準法を順守しつつ、人件費を抑制し定着率を高めるには、採用の工夫と教育研修の強化が必須課題です。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

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